父への手紙

2003/07/27

まず、前置き。長らく更新のなかった不定期日記だが、なんと、まあ1年以上、時を空けての再開です。いやあ、これじゃあ、「年記」だね! その間、無事で、生きているのか?という消息伺いをいただいたりして、恐縮です。なんとまあ、掲示板も半月以上、 凍り付いたままだったし、覗いてくれた人には、心配かけました。

ようやく、復活ですが、さて、何にしよう???

初めてというか、実のオヤジに手紙なるものを久々に、書いたので、それを復活の第一弾にします。 実のムスコとのふれあいとうものは、男としてして楽しみのひとつではないかと、思う。幸か不幸か、まだ、ムスコがいないので、そういう体験はできていないのだが、既に僕は、ある男のムスコであるからして、ムスコ→トウチャンとの関係はあるわけですね。しかし、非常に個人的なことなんだけど、家庭の事情があって、オイラとトウチャンとのふれあいは極端に少ないワケであります。

10年ブリくらいの再会が、なんと、自分の結婚式当日であったりとか、、、やっぱり、ちょっと特別なケースなのだと思うけど、久々にというか、きちんと書いた初めての手紙。

「父さんさん、めんたいこ、ありがとう。

つまみに、熱々ごはんに、大活躍です。

いつもいつも、貰いっぱなしなんで、中元返しを、いろいろ考えたんだけど、[鳩サブレ]や[横須賀海軍カレー]じゃあ、ピンとこないので、本を贈ることにしました。

9月に引越しするので、整理の為ちょうどよかった、、、というのは建前で、本音は、オススメの「この一冊」たちです。以前、読み終わった本は、どんどん人にあげてたのですが、結婚してから、そういうの迷惑だよと、いわれ、本のストックが増えてしまったようです。

そこで、ひとつ、息子から「父」に本を贈るというのも、面白いかなと思い、実行に移すことにしました。 まあ、重いし、迷惑かもしれないけど、それは、それ、捨てるなり、あげるなり、ご自由にお願いします。惹かれるものがあったら、お手にとり、眺めてみてください。 ボロボロのモノや、カバーが取れていたり、水に濡れた形跡のあるヤツは、僕が、旅(主にカヌー旅)に持参して生き残ったヤツラです。つまんない本は、ケツ拭きや鼻紙にしたり、焚き付けに燃やしてしまったので、みてくれは、悪いけど、中身は本物だとオモッテください。

簡単な解説から、

1. 「鷲は舞い降りた」 ジャック・ヒギンス。
英国冒険小説の勇、ヒギンス様でございます。戦争モノ、IRA抗争モノが得意なヒギンスですが、その両方がつまった名作。

2. 「高い砦」  デズモンド・バギリィ。
こちらも有名なバグリィの冒険小説の一品。既に古典ですが楽しめます。

3. 「夏の稲妻」  キース・ピータソン。
記者ジョン・ウェルズ・シリーズ第三作。ランシングですよ。ランシング。こういうの娘がいるから、コロっといっちゃっうんだろうな。男は。

4. 「利腕」  ディック・フランシス!
最高。最上。至上。競馬シリーズは、男の望むものが全てあるけど、中でも最高。これだけは、是非読んでもらいたい一押し。乗るのが他人で、走るのが畜生だから、、と父さんがいってましたが、競馬や、乗馬には興味があります。機会がなくやってませんが、、、ともあれ、英国冒険?小説といえば、僕にとっては、ディック・フランシスなのです。父と息子を題材にした「黄金」や「骨折」なども、息子から父へ贈る小説としては、面白いケド、生々しいかなとも思い、一番、勇気をもらったコイツをセレクト。

5. 「ちがった空」  ギャビン・ライアル。
ギャビン・ライアルは、シニカル・クール・ハードボイルド!ベストは「最も危険なゲーム」ですが、書庫に無かった!初期4部作中の一品。

6. 「初秋」  ロバート・B・パーカー。
探偵モノでは、有名なスペンサー・シリーズ。が、いかんせん主人公が喋べりすぎる!女にも甘すぎるし、ロクなことはない!だけど、コレだけは、唸らされたので。

