小笠原シーカヤック「アホアホ日記」

小笠原シーカヤック

「小笠原アホアホ日記」

漕いだところは 扇浦から野羊山をまわり洲崎コぺぺ海岸ブタ海岸
ジョンビーチ南島です。

ジョンビーチと南島のあいだは三角波がたっている魔の海域です。
いつも波立つとあとから聞きました。

あとは二見湾の境浦の沈船のところ・・。

焼場海岸には夜 大きなカメが上がって来たそうです。
(わたしは露天風呂に入っていてみていない)


いまシャワーを浴びて一息ついたところです。
グラスに氷を浮かべてカクテルバーを飲んでいます。
つまみはチーズとこんぶ〜・・・。

少し酔ったのかな・・・。

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思い出すのですよ 
航海、あのゆったりとした時。
エンジンの振動、船体にぶつかる波しぶき、
デッキを流れる潮風。

水平線に沈む太陽、その瞬間からはじまるんだ 
紅く染まった雲のふちが黄金色に光り、
空にいくつもの光線が延びていく
1秒も見逃せないほどのスピードで空も海も
姿を飾っていく。

はるか遠くの入道雲からカーテンのようにゆらめく影、
雨が降っているのだろう。
振り返れば艦橋にたなびく旗、折れそうな月。

食堂も終わり、Dデッキ後方にある静かに音楽が流れる
スナックで氷にのせられたレーズンチーズ。
ウイスキーの水割りなんか飲んじゃってさぁ…

潮で曇ったまるい窓には黒い海が静かに静かに揺れているの。

母島へ仕事で行くと言う真っ黒に日に焼けた47位の男性がとなりに座ったんだ。
ビールを飲みながら島のこと、家族のこと、内地のことを話し出した。

黒い海をみつめながらゆっくりと話し出した。
僕は話を聞いていた 黙って聞いていた。

酔うと無口になっちゃうのだけれど、この時間が
そうさせているのかもしれないですね。

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荷物(水と食料・カメラ他)をのせて安定した
第2くみたて丸(ベルーガ)は、オイラの安心と不安を
乗せながら南の海をどんぶらこどんぶらこと進むのでした。

風は東の出し風ですが バウが風上に捕られることもなく
不整脈の様に しばしば止まるパドリングを戒めることもなく
戦時中のトーチカがいくつも残る岩壁を過ぎ、
朽ち果てた沈没船にたどり着きました。

沈船の鉄柱に艇をつなぎ海に飛び込むと、
大きな船体が見えてきます。

そしてたくさんのおさかなちゃん
海底には白い鯉、「わー海なのに鯉がいるー!」   (バカまるだし)

それと 細長いうなぎ、「うなぎーうなぎー!」   (不勉強)

海面には何万匹のシラス干し(干される前だっ〜の)
棘の太いクリ(・・・・。)

しばし、海に沈む財宝をさがしていると
何やら空が騒がしい・・。

アカ錆びた柱に掴まりザバッと頭をあげると、
海上自衛隊の飛行艇が降りてくるではありませんか。

「わぁーっ!!」

そう、ここは 日本でも一番遠いところ小笠原。

島の防災無線が、東京に大雨が降っていて、
テレビの地上波が一時中断していることを告げて
いる。

「内地に帰ればまた、ガックリする様なニュースでひしめいているのだろうなぁ…。」

そんなことを考えながら夕暮れの海を泳いでいました。

岩壁には太平洋戦争の時に作られたトーチカがのぞいていた。
海カメのまだ新しい足跡が残る砂浜に上陸して しばし お散歩。。。

カメさんはずいぶん歩きまわったご様子で、
その先にはホリホリした跡があります。 

がんばったのね!カメさん!

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大潮の日、南へ流れる潮流に乗り、
スイスイ進むオイラと第2くみたて丸は、
無人の島、
南島へとバウを向けておりました。

深いオーシャンブルーの海を漕ぎ進むと、
島と岩礁帯が見えてきました。

なんとそこは オイラがスイスイ乗ってきた
潮流と外洋からくるうねりがぶつかる
魔の三角波海域だぁ〜!!

