追想の山々1419  

大洞山(1013m)・尼ケ岳(958m) 登頂日1998.01.17 単独
下太郎生(6.45)−−−中太郎生(7.25)−−−西蔵王堂(7.45)−−−登山口(8.10)−−−大洞山雌岳(8.40-8.45)−−−雄岳(9.00)−−−林道(9.25)−−−大ダワ(9.35)---尼ケ岳(10.03-10.20)−−−大ダワ(10.35)−−−下太郎生(11.30)
行程 4時間45分 三重県 大洞山 三等三角点
尼ケ岳 二等三角点
尼ケ岳から大洞山をのぞむ
大洞山は『伊賀』と『伊勢』の境界をなす布引山地の最高峰で、室生火山群に属する火山だという(コンサイス日本山名辞典)。

年明け、登り初めは大洞山から尼ケ岳の縦走コースを歩いた。縦走と言っても標高1000メートルに届くかどうかという低山ハイキングで、いわゆる日だまりハイクである。

今日の縦走コースは登山口・下山口の距離はおおよそ4キロ前後、国道を1時間程度歩くだけで済む。自動車を下山予定の下太郎生の集落へ残し、登山口のある中太郎生まで国道を歩く。土曜日の早朝で自動車の往来も少ない。国道沿いの川は名張川だろう。
今朝はかなり冷え込んだが、歩き始めるすぐに体がぽかぽかとしてきた。名張川を挟んだ西側には、日本三百名山の倶留尊山が間近に聳えている。 左手東側に見えるおだやかな山が大洞山だ。
民家のおばさんが「おはよう」と声をかけてくれる。国道歩きを1時間と読んでいたが、40分で中太郎の集落へ着いた。この中太郎生は大洞山と倶留尊山との登山口になっていて、ハイキングコースの略図看板が立っていた。

国道と別れて南出集落へ入ってゆく。倶留尊山を背中にして、山ふところへ向かう爪先上がりの道を行くと、出勤してゆくおばさんが「まあ早いですね」と声をかけていった。
集落の途中から道標にしたがって右手の山道へ入る。これから登山口までは東海道自然歩道を歩く。自然石を敷き詰めた道が延びている。この道は昔ながらの道だろうか。伊勢と伊賀を結ぶ街道だったのかもしれない。海産物と農産物を互いに運びあった人々の往来を想像をしながら、薄暗い植林の道を登ってゆくと、木立の中に西蔵王堂という社があった。さらに石畳の道は先へつづいている。

小鳥の囀りも梢を渡る風音もなく、静寂そのものの死んだような杉林。この杉の人工林というのはどうしても好きになれない。しかし林業が経済的に成り立つには、こうした金になる木を植えるよりしかたがないとう現実も、また理解せざるを得ない。好き嫌いではないわけだ。 突然立派な林道に出た。どこから来ているのか、ここが林道の終点になっている。これから工事を進めて延ばしてゆくのだろうか。すると今歩いてきた東海自然歩道はどうなるのか。
林道を少し進むと大洞山登山口の標柱が立っていて、ここで東海自然歩道とはお別かれ、大洞山への登りに取りつく。
いつの頃に整備したのか、自然石を使った石段が何百段とつけられている。一段一段登ってゆく。かなり急な勾配だ。途中から雪が出てきたが凍っているので沈むことなく歩ける。

長い長い階段を登り終わった感じでは、千段は優に越していると思われる。時間にして30分近い階段登りだった。
階段を終わって緩くなった道を、雪を踏んでしばらく行くと大洞山の山頂だった。ここは大洞山雌岳985メートルで、高さなら次の雄岳の方が28メートル高い。しかし雌岳が主峰として扱われているらしい。
四囲さえぎるもののない好展望の山頂は、雪の上に最近歩いた人の足跡が一人分残されているのみで、降り積もったままの状態に近かった。山頂の真ん中に展望盤が設置されている。それを頼りに眺望する。正面に大きく倶留尊山、そしてこれから向かう尼ケ岳、南方には三角錐を突き出した高見山があった。富士山も記されているが、まさかここから見えるはずはない。

写真を撮ってから次の雄岳へ向かった。20センチほどの積雪だが、冷え込みで固くなっているので歩くには良いあんばいだ。少し下って登りかえすこと15分、雄岳へ到着。こちらは展望はあまりよくない。潅木の中に申し訳のような標柱が立っているのみ。ここはそのまま通過してしまった。

これから大ダワまで一気の下りである。北斜面の下りで雪が結構積もっている。この雪が下りではいい緩衝材の役割を果たし、踵で雪をブレーキ代わりにしてどんどん下って行く。雪がなければこうはうまく歩けない。30分近い下りは、標高差で300〜400メートルほどだったろう。舗装された林道へ出た。ここが最低鞍部の大ダワと思ったら、林道を横断して再び登山道へ入る。道はまだ下っていった。
林道から小さな起伏を一つ二つ越えて約10分、登山道が十字に交差する鞍部が大ダワだった。

しばらく植林の緩やかな道を進むが、やがて木材の階段となって傾斜を強めていく。階段の脇に踏み跡がついていて、その方がずっと歩きやすい。
階段が終わったところで、巻き道のような登山道を一本横切った。登りはさらに急になる。植林を抜け出したところから雪が深くなった。  潅木の中の道は雪に覆われてわかりにくいが、幸い足跡が残っているのと、枝につけられたテープが目印となった。雪が少し柔らかくなってきて靴が湿ってきた。防水靴ではないのですぐに中まで濡れてくるだろう。

雪の下には笹が寝ていて、うっかり乗ればつるりんすってんだ。潅木につかまりながら最後の急な登りを行く。
山頂まで時間的にはたいしたことはなく、大ダワから30分ほどだった。広々とした山頂で、ここも雪に覆われていた。一人分の足跡が残るのみで、ほぼ処女雪の状態が保たれている。展望を遮るものはなく、大洞山同様360度の眺望が広がっていた。
ベンチに腰はを下ろして食事を取る。北には御在所岳、その背後にはひときわ高く真っ白い山が見える。あれは伊吹山にちがいない。  倶留尊山、その後ろの山並みは二上山、葛城山、金剛山とつづく金剛山地。 そして南方の高見山、白く雪をいただくのは大台ケ原か大峰の山々か。四日市の臨海工業地帯らしい一帯も見える。

下山は大ダワまで戻り、ここから林道へ出て舗装道路を下太郎生へと向かった。後でわかったが、林道を歩かずに植林の中を登山道があったらしい。