追想の山々1398

  

 小式部城山=こしきがじょうやま(1120m)  登頂日1998.03.22 単独行
無量寺(5.55)−−−小式部城山(7.05)−−−南のピーク−−−無量寺(8.30)
行程2間35分 長野県 小式部城山 三等三角点
小式部城山頂
私の生家(辰野町)から南の方角に、特徴もない背の低い小さな山が見える。南アルプスが北端で沈み込むように高度を落として来たその末端部にあたる。ラクダのコブのような小さな双耳の峰を持っているが、それはどこにでもある『おらが村の裏山』風情の山である。

いつだったか『コンサイス日本山名辞典』をぱらぱらとめくっていて、所在地”辰野町”となっている小式部城山という変わった名前の山が目に付いた。生まれ育った郷里にそんな山があったなんて、まったく知らなかった。
帰省のおりに一度登って見ようと思いながらもう数年、今回ようやくその機会をとらえた。
地図の持ちあわせもなかったし、もちろんガイドブックなどない。どこに登路があるかも不明。実弟が小学校の遠足で行ったことがあるという。その記憶ではお寺があったということを手がかりに道路地図で探すと、辰野町樋口区の無量寺がどうやらその寺らしいことがわかった。

生家から自動車で20分ほどでその無量寺へ着いた。真言宗西光山無量寺といい、なかなかの古刹らしい。西方に展望が開けて中央アルプスの眺めがいい。寺に隣接する駐車場へ車を停めて出発する。
もちろん道標のたぐいなどは一切見当たらない。
林道が先へ延びていたが、これが小式部城山へ通じているかどうか不明だし、また林道を歩くのも野暮だと思い、マレットゴルフ場の中の細道を適当に上がって行った。
ゴルフ場はすぐに終わっていて、その先からはもう踏み跡もない。 感で小式部城山と思われる方角へ、松林の中の雑木を分けながら適当に登って行った。たとえ迷ってもどうかなってしまうこともあるまい。
しばらくすると支尾根らしい雰囲気となって、この尾根に沿って獣道ほどの道型を確認できた。しかしほとんど歩く人もないのか薮がうるさい。
雑木をかき分けながら行くと林道へぶっつかった。これが多分無量寺からのものと思われる。
しかたなく林道をたどり出すと、すぐまた左手へ入ってゆく踏み跡があった。迷わずこれに入る。尾根の北斜面を巻いていて残雪歩きとなった。そう言えば今年の冬はこの地方としては記録的な大雪が降ったと聞いた。
しばらく雪を踏んでトラバース気味に進むと、北から来る支尾根と合流。ここでコースは右に大きく婉曲した。が、踏み跡はここまでだった。後は斜面の雑木の薄いところを選んで登ってゆく。その方角が小式部城山かどうか自信はないが、違う山だったとしてもまあいいだろう。どうせ同じ郷里の山だから・・・・。
しばらく登ってゆくと雑木の平坦地となった。小式部城山かとも思ったが、それらしい標識も何にもない。ほんの少し緩く下ってゆくと、すぐ右下に林道が見える。あのつづきの林道だろう。

尾根はさらに先へ高度を上げている。その尾根のピークまで登って様子を見ることにした。踏み抜くと所によっては膝までもぐる雪の斜面を、雑木を手でかき分けながらひと登りすると、小さな山頂があった。
風化して字も消えてしまっているが、多分これが小式部城山の山頂であることは間違いない。南北に細長い山頂の北端には”樋口区”という小さな標石、南端には50センチほどの石碑があった。昔はここが狼煙台だったたということだ。周囲は樹林に取り囲まれて展望はまったくない。

さきぼどの林道終点らしきところまで戻って、あたりを少し歩いてみたが、ときおり中央アルプス方面、とりわけ経ケ岳が美しい姿を見せてくれた程度で、良い展望を得られる場所はなかった。