こんなぁ〜♪ところ〜でぇ〜♪
沈んだらぁ〜…ラララ〜ラ〜♪

大きくバウを持ち上げられ、そのあと一気に落とされて〜
ザッバ〜ン!
デッキが波に洗われる〜!

リーフがない海洋島は岩壁にぶつかるうねりの返し波が
ややっこしい波をつくり〜ます〜ぅぅ!ウッ!

上陸出来そうなところ〜は!

キャー!無い〜…!

運命やいかに…。
海はきれいなオーシャンブルー。。。
深い深い宇宙色〜♪

…が、どっしゃんバッシャン!魔の三角波水域だす。

こんなところで沈脱でもしようもんならセルフレスキューは〜…。

無理じゃ〜!怖いよ〜!

  ≪真剣モードのテーマ≫

汽車汽車シュッポ、シュッポ、シュッポ、シュッポ、シュッポッポ!

「進め〜進め〜ススメ〜♪ がんばって!ガンバって!走れよ〜♪」

しばらく漕いでいると岩肌にカヤックでくぐれる穴が開いていました。
穴を抜けると白い砂浜が扇型に広がっています。
映画
「紅の豚」ポルコの隠れ家のモチーフになった《扇池》です。
「カッコイイ〜!」

 飛行艇ではないけれど上陸でぇ〜す。


扇型にひろがる白い砂浜 
海につながる岩のトンネル

砂浜には ポツンと残された黄色いカヤックが1艇あるだけ。

誰もいないのね…。
無人島なんだからあたりまえか〜。
背中をふりかえると入り江が眼下にひろがる。
この入り江もむかしは池だったのだろう。
ネムリブカと言うサメがいるらしい。

丘の上に立てば遥かなる…   大海。。。
雲は ながれ ながれて     水平線の彼方へ…。
ペタンと腰をおろした。

マイマイの半化石がゴロゴロ転がっている。
そこいらには海鳥のタマゴが産み落とされていた。
「空を飛べたらいいなぁ」 
しばらく昼寝だね〜。

時は静かに過ぎていく…。
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丘の上に座り ながれる雲をみていた。

目のまえを黄色いおしりがながれてく〜…? お?

なんだなんだ!おーっ!美女のおしりだ=!

ど・どうして こんなところに超ハイレグ ビキニの女性が…。

いかん… 暑さで幻覚が見えたのかもしれない。

むむむ…平常心。平常心。。。

「どこからきたのですか?」

わーっ!耳までおかしくなってきた!

さてはキツネかタヌキの仕業だなー!(こんな所におるか)
おのれ妖怪変化!我をたぶらかすつもりかー!
それもよしとするかな えへへ (鼻の下がのびているよ)

あれ?いっちゃうの?…。 あぁ

黄色いおしりは上陸用舟艇で行ってしまいました。

わーはっはっは!
恐れをなして逃げ出したなー!
い〜もん い〜もん オイラ 男の子だーい!
ふ〜んだぁ!!  
 (どっちなんだよ)

も〜ぉ〜 帰っちゃう!!
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最大干潮になった そろそろ転流するころだ。
カヤックに荷物を詰めて よっこらしょっと!
サア!送り潮に乗っかって 浜に帰るかぁ〜!
出発! 『バンッ!』

お? ペダルが軽い?

「ギャーッ ラダーのワイヤーが切れちゃった〜!」

あらら やっちゃった〜・・・。
でもでも 大丈夫なんですよ。
ラダーが壊れた時のために外付けのスケッグを持って来ていたのです。
予備に入れておいてよかったよー。
ベルーガはいつも風にしてやられるからね。

海へ出る穴をくぐり外洋へ漕ぎ出しました。
絶壁が続く島の西側を北へ北へと進みますよ。

風はひがし・・やや強し・・
饅頭岬の沖合いを行きます。
山の中に大きなパラボラアンテナが見えますね。
(宇宙開発事業団小笠原追跡ステーション)

わぁ〜オイラも追跡された〜い などと不謹慎なことを思いながら

大きな岩壁の下に上陸しました。

岩壁には四角い覗き穴が幾つか開けられ砦になっています。
太平洋戦争時作られたトーチカは 今もそのままです。
はぁ〜ちょっとお昼寝します。

  すぃぃ ・・・・・。

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おれだって人殺しなんてしたくない・・。

 「・・・!?」

帰りたい・・。

 「・・・・。」

怖くはないんです。
かなしいですね。

数十年まえ この島はかたちが変わってしまうほどの
大爆撃を受けてしまいました。

そんなに昔ではないんです。
内地から遥か遠い この島で

お昼寝です。

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最終回だよ 全員集合ー!

