追想の山々1375
東吾野駅(8.30)−−−ユガテ−−−越上山(11.30)−−−顔振峠−−−吾野駅(14.10) | ||||
行程 5時間40分 | 埼玉県 | 三等三角点 | ||
再びユガテへの道をたどる。 日差しを受けて畑からは水蒸気がゆらめき、土の香りがむんむんと立ちこめている。山間の村全体が温もっているかのようだ。 民家の庭先には必ずというほど梅の木が2、3本見える。白梅や紅梅が春風にかぐわしい。片隅には水仙の黄色花、日なたの石垣には黄梅、田の畦にはオ オイヌフグリの米粒のような青い花が群れ咲いていた。 陽春の光の中に、山里はすっかり春の息吹に満ちて溢れている。 曲がった腰で散歩する老婆に声をかけたりして、要所要所の道標にしたがううち山道へ入って行った。うす暗い杉林の登りで軽く汗を流すころ、唐突に明るい空間が目の前に広がった。そこがユガテという集落だった。集落といっても山に囲まれたサッカーグラウンドほどの広がりに、わずかな畑地とたった2戸の農家が山に囲まれているだけ、外とは遮断されたかのようなたたずまいに見えた。絵のようなのどかな山村風景にひかれてスケッチブックを開いた。雨上がりの緑がすがすがしい。ここでも梅の花が景観に彩りを添えていた。 スケッチをしている間に、何人かのハイカーが通り過ぎて行った。 ユガテからは、ときおり舗装された車道を横断したりする尾根通しのコースとなる。「一本杉峠」という名前にひかれ、少し脇道へ外れて行って見ると、確かに大きな杉の木があり、その根方に一本杉という表示があった。 今日のコース最高所の「越上山」の山頂付近は、岩石が露出してようやく山らしい雰囲気を味わうことができた。山頂は眺望はなく、登って来るときに見つけた展望のいい日なたで休息にした。 腰を下ろすと前方に奥多摩の大岳山や御前山、それに雲取山などがうかがえる。 休憩かたがた途中のスケッチに絵の具をつけたりして1時間ほ ど過ごした。 薄く雪の残る諏訪神社の拝殿で足を止め、霞のような梅畑の顔振峠ではもう1枚スケッチ。 じっとしていると風が寒くなってきた。あとはひと息に吾野駅まで下って行った。 |