入笠山(1955m)

長野県 2014.02.25 九州のHさん同行
コース ゴンドラ山頂駅から往復
 

10日前の記録的大雪、国道20号線の山梨・長野県境付近では、数日にわたって通行止めがつづき、ようやく開通したばかり。道の両側にかき寄せられた雪の量が、大雪の様を物語っている。

案じた富士見パノラマスキースキー場へのアプローチも、何の問題もなく到着。始発のゴンドラに乗って山頂駅へ、ここから雪上トレッキングで入笠山を目指す。

登山者の踏跡でしっかりとしたトレールが出来上がっている。念のため持参した輪カンも出番なし。ツボ足で入笠湿原を横切り、マナスル山荘経由山頂への樹林帯へ入る。この登りもいく筋もつけられた踏跡を適当に選んで登って行く。

登山者の踏跡以外まっさらな雪面には、ウサギなどの動物の新しい足跡が見られる。森閑とした雪の世界、風もなく気温も思ったほど低くはないようだ。

山頂直下のやや急な登りが終わると、明るく開けた広場のような入笠山山頂。所要時間は約1時間、同行のHさんは始めての山頂、同女史にはここでの大展望を満喫してもらいたかったが、気温が上がったために水蒸気が靄となって漂い、遠景の山々は霞んで輪郭だけしかうかがえない。条件さえよければ、360度の大パノラマが楽しめたはず、何とも残念。山岳らしい様子をうかがえたのは甲斐駒、仙丈、鳳凰三山くらいのものだった。それでも南国のH女史にとっては目を瞠る展望だった様子に、案内した私も安堵する。

下山後、やはり大パノラマが期待できる霧ケ峰車山へと向かった。

 
山頂直下の下り  雪面に見える兎の足跡のみ




                                         入笠山(1955m)釜無山(2116m)

長野県 1993.03.19-20 単独
コース ●ゴンドラ山頂駅(10.10)−−−マナスル山荘(10.50-11.15)−−−入笠山(11.55-14.10)−−−スキー遊び−−−マナスル山荘(16.15泊)
●マナスル山荘(7.45)・・・道を間違える・・・山荘へ戻る(8.30)−−−小梨平(9.10)−−−釜無登山口(10.15)−−−釜無山(11.05-11.20)−−−マナスル山荘(12.50-13.15)−−−ゴンドラ駅・・・スキー滑降で降りる

三連休利用のスキー山行。初日入笠山に遊んでから、近くのマナスル山荘に宿泊。二日目は天候を見て釜無山までスキーで往復する予定。

入笠山は昨年の無雪期に妻と登ったので、今回で2回目になる。主目的は釜無山。富士川l支流釜無川の源流にあって、山村正光氏の『車窓の山旅中央線から見える山』にも収録されている。赤石山脈の背稜が諏訪の盆地に沈まんとする北端近くに聳え、その先守屋山(1650メートル)をもって山脈は果てる。釜無山についての資料見当たらない。予備知識のないのも又楽しかろうと、ぶっつけで歩いてみることにした。

京浜東北線大森駅を出てから4時間半かかって富士見駅へ到着。駅の標高955メートル、白樺揺れる高原の町というイメージで知られ、竹下夢路や堀辰雄がここで結核療養し、“風立ちぬ”は堀のここでの作品である。結核療養所を舞台にした昭和初期の映画『月よりの使者』も一世を風摩したと聞く。

パノラマスキー場行のバスは限られた日しか運行されていない。今日は三連休なのにバスはなく、タクシーを相乗りしてスキー場へ。スキーまで歩くと3時間は見なくてはならない。

750メートルの標高差を、ゴンドラに乗るとわずか10分足らずで上がってしまう。見る見る高度を上げて、壮大な裾野を引いた八ヶ岳連峰か競り上がり、片や釜無山あたりの背後に甲斐駒ケ岳のピいラミダルな山頂が頭を現してくる。あっという間にゴンドラは山頂駅へ到着。ここでスキーにシールを付け、若者で賑わうゲレンデをあとにマナスル山荘へ向かった。マナスル山荘までは車道の雪を踏んで30分弱の距離。

