追想の山々1403  

 鍋冠山(2194m)  登頂日1999.09.25 2名
鍋冠林道展望台(8.30)−−−冷沢登山口(9.35-9.40)−−−休憩5分−−−鍋冠山(11.05-11.20)−−−冷沢登山口(12.45-12.50)−−−展望台(13.35)
行程5時間05分 長野県 鍋冠山 三等三角点
樹林の中の鍋冠山山頂
老母の介護で辰野へ行った折り、様子が良くて手がかからなかったので、かねてから登って見たかった鍋冠山へ弟と出かけた。
ガイドブックなどにも載らないような無名に近い存在だが、松本平から西の北アルプス方面を眺めると、常念岳の左に名前の通り鉄鍋を逆さにしたナベ底状の山が見える。険しく連なる北アルプス連峰の前衛にあって、どうしてこの山だけがこうしたなだらかな円頂になったのか不思議な気がするほどゆったりとした線を引いていた。

梓川村から県道25線、通称アルプス道路を北上し、三郷村小倉の集落にさしかかると「大滝山」の小さな標識がある。ここから林道をたどってぐんぐん高度を上げて行くと、舗装道路の途切れるあたりに展望台やトイレがあり、ここに自動車を止めた。高度計を見るとここはすでに標高が1400メートル前後の地点である。

天気がいいとこの展望台から美ヶ原方面がよく見渡せる立地にある。ここに車を止めて出発した。
舗装のとぎれた先は、さらに島々谷林道の車道が延びている。ゲ−トらしきものはあるが閉鎖されていない。未舗装の道を1キロほど歩くと厳重なゲートに突き当たった。数台の駐車スペースもあり、ここまで車で入っても良かった。

ゲートの端をすり抜けて勾配のついた林道を、いくつも曲がりくねりながら行く。右手は深い谷になっている。リンドウの群生が見える。
ゆっくり歩いて約1時間、林道の最高点に達した。ここに「大滝山・冷沢登山口」の標識が立っていて、すぐそばの沢沿いに小さな石の社があった。水神のようだ。

小休止してから登山口の標識から登山道へ入った。
大滝山への登山者がたまに通るだけの道のようだが、れにしては道型もはっきりしているし手入れもされているのが意外な感じがした。
登山道脇にキノコ(ジコボウ)が目に付く。下山時に採ることにして、小枝などで目印を残して行く。
きつい急登もなく、たんたんとして登って行く。コースはほとんどコメツガの原生林の中を縫っていて、深山の趣が感じられる。いい雰囲気だが展望は全くない。ときおり「大滝山」の道標プレートが目に付くが、鍋冠山という案内は皆無だ。

標高2000メートルあたりだろうか、ゴゼンタチバナの群落がつづいている。花の時期は白一色となることだろうが、今日はタイミングよく真っ赤に実を結んで目を楽しませてくれた。良く見るとマイヅルソウの赤い実もかなり目につく。
次第にきつくなった勾配を意識して踏ん張ると、急に傾斜が緩んできた。どうやら山頂の一角に着いたようだ。松本平からの眺めそのものを確かめられるような、ごくなだらかな傾斜をしばらく登って行くと、50センチほどの高さの石積みと三等三角点があって、ここが鍋冠山頂上だった。しかし山頂を示す標識もなく、10平方メートルほどの空間になっているだけだった。回りは樹木で遮られ眺望はまったくない。
木立の向こうには白い霧が漂っている。コメヅカ樹林の中を、大滝山へとつづく一筋の道が延びていた。
鍋冠山は大滝山への1通過点に過ぎず、この山だけを目的に訪れる登山者は、私のようなよほどの物好きだけかもしれない。  一休みしてから帰途についた。目印のキノコを探しながら下っていったが、半分ほどしか採ることが出来ず、他は見落としてしまったようだ。山菜というのは登りながら採るもので、下りで採るのは難しい。