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山行報告-西クマネシリ岳=(1635m)
北海道(東大雪) 2001.07.23 単独
コース 三の沢林道登山口(11.10)−−−旧道分岐(12.10)−−−西クマネシリ岳(13.00-13.05)−−−旧道分岐(13.25)−−−登山口(14.15)===幌加温泉入浴後糠平キャンプ場に泊まる
2001夏・北海道の山旅(4)
西クマネシリ岳は東大雪十勝三又の山で、ニペソツ、石狩岳などと対峙するように聳える寂峰である。
訪れる登山者もきわめて少ないようだ。

釧路の次男宅を早朝に出た。
雨になってしまった。東大雪が雨でないことを祈って車を走らせる。3時間余のドライブで到着した十勝三又は本格的な雨が降っていた。登山口のあるシンノスケ三の沢林道入口はすぐにわかったが、この雨では登る気がしない。
登山はあきらめて国道273号線の駐車場に入り、横になって本を読んでいるうちに寝入ってしまった。
ふと目を覚ますと雨は小止みになっている。これなら登れるかもしれない。

登山口の標識
急いで登山口へ向かってみた。
三の沢林道を奥へと進む。林道二又の登山口を見落としてかなり行き過ぎてしまった。登山者が少ないこともあって、道標はほとんど整備されていない。草むらに隠れた古びた棒杭に「西クマネシリ登山口」の表示を見つけることができた。
人の少ない山はヒグマが恐ろしい。今回はトウガラシエキスのクマ避けスプレーを9800円也で購入、持参してきた。こんな防備でもしないことには、このような山はとても歩く気にはなれない。よく鳴る鈴を着け、上下雨衣のいでたちで出発した。

二又に分かれた林道をわずか進むと、沢の中を歩くようになる。今は沢になっているが、これはかつての林道である。足元はゴム長靴、少々の流れは気にならない。
雨に濡れて静まり返った山は、そのあたりからヒグマが飛び出してきそうな雰囲気が漂っている。ヒグマのことだけで神経が研ぎ澄まされていて、気持ちに余裕というものがない。事前に頭に入れてきたコースガイドが現地の様子と重ならない。造林小屋があらわれてここはガイドブックどおりであることを確認。
廃道とはいうものの、林道の道型の残るコースをヒグマの状況に注意しながら、黙々と足を運んで行く。
大きな土場の先で廃道と化した林道と分かれて、右手に赤布の目印がある。どちらを取るべきか迷う。ガイドブックの記憶と比べて見るがはっきりしない。迷った末、赤布を頼ることにした。

コースは密生した蕗に覆われているが、その下にはかなり明瞭な踏跡があるし、赤布もところどころで確認する。1坪ほどの広さで蕗がなぎ倒されている。多分ヒグマの跡だろう。さらに緊張が高まる。
胸まであるような蕗の密生地を抜けて少し登って行くと林道の形跡を残すところへ出た。
どうやらここが旧道分岐と記されていたところらしい。

雨に煙る西クマネシリ山頂
赤布が樹林帯の急登へ導いている。これまでの緩やかな道と様変わりに険しい急登がつづく。幽玄な樹林が薄気味悪い。とにかく早く山頂へ登りついてしまいたい一心で、遮二無二足を運ぶ。汗がしたたる。トウゲブキの花がわずかに気分を和ませてくれる。イワブクロ、トカチフウロなどの花も咲いているが、ゆっくりと見ているゆとりがない。
夢中で稜線へ登り着いた。稜線を右に進むと大きな岩場にぶっつかる。慎重に岩場を攀じ登って、やれやれ山頂かと思ったが、その山頂はもう少し先だった。去来する濃霧で視界はほとんどない。
突然目の前に西クマネシリ岳の山頂標識があらわれた。

東大雪の雄大な展望を楽しみにしていたが、山頂は10メートル先も見えないような濃霧と、初冬を思わせるような冷たい風が吹いていた。
早々に下山の途につく。
喘ぎ登った急登を駆けるように下った。

下山後、ニペソツ登山口にある鄙びた山の湯、幌加温泉に浸かってようやくリラックス気分になった。
この夜は、以前家内ともキャンプしたことのある糠平野営場に泊まった。
私と同じように、一人マイカーで北海道の山を登り歩いている定年後の人が奇しくも3人もいた。東京、神奈川、京都の60台の人たちだった。