養老孟司と宮崎駿

(2006.2.10)

魔法使いの険しい(楽しい?)修行が続く日々ですが、 ひよっこの魔法使いになってからの一番のお気に入りは、養老孟司さん。

ベストセラーの「バカの壁」は有名ですが、 「死の壁」「逆さメガネ」など、養老さんの書籍には うならされてばかりです。何度も読み返しては、新しい発見に 出会い、ドキドキ興奮してしまいます。魔法の言葉に満ち溢れているのです。 もう文章が、コーチングの嵐。養老さんは決して、 あれやれ、これやれとは文章の中ではおっしゃられない。 時には、「そんなこと、わかるわけないじゃないですか?」 「しりません」と突き放されます。

「自分で考えて、自分で決めて、自分で行動する」んですよー! そうしないと人間が壊れてしまいますよー。というのを手を代え 品を変え気づかせようとしてくださる。

正解なんかない。というメッセージ。 なのに、世の中のヒトは特に日本人は正解の答えや、指示や指図を待ち望む。

脳化した人間社会、都市化した人間社会の異常さを、様々な角度で診る 視点の高さと、読者に語りかける目線の低さ。

固定化した考え方を持つのはいけないことですが、合理的な考え方ですし 直感的に間違っていないと信じられるので、読まれてない方にはオススメの書籍たちです。

話はいきなり変わりますが、先週の日本テレビの 金曜ロードショーは「風の谷のナウシカ」でした。 この作品で一般のヒトに大ブレイクした宮崎駿カントク。 今では、日本アニメの巨匠、いや「世界の」という枕言葉がモレナクついてきますね。

高校時代に観たこの映画「風の谷のナウシカ」。 今、観ると、同じように感動しなかったのです。なぜなんでしょう? 作品は変わっていないのに。

繰り返しみてしまったために感動が薄れるということはありますね。 だけど、それは重みが減るだけで、感動の質はかわらないハズだ。 そう思いこんでいました。

けれど、今回改めて鑑賞してみて、 僕の中の受け取り方の質が、明らかに変わっていたのに気づいたのです。

その答えは、受け手である僕が変わってしまったからなのだと思います。

どう変わってしまったのでしょう?

この不思議を解こうと思って、書庫にあった 漫画「風の谷のナウシカ」をひっぱりでして 読み始めてみました。絶句しました。涙があふれてきて、感動してしまったのです。 こんなにも魔法の呪文にあふれているなんて!!!

当時読んだときは???。 こんな顛末でいいのか?宮崎さん!ってとほほになってしまった漫画にです。 昔読んだときには、理解できなかったことが、僕の中にやってきます。 すーっと染み入ってくる。理解するのではなく、感じてしまうのです。

何故なのだろう?作品は変わっていないのに。。。。

答えは、やはり、僕が変わってしまったから、、、なのです。

そして、漫画ナウシカを読みながら、頭に浮かんできたのは 養老孟司さんが書籍の中で述べられた言葉たちでした。

ものすごく共通点が多いのに改めて驚きました。 考え方以外にも、虫好きの養老さんと虫を愛でる姫様のナウシカと キャラクターの嗜好まで同じではありませんか。

このシンクロニシティに、一人でうなっていたら、古本屋さんで、さらに面白いモノに出会いました。

「虫眼とアニ眼」徳間書店

養老孟司さんと宮崎駿さんの対談集です。 なんとこのお二方は、1997年、1998年、2001年の3度に わたって対談されており、それが書籍として2002年に 出版されていたのですね。

いやあ、すごいなあ。この取り合わせ。 そしてその中には、珠玉の言葉たちに満ち溢れている!お宝本ですよ。これは!

「昔と今では約束の感覚が違うでしょ。
つまり自分が変わるってことが 前提になっている。
いくら自分が変わっても守るのが約束なので、
だから『走れメロス』とかになったりするわけです。
でも、今はまったく逆。約束しても事情が変わったら変えていいっていうのが 今の感覚で、それは自分が変わらないっていうのは暗黙の前提にしているからでしょう」

「子どもが子どもでいられない。そんな変な時代はそろそろやめにすべきであろう。  虫採って、アニメ見て、将来の夢を見ていれば、それでいいのである。  生きる力なんて、子どもははじめから持っている。それをわざわざ  ああでもない、こうでもないと丁寧に殺しているのが大人なのである」

養老孟司

「大人が手と口を出さなければ子どもたちはすぐ元気になる!!
 先生たちの考え方が鍵だし、親の考え方を変えるのも大切。
 その裏づけになる空間が要るのだ。
 子どもたちが夢中で遊べる所。
地域の子どもなら、誰でも入れる所。
 いつの間にか、すべての感覚を使って身体を動かしてしまう所。
 コンクリート、プラスチックをかくし、木や土、水と火、いきものと  触れる所。
子どもたちが家に帰りたがらない保育園をつくる!!」

宮崎駿

僕が物心ついてはじめてみた漫画映画が東映まんが映画の 「どうぶつ宝島」なんです。

夢を求めて、大海原に船出する。途中でいろいろなメにあって、素敵な女の子と 仲良くなって。。。冒険が繰り広がられる。なーんだ、オレの今やってる遊びのベースじゃないか。 行動原理のベース(すりこみ)がこの映画にすべて凝縮されているではナイカ!

構成というか今でいう演出は若き日の宮崎駿さん。

幼年期の自我形成の頃から、こんなに影響を受けていたことに驚きました。

そして、少年時代に大好きになった「未来少年コナン」や「初期のルパン三世」 そして「カリオストロの城」すべて宮崎駿監督なのです。 あの多感な時に、コナンやクラリスに出会ってしまったら、悪いやつになれっこないではありませんか!もう〜

そして人生の岐路を決める時にであった漫画「風の谷のナウシカ」。

映画制作にあたって、中断になったナウシカの続きがまちきれなくて、 自分で漫画を書いてしまったのを覚いだしました。

古い懐かしい自分だけの宝物。書庫からひっぱりだしてきて読んでみたら、 なんと感動して泣いてしまいました。困ってしまいます。

ストーリーや登場人物、キャラクラー、すべて当時、僕が 影響をうけていたもののパクリでした。

恥ずかしいかぎりですが、学ぶはマネぶ。 「守破離」の一番最初の段階ではいたしかたないのでしょう。だって、僕がはじめて ペン入れした処女作なのですから。。。

そんな形ではなく、 僕が感動してしまったのは、それを描いた若き日の僕が、なにを思い、何を 考え、何を伝えたかったのか。 何に熱くなっていたのかということにです。

僕は変わってしまった。だけど、悪く変わっていない。 あの青二才の自分がいたから、今の僕があることが確実に分かるのです。

僕は何をいいたいんだろう。

生まれてきてよかった。人生は悲しいことや嬉しいことで 満ち溢れている。だからこそ、いい。

みんな、みんな、本当にありがとう。 なんか最近、ありがとうを連発してるなあ。でも、オイラのありがとうは軽くはないじょ。