「エヴリデイ」」
雨が続いて外が嘆いて僕らはただ張り裂けてく
弱気になったら負けなのだと、初めて試験を受けた時から判っていたのに?
何故今さら弱気になった??
感じてもいなかったプレッシャーを感じてしまった??
「どうして??」
ヒカルとの悪夢のような対局が終ったあと、本当はすぐにでもこの場を離れたかった。
だが、体が、足が先へ進もうとはしない。
きっと、ただでさえ来ないバスをもう何本見送っただろう?
そんな伊角に視線を送っている影。
「伊角くん、ちょっといいかな?もう帰るだけでしょ??」
研修センターのロビーに腰掛けている伊角に近づく影。
伊角に席を立つように促す。
「…奈瀬…」
奈瀬はなかなか席を立とうとしない伊角の腕をつかむ。
「聞いてんの?伊角くん??」
奈瀬はちょっと乱暴だったかな?と思うくらいに伊角の腕を引っ張りあげて強引に立たせた。
二人は自動販売機の奥の、廊下からはちょっと見えにくい場所へ移動した。
「何?」
奈瀬にそう尋ねてはいるものの、心ここに有らずといった感じの伊角。
「何?は こっちのセリフ。お昼の時からおかしかったよ?伊角くん」
「・・・・・・」
「夏バテでもしちゃった??伊角くんあんま食べなさそーだしねぇ」
…勤めて明るく…
「今日、昨日よりも2度も気温高いって言ってたんだよ〜溶けるっての」
奈瀬は今日の対局で、伊角がヒカルに負けた事を自分の対局後に和谷から聞いた。
ここまで話して伊角の目に視線を送る。奈瀬は短い溜息をつく。
「午後の対局が始まる前…越智と何話してたの?何言われたの?」
やっと伊角の目が奈瀬を捉える。
「進藤が…強くなったって話…」
「そんなのとうに聞いてるわよ。飯島くんも言ってたし」
「塔矢が…見ていたのは、…進藤の…未来…」
「え?」
「塔矢は知っていた…?成長して行くその先が…」
「伊角くん!!!!!!!!!!」
においがした。甘いにおい。なびいた髪からあまくて切ない匂いがした。
思いきり背中を壁に押しつけられた。女の子の力にしては強い力で。
そして奈瀬は伊角の胸に顔を押し付ける。
突然の事に驚いた伊角は奈瀬を抱えたまま、その場でずるずると腰を落としてしまった。
「伊角くん…ダメだよ…このままじゃ…このままじゃ伊角くん崩れてくだけだよ??」
「・・・・・・・・・・・・!」
「終ったこと引きずっちゃ絶対ダメ!!!引きこまれるよ!?」
「奈瀬…」
「さいごまで…がんばろうよ…私だって後がないんだよ??」
「…奈瀬にはまだ2年ある…俺には…もうない…」
「あたしにとっては伊角くんのいない棋院なんて意味がないの…!!!!!」
言った瞬間奈瀬の目からは涙がこぼれ、そして伊角はその瞬間に奈瀬の自分への想いを初めて知った。
「奈瀬…??」
奈瀬は伊角の胸に顔をうずめたまま肩を震わす。
「今までは伊角くんのすぐそばで伊角くんを目指してこれた!でも…もう…できないんだよ…?
伊角くんの見えない所じゃ頑張れないよ…私…!!」
泣きじゃくる奈瀬を胸に抱き、こつ…と壁に頭をつけた。
冷たいリノウムの床とコンクリの壁がまるで頭を冷やしてくれるようだ。
その冷たさが伊角の混乱した頭をも覚ましてくれるようだった。
「なんだ…奈瀬は俺を励ましに来てくれたんじゃないのか??」
奈瀬の顔を覗きこむ。
「…ごめ…ん」
カバンからハンカチを取り出して奈瀬の手に持たせる。
「奈瀬は…ずっと見ててくれてたんだ」
「・・・・・・・・・」
「俺が調子いい時もダメな時も…ずるいな」
「・・・・・え?」
「俺にも見せてよ・・?奈瀬を」
右手で奈瀬の頭を撫でる。
「なななななななななな何言ってるの??いいいい伊角くん…」
奈瀬は顔を真っ赤にして再びうつむく。
「あ」
「どうした?」
「伊角くん…いつもの伊角くんだ…いまの…」
「奈瀬がいろいろ驚かせてくれたからな、怒鳴られたり、泣かれたり、告ってくれたり」
「!!!!!!」
「いそがしいんだなぁ、女の子は」
「…ごめんね…こんな時に…メーワクだよね…ほんと…ごめん。忘れて!」
弱々しく笑って伊角の胸から離れ、立ち上がろうとする奈瀬。
急にひどくいとおしく思えた。
一瞬何が起こったのか奈瀬は理解できなかった。
伊角すら理解していなかった。
ただ感じたのはお互いの鼓動と唇の感触。
「…もっとすきになっちゃうよ…??」
「なって、好きに」
「伊角く…」
言い終わらないうちに再び伊角の唇が落ちてきた。
「あー俺、今度の手合い…別の意味で対局にならないかも」
「…ダメじゃん…それじゃ…」
「あ」
「なに?」
「宇治金時たべたい」
「寄ってくか?」
「行こ行こvvvv」
確かに今日の自分の対局は一つの自信が揺らいだ日。
でも、一つの想いが確信に変わった日
エヴリデイ嵐の坂道を エヴリデイ僕らは転げながら
エヴリデイ笑い泣く泥んこで
エヴリデイあなたに無限の歳月を
song by:The Yellow Monkey
あっはっは〜コレ書いてるの83局の発売前だってのに既に伊角さん負けさせてます(笑)
いや、アレで勝っちゃうって事はないよね??でも、ゴメン伊角さん(笑)
そう。コレは例の「対ヒカル戦」直後のオハナシでございます〜どーしても奈瀬を絡ませたいワタシvv(笑)
いや、和谷でもいいんだけど、ソレだとありがちになりそうで(笑)(←そっちの方がメジャーだから・笑)
え〜っと、解説〜全勝を続けてきた伊角さんが負けちゃって、奈瀬には信じられなくて、でも負けた事は
事実なので慰めみたいな事をしようと思ったら、自分の方が感極まっちゃって、感情爆発しちゃったってトコです。(何だそれ)
奈瀬ってあかりにくらべるとサバサバしてるっていうか・・・結構感情とか表情とかくるくるしてそうな感じ♪
伊角さん…奈瀬に告られて嬉しかったかな??もちょっとその辺突っ込んで書けば良かったかなぁ?
いやいや、慎一郎に言葉は必要なかとですよ!!!(あんた誰?)
っつーか伊角さんじゃないよコレ!!!!!!!!(焦)
(10/1一部修正)