7. 「ヴァチカンからの暗殺者」  H.J.クイネル
読んでいる時は、興奮させられっぱなし。読み終わってもしばらく余韻が抜けなかった大好きなクィネルの最高傑作。

8. 「犬橇」  ジョゼ・ジョバンニ。
アラスカ・犬橇レース、アンディタロット…それだけで充分。

9. 「燃える魚雷艇」  ダグラス・リーマン。
読むと必ず泣かされてしまうダグラス・リーマン。

10. 「ダック・コール」  故、稲見一良、。
渾身の品。犬、狩猟、鳥。癌と闘いながらみせる著者の人生の軌跡。

11. 「イニュイック」  星野道夫。
カムチャッカで、グリズリーに襲われ亡くなられた写真家の星野道夫氏とは、写真集ではなくこの本の文章で初めて邂逅しました。1ページ1ページが珠玉の言葉で埋め尽くされていて、毎晩少しづつ読んだのを覚えています。氏が、亡くなられた夏に、僕は初めてのユーコンをカヌーで旅してました。今でも、アラスカを彷徨する青年達の手には、氏の書籍が、、、まるでバイブルのように…。

12. 「日本の川を旅する」  野田知佑。
野田知佑氏の秀作ルポ。僕の人生を変えた一冊。コレ読んで、迷わず、カヌー買って釧路川へといっちまいました。ヨメにも会ってしまう…この本に出てくる、釧路川、長良川、四万十川へ同行し川を下った思い出の一冊、、、にもなるのかな。読みづらいこと請け合います。

13. 「川を下って都会の中へ」  野田知佑。
のんびり行こうぜシリーズ第2作。ユーコン、テズリン川へ持参。

14. 「ガリバーが行く」  野田知佑。
カナダのビッグ・サーモン川下りでの道連れ。

15. 「魚眼漫遊大雑記」  野田知佑。
氏のユーモアのセンスが光る一品。

16. 「ユーコン漂流」  野田知佑。
ユーコンですよ、ユーコン。この言葉を聞くだけで、僕は恍惚の表情を浮かべてしまう。この本のような旅が本当に、やれます。実力があれば。だから、夏が来れば、僕は北の川を志向してしまう。今回のセレクトには、一作家、一作を限定にセレクトしたのだけど、野田氏の本は、2冊づつあったので、、、隙間埋め、、、というようり別格というのがホント。影響されすぎないようにしないと、いけない。

17. 「鳥葬の山」  夢枕獏。  
夢枕獏の小説は好きな方なんだけれど、おどろおどろしたものより、この本にある「羊の宇宙」のような世界がなんといっても一番。

18. 「少年の夏」  椎名誠。  
少年の黄金の時間。あー、息子が欲しいなあ。

19. 「岳物語」  椎名誠。  
椎名誠は読みやすい。疲れた頭とココロに良いです。コレは特にいい。小学校の国語の教科書にも載ったそうな。

20. 「続岳物語」  椎名誠。  
やっぱり続きは読みたくなるなあ。とオモッテ追加。

21. 「冒険」  植村直巳。  
やはり影響を受けてるなあ。

22. 「植村直巳の冒険」本多勝一。
日本のタカラ、本多勝一、あの体のどこに、あの精神力、パワーがあるのだろうか。川を守ることについては助けてもらってばかり。一度、河原で飲みました。

23. 「栄光の岸壁(上)」  新田次郎。
なぜ、(上)だけしか本棚に無いんだろう? 今も毎週登攀しているオイラは、新田山岳小説に影響うけまくりなのです。そいうえば、父さんの落とした落石で、頭から血を流したこともありましたね。岩登りの原体験、そうアレです。これまでに、1、2度、危ない体験をしました。その度に、生きていることが大切なことに思えるようになりました。今は、トレーニングして鍛練し、ホンチャンのレベルを下げているので、そうそう危なくはなくなってきたと思います。  でも、山、川、海、そして街でも何が起るがわからないな。

24. 「クロノス・ジョウンターの伝説」  梶尾真治。
時間を題材にさせたらこの作家の右にでるのは、日本じゃいないのでは…「黄泉がえり」で、ブレイクした熊本県在住の地方作家はデビュー当時からお気に入りのSF作家です。中身は、ちょっとロマンチックすぎるかな。

25. 「珠玉」  故、開高健。
説明不要。

26. 「我利馬の船出」  灰谷健次郎。
灰谷作品は、「兎の眼」「太陽の子」が別格なのですが書棚になかった。機会があったら、一読をお奨めます。海に逝った親友「石射俊明」からの薦めで読みはじめました。上述2作は涙を止められなかったな。