山荘で宿泊手続きをしてから、テルモスとスケッチブックをサブザックに詰めて入笠山山頂へ。今年2月、東京でも何十年振りかの大雪が降ったが、ここもかなりの積雪で、いまだにそのときの雪をたっぷり残し、その上に昨日の新しい雪が化粧をしなおしをしている。山頂まで地肌の現れているところはない。背丈の低い潅木は雪の下に隠れ、樺などの喬木の問を自由にコースを取ることができる。坪足のトレールを避けるように、右に左にルートを取りながら高みを目指すと、30分強で山頂に達した。

樹木のない山頂だけは、風に吹き飛ばされて雪は少なく、地肌や岩が見えている。絶好の快晴とはいかないが、八ヶ岳と甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳が明瞭だ。これでスケッチの楽しみを満たすとてができる。スケッチを始めると寒さが染みて来る。45枚スケッチをものにしてから、山頂をちょっと下った岩陰に風を避けて、さらに3枚ばかりスケッチして、山頂で2時間ほどを費やしたが、まだ午後2時になったばかり。この間、10人ほどが入れ替わりに山頂を訪れ、写真を撮って下って行った。

マナスル山荘スキー場で1時間近くで遊んでから山荘へ戻った。昨年の尾瀬スキー山行で足をマメだらけにしたのに懲りて、今度はその箇所に絆瘡膏をベタベタと貼りまくったお陰で、今日のところは足に異状はなかった。

山荘は126800円、しかし中身はちょっとした旅館並みだった。手をかけた食事もまずまず、風呂もあるし(私は入らなかったが)山荘内は廊下にも一晩中ストーブが点いていた。客が少なかったせいで、10畳以上の大きな部屋に二人だけ、清潔な布団、コタツに足を突っ込み、快適な夜だった。同宿した客の中に、この山荘繁く通っているという青年年がいた。山へ登るでもなく、ただこの山荘こ来てのんびり過ごす時間が楽しみに通っているらしい。

もう一人(二人組みの一人)、これは山で時たま見かける典型的な自己顕示欲の塊り男。歳は50才台、話題は山の自慢話とキャリアのひけらかし。山スキーの話になると、すべてのゲレンデスキー派を軟弱と決め付け、ゲレンデだけで山スキーを目指さないのはスキーのうちに入らないと断ずる暴論。酒量が増すにつれ、とどまるところを知らない高邁さに辞易とさせられた。二人は私と同じく明日は釜無山へ登るようだ。山スキーの技量をこの目で見てみたいものだと思いながらしばらく付き合ったが、辛抱できずに8時を合図に部屋へ戻って布団に入った。

翌朝7時半の朝食に合わせて起床。昨夜の目立ちたがり屋はひと足先に山荘を出たようだ。天気は時雨でもきそうな空模様だが、八ヶ岳が意外に明瞭に望める。温度計の目盛りはマイナス4℃で寒さは感じない。林道の雪は適度に締まりシール歩行も調子いい。最初はわずかな下り勾配の道、スノートモービルがトレールをつけてあった。雪面のきれいな路肩の方を選んで歩く。観光施設らしい23棟の建物ののあるところまで来た。何か腑に落ちない気持ちで地図を広げてみて驚いた。明らかに間違った道を来ていた。マナスル山荘まで戻る足は重い。しかし気にする必要もないくらい時間は十分にある。山荘を横目に通り過ぎ、スキーゲレンを東側へ伸びる林道が釜無山へのコースだった。あの二人はすでに先へ行っているかもしれない。注意してみるとストックの痕跡が残っている。

爪先上がりの林道を、やや早いぺ−スでスキーを滑らせて行くと、前を行くあの二人連れに追い付いた。後ろから見る目立ちがりた屋のスキー歩行、昨夜あれだけ吹聴していたにしては、お世辞にも褒められたものではない。得てしてこんなものである。

