人間を幸福にしない

日本と言うシステム

(2000.11.16)

前回、篠田節子さんの「女たちのジハード」を読んで、いやー女性達も大変なんやなーと改めて実感したけど、あれ、誰が悪いんやろ???何でそうなんやろ???としみじみ考えてみた。漠とした答は自分で考えついたけど、この本ほど、明確に答を述べきった書物はないだろう。前回に引き続き、読書感想文で、カヌーとぜんぜん関係ないけど、ご容赦を。

カレル・ヴァン・ウォルフレン著、

鈴木主税訳の「人間を幸福にしない日本というシステム」

ちょっと読むのに力が必要だが、是非読んでいただきたいので、出版社も紹介。新潮のOH!文庫で最近再版されたばかりで、今なら書店で平積されているハズだ。¥771也。

内容は重厚で、ボリュームがあり読み応え充分だが、ここでは、日本の企業システムが引き起こした不幸な家庭生活&恋愛事情をピックアップしよう。

戦後以来、「奇跡の経済」とたたえられ、工業生産マシーンとしてがむしゃらに走りすぎた結果、「富める国の貧しい国民」と哀れみをこめて呼ばれるようになった日本の中産階級サラリーマン。

日本の企業の形態が諸悪の根元にある。その発生の歴史からシステムまで著者は冷静に分析し書き下していく。なんだ、よく聞かされる話のひとつか!と、辟易するには、考察があまりにも鋭すぎる。

「サラリーマンは会社で、知的なエネルギーも気力もほとんど使い果たしてしまうため、有意義な家庭生活を営む元気を失っている。そのために最悪の影響をこうむるのが、サラリーマンの家庭生活である。サラリーマンの妻たちは夫の愛情不足の代償を探し、大抵は息子に過剰な愛を注ぐ。

母親にも会社にも抑圧され、さらには職場の同僚から幼稚な行動をそそのかされるために若いサラリーマンはしばしば女生と不器用につきあうことしかできなくなり、実りのない冷え冷えとした関係しか結べなくなる。」

目を背けたくなるようなロリコン漫画の氾濫や実際に起こる幼児虐待、残虐な事件が、中流階級の男性サラリーマンが、人間として未成熟であることの現れであると指摘する。

一方、著者の日本人女性への評価は高い。

「兄弟や恋人や夫たちより洗練されていて、勇気があることが多い。読書を通じた自己啓発にも熱心だ。日本の男性よりも決断力があり、人間の評価も的確だといえる 。ファッションのセンスもいい。政治的にも、巨大な勢力になる可能性を秘めている。」

箸にも棒にもかからないマザコン男性サラリーマンと世界でも通用する日本人女性。 このギャップは不幸を通り越して滑稽ですらある。

彼女たちの出した答が、海外男性との結婚や、または、結婚しないという決心だ。世界一の晩婚がこの歪みを精確に描写している。(理由は女性たちにもあるだろう?うん。そりゃまあ、ね。でも今回はあえて割愛!著者の回りにいた女性はグレードが高かったようだから…)

家庭・恋愛の問題だけでなく、政治・経済・環境問題さまざまな問題に発展し、そして主題の官僚独裁主義に話は通じていくのだが、それはもう本を読んでください。

しかし、よくもまあ、ここまで、日本のシステムを理解し、その理由を掘り下げてくれたもんだ。 日本という国に住む以上、読まねばなるまい。

「成長過程にある人間には、一定の自由が必要なのだ。その自由があてこそ、人間が獲得できる最も素晴らしいものが、成熟した人間の愛情にもとづく関係だとわかる。」

That's it!! カレルに拍手!

著者のカレルはオランダ生まれのジャーナリスト。若いときに冒険を求めて世界を放浪している。 自分の目で見て、肌で感じ、経験してやしなった眼というのは、ここまで真実を鋭く見抜く目を持てるようになるものか。

野田知佑氏しかり、本多勝一氏しかり。

この本が出版されたのは1994年。ようやく日本もかわりつつある。 ここのところ、日本の若者の海外進出がさかんになって嬉しいかぎりだ。

若いサラリーマンは、今、自由を手にしたのだろうか? 本当の愛を手にしたろうか? 日本に誇りをもとうと決心したかい?

名誉とは、他人の評価にあるべからず。自分の誇りの中にある。 誉められたり、頭をなでられたりしなくても、信じる道を歩もうや。男子諸君! 自分のあるべき道に向かって、ススまれんことを。

PS.そんな手助けにこのHP達が役立ってくれると嬉しいな。

(オイもサラリーマンだぜ、の、たいちょお)