追想の山々1446

  

行者還岳(1546m) 頂日1998.07.108 単独
行者還トンネル(6.05)−−−奥駈道(6.45)−−−行者還の宿(7.25)−−−行者還岳(7.45-7.55)−−−最初の送電鉄塔(8.20)−−−2番目の鉄塔(8.40)−−−6番目の鉄塔(8.55)−−−大川口吊り橋(9.10)−−−行者還トンネル(10.10)
行程 4時間05分 奈良県 行者還岳  三等三角点
林道から見た行者還岳
新車のハイラックスではじめての山行に出かけた。2週間ほど前にテラノとのお別れ山行に行った八経ケ岳登山のときと同様、登山口は天川村行者還トンネル西口からである。

登山口からすぐのところに『一の垰(タワ)』への標識が立っている。標高差で300メートル前後だろうか、早々に四肢を総動員するような急登が待ち受ける。しかしコースは落葉樹林の気持ちいい道で、整備も良く歩きいい。梢を渡る風の音が涼を呼ぶ。
胸を突く急登も30分ほどで、後ははっきりしてきた尾根を緩く登って行くと、主稜線縦走コースの奥駈道へ登りついた。稜線を右へ行くのが弥山・八経ケ岳方面、左が行者還岳方面。
ブナ、ネズコ、シデ、ヒメシャラなどの大木が植生していて、自然林の良さを残した豊かな林が広がる。

稜線はなだらかに上り下りを繰り返す。いかにも敏捷な体つきの鹿が、潅木を飛び越えるようにして薮の奥へ消えて行のが見える。樹間から藍色のシルエットで連なる山脈は、多分台高山地の山々であろう。
豊かな樹林が途切れて出現した明るい空間に、草丈50センチほどの植生群生地がある。帰ってから調べると『ヤマシャクヤク』らしい。花期でないのが惜しまれた。
ふたたび樹林帯に入り、霧に見え隠れする行者還岳を正面に、ゆっくりと下ってゆくと登山道脇に小さな石仏が安置されていた。ここを「天川辻」という。そのすぐ先で関西電力送電線の巡視路が分かれているのがわかった。気が向いたら帰りはこの巡視路を下ってみるつもりだ。

巡視路分岐の先のちょっとした平坦地に、青いトタン作りの小屋があった。「行者還の宿」で、山上ケ岳から釈迦岳への奥駆道を縦走する人たちの宿である。しかし物音一つなく人の気配もない。
行者還岳山頂へは、小屋右手の縦走路をトラバースするように進んでゆく。平坦なトラバースが終わったガラ場から、木梯子を5つばかり伝って岩場を登るとふたたび明るい樹林となる。山頂はもうすぐだ。
大普賢岳へのコースを外れて、小笹の樹林帯を数分登ってゆくと行者還岳の頂上だった。喬木やシャクナゲに囲まれていて、どことなく薄暗いジメッとした山頂だ。三角点からは眺望は得られない。八経ケ岳と同じような錫杖が立っていた。
少し先へ行ってみると、そこは絶壁の縁で視界が開けていた。しかし曇り空で遠望はなく、視界に入る山々も私には山名がわからなかった。

同じ道を行者還の宿まで引き返す。
これから来た道を戻るか、それても関電巡視路を取るか考える。関電巡視路を下ると、大川口の林道まで降りたところから、トンネルまで林道を数キロ歩くことになる。林道歩きにちょっと抵抗があったが、違う道の方が楽しいと思い巡視路を選んだ。
登山道としても利用する人が多いのか、歩きやすく整備されていた。最初はなだらかに下っていたが、六つめの送電塔がそれまでの茶色から青色に変わると、そこから急な下りとなって、一気に大川口へ向けて下って行った。
やがて川音が耳に届き、眼下に川の流れが見えるようになる。渓谷にかかる吊り橋を渡ったところが大川口の林道だった。  後は爪先上がりの林道を数キロ、高低差で300メートルほどを1時間かけて、トンネル西口の駐車場まで上って行った。
帰路、天川村『天の川温泉』で湯船にゆっくりと浸かってから帰宅の途に着いた。