追想の山々1304  up-date 2002.03.12


大川入山(1907m)と 富士見台(1739m) 登頂日1992.09.20 単独行
治部坂峠(5.05)−−−横岳(5.55)−−−大川入山(7.10-25)−−−横岳(8.15)−−−治部坂峠(8.45)===昼神温泉===神坂峠(9.45)−−−万岳荘−−−神坂山−−−富士見台−−−万岳荘−−−神坂峠(10.40)===東京へ
所要時間  大川入山 3時間40分 富士見台 55分
    木曽山脈(中央アルプス)の山行記録はコチラにもあります
信州百名山2座=55
  
均整のとれた大川入山 笹原の富士見台から大川入山をのぞむ










戸倉山を登ったあと、治部坂峠まで移動してきて、峠の駐車場で一晩過ごした。   
標高1220メートルの治部坂峠周辺は、別荘開発が進んで観光施設やスキー場もあり、中京方面からのリゾートエリアになっている。

【大川入山】
足元が明るくなるのを待って大川入山へ向かった。  
峠に建つ売店の左手から金網フェンスの横を擦り抜け、板切れの案内を確認して、舗装された道を2〜3分進むと、すぐに登山道となっ た。いったん沢に降りて鉄の橋を渡ったところから、じぐざぐに山腹をからんで支尾根にとりつく。歩きやすい快適な道で、地元民による手入れも行き届いてい る。  
天気もよし、山頂からの眺望が楽しみだ。しかし風がやや強く、予報では冷たい北風が吹き込んで気温が下がるといっていた。高い山では雪の降るところもあるようだ。木々の梢を鳴らす風音は、不安感、恐怖感を呼ぶ。この音はどうも苦手だ。
横岳への手前、樹木の切れ間から展望が開けて、中央アルプスが目に飛び込んできた。目指す大川入山の姿もある。端正な整った姿をしている。なだらかに両翼を延ばした左右均等の三角形は、 ふと菅平の根子岳を思わせる。山頂は意外なほど近くに見えるが、まだ横岳までも 来ていないのだから、このあとまだたっぶりと歩きではある。

背後に南アルプスも全容を見せて来た。
登山道には刈り払いされたばかりの青々とした笹が、朝露に濡れている。峠から50分で横岳へついた。ここでの展望もすばらしいが、大川入山からの眺望を楽しみに先へ進む。
横岳からは尾根の上下を繰り返しながら、次第に高度を上げて行く。 ツツジやカエデが色づきはじめている。あと10日もすれば鮮やかな紅葉に変わるだろう。 足元に茸を見つける。1本や2本取っても仕方ないと思い、やり過ごして通ると、次々に生えている。そうなると放っておくこともできず、茸とりに早変わりして、しばらくは足元ばかり見て歩いた。

感で、これが最後のコルだと思ったところが、そのとおりで、ここから項上めがけて一気の登りにかかった。すぐに樹林を抜け出て、カラマツの点在する笹の広がる斜面となる。笹の葉が朝日に輝いて美しい。まもなくカラマツも消えて、枯れ木が笹原のなかにぽつんぽつんと立っている風景に変る。山頭部一帯はチシマザサが覆っている。笹露でズボンが濡れてきたが、気にもかけずひと息に山頂に達した。
期待したとおりの大パノラノが待っていた。  
久々に胸の高鳴るような、興奮状悪に陥る。カメラのシャッターを切 りまくって落ち着くと、じっくり360度の山岳展望に入った。何といっても東に障壁のように連なる南ア連峰、鋸岳・仙丈から始まっ て、聖・上河内・茶臼・光とつづく山波が目を奪う。 次は中央アルプス。この角度から眺めるのは初めて、何と新鮮な眺めか。ひときわ目に映えるのが南駒のようだ。それにしてもこの角度から見る鋸歯の中央アルプスの険しさは、別の山を見ているようだ。 目の中に入り切れないほどの巨体は恵那山、ここから簡単に歩いて行 けそうに見える。御嶽、乗鞍は朝日を受けて薄い赤茶色で意外な近さだ。北アルプスは槍・穂高がはっきり確認できる。八ヶ岳とその背後に薄 く見えるのは浅間山か。 西の方角には岐阜の山々、その波涛の中には奥飛騨から白山あたり、 あるいは伊吹、紀伊の山地までも目に入っているのであろう。
伊那谷と木曽の谷を見下ろすこの山頂は、まさに遮るものもない大展望台であった。
15分ほどの短い滞頂だったが、十分に満足して治部坂峠へと戻った。


【富士見台】
大川入山から下山したのは、まだ朝と言ってもいい時間帯の8時45分だった。
予定外ではあるが、信州百名山のひとつ富士見台を稼いで行くことにする。
阿智村から伊那街道と別れて清内路方面へ向い、昼神温泉の先で県道富士見台公園線に入って神坂峠を目指す。

神坂峠から南への登山道を行けば恵那山、富士見台は反対の北側になる。
カメラだけもって富士見台へ向かった。  
山の名で『台』のつくのは珍しい。山、岳、森、原、峰、峠・・・・山名辞典を見るといろいろあるものだ。山の姿からこの富士見台は『台』がぴったりという気がする。丘陵のようななだらかな笹原は、『山』というイメージとは少し違った雰囲気 をもっている。霧ケ峰のようなどこまでも広濶、あっけらかんとした雰囲気とも違う。
神坂峠から富士見台の表示の出ている舗装道を10分ほどで、山荘『万岳荘』の立つ広場に出る。自動車はここまで入ることができる。  
牧柵を鉄梯子で越えて、登山道(遊歩道?)を無視して斜面を適当に登り、展望のきく尾根に達すると、このあたりが神坂山三角点だろうか。富士見台の頂部が見えてくる。それを目当てにして柵伝いに足を運んで行くと遊歩道に合わさり、キャンプ場と牧舎(山小屋?) が建っていた。山頂はそこから10分ほどだった。  
眺望は大川入山の復習であった。御岳、乗按から北アルプス・・・・ そして南アルプス・・・・恵那山を挟んで大川入山もあった。それは3時間ほど前に立っていた頂である。中央アルプスがさらに近く見える。巨獣の背のような恵那山も手の届きそうな距離にあった。  
360度の展望に満足して山頂を後にした。  
昼神温泉手前の『月川温泉』で汗を流し帰途についた。