追想の山々1382  

丹沢
鍋割山(1273m)塔ノ岳(1491m)丹沢山(1567m)三峰(1345m)高畑山(766m)
頂日1996.02.10-11 単独
●大倉(10.05)−−−二又(11.20)−−−休憩30分−−−小丸(13.45)−−−鍋割山荘(14.15)・・・泊
●鍋割山荘(7.15)−−−塔ノ岳(8.10)−−−丹沢山(9.0-9.10)−−−三峰中峰=丸山木の頭(9.55-10.00)−−−高畑山−−−宮の平バス停(12.30)===本厚木へ
行程 1日目 4時間10分 2日目 5時間15分 神奈川
鍋割山・・等三角点  塔ノ岳・・三等三角点  丹沢山・・一等三角点  三峰東峰・・三等三角点  高畑山・・三等三角点  
隔週をおいてまた丹沢を訪れた。
▼念願の「鍋割山在」へ泊まってみること
▼鍋割山からの夕焼け、朝焼けの富士山と、星空の撮影。
この二つが主な目的だった。幸い二日間とも上々の天気にめぐまれた。

大倉を出発したのは10時を回っていた。日帰りハイクなら山頂に立っている時間である。登山口の二又までは約1時間の林道歩きだ。
二又から鍋割山へのコースは後沢乗越経由と、小丸経由の二つがある。後沢乗越コースは下りに歩いたことがあるので、今回は小丸コースをとることにした。登山道へ入って間もなく、日だまりで昼食にする。ラーメンを作りゆっくりと休憩をとった。
今日は炊事道具や、重いカメラ、三脚、水、防寒具など荷物もけっこうあって15キロくらいになる。

夕方までに山荘へ着けばいいので、スローペースでのんびりと登って行く。急登を一歩一歩登って、塔ノ岳と鍋割山をつなぐ稜線 上の小丸のピークに到着。なかなかいい展望台で、相模湾や初島ものぞめる。ここから鍋割山荘までは稜線を一投足の距離である。小丸までたいした雪は見なかったのに、稜線に出たとたん、氷化した雪道となって足元が滑る。軽アイゼン着用の人が多  い。スリップに用心しながら下って、また登ると鍋割山荘だった。
鍋割山荘


オフシーズンに加えて、日帰りコースにあるこの山荘に宿泊する人は、ほとんどなかろう予想して来た。ところが驚いたことにほぼ満員の盛況である。
鍋割山荘は管理人の草野氏が、すべての資材を自分の肩で背負い上げて作った山小屋として、知る人ぞ知るところである。1回に80キロから100キロの荷を1日2回、全資材を上げるのにいったい何回往復したのだろうか。
草野氏と少し話をしてみた。今でも宿泊者用の食料等の荷揚げで、週4回、70〜80キロづつ背負い上げているという。細身のその体のどこにそんな怪力とスタミナが秘められているのか。ただたただ驚くほかはない。

小屋の前からは富士山が正面にある。南アルプス、愛鷹山、天城連山、相模湾、大島、利島、三浦半島‥‥眺望もみごとだ。  夕焼けに赤く染まり、そしてシルエットとなって暮れ行く富士山に、何回もシャッターを切る。夕食後氷点下10度ほどに下がった闇の中に出て、宝石のようにきらめく街の夜景を眺める。カメラの操作がうまく行かず、バルブで星の軌跡を撮ることができなかったのが残念だった。

山荘の食事は、さすが草野氏の体力を裏づけるような御馳走だった。5700円というリーズナブルな宿泊料で、他の山小屋は絶対に真似できないと思う。 コンニャクをはじめとしたおでん。カボチャのてんぶら。なすの味噌煮。 どれも熱々。豆腐に焼き魚・・・・
コタツでうとうとしていると、管理人の奥さんが「寒くないですか」 と毛布をかけてくれた。この親切も普通の山小屋では考えられない。これからは好きな山小屋のトップに名を上げよう。
ぬくぬくとしたコクツに潜って、寒さ知らずに寝ることができた。

翌朝すばらしいご来光と、赤富士にも恵まれた。出かけて来た甲斐があった。
この好天、さて今日はどうするか。大倉の集落でスケッチでもしてのんびり帰るつもりだったが、この天気ではもったいない。結局同宿の人たちが話していた、塔の岳〜丹沢山〜三峰〜宮ケ瀬のコースを歩くことにしてしまった。

朝食を済ませて山荘を後にした。
寒気に凍てついた雪道を危なっかしい足取りで、小丸までは昨日の道をたどる。塔ノ岳山頂では足を止めずに丹沢山へ直行。以前、降雪直後の深い雪を踏んで歩いた道でなつかしい。今日もかなりの積雪で、夜間の低温により凍っている。登山者の姿も多い。
丹沢山頂は快晴、防寒具に身を固めた人々が憩っていた。記念写真を撮ってから、始めて歩く三峰コースへ入った。
トレールはついているが、歩く人は少ないようだ。くるぶしが埋まる雪を踏んでどんどん下って行く。多少の登り降りはあっても、宮ケ瀬までは気楽に下って行けばいいと決めていたのに、これが意外に厳しい登り降りの連続で、予想外の体力消耗だった。
特に円山木の頭への登りは、重荷も手伝いスピードも出ない。一汗かいて円山木の頭で小休止にした。朝ご飯を食べて出て来たのもう腹が減った。ところが今日は鍋割山在からまっすぐ下山するつもりでいたので、食料の用意はない。ガマンガマン・・・

東京近郊の山には珍しく、ブナや潅木の樹林が豊かで、林床には雪が敷き詰め、いい雰囲気に包まれている。最初は雪も柔らかくて、土道よりもむしろ歩きやすかったが、下って行くにしたがって氷化してきた。スリップに必要以上に気を使ってく たびれる。円山木の頭からも顕著なピークを二つ越えて、ようやく下り一方となった。
登山道の一部に崩落個所があったりしたが、しっかりした道でルートの心配はない。朝塔ノ岳や丹沢山荘を発って来たハイカ ーを、ときおり追い越しながらやや足を速めて下って行った。
やがて積雪も少なくなって、勾配のない楽な道となる。肌を刺すような冷たさも、標高が下がり陽があたって、歩くに適当な心地よさとなってたきた。
あとは宮ケ瀬目がけて足を運ぶだけだった。

宮ケ瀬はダム建設に伴い、道路のつけ替えがあったりして、バス停はガイドブックにある馬場ではなく宮の平だった。
下調べもしないで『下り一方の楽々コース』と思いこんでいたために、思いのほか厳しいアップダウンと歩きでのあるコースに感じてしまった。