以上、各社、夏の100冊とかやってるのには、遠く及びませんが、まあ、息子はこういうの読んで大きくなったんだなと、思って下さい。 ある意味では、この本たちに育てられ、鍛えられ、励まされたメンがあります。

今回、選別してみて、一貫してある法則性があるのが、わかりました。 シンプルだけど、実行するのは本当に困難なことを、行う主人公、あるいは作者たち。

言い訳はしない、愚痴は言わない、困難にも立ち向かう。誉められなくても、さげすまれても、うらまれても、やりたいことを実行する。

そう、自分のルールを持ち、従うものは、ただそれだけ。 世の中は決して思い通りにはならず、汚く醜いもので、溢れているけど、そればかりに眼をやっていたら、つまらないなと。

今、思い返すと、父さんとの思い出は、数える位しかない!(すごいコトだ!(笑))けど、だから、どれも鮮やかに覚えているなあ。
見事な三振。
落石の負傷。
仕事を抜けて漫画映画につれていってくれたこと。
釣れなかった足摺での磯釣り (坊主でしたね。堤防でチビグレは釣れたけど)。 姉さんの友人を同行させた高知旅行。歯がなっかたな。たしか…。

いっしょにいた時間は少ないけれど、影響はすごく受けていたようです。野球はオレ、やめとこう。上手くならねえなあとか…、「職業に貴賎はない」「望むことと別なことが起る。人生は皮肉なものだ」等の言葉。年取りはじめて、愚痴が増えた母さんとは、また違った影響で、バランスがとれてありがたかったように思います。

しかし、僕の少年時代を振り返ってみると、父さんや、母さんからの干渉をまったくうけず、自由気ままに、やれたのが、すごくよかったと思う。本当の黄金時代でした。干渉されずとも、二人の背中は見ていたし、遺伝子は引き継いでいたのだろうしね。 姉さんや、弟は、いろいろ思うところがあったようだけど、本当に、オレ、そんなのから自由だったよ。よっぽど自分中心に生きていたんだろうね。周りの機微なんかおかまいなしだったし。父さんのことは、ボーズに変身したり、デカイ車に乗って帰ってきたりと、ただ、単純にソレを楽しんでいたように思う。

カナダやアラスカを旅していると、奥さんと別れた男たちによく遭うんです。この前のカナダでも、一宿一飯の世話になりもしたりしました。あまり深い話しや、こみいったことは、なにも聞かないけれど、困ってしまうのは、そういうオヤジたちが、かなり魅力的な事なんです。

僕の会社は、マイホーム・パパが多くて、困ったことに、そちらは、逆にとってもつまらないんだよ。どうしてだろうね。羊のような眼をしてるからかな。

まあ、僕も長い間、結婚してきたから、大変だあというのは、実感としてあるけど、うまくやるために必要なことは、どちらかが、我慢しなければ、ならないということ。 でも、それじゃあ、つまんないから、 どちらも好きなこと半分やって、どちらも半分づつ我慢しようと。 自分にとって価値がないように思えても、相手の大切にしているものは、無条件で大切にしようとしてます。バランスが大切。なにごとも。

男は変り続けなきゃ、ダメだめですね。新しいことの挑戦しつづけないと。 女性は、個人差はあるけど、若いころは、チャレンジしまくっても、歳取ると安定を好むようになるから、このバランスが難しい。安寧な方に落ち着こうとするからな。まあ、どちらも利己的になってはいくのだろうけど。

今は、ケンカしつつも、一人旅や、クライミング、山岳ボードなどに出かけられるように時間をもらってます。その方が長続きするし、大きなことには、ならないし、いいね。ファミリー行事とはきっちりわけてるよ。女子供を連れて行くとレベルの高いことはやれないし、自分の判断が鈍って、危険極まりない。

まー、つらつらかいたけど、父さんも何かにチャレンジするようだから、御自身の信ずる道を行ってください。

短い邂逅かもしれないけど、ドンタクや、山笠とかの時期に、そちらに家族で行けた時は、メシでもいっしょに食べましょう。博多には、旅先で知り合った友人知人もいるので、いつか訪ねようと考えています。

PS。ひとつやりたいことが、あって、父さん、できれば、本町のお爺ちゃんも連れてユーコン川を下ってみたいんだ。夏の2週間と予算、一人25万くらいかな。 いつかできれば。だから、体だけは、気をつけて元気でいてね。

2003 7/27  芦名の借家のベランダで、夕日の海を見ながら。」