港にひとが集まりだした。
島じゅうのひとが出てきたみたいだ。

島太鼓が威勢良く鳴り響くねぇ
どんどこどんどこどんどこどんどこ…!
どんどこどんどこどんどこどんどこ…!

大型フォークが忙しそうにコンテナを積み込んでいる。
まとめられたベルーガちゃんとデカバックをゴロゴロ転がして
はぁ〜やってきましたよー!
荷物はヤマト運輸にあずけてと…どっこいしょおおおお!
おおお45kg  あちゃー重たいわけだ。

おが丸のデッキにも ひとがいっぱい。

オイラもデッキの手摺りにしがみついている。
銅鑼の音が響いた 
じゃんァじゃん
わわわわ ああ 帰っちゃうよ
もうだめだややや 帰っちゃうよ
みんな手をふってるよ〜

「 …・! 」

赤い花を両手に持って手をふっているひとがいる!
あのひとだ!
見送りにきてくれたんだー!
わわ・・ おーい おーい!

汽笛が鳴るよ ああ
ドドドドドド!!振動が始まった
離岸しちゃう 
おーい おーい! 

さよーならー! さよーならー!

港を離れていくおが丸を 島の小船たちが追って来た。
しぶきをあげてどんどんふえていくよ。
1・2・・10隻も平走している。
疾走する船の上でみんな手をふっているよ
さよーならー! さよーならー!

ちいさな女の子が泣き出した。
「え〜ん!…」

どんどんスピードを上げていく  ドドドドド!!
島の小船が離されていくよ・・
そして 諦めるようにみんな海に飛び込んだ!
海の上で手をふっている。

さようなら  南の島のひとたち

2000年7月  夏

**********番外編****************

みんな手をふってるよ〜
「 …・! 」
赤い花を両手に持って手をふっているひとがいる!
 あのひとだ!

見送りにきてくれたんだー!
わわ・・ おーい おーい!
長い髪、小麦色の肌、小柄で元気で・・・明るくて・・・。

じゃぁ〜ん!じゃんじゃんじゃんじゃぁ〜ん!
ボォーッ!ボォーッ!ボォーッ!
ドドドドドド!!

わぁ〜ん もうすこし待ってればよかったぁ〜・・

ドドドドドド!!

わぁ〜ん! 清水さーん!

ボォーッ!ボォーッ!

いまでも 目に焼き付いてるよ
赤い花を小さく振っている姿 ・・。
お調子者でニカッと笑う口髭

さようなら・・・。    

見送りに来ていた人とは、
南の島の少女・・ではなくてプーランプーランシーカヤッククラブの清水さんでした。
どうして 夢を壊すようなことを言うのかー!(清水さんごめんなさい)・・というのはですね、わたしが単独でふらふら海に出ていることで島のみなさんにご心配をおかけしていないかな〜?と思ったからなんです。

カヤッカーの良識と判断で行動することはもちろんなのですが、心配となると話は別です。善意から表れる気持ちですね。
登山届みたいなものを提出しますか?
計画書を書きますか?

「規制をかけるようなことは、したくない…」と清水さんは言います。(たくさんの意味が含まれた言葉だな〜)

ちいさな島です。心配だけはかけたくないのです。
島の人に何か言われた訳でも無いのですよ。
でも どうなんでしょう  本当は心配なんでしょうね。
気持ちは伝わるんですよ。
みなさん どう思いますか?

わたしは 答えを見付けられませんでした。
答えはないのかもしれません。

おしまあい。
にいじまさんへのお便り

小笠原リンク集

小笠原観光協会

小笠原シ−カヤックツ−リング&ホェ−ルウォッチング