追想の山々1442
  

陣ケ嶺(1106m) 頂日2000.03.08 単独
高野町樫原(6.55)−−−荒れた林道(7.25)−−−手入れの良い林道(7.35)−−−間違えたピーク(8.10)−−−天狗木峠(8.25)−−−陣ケ嶺(8.40-8.50)−−−手入れの良い林道終り(9.18)−−−山道へ入る(9.25)−−−樫原(9.40)
行程 2時間45分 奈良県 陣ケ峰  一等三角点
陣ケ嶺一等三角点
≪奈良県の一等三角点≫

どこにあるかも知らない山だったが、一等三角点の山として登ってみたいと思っていた。しかしコースに関係するガイドブックなどは一切見つからなかった。
地図で探すと高野町から野迫川村へ通じる自動車道の峠付近から、ほんの少し外れたところに三角点記号があった。
三角点を踏むだけなら峠から10分も歩いたら山頂へ着いてしまいそうだ。それではつまらない。高野町樫原という集落から山頂直下の車道まで、登山道を示す点線が記されているので、これをたどってみることにした。

橋本市内から371号線を高野町方面へ向って走る。丹生川に沿って曲がりくねりながら、谷あいの狭い道が延々と続いている。
地図とにらめっこをしながら、登山口となる樫原集落への入口を見落とさないように走る。目処にしてきた丹生川を渡る地点に清川橋というのがかかっていた。南海バスのバス停がある。茶店のような家屋が1軒だけあるが無人だろうか。「樫原1キロ」という古びた表示がある。茶店の左手にあるその細い車道に入った。対向車があったらとてもすれ違うことはできない。車幅いっぱいの急な細道を上がって行く。大きく右へカーブしたところで、向かい側の山の斜面に、数戸の民家らしいものが見える。樫原集落だろうか。その集落へは自動車がぎりぎり通れるかどうかという急な道がある。舗装はされているが、雑草が道の中まではびこっている。思い切って細道を上がることにしたが、Uターンスペースがなかったらと不安になる。100メートルほど先に小さな広場があり、ここでUターンが可能だった。
「勝手大明神」と言う額のかかった神社があり、花が供えられている。その周囲に数戸の民家が点在していた。しかし人の気配はない。家々は古び、そして一部は荒れている。建物周辺の畑地も雑草に占拠されている。廃屋の集落であった。
ここは山の斜面が谷川へ落ち込む急傾斜地で、とても人家の建てられるように場所とはちがう。よくも建てたものと感心する。白壁の土蔵などもあって、それなりの暮らしをしていたことが想像出来る。うら寂れた集落のただずまいが、絵画のような風景に思えた。

さて登山の方だが、こんな状態で登山道はあるのだろうか。勿論道標などない。感を働かせて1軒の廃屋の軒下から裏手へ回って行くと、山の中へ入り込んでいる道を見つけた。比較的明瞭な道だった。これが予定してきた道かどうかわからないが、取りあえずこれをたどるってみる。
山仕事用の道がときどき分岐したりするが、それほど迷うようなところもなく順調に進んで行く。登山者が歩くことはまずないだろう。沢を渡る丸太橋も朽ち果てていた。

比較的なだらかな登りを30分ほど歩くと、突然車が通れるほどの古い林道へ出た。荒れるに任せて自動車が通ることは不可能。この道をさらに10分ほどで手入れされた林道に変わり、その先で一般道に合流した。ここを山頂直下の峠(天狗木峠)と勘違いしてしまった。それとは知らずに目の前の高みが陣ケ嶺と思い込み、雪の残る山道へ入って行った。鞍部に着いたところで左に見えるピークへ登ってみたが、どこにも三角点は見当たらない。
鞍部に戻り、今度は反対側のピークへ登る。こっちは道がないので薮の中を登って行く。ここにも三角点が見当たらない。わからないままに車道まで引き返して、地図をもう一度確認すると、どうも天狗木峠とはちがうようだ。

車道をもう少し進んで様子を見ることにする。
すると道幅のある立派な車道にぶっつかり、天狗木峠の標識が立っている。この正面にあるのが目的の陣ケ嶺だった。
山頂へは道があるのかないのか。車道を南側へ歩いて見たがそれらしい登山道はない。適当なところで薮の斜面へ入った。このまま高い方へ登って行けば山頂へ着くだろう。
それほど時間がかからず尾根に出る。背丈ほどの笹薮をかきわけながら高みへ向かって登って行くと、伐採されたばかりのピークに出た。三角点を探すとてっぺんが赤く塗られた一等三角点標石が見つかった。そして陣ケ嶺という山名を記した、登頂記念プレートが木の枝にかけられていた。何とか目的を達することが出来た。小さな祠がまつられ、小雪模様の彼方に伯母ケ岳や護摩壇山が望めた。

山頂は真冬のような北風が吹き抜け、雪もちらついてたちまち体が冷え行く。早々に山頂をあとにする。どのあたりに降りるのかわからないが、祠の前の良い道を下って行った。下りた所は天狗木峠だった。さっきは天狗木峠から車道を南へ歩いてしまったが、これを北へ10メールも行けば登り口があったというわけだ。

帰りは樫原の集落跡を目指して来た道をどんどん下って行った。