追想の山々1347
湯の花温泉===登山口(7.25)−−−沢を離れる(8.30)−−−稜線(8.45)−−−大嵐山(9.10-9.25)−−−登山口(10.35) | |||||
所要時間 3時間10分 | 大嵐山 2等三角点 | ||||
≪奥会津の寂峰≫
近くの田代山など人気の山に隠れて大嵐山の存在感は薄く、登山者の訪れも少ない地味な山と聞いている。登山道の様子を心配して来たが、湯の花温泉の『石湯前』バス停のすぐ先に大嵐山登山口の道標がすぐにわかった。雨はほとんど止んでいる。 登山口の道標から急な林道(滝沢線)を1キロばかり走ると行きどまりとなって、自動車3〜4台が駐車できるスペースがあった。こここが登山道の始まりだった。 小糠のような雨だったが、一応上下の雨衣を着て出発する。 杉植林の中の斜面を2〜3分登ると林道にぶっつかった。今では使用されないままに雑草がはびこっている。左手に囁くような沢音を聞き、雑草を左右に避けながら、爪先上がりの道をしばらくたどると、沢を渡る手前で林道が終った。なおしばらくは比較的ゆるやかな登りを、小沢の左岸、右岸と何回かまたいで、徐々に沢の奥へ入って行く。沢沿いの樹林は成熟したサワグルミの高木一色、そして林床にはシダがびっしりと密生している。 突然行く手が倒木にふさがれてしまった。20メートルばかり引き返すと、右手にテープなどの目印が見えて、それを目標に沢を高巻く道がつけられていた。沢を左に見おろすように高巻くと、再びもとの沢道に合流した。 心配した登山道の状況は意外にしっかりしている。 朽ちたサワグルミの古株には、寄り沿うように次代の若木かすでに数メートル以上に生育している。苔蒸した巨岩が方々に散在し、千古の趣きさえ漂う。 いつしか沢の流れは伏流となり、傾斜のついたその涸れ沢の真ん中を、ごろ石を踏みながら登って行くと、コースは突然沢を離れた。標識もなく、うっかりするとそのまま沢を直進してしまうところだった。 沢を離れて山腹の直登にかかると、すぐに大嵐山への標識がブナの樹幹にぶら下がっていた。道は一気に急登に変わり稜線を目ざした。巨きなヒメコマツの下で5分間の休態をとる。歩き始めて1時間10分の地点である。 一服すると再び急登を攀じて行った。 張り出した潅木の露が衣服を濡らす。雨衣を再び着けてなおも急な登りに汗を流すと明るい尾根上に出た。霧で見通すことはできないが、東側の谷は深々と切れ落ちている様子がうかがえる。 道標にしたがって、岩混しりの痩尾根を小さな上下を繰り返しながら進むと、低潅木に囲まれた大嵐山の山頂に達した。 山頂には立派な標示板が立っている。三角点標石は二等、ウラジロヨウラクの花が可愛く咲いている。アズマシャクナゲの木も多い。潅木の茂みからは野鳥の声がしきりである。目の前にウソが姿を見せたり隠れたりとせわしい。ウグイスの啼き声も爽やかだ。 周囲はダケカンバが何本か見られるだけ、あとは背の低い潅木だけ で、晴れていれば360度の眺望が楽しめるはずだった。日光から南会津の山々が余すことなく指呼できたであろうに残念だ。 記念写真を撮ったりしてから山頂を後にして、帰りは同じ道を戻った。 湯の花温泉の共同浴場で入浴。3〜4年前、田代山登山のときにも立ち寄ったが、あのときは掘っ立て小屋のような粗末な風呂だったが。今は見違えるような瀟洒な作りに変っていた。 汗を流してから翌日登頂予定の三岩岳登山口の伊南村へと向かった。 |