首切清水から小梨平まで10分ほど一緒に歩いて、二人が休憩にしたのを機に先に釜無山へ向かった。さらに林道がつづき、雪も多めになってきた。すべての音が消えた静寂の世界。

この林道もスノーモービルのトレールがつけられていた。登山者のためを思ってのサービスなのだろうが、スキー歩行にはどちらでもいいことだった。

雪原の中を特徴ある兎の足跡がまだ新しい。林道を横切り、あるいは樹林の奥へ、ときに吹き留まりを越え、ぱっと方角が変わる。おや、兎の足跡が急に見えなくなったぞ。透明兎に変身したのかな。

母指球が擦れて豆ができそうな気配に、休憩かたがた絆瘡膏を貼って予防した。

林道がY字に分岐するところで、『釜無山登山口』の道標を見つけた。道標はあるがトレールはまったく残っていない。最近釜無山への登山をした人とはないのだろう。道標から先は降ったままのきれいな雪面が保たれている。よく見るとツガなどの樹の幹に赤ペンキの目印があった。ペンキ印を追ってようやく勾配のついて来た斜面を、シールをきかせての登高に移った。樹林を縫うように、コース取りは制約もなく直登やキックターンを繰り返して、少しづつ高度を上げて行く。

Y字分岐の登山口から230分で一つのピークに立った。樹林を透かし見える緩やかな稜線の先が釜無山だった。ひと呼吸おいてコースを左手直角に曲がり下って行くと、樹林の切れた広々とした雪原に出た。雪がなければ気持ちいい笹原が広がっているよいだ。

南西の方角には、雲に邪魔されながらも中央アルプスが肇えていた。今回は中央アルプスのスケッチが楽しみだったが、この状態では残念ながらスケッチはちょっと無理だろう。発汗が著しい。足だけでなく、手もフルに使う山スキーはエネルギーの消耗が激しいためだ。汗は帽子の庇から滴となってしたたり落ちる。

薄日のさす明るい稜線を快調にスキーを滑らせる。いい斜度だがブッシュが顔を出して、帰りに快適な滑降というわけにはいきそうもない。再び樹林に入って、最後にコメヅガの棲樹の間を擦り抜けるようにして上り詰めるとピークだった。しかし何の標識もない。これが釜無山だろうか。樹間から覗くがもうここより高いピークは見えない。釜無山に間違いはない。ピークの向こう側に降りたところに、汚れのない白一色

の広い空間が見えた。そこまで下って休憩をとる。白く枯死した樹木が教本あるだけの、気持ちの安らぐ空間だった。動物の足跡ひとつ残っていない、まさに処女雪原だった。

入笠山がはるかに遠い。随分遠くまで歩いて来たものだ。無雪期ならどうということもないピクニック気分の山だろうが、この時期だからこその充実感があるのだ。標識もないことが、地味な山、静かな寂峰を証明していた。

ひと休みしてから、登ってきたスキーのトレールを追って下山にかかった。最初はシールのまま下ったが、ツガ樹林を抜けてからシールを外した。登りではほどよく締まっていた雪面は、気温が上がって緩みはじめた。やっかいなモナカ雪に加え、ブッシュや木立が邪魔になって本格的な滑降というわけにはいかない。それでも下山は登りにくらべたら問題にならないはど早く、また楽だった。

林道に降り立ってからも、下り勾配は思い切り飛ばしてマナスル山荘へ向かった。

山荘へ預けた荷物をまとめて、パノラマスキー場のゲレンデを滑り降りる。重い荷物を背負って、何度もバランスを崩したが、無事山麓へ帰着。

15分ほど歩いたところに新しく出来た温泉へ浸かって2日間の疲れを癒し、帰宅の途についた。





入笠山(1955M)

長野県 1993.03.5 単独
コース ゴンドラ山頂駅から往復

富士見パノラマスキー場のゴンドラを使用。

運転開始を午前8時と予想して出かけたが、それが845分だったため1時間も待った。

山頂駅着9時ちょうど。スキーをデポしてすぐに入笠山へ向かう。これが3回目、最初のときは妻と下から歩いて登った。

今回は老母介護という仕事があってゆっくり出来ない超特急登山。2000メートル近い標高がありながら、真冬でも多くの登山者が訪れるこの山は、踏跡もしっかりついていて、心配なく登れるのが魅力。

