追想の山々1385  

山梨県  大洞山(1402m) 登頂日1996.02.24 単独
笹子追分(6.45)−−−大洞山(9.00-9.15)−−−尾根分岐(9.30-9.45)−−−笹子追分(11.30)
行程 4時間45分 山梨県 大洞山 三等三角点
大洞山山頂
少し風邪気味だったので、気軽に登れそうな近郊の軽い山を探してみた。雑誌に載っている笹子の大沢山を見つけた。新田集落の南側にある、裏山のような小さい山だ。地図には山名も登山道も記されていない。

笹子追分の駐車場へ車を止めて歩きはじめた。
新田集落を抜けると、雪の凍りついた寒々しい道となる。すぐに笹子峠へ至る旧甲州街道と別れて林道へ入る。林道入口は鎖で閉鎖されている。工事用の車両通行のためか、林道は完全に除雪されていた。
右手に尾根へ取りつく道を探しながら行くが、それらしいはっきりとした道は見あたらない。しばらく行くとコンクリートの水道施設のところで道は二分する。右手のゆるい登り勾配がメインの林道のようだったのでそれをたどってみる。
杉植林の凍てついた林道をさらに進んで行くと、右手に枝道が分かれていた。見当をつけてこの枝道へ入る。降雪後、人の歩いた気配もなく、きれいな雪面が降ったままの状態で残されていた。 ときおり鹿、兎、キジ、リス、キツネなどの足跡が見えるだけだ。

日陰の雪はふわふわと気持ち良く足が沈むが、日あたりの雪は昼に解け夜にまた凍っての繰り返しで、表面だけが堅いモナカ状で歩きにくい。
雪の道はどこまでつづいているのか、このまま峠のように山を越えてしまうのだろうか。
今日は雪上散策だけでも十分という気分で道なりに歩を進めて行った。

ブルドーザーがあり、50メートルほど入ったところに新しい砂防堰堤が見える。このあたりから尾根へ取りつけないかと思いつつも、そのまま道なりに林道を進んで行った。(実は下山時、ここに降り立った)
やがて林道は終った。その先は細い山道が延びている。奥に砂防用の堰堤がいくつか見えるから、この細道は作業用の道だろうか。
くるぶしから上まで雪で埋まる細道を行く。予定の大沢山へは行きつけないかもしれないが、どこかのピークには登りつけるだろう。そんなおおらかさで行けるところまで行ってみることにした。

植林のために雑木の伐り払われた裸の斜面を、じぐざぐを切りながら登って行く。伐り払いの終わったところで道も終わっていた。 この後は落葉した雑木の中、隙間の歩きやすいところを見つけながら適当に上を目がけて登って行く。雪はくるぶしの上以上には深くならない。
斜面が尾根状になってきたので、その尾根伝いにコ ースを取ることにした。どこを歩いても、雪に残された足跡があるから下山の心配はない。
徐々に急になってきて、木にしがみついて腕力で登ったりするよ うになる。ちょっとした岩場で巻こうとしたが、巻く斜面が急過ぎて途中で怖くなって引き返したりした。
それでも何とか急な痩せ尾根を通過して、ゆるくなってきた尾根 をたどると、なだらかな稜線へ出ることができた。

背の高い雑木林を右へ少し進むと、風雪に色あせた測量旗がある。どうやらここがピークらしい。しかし地図上のどのピークになるのかはわからない。予定の大沢山からはかなり方角ちがいのピークであることは確かだ。ナラの幹に巻きついた黄色いテープに『大洞山 1402m』と書かれている。目的の大沢山ではないが、何はともあれ道のないところを一つのピークに立てたのだから、今日はこれで満足だ。
樹間から富士山と南アルプスをうかがうことができる。地元の人が山作業で入る以外には、ハイカーなどはめったに訪れることのない山だろう。

下山をどうするか。来た道を戻ってもいいが、雪の急斜面が登ってきたときより厄介にになりそうだ。登りに右手(南側)に見えていた明るい尾根の方が歩きよさそうな気がする。そう決めてピークから北へ向けて少し下って行くと、切り開かれたいい展望場所があった。ここで休憩かたがたスケッチをしたりして、ひとときを過ごすことにした。気温は低いが陽があたって風もなく、のどかな雰囲気に浸ることができた。(ここは今から下って行こうとしている尾根と、達沢山へ通じる尾根の分岐点だった)

下山にとった尾根は、踏みあと程度だが道がついている。振り返ると大洞山や、登る予定だった大沢山がよく見えていた。
尾根から作業道をジクザグに下って行くと、下にブルドーザーが 見えて来て、今朝ほどの林道へ出ることができた。この道がわかっていれば、これをたどって大洞山〜大沢山と予定のコ ースを難なく歩けたはずだが、道を外して雪の斜面と悪戦苦闘したのもまた楽しからずやだった。
私の足跡に釣られたのか、二人の登山靴の跡が私の残した後を追っていた。あのまま行くと私と同じ苦労をすることだろう。

大洞山の三角点は「擦針峠」
大沢山は、大洞山の東方1487mピークののことと思われる。