tuiso-1345 索引一覧へ戻る   「山岳巡礼」のトップへ戻る

 茂倉岳(1978m)武能岳(1760m)・・・谷川連峰
登頂年月日 
1995.09.29
天候 曇・強風 単独 マイカー 三角点亡失

土樽茂倉新道分岐(5.55)−−−矢場の頭(7.35-7.40)−−−茂倉岳(8.50-8.55)−−−笹平(9.25)−−−武能岳(9.55-10.00)−−−蓬峠(10.25-10.35)−−−東俣沢出合(11.35)−−−林道(12.00)−−−土樽茂倉新道分岐(12.20)

茂倉岳(矢場の頭より)
谷川連峰の小さな峠“蓬峠”とは、どんな峠だろうか。山を歩くようになってから、いつか行ってみたいと思っていた。
まだ踏んだことのない茂倉岳岳、武能岳とあわせて歩いてみることにした。

湯沢インターチェンジから登山口まで、わかりにくいところもあったが、何とかたどりついた。関越道上り線の土樽サービスエリアから見下ろすと、青い橋が見える。そこが蓬峠への道と、茂倉新道との分岐地点で、明瞭な道標が立っている。青い橋の近くには駐車スペースもあり、ここに車を止めた。
コースは茂倉新道から茂倉岳〜武能岳〜蓬峠を周回して、出発地点に戻るというもの。
青い橋を渡り、土樽インターチェンジの金網に沿って広い道を5分ばかり行ったところで、台地状の広場に出て車道は終わる。道標にしたがって茂倉岳への尾根道にとりかかった。のっけからの急登である。うるさい笹や草は最初だけで、後は草露に濡れる心配もない道となる。しかし急登は変わらない。
土が崩れて大きな段差があったりして、あまり快適とはいえない。眺望のない道を黙々と足を運ぶ。早くも汗ばんできて 下着だけになる。
激しい物音、驚いて見ると目の前の薮が大きく揺れ、獣の黒っぽい背中が落石のような勢いで急斜面をかけ下って行った。
尾根は岩となり、挟まって来た。アスナロやヒメコマツの巨木が、その根で岩を抱き込むようにして立っている。張り出した根をま たいだり踏んだり、土の崩れた箇所を巻いたり、あるいは足の届かないような段差を、木にしがみついて攀じったりして、なかなかの難行だ。
落葉樹林帯を抜けて、雑木の低潅木帯に変わるとようやく眺望が利いてきた。紅葉はぼつぼつというところ。左手に茂倉岳や武能岳も見えてきた。
低潅木帯に変って間もなく、最初のポイント“矢場の頭”へ登り着く。世界が変わったようにいっペんに眺望が広がった。風が強い。雪でも降りそうな冷たい風だ。茂倉岳へ突き上げて行く尾根、その左には大きい山体の武能岳、トマ、オキの双耳峰、万太郎山、仙の倉山、苗場山などが一望される。茂倉岳への稜線は一面笹に覆われ、その中に点々と紅葉が染めている。ここまで高低差約900メートル、コースタイム3時間となっていたが、所要時間は1時間40分だった。
茂倉岳までは残り高低差500メートル、紅葉を愛でながら、笹原の展望コースとなる。

右の谷から強風が吹き上げて来て、るんるん気分というわけには行かない。男女の3人グループが下山してきた。昨夜は茂倉岳避難小屋へ泊まったということだ。
緑の笹の中に、ナナカマド、ミネカエデ、サラサドウダンなどが真っ赤に色づき、ここはもう冬との境だ。ウメバチソウが群落をつくって寒い中に残り花がふるえている。ヤマリンドウの紫も寒そうだ。

時間的にき早すぎると思うほど簡単に、茂倉岳避難小屋へ到着。小屋は新しく、10数人は宿泊できそうだ。(下山途中で会った蓬峠ヒュッテの管理人の話では、屋根が飛ばされてしまい、この9月に補修が完了したばかりだと言う)

茂倉岳頂上は避難小屋から10分余登ったところだった。矢場の頭からの登りも2時間となっていたが、1時間10分で来てしまった。
このピークは谷川連峰の中では、仙の倉(2026)平標山(1984)に次いで 3番目に高い1978メートルの標高を持つ。さえぎるものもないこの山頂も、強風にさらされている。目の前に一の倉岳やトマ、オキの双耳峰がある。天気がよかったら、目を見張るような展望が楽しめるにちがいない。白毛門から朝日岳、巻機山などもかすかに青く浮かんでいた。
おじか沢の頭から万太郎山の稜線を越えて、雲が滝のように流れ落ちて来た。天気急変で知られる谷川連峰、記念写真とスケッチを2枚ほどで、強風から逃げるように山頂を後にした。

笹平のコルまで、急斜面を約400メートルの標高を下って行く。苗場山の特徴ある山容が目に入る。目指す武能岳を正面にしての下りは草もみじ、笹の原、ナナカマド、岩場、大展望(今日は見えないが)・・・・と楽しい稜線コースだ。
最低コルで風を避けて5分の休憩。15分前に立っていた茂倉岳にもガスが押し寄せ、視界から消えていた。
武能岳までは200メートルの登り返しとなる。湯桧曾川の谷から強風をともなったガスが吹き上げて来る。ときおり途切れるガスの隙間に、湯檜曽川も俯瞰できる。
200メートルの登り返しを感じないほど楽に武能岳山頂に達した。山頂はガスの中で全く展望はない。写真を撮ってすぐ蓬峠へ向かっ た。

やや急な道を下って行くと、間もなく雲の下に出て広大な笹の海原の中に建つ蓬ヒュッテが見えて来た。勾配のゆるくなった笹の道をたどって行く。強風にたたかれてまっすぐ歩くのも難しい。笹が波のように揺れて、船酔いするような気分になって来る。 天候の急変を案じてさらに足を早める。

蓬ヒュッテ前の分岐で、清水峠への道を分けて蓬沢沿いに土樽への道を下る。
峠から少し下ったところで、昼食かたがた10分間の休憩、稜線上にかかる雲は、風に吹かれて足早に流れていた。東股沢出合でボッカ途中の蓬ヒュッテ管理人に会って立ち話をする。こんなに早く下ってしまってもったいないと言われたが、あの山の天候ではしかたがない。管理人は「風は15メートルか20メートルはあったでしょう」と言っていた。
降り立った林道を20分ほどで、今朝ほどの青い橋の駐車地点へ戻った。
急いで歩いても下山は午後3時過ぎになると思っていたのに、まだ12時20分だった。


索引一覧へ戻る   「山岳巡礼」のトップへ戻る