追想の山々1386  

 雨ケ岳 (1772m) 登頂日1995.12.16 単独
割石峠(7.00)−−−端足峠入口(7.40)−−−端足峠(8.10)−−−雨ケ岳(9.10-9.35)−−−竜ケ岳中腹−−−割石峠(11.30)
行程 4時間30分 山梨県静岡県 雨ケ岳 三等三角点
雨ケ岳からの富士山をスケッチ
富士山裾野の西方に、長者岳、天子岳、毛無山などが連なる天子山塊がある。その中の雨ケ岳が未登のまま残っていた。

家を出たの少し早かったので、谷村パーキングエリアで仮眠してから、登山口のある県境(割右峠)へ向かった。
県境から300メートルほど本栖湖へ寄ったところにある駐車場へ車を駐めた。
今朝もかなり冷え込んだようだ。標高1000メートルの県境は、身 に染みるように寒い。吐く息もまっ白。
期待どおりの快晴となった。県境から東海道自然歩道の標識に導かれて登山開始。冬木立の歩きよい道を、落ち葉を踏んで40分、雨ケ岳への道標が立っていた。ここで水平道から離れて登山道の登りに変わる。雨ケ岳の登山者は少ないと聞いていたので、道の状況は良くないと覚悟して来たが、全く問題はない。
端足峠に着くと、目の前には一面笹に覆われた竜ガ岳が、朝陽を受けて明るく輝いている。雨ガ岳からの帰りに、時間があったら竜ケ岳にも足を延ばすつもりだ。

右手下に本栖湖を見ながら、潅木林の道を雨ガ岳へ向かう。湖から吹き上げて来る寒風が、痛いほどに頬を刺す。凍える頬に雑木の小枝が撥ねると、普段の何倍も痛く感じて、思わず顔をしかめる。
少し下ったあと、頂上目指して急な登りとなる。朝陽にきらめく霜柱がガラス細工のように美しい。一本調子に登って行くと、端足峠からちょうど1時間で雨ケ岳山頂だった。
広い山頂は東面だけしか展望がきかないが、正面には圧倒的な大きさで、富士山がその存在を主張している。三ツ峠山、黒岳、十ニヶ岳などが冬陽を浴びている。眼下に広がる広大な裾野は朝霧高原で、その中には今年全国を憤怒と憎悪に巻き込んだオウムのサティアンの散在するのが見える。この牧歌的で長閑な広がりとは、まったく相入れないオウムの施設である。

富士山をスケッチブックに収めてから山頂を後に端足峠へ戻る。木の間越しに白銀の南アルプスや八ヶ岳を望見、ちょっと距離 がありすぎるが、正面から陽を受けた雪稜は、藍色の空と鮮やかなコントラストをなしていた。
時間が早かったので竜ケ岳に立ち寄ることにした。
端足峠から竜ガ岳への道は、薮がからんで薄い踏み掛程度の頼りなさだ。両手で薮を掻き分けて進むと、笹の刈り払いされた水平道が現れた。どこかに山頂へ取りつ道があるだろうと思って、かなり進んでみたがそれらしい道がない。雨ガ岳から眺めたときには、西側の笹藪の中に一筋のルートらしいものがうかがえたのに、このまま水平道を行くと竜ガ岳の東側まで巻いてしまうことになりそうだ。
引き返しながらもう一度道を探して見たが、やはりわからない。
見通しのきく地点から、笹におおわれた正面の山腹を眺めると、笹の海にかすかに一筋の線が確認できる。それを目当てに探してみると、背丈の笹の根元に獣道のような笹のトンネルが見つかった。
笹を両手で力任せに左右に押し分けながら登りはじめた。上に行けばいくらか良くなるだろうと思ったが、状態は変わらず、20分程で体力的に無理を悟って引き返した。

端足峠まで戻るのが面倒で、そこにあった転げ落ちそうな桧林の急斜面をまっすぐ下って行くと、今朝ほどの東海自然歩道へ下り着くことができた。