追想の山々1322  up-date 2002.10.28


高峰山(1045m) 登頂日1998.10.10 単独行
奈良自宅(3.25)===下北山村経由===矢の川峠(6.40)−−−古川山(7.35)−−−高峰山(8.00-8.30)−−−古川山(8.53)−−−矢の川峠(9.30)
所要時間 2時間50分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
一等三角点の百名山=61歳
山頂から大台ケ原をのぞむ


一等三角点百名山に選定されている高峯山は、三重県尾鷲湾の背後に構える。取りたてる特色もないこの山の存在を知る人はあまりいないのではないだろうか。私も一等三角点百名山でなければ、名前も知らず登ることはなかった。

下北山村から熊野市、42号線の矢の川(やのこ)トンネルを抜け、林道への入口「千仭橋」まで120キロ、2時間半のドライブはけっこう長い。登山口となる矢の川峠へは、「千仭橋」を渡ったところで左折して旧道に入る。矢の川トンネルが出来る前は、この旧道が尾鴛市と熊野を結ぶ重要路線で、昭和3 0年台後半までバスが通っていたというが、今は峠付近で寸断されたままになっていて、利用する自動車もほとんどなく荒れるに任せているという感じだ。 1車線の未舗装で、ところによっては河原の石ころの中を行くような箇所や、素掘りの岩のトンネルがあったりして、以前バスが通っていたとは想像もつかない。

「千仭橋」から30分余、がたがた道の最高所矢の川峠に到着。ここに高峯山登山口あった。 昔茶店があったという峠は、7〜8台分の駐車場がある広場になっている。資料ではここから山頂まで2時間と記され、訪れるハイカーもほとんどなく、すぐ先に見えるNHKの中継施設から先は、わずかな踏み跡程度の心細い道を行かなければならないようだ。多少の藪こぎを覚悟で早速出発する。
登山道の入口には『冬の日の ぬくもりやさし 茶屋のあと』の句碑と、『高峯山』の道標がある。緩い登りを10分も歩くとNHKの中継施設の小ピークとなる。ここも含めて高峯山との間には小さなピークが3つある。NHKのピークからはしばらく下りとなる。シヤクナゲを保護する支 柱が立っているが、ところどころに掘った穴の見られるのは、どうやらシヤクナゲを盗掘したものらしい。
中継施設からも道は明瞭でまったく問題ない。2つ目のピークに向かう登りにさしかかると、笹が背の高さで登山道に張り出し、両手で払いながら進むが、それもたいしたことなく通過。展望もない照葉樹林の登りに軽く汗をかいて、2つ目のピークとなる。標高は高峯山にほぼ等しい。

ふたたび下りとなる。出発点の矢の川峠と同じ標高までどんどん下ってゆく。 笹が多少うるさいものの、訪れる人が滅多にない山にしては、コース状況は思ったより良い。三つ目のピークへの登りはやや長い。しかし時間にすれば20分そこそこのものだろう。ちょっとした空間のあるピークには「古川山1030m」の表示が 立っている。ここからは笹の煩さもなく、桧の植林帯の中を鞍部への急な下りとなる。150メートル以上の標高差を下り、最後の登りにとりかかる。
岩が目立つようなり、急登の大岩を乗り越えたりして、登山の感じになってきたなあと思うと、その先が高峯山の頂上だった。目指す一等三角点は岩に囲まれてあった。手製の「高峯山」のプレートが数枚、木の枝や幹に取り付けられている。眺望を邪魔する樹木が伐採されて、目の下には尾鷲の港や伊勢湾がきらきらと陽光を反射している。北東方向に大台ケ原の山々、それに山上ケ岳・稲村ケ岳・行者還岳などの大峰連山などが確認できた。
これで一等三角点百名山89座目、残すは11座、完登の近づいたのを実感しながら30分ほど展望を楽しみ、備えつけのノートに記帳してから矢の川峠へ引き返した。
好天の日曜日にもかかわらず、一人のハイカーにも出会うことなく、まさに忘れられたような寂峰だった。
帰りは下北山村の「きなりの湯」でゆっくり汗を流してから帰途についた。