追想の山々1396

  

 八ヶ岳 阿弥陀岳=あみだだけ(2806m)・御小屋山(2137m)
 登頂日1997.09.01 単独行
美濃戸口(5.35)−−−美濃戸(6.15)−−−地蔵石仏(7.05)−−−行者小屋(7.50-7.55)−−−阿弥陀岳(8.45-9.10)−−−不動清水分岐(9.55)−−−御小屋山(10.20)−−−美濃戸口(11.10)
行程5時間35分 長野県 御小屋山 三等三角点
阿弥陀岳山頂
八ヶ岳で一つ登り残して気になっていたのが阿弥陀岳だった。あわせていつか歩いてみたいと思っていた御小屋尾根を下山ルートに選んだ。

マイカーは美濃戸口止り、あとは車道を歩いて美濃戸へ。
登山シーズンも終わって今日から9月、それにウィークデーときているから、登山者もちらほらかと思っていたが、けっこう人の姿の多いのに驚いた。
美濃戸からは南沢コースをとって行者小屋へ向かう。地図では急登はないように見えるが、美濃戸から行者小屋までは標高差が6〜700メートルもあって歩きでがある。このコースを登りで歩くのは久しぶり。10年ほど前の3月、雪を踏んで登って以来だ。
樹林の道をひたすら登って行く。退屈な登りだが、秋を思わせる真っ青な空を見上げると、山頂での展望が今から楽しみになる。

地蔵石仏の水場でのどを潤す。
広い河原に下りたりところで、目の前に横岳と大同心の岩塊が、逆行線のシルエットで目に飛び込んできた。稜線を画す空は文句ない紺碧色に澄みわたっている。
行者小屋へは7時50分着。美濃戸口から所要2時間15分。それほど急いだわけでもなかったが、コースタイムより45分も早かった。ベンチに腰を下ろして、硫黄岳を眺めながら一服。

これからが阿弥陀岳への急登本番、ほぼ500メートルの急登を一気に登って行く。途中文三郎道と別れて、中岳・阿弥陀岳のコルへと突き上げて行く。シラビソの原生林に、八ケ岳らしい雰囲気を感じる。この樹林帯だけはまったく人影がなく、静寂そのものの世界を作っていた。
樹林帯を抜け出てコルが目に入るようになると、鉄梯子を2回渡る。コルにはたくさんの人の姿が見える。話し声が風に乗ってくる。
大気が澄み渡って眺望は絶佳、山頂でじっくり楽しむことにして、休憩している人たちであふれているコルは通過、立ち止まることなく山頂への登りにとりついた。
雪の時期には足のすくむような急斜面で、ビギナーはそこに立っただけで怖じ気づいてしまうというが、なるほど絶壁を攀じ登って行くような気がする。しかしコルからはせいぜい15分から20分程度の登りだ。それでもみんな休み休み登って行く。コバノコゴメグサ、イブキジャコウソウなど可憐な花々を見ながら、休むことなく待望の山頂に立った。

山頂も20人前後の人たちで賑わっている。権現、赤岳、硫黄、天狗から蓼科山と連なる八ケ岳連峰。南アの甲斐駒・仙丈、中央アルプス、美ガ原。遠く奥秩父連山。期待した富士山は霞の中に溶け込んで見えなかった。
山頂周辺を一回りすると、トウヤクリンドウ、イブキジャコウソウ、イワベンケイ、ウメバチソウなどの花が見られた。

眺望に堪能して山頂を後にした。
下山コースは予定通り御小屋尾根を下る。歩く人も少ないと思われるルートだが、道ははっきりしている。下りはじめは岩塊の中を縫うように進む。次は転がり落ちそうな急峻な下りとなる。足がかり手かがりも乏しいザレの斜面で、よほど注意して下らないと怪我をする。
いやな下りを終わってほっとして振り向くと、赤岳方面から眺める顔とは違った阿弥陀岳の姿があった。思いのほか丸みを持っている。わずかの時間の経過で、もう山頂部には雲がからんでいた。山の天気は変わり身が早い。

あとは長い長い御小屋尾根を下って行くだけだ。
御小屋山付近のルート沿いには、秋の訪れを告げるタカネマツムシソウが、どこまでもつながって薄紫の花を楽しませてくれた。これほどのマツムシソウの群生地であるとは知らなかった。この時期のこのコース、満足感に満たされて軽快に足を運んだ。

別荘地に下りつくと、駐車した美濃戸口は近いと思ったが、意外なほど舗装道路を歩かされた。
これで八ケ岳は北から南まで、ほとんど頂に立つことができた。