追想の山々1420  

池木屋山=いけごやさん(1396m) 登頂日1999.05.15 単独
登山口(5.40)−−−高滝下(6.30)−−−地蔵(6.42)−−−奥谷(7.15-7.20)−−−池木屋山(8.15-8.35)−−−奥谷(9.20-9.25)−−−猫滝−−−高滝下(10.05)−−−登山口(10.45)
行程 4時間05分 三重県 池木屋山 二等三角点
池木屋山山頂
 池木屋山を目指したのはこれが2度目、最初のときは林道を一本間違えたのも気づかずに、まったく違う山へ登ってしまった。あのとき正しい登山口を確認してきたから今度は大丈夫だろう。

蓮ダム湖の赤い橋を渡ってそのままダム左岸を走ると、やがて宮川林道の標識がある。ここで左折、橋を渡って宮川林道となる。3キロほどだろうか、林道終点が登山口となっている。登山口の駐車スペースは伐採木搬出作業でふさがっていたので、その手前に車を停めて出発する。
三重国体山岳競技で使われたコースだというが、それは20何年か前の話。険しい峡谷沿いにコースが作られているので、大雨などによる損傷も著しく、橋の落ちたままのところもあると書いてあったが、補修工事はかなり進んで快適な登山道が復元されていた。

渓流沿いには多くの桟道が架けられ、ずいぶん費用がかかっている感じだ。新緑が一番いい季節、目にしみるような緑が溢れている。紅葉もいいにちがいない。人工林でないのがいい。山が険しくて植林には向かないのか知れない。
この登山道はが昔からあったわけではなく、以前は一般のハイカーを寄せ付けない山だったという。

登山道修復工事の飯場を過ぎると、やがてかなりの落差を持った高の下に出る。高さがあるだけに見栄えがする。新緑とあいまって見飽きないような美しい滝だった。
高滝は右から高巻く。高巻きのピークを過ぎたところにお地蔵さんが鎮座している。下ったところが今度は猫滝。高さはそれほどないが、滝壷まで下りて見るとこれも立派な滝だ。滝壷のグリーン色が鮮やかだ。

なおも渓流に沿って溯って行くが、小さなアップダウンを頻繁に繰り返す。ざれた斜面のトラバースなど、ややスリルのあるところにはザイルがフィックスされている。そんなところが何ヶ所かあった。
次第に谷は狭まってくる。何回か飛び石で流れを徒渉する。
奥谷という地点で山腹に取付く標識がある。ここで渓流と別れていよいよ本格的な登りに取付くことになる。しかし取付いてしばらくは支沢に沿っていて、まだ勾配はたいしたことはない。その支沢を徒渉したところから尾根へ向かって急登を攀じるようになる。
したたる早緑の中をぐんぐん高度を上げてゆく。赤肌のヒメシャラが目につく。頭上ではシジュウカラなど野鳥の囀りが縦横に飛び交う。いかにも春の山という感じだ。

樹林をすかして右手に見えるのが池木屋山の山頂らしいが確かなことはわからない。急登にたっぷりと汗を滴らせて黙々と登ってゆくと、オブジェ風の幹をした桧のある地点へ登りついた。何となく稜線へ登りついたような感じのするところだが、これは稜線ではない。池木屋山へ向かって延びる尾根の一地点に過ぎない。ここでコースは右へほぼ直角に曲がっている。
山頂はもう近いかと思わせるが、これからまだまだ歩きでがある。  アケボノツツジだろうか、淡いピンクのツツジが樹林の中を飾るように方々に点々と見える。相変らず急登がつづく。今度は思いがけずアズマシャクナゲが見えてきた。今が見ごろ、これはラッキーだった。
ツツジとシャクナゲ、両手に花の気分で流れる汗も気にせず足を運ぶと、やがて林床に小笹を敷き詰めたような樹林へと変わった。雰囲気も急に明るくなる。
ブナなどの大木の下はすべて小笹一色、歩き始めからコースの変化が実に多様だ。

小笹の中の小径を緩いカーブを繰り返して行くとやがて傾斜も緩くなって山頂へと飛び出した。
山頂は樹木が育ってしまって展望はきかない。しかし展望はなくても長いコースを踏破してきた充実感に十分満足した。ここは高見山〜大台ケ原をつなぐ台高山脈のほぼ中間、その縦走路の途中地点である。古びた標識に高見山方面を示す赤倉山、もう一方は大台ケ原を示していた。
奈良へ来てから、近畿の山をいくつか登っている中で、ようやく山らしい山を見つけたと言う気がする。機会があったら錦秋の秋を味わいに来たい。

このコースは単純標高差は1000メートルほどだが、コース中のアップダウンか多くて、累積標高差は1300メートルはあるかもしれない。けっこうハードである。
下山は同じ道を戻った。好天の土曜日というのに、山頂を目指す人に出会ったのは一人だけだった。