追想の山々1402  

 山スキーハイキング
霧ケ峰 蝶々深山(1832m)
 登頂日1998.03.19 単独
沢渡(8.45)−−−蝶々深山−−−沢渡(11.10)
行程2時間25分 長野県 三角点なし
蝶々深山と後方は北八ヶ岳
山スキーを携えて霧ケ峰高原へ遊びに行った。スキーで高原を適当に散策しようという計画だった。

諏訪市から強清水まで路面の雪は完全に除雪されていた。その先もまだ通行できる。白樺湖方面への直進路と別れて、美ヶ原方面へ左折してもまだ進める。結局その先の沢渡まで車で入ることができた。御柱祭に使う木を搬出するために除雪されていたようだ。

蝶々深山を目指し、適当にその辺を散策しながら歩いてみることにした。山スキーを履くのは2〜3シーズンぶりである。
沢渡スキー場下に自動車を駐めて、ここから歩きはじめた。最初は八島湿原方面へ向かう。クロカンスキーのトレールが残っている。
八島湿原が眼下になったところで方向転換、物見岩方面へスキーを向けた。ここはまるっきり歩いた形跡の無い、それこそ無垢な雪原が広がっている。今日は天気がいいから心配ないが、視界が利かない時は、目標物のないこの高原を散策気分で気楽に歩くのはかなり危険がともなうかもしれない。

緩い斜面を登ってゆくと、その先に林が見える。林の中を適当に突っ切って物見岩方面へ行くつもりだったが、カラマツの枝が重なり合って、樹間を縫うのは無理だ。林の縁をたどって樹林の切れる所まで進む。
とにかく遮るもののない広大な高原だから、展望はすこぶる快適だ。御嶽山と乗鞍岳の純白な姿が目を引く。雪の上に腰を下ろして御嶽をスケッチする。人っ子一人見えず、雪上には動物の足跡さえも見えない。静寂な世界でしばらく展望を楽しんでから先へ進むことにする。

林の途切れた所からスキーのトレールがついていた。これについて登ってゆく。最初は物見岩方向へのなだらかな斜面を行く。シールがうまいこと利いて調子がいい。ジグザグを切ったり、キックターンをしたりする必要はまったくなく、一本調子でまっすぐ登って行ける。
物見岩の山頂が近づいてきたところで、コースを右手に見える蝶々深山へ振る。いったん沢状の窪みへ降りてから、今度はまっすぐ蝶々深山の山頂を目指す。
地形の関係か風が強くなってきた。ときおり突風のように吹き抜ける。雪が煙のように吹き飛んでゆく。雪面の風紋がきれいだ。3月とはいえ、2000メートル近いこの山岳は、まだまだ冬の最中と言っていい。

傾斜が急になってきたが、シールが利いて依然直登がつづく。背丈以上の潅木が、たまに雪の上に枝先を出しているだけで、まったく何もない広大な雪原だ。
セーターだけの体から体温が奪われていく。そろそろウインドブレーカーを着けなくては思った頃、傾斜が緩くなって大きな丸い山頂に到着した。『蝶々深山』の標識がある。
強風の合間に体が倒されそうな突風が混じってふらついてしまう。うっかり帽子を飛ばされてしまった。帽子を探しに行くと、風下側の窪地にうまいこと止まっていた。
エコーバレースキー場のスキーヤーが小さく見える。
吹きっさらしのこの山頂は、寒さも厳しくてとてもとどまっていられない。そうそうに車山方面への斜面を下った。たちまち風がおさまって嘘のようだ。

シールのまま滑降体制に入ったところ、ビンデングの踵を固定してないのを忘れて大転倒、膝をしたたか強打してしまった。一瞬骨折でもしたのではとびっくりしたが、打ち身だけですんだ。久しぶりの山スキーに用心不足がたたった転倒だった。
これで車山まで行くのは止めて、コロボックル小屋へ登っていく。結構急な登りだった。小屋は人の気配がして営業しているようだ。真冬に泊りに来て、星空でも眺めたらいいと思う。
コロボックルから稜線伝いに沢渡スキー場の上部地点を目指す。そこから一気に自動車を止めた所へ滑り降りるつもりだ。そこまでの稜線がまた展望がいい。北アルプスの全山、中央アルプス、南アルプス、それに御嶽、乗鞍、八ヶ岳、浅間山・・・・。これだけの展望を得られるところはそうざらにはない。

沢渡スキー場上部にある無人の小屋の陰で、風を避けながら早い昼飯を食べる。スキー場とは言え、短いリフトが1基のみ。しかも運転されていない。多分一般のスキー場が滑れなくなってからこちらは開業されるのかもしれない。
一服した後、シールを外して滑降に入る。ところが斜面はアイスバーンの固い所と、吹きだまりの柔らかい雪が混在していて、とても快適に滑れるような条件ではない。たちまち吹きだまりのなかに転倒してしまった。
リフト脇に圧雪されたところがあり、そこを選んで滑り降りた。  自動車まで戻ると、これから出発して行くクロカンスキーの人と、ツボ足ハイクの3人連れがいた。
大展望が印象に残るスキーハイキングだった。