追想の山々1449
  

台高山地 国見山(1419m) 頂日2000.06.19 単独
大又林道終点手前(4.35)−−−林道終点(4.45)−−−あしび山荘(5.10)−−−明神平(6.00)−−−水無山(6.15)−−−国見山(6.35-6.45)−−−明神平(7.15)−−−あしび山荘(7.55)−−−駐車場所(8.10)
行程 3時間45分 奈良・三重県 国見山  二等三角点
国見山々頂
登山口は大又林道の終点にあるが、林道終点付近は工事中のため、徒歩10分手前で通行止めとなっていた。さらに土砂崩壊、危険のため登山禁止の表示もある。どの程度の危険かは不明。行くだけ行ってみることにして出発した。

雨上がりの登山道は小川のように水が流れている。山全体が湿り気を含んで重たく沈んでいる。
問題個所のあしび山荘付近に大きな土砂崩れが発生、杉の大木もろとも押し出した土砂の直撃で山荘は見る影もない。この場所に再建は無理だろう。生々しい崩落現場を越えるのが難儀だった。岩まじりの土砂、太い倒木をくぐったり、はいずり上がったりして、たちまちズボンは泥だらけ。4月末のときは何ともなかったのに、梅雨に入ってからの出来事だろうか。  

この先からは何の問題もなかった。
1時間25分の登りで、明神平に到着、テントが一張り、昨日の雨の中を大変だったことだろう。
明神平から国見山へは初めて歩くコース。台高(大台ケ原から高見山)縦走路の一部である。朽ちた牧柵沿いに登って行く。草露でズボンの裾はびっしょり。ひと登りで主稜線に立つ。岩のゴツゴツした道を少し行くと水無山の表示がある。ピークという感じはなく、知らずにら通り過ぎてしまいそうだ。地図には水無山の記載はないが、目指す国見山よりは標高がいくぶん高い。

国見山へは、一度鞍部に下ってから登りかえすことになる。この間は予想もしなかったような美しいブナ林がつづく。乳白色の霧がブナの樹間を音もなく漂い、実に幻想的な雰囲気を醸し出していた。この光景を目にできて、今日は晴れていないことを少しも不満に思わなかった。
鞍部から国見山への登り返しは、たいしたことはなくすぐに山頂だった。石のごろごろした山頂は、樹木に囲まれていて、天気が良くても展望はあまり望めないだろう。二等三角点標石が、本来土中にあるべき部分も露出して、今にも倒れてしまいそうだ。

国見山を後にしたとたん、雲の一角が切れて陽が射し始めた。樹間を煙の漂うがごとくに、静かに霧が移動して行く。ベールの剥がれたあとには、濡れたブナの林が鮮やかな緑を映し出し、急に生き生きとした景色に変わった。まったくすばらしい舞台転換だ。しっとりとした何とも言えない爽やかさを味わいながら、下山はワンピッチで林道まで下ってしまった。まだ朝の8時だった。
近畿地方としては貴重なブナ自然林を楽しめるコースに満足した登山だった。