ゴンドラから1時間もかからずに山頂に立つことが出来た。予想以上の展望。

甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳、八ヶ岳、蓼科山、富士山、奥秩父、四阿山、根子岳、霧ケ峰、美ヶ原などの山々が遠くあるいは近く肇え立っている。

 

ゴンドラ駅まで戻り、デポしてあったスキーに履き替えると、一気に下まで滑り降りた。










       



山行報告- 釜無山(2116m)入笠山(1955m程久保山(1977m)
長野県 2001.05.18 単独
コース ●大阿原湿原(4.10)−--登山口4.45−―釜無山(5.25)−−程久保山−−大阿原湿原(6.25)
●大阿原湿原(6.30)−−入笠山(7.15)−−−大阿原湿原(7.45)
夜明け前の暗い林道を、マイカーでぐんぐん高度を上げて、標高1800メートルの大阿原湿原付近で自動車を止めた。
この標高だと、外はさすがに寒い。 時刻はまだ4時、ようやく空の端が明るみを帯びてきたばかりだった。

舗装された林道を釜無山へと向かう。
早起きの野鳥の囀りが、澄みきった空間いっぱいに満ちあふれているのに、それがかえって山の静寂を引きたてているから不思議だ。
30分余の林道歩きで釜無山登山口の標識がある。

釜無山は日本100名山の入笠山とは稜線つづきにあるが、知名度の方は月とスッポン、しかし標高は釜無山の方が160メートメルも高い。
無名のおかげで静かな山歩きを味わえるとも言える。

林の中の登山道へ入る。道は2本あって、一つは良く踏み固められてしっかりとした昔からの道、もう一つは笹の刈り払いで新しく拓かれたばかりの道で、こちらは少々歩きにくい。歩きにくい方の道を選んで、小さなピークを一つ越えると、昔からの道へ合流した。

樹木の間から、八ヶ岳の稜線を太陽が昇って来るのが見えた。
この日と同じコースを山スキーで登ったことがある。雪に覆われたそのときの景色と比べると、まるでちがう山を歩いている気がする。
ところどころに残雪があるが、歩くのに支障はない。
カラマツと笹の気持ち良い稜線へ出ると、わずかに芽吹きはじめた木々の頭越しに、朝日に輝く中央アルプスが展望できる。
最高点を越えて、少し下った先に二等三角点があった。
霜を置いた笹原の向うにひと群れの木立があり、その背景に蓼科山や北八ヶ岳が望める。しかし展望はそれだけ。静かだが展望を楽しめる山ではない。
帰りは昔ながらの良い道の方をたどった。
林道の途中から、送電鉄塔巡視道へ入り、程久保山(1977m)三等三角点を経由して大阿原湿原へ戻った。

ついで入笠山へと向かう。 入笠山はこれが4回目の登頂になる。これまでは御所平方面からしか登っていない。今回始めて仏平峠の道を歩いた。
大阿原湿原の先にある首斬清水から登るつもりが、間違えて手前の藪の中へ入るという失敗をしてしまった。しかし藪漕ぎも30分ほどで終わり、予定のコースへ合流した。

仏平峠から散歩道のようなコースをたどって難なく入笠山山頂へ到着。
ここはもう知る人ぞ知る一等三角点の展望抜群の山頂。
とりわけ高さを誇る富士山、そして中部山岳の名峰がすらりと勢ぞろいして個々には名前を上げきれない。 何と言っても素晴らしいのは甲斐駒ケ岳である。 峻険な岩襞に濃い陰影をつけて、白銀に輝く山容は気高ささえ感じる。 南アルプスの女王、仙丈ケ岳もまた見ごとだった。

下山後、冬枯れから抜け出ていない大阿原湿原を散策してから山をあとにした。