追想の山々1262  up-date 2002.01.13

筑波山(876m) 

1889.01.21 筑波神社から往復徒歩
 2008.11.26 往復ローブウエイの観光

登頂日1899.01.21 
筑波山神社(6.10)−−−ロープウエイ山上駅(7.10)−−−男体祠−−−女体山(7.40)−−−弁慶七戻り−−−筑波山神社(8.30)
所要時間 2時間20分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
見知らぬ犬が道ずれに=52
関東平野の彼方に富士山がのぞめた


首都高速道路から常磐自動車道を快調にとばして筑波神社に向かう。明るくなりはじめた筑波神社参道に、安普請の土産物屋が軒を連ねた観光地特有の風景、寂しさを増すように木枯らしがひとすじ吹き過ぎたあと、何気なく視線を回すと路上に一匹の茶色の犬が、あてもない感じでうろついている。

神社への坂道を登りはじめると犬がついて来た。少し近づくが数メートルの距離を保ってそれ以上は近づこうとしない。かなり警戒している。
犬に拘わっているわけにも行かず、神社への参拝は帰りに回すことにして、ケーブル駅の横手から登山道へ取りつく。気付くとまだ犬がついて来る。赤毛細型の中型犬である。警戒を解きほぐすように、話し掛けながら喉を撫でて「おまえも一緒に山に登ろうか」といって歩きだす。先程とは明らかに違う足取りで、私の行く先をわかっているかのように、先を歩き出した。

ケーブル駅の右手踏みあとを、 登山道と思って登ってきたが、道が消えてしまった。犬が「どこへ行くつもりなんだ?」といわんばかりに私の方を見ている。
しかたなく出発点のケーブル駅まで戻る。だがほかに登山道は見当たらない。あるいはもっと下の方に登山口があったのかもしれない。下まで戻って探すのも面倒、ケーブルの軌道敷きを見上げていると、犬はわが意を得たとばかりにその軌道敷きを登りだした。早朝でケーブルは動いていないし、 犬の後をついて登ることにした。犬はいつも30メートル程先を行く。姿が見えないと思うと、草むらや林の中から飛びだしてきたりする。時々呼び寄せると、少し警戒心を覗かせながらも足元まで飛んできて、私の顔を見上げている。
思いもかけない犬との山登りになった。
犬はすべてを心得たように自信ありげな様子で、林の中や草むらの中にいても、ちゃんと私の存在を視野の中に入れて先を歩いているようだ。

ところがケーブルの中間地点、擦れ違いのため軌道が複線となったところから少し先でトンネルにぶっつかってしまった。懐中電灯も持たずにトンネルの中を歩くわけにもいかない。はたと立ち止まっていると、犬が右手の薮の上の方で立ち止まって私の来るのを待っているように見えた。10メートルほど薮につかまりながら急斜面を攀じると、そこには立派な登山道があるではないか。正直いってこの時は驚いた。犬は何もかもわかっていたのだ。きっとこの山を何回となく、日常茶飯事のように登り降り しているのだろう。

こうなったら今日予定したコースを最後まで犬と一緒に歩くつもりになっていた。そのとき・・・・もう頂上も近いかなと思うころに、突然小さな出来事がおきて、犬との楽しい山歩きがあっけなく終わってしまった。上の方に人の声が聞こえた。気にもせず歩いて行くと犬が固まったように立ちどまってしまった。耳を集中して用心しているのが伝わってくる。背中を軽くたたいて「大丈夫だ、さあ行こう」と声をかける。私の前には出なくなったばかりか、足に体を摺り寄せるようにして歩きだした。静かな山の中で人声は一層近づき大きくなる。犬は立ち止まったまま進まなくなった。角を曲がると5人の中年の男が賑やかに話しながら降りて来る。犬は尾を後ろ足に巻き込んで不安気に男達を見ている。男達はてっきり私の犬と思って「ほら、なんにもしないよ」というが動こうとしない。私が行けば後をついて来るだろうと思い歩きだしてもそのままだ。男達が犬の直前まで近づいたところで、負け犬が逃げ出す仕草に似て、くるっと向きを変えると曲がり角の向こうに見えなくなってしまった。口笛で呼んでみたが姿をあらわさない。草むらにでも隠れて男達をやり過ごし、あとからまたついて来るだろうと思ったが、それでおしまいだった。いつもいじめられて人間恐怖症になっていたのか、ほんのひとときの道連れだったが、山をそっちのけの楽しみを与えてくれた犬に感謝。

それからわけなく到達した男体祠と女体山との鞍部は茶店がひしめき、電波塔が林立して何とも味気無い。4〜5分で男体祠のある一方のピークに立ち、再び茶店の間を急ぎ足で過ぎて女体山を踏んだ。
すっかり晴れ上がった朝の関東平野が 眼下に広がり、霞ケ浦が陽光にきらめいていた。富士山がはっきりと見える。つい2、3日前まで暖冬で山肌が黒く見える部分の多かった富士山が、一咋日の低気圧通過で今朝は真っ白に化粧変えしていた。
ひととき展望を楽しんだあと、一気に筑波神社まで下った。

どこかにあの赤犬がいないかと、神社の境内や土産物屋の通りなどを歩いてみたが、 結局見つけることができなかった。

百名山て何だろう?改めて問い返したくなるような山だった。名峰=名山ではないかもしれない。あるいは深田久弥が登った頃の筑波山はもっ と山らしい趣に満ちていたのかもしれない。


登頂日 2008.11.26
ロープウエイで山上駅へ  男体祠−−−女体山  ローブウエイで下る
所要時間 1時間ほどの散策 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
筑波山頂にて

年に1度、人工肛門の仲間でひと時を過ごす親睦の旅を行っている。
人工肛門のAさんとその妻、人工肛門のB子さん、そして私たち夫婦というこじんまりとした人数であるが、気のおけない仲間同士は実に楽しい。

今年はA子さんの地元茨城県筑波に集い、筑波温泉でたっぷりと語り合った。
長野ではとっくに終わってしまった紅葉も、筑波神社付近ではまだ赤や黄色の彩が名残をとどめていた。

筑波神社からロープウエイを利用して筑波山上の男体、女体のピークを1時間ほどかけてのんびりと観光散策した。ほぼ20年ぶりの筑波山だった。
空は晴れていたが、丹沢や富士山はかすみに溶け込んで確認することができなかったのが残念だが、果てしなく広がる関東平野、そして間近には懐かしい加波山、足尾山の姿を見ることが出来た。