追想の山々1387  

 お坊山(1417m)・米沢山(1357m)・笹子雁ガ腹摺山(1358m)
 登頂日1990.12.08 単独
笹子駅(8.15)−−−桜公園(8.45)−−−道証地蔵(9.20)−−−一つ目の送電塔(9.50-10.00)−−−大鹿峠(10.20)−−−お坊山(10.50-11.00)−−−米沢山(11.35)−−−昼食(11.45-12.00)−−−笹子雁ガ腹摺山(12.30-13.00)−−−鉄塔(13.25)−−−初鹿野駅(14.30)
行程 6時間15分 山梨県 米沢山 三等三角点
お坊山山頂
今年の冬、笹子雁ガ腹摺山からお坊山を歩くつもりで行ったのに、雪があったりして笹子雁ガ腹摺山から先の道を間違えてしまい、お坊山を通らずに下山してしまった。そのときの予定コースを今日は逆コー スで歩いて見ることにした。

笹子駅から歩き始める。雲ひとつない快晴、放射冷却による冷え込みがまだ残っている。登校途中の小学生が、大きな声で「おはようございます」と声をかけてくれる。4人ほど見えたハイカーは滝子山へ向かったようだ。
陽の当たらない林道を大鹿峠目指す。樹相は雑木林に変わり明るさが戻る。右下の谷川を見ながら、斜面の中腹を水平に横切って行く。ざれた箇所もあり要注意だ。看板に『谷川に下り前進して左の棚に登る』というような意味が書かれている。何だか良く解らないがしばらくすると道は谷底に下った。登山道らしくもないが、多分谷川沿いに行けばいいのだろう。歩けそうな場所を選んで遡上して行く。流れを右岸、左岸と数回の渡渉。飛び越すには跳躍に自信がないが、思い切って飛んでみる。どうやら成功、水に落ちずに済む。飛び越し不可能な所は足場用に適当な石を投げ込んで、これもうまく渡渉する。

突然前方に高さ30メートル以上もありそうな滝が立ち塞がってい る。さてと、この滝は登れっこないし、周囲を観察。滝の左は急傾斜のざれで難しそうだし、第一コースとは関係なさそうだ。右手は支流だか本流だか解らないが結構水量のある沢があって滝壷に合流している。この支沢も狭い岩状の沢でどうも登山コースとは思われない。そして右手は急斜面で薮、ここで進退極まれり。
進むとすれば支流らしい沢しかなさそうだ。水に濡れないように 岩場をへつってみる。潅木を材料とした粗末な梯子が水に浸かっている。ほかにも梯子の原型を止めないほどに壊れた残骸が目につく。ということはこの岩場用に架かっていたもので、つまりこれがコースだったということになる。この状況では一般ハイカーの通行は困難だろう。
看板の『左の棚に上がる』という棚は、さっきあった滝の上のことだろうか。だとするとこの支流を進むとその滝からどんどん離れて行ってしまう。依然踏み跡らしきものも全く見あたらない。
少々不安になったが、こうなったらこの沢を詰めてしまえと言う気になる。悪い岩場はすぐに終わって、沢床が広くなり歩きやすくなって来た。

東京電力の巡視路の標識が立っている。沢を挟んで左手の山腹へ登って行く明瞭な道と、右手の山腹を巻いて行くように薄い踏み跡が見える。今日のコースは送電塔の巡視路をたどって大鹿峠まで行くというもので、そもそも一般登山コースではないのだ。 ようやくきちんとした道に出会い、ほっとした気持ちで左手山腹のじぐざぐの登りに取り付く。南向きの斜面は落葉した雑木が陽を受けて一段と明るい。

汗ばみ登りついた最初の送電塔で少休止にする。枯れ草の上に座すと、目の前に滝子山があった。滝子山全体が淡い紫色がかって見えた。  
巡視路は迷うこともなく大鹿峠へ延びている。霜柱がザクツという歯切れのいい音を響かせる。左手に見えるのがお坊山だろう。

登り着いた大鹿峠からは初鹿野の村が目の下に見える。今年になってすでに3〜4回も訪れた初鹿野は懐かしい村だ。ふと目を上げると遥かに白銀の連峰、南アルプスが横たわっていた。
展望の楽しみは山頂ということにして、いよいよお坊山への急登に取り付く。尾根を一本調子で突き上げて行くかなりの急勾配だ。薮が少々うるさい箇所もあるが道はしっかりしている。地面が凍っていて気温もかなり低いのだろう。
休まず汗を流してワンピッチでお坊山ピークに到達。しかし山名表示も見当たらない。潅木を透かすと先方にもピークがあるようだ。2〜3分進むと、本当のお坊山の山頂があった。富士山、それに南アルプスは仙丈を除いて甲斐駒から聖岳まで3000メートル峰がすべて展望できた。八ケ岳、奥秩父、大菩薩連嶺と、好天にも恵まれてなかなかの展望台だった。

山頂から急激に下り、いくつかの登り降りを繰り返しながら尾根道をたどって行く。5万図には登山道表示のないコースなので、ちょっと心配していたが、道は明瞭で登山者の多いことを窺わせる。
米沢山と表示のある1357メートルのピークで休憩。越えて来た お坊山が良く見える。
米沢山からはコースが左に直角に曲る感じで、しばらくすると鎖のある急下降となる。鎖には手を触れないで下ったが、足を滑らせて尻餅をつき、左手の指を擦りむいてしまった。下り切って少し登り、コースから外れて左に入ったところに、岩の突き出した好展望地を見つけ、再びここで休憩。林檎を食べながら富士山から御坂、道志の山々を眺める。目の前には越えて来た凹凸の稜線が穏やかに陽を受けている。

米沢山から随分下ったような気がして、これは笹子雁ガ腹摺山への登り返しがきついぞ・・・と気を引き締めたが、それほどのこともなく山頂に登り着いてしまった。
笹子雁ガ腹摺山の頂上には10人ほどのパーティーが昼食の炊飯の最中で賑やかだ。
富士山を正面にして腰を下ろす。南アルプスも北半分が視界にある。
30分ほど休憩してから下山にかかった。急坂を下ったところで送電鉄塔建設工事が行われている。小さな起伏をいくつか越えながら、笹子峠の標識を目印に行く。ポイント地点となる送電塔から笹子峠への道と別れ、送電線巡視路をとって初鹿野へ下る。 登山コースではないので道標はない。山林作業用の道もたくさんあるが、送電線を目標に道を選んで行く。ゆっくりペースの割には予定より短時間で下ってしまった。
低山ながら快晴に恵まれ、それなりの眺望も楽しめ気持ちのいい山歩きに満足できた。