june30 6月30日(金) うす曇りのち快晴 18516歩

トドワラ


・・・・・・・・・・ 幻の日の出 ・・・・・・・・・・

すばらしい日の出が見られるかもしれないと聞き、日の出時間3時45分に間に合うよう、3時半に起きる。

どうしてこんな時間に起きられたか?種明かしはちょっと悲しいお話。
昨日は北海道に降り立ったとたんシティフォンは圏外に、PHSも釧路空港を出たとたんに圏外! まったく役に立たない、ただのジャンボ携帯時計と化した。せめてもの使い道は、目覚まし機能のみだ。しかし、起きたもののお天気はあいにくの曇り空でどんよりした灰色の空が低い。二人とも朝の冷気に震えながら、お布団にもぐりこんでもう一度寝る。

6時20分に起きて洗面、身繕いと荷造り。毎日宿を変えるときは、これが結構大変だ。特に旅なれないKurbisはなかなか要領をえないで、出したり入れたり。

朝食
7時過ぎに食堂へ。夕べとは違う人たちと同席になり、話しを聞きながら朝食。
普段は朝ご飯を食べないRittyanも、Kurbisもしっかり食べる。

北海道の人らしいおじさんがホタテ漁の話しをしてくれた。海を畑のように区分けし、稚魚を撒く種付け区域、育てる養殖区域、収獲する区域に決めて、年ごとに順繰りにまわしていくのだそうだ。また、北海シマエビは、野付半島によってできた、内海の浅い海域に繁茂する藻の間に住んでいる。

それを打瀬舟(うたせぶね)という小さな帆掛け舟で獲る。モーターを使わずに、漁場を風の力で移動しながら、網でエビを獲る。モーターを使うと音や振動や排気で漁場を傷めてしまうからだ。もちろんエビにも良くないに決まっている。

写真にマウスを乗せると
打瀬舟を尻目に疾走する
レインボー号が見えます.
マウスをはずすと
パンフレットにある
打瀬舟の写真になります.



・・・・・・・・・・ トドワラ遊覧船 ・・・・・・・・・・

朝の港風景
チェックアウトして、トドワラ行きの遊覧船の乗り場がある尾岱沼漁港まで、ホテルのご主人に車で送ってもらう.
ほんの5、6分で到着。
事務所でチケットを買う。
トドワラに行って尾岱沼港に帰る便は一日に3往復。

片道35分で45分後に帰りの船が出るというが、それではちょっと物足りないので、お昼の便でもどることにする。荷物を事務所に預けて、港を少し見ているうちに出発の時間。
レインボー号
8時10分発レインボー号。
81人乗りの船に乗員2人。
乗客5人。
あっという間に狭い港の出口を抜けて野付湾へ。
海の色が変わっている。濃い青の部分や緑っぽいところ、それに茶色のところもある。

浅海の色と藻の色が混ざり合ってまだらに広がっている。ところどころでは藻が海面に顔を出している。この辺の水深は浅いところで、50センチから1メートル、深くても2〜5メートルぐらいだそうだ。船はかなりのスピードで走る。

RittyanとKurbisは甲板にいて海の景色と潮風を満喫するつもり。ところがすごいスピードなので、エンジン音mがかなりうるさくて、遊覧ガイドのテープの声が聞こえない。ガイドのおじさんもマイクで説明してくれるのだが、ほとんどなにも聞き取れない。みるみるうちに港ははるかかなた。陸地にもほとんど起伏のないところなので、たちまち周りには海以外何も見えなくなる。

・・・・・・・・・・ あの世のような・・・ ・・・・・・・・・・

周囲360度、水、水、水。泳げないKurbisは胃のあたりがきゅーんと絞られるような気分。おまけにガスが出てきた。山のガスと同じように、またたくまにあたりは真っ白の世界になる。それでも船は猛スピードで走る。漁をしている打瀬舟が時々ガスの中からほわっとあらわれるが、それもガスに霞んでいたり、あまりのスピードのために良く見えないうちに飛び去ってしまう。

しばらく行くと、突然、船のエンジン音が低くなりスピードが落ちる。
でも回りはガスと海だけ。どうしたのかと思っているうちに止まってしまう。ぼんやりと霞んで見える海面に何か見える。藻が固まって茂っている区域のすきまが、水路のようになっていて、船はそこを走っていたようだ。水深が浅くて危険なので、そこここに旗が立っている。ついている三角旗の色で危険度や水深がわかる仕掛けだ。

旗とゴマアザラシ
すぐ手が届きそうな藻の塊の上に何か黒いものがいる。
カモメが止まっているのか?
少し大きなものがこちらに向かってくる。
よく見るとなんとアザラシ。
ゴマアザラシを見せるための遊覧船コースだった。

かわいい目をしたアザラシは怖がりもせずに藻をかきわけて船に近寄ってくる。船は進路を変えて、また靄っている海上を疾走。まもなくトドワラに着く。

・・・・・・・・・・ 死の世界 ・・・・・・・・・・

トドワラの桟橋
船は桟橋に横付けになり、桟橋は陸地に向かって伸びているが、その先はガスで何も見えないから、なんだか地の果てに来たような心細い雰囲気。ゆらゆらする桟橋をガイドについて歩いて行くと、陸とおぼしき砂地に上陸。
前方の白いガスの中にこわごわ入っていく。

見える範囲にあるのは、ほんの数メートルの砂地と雑草と水溜り、そのむこうはぐるりと白いガスに取り囲まれている。ガイドは道順をざっと説明し、帰る船は9時半に出るから10分前にはここに戻るようにと言い置いていってしまう。他の乗客は、といっても3人しかいないが、どんどん行ってしまい、二人だけ砂地に取り残される。

三途の川もこんな感じかと思うような場所に二人ぽつんとたたずんでいると、なにやら動くものが目に入る。ガイドが丹頂鶴がいるといったっけ。目を凝らすと本当に鶴が歩いている。狂喜した二人は双眼鏡をとりだし、夢中で周りを見るが、一羽しかいない。後はアオサギらしいのが20羽ほど見えた。

だんだんガスが晴れてきて、ずっと先のほうに立ち枯れた木々の骸骨や、まだ生きている樹がばらばらと立っている島のようなものが見える。しかしそのほかは死の世界のような雰囲気。


写真にマウスを乗せると
ガスのかなたに霞む
トドワラの遠景が見えます.
マウスをはずすと
後方に船着場のある
砂地の写真になります.


無音の世界に、動くものは鳥だけ、人はもちろん二人だけで、建物はおろか、人の手になるものは何一つ見えない。しゃべると二人だけの声がガスに吸い込まれるか、こだまするような気がする。また胃がぎゅっと絞られる思い。

海抜ほとんどゼロメートルの湿地には、雑草と水溜りと砂だけで、満ち潮になったら沈んでしまいそう。ここに取り残されたら明日まで命はなさそう!
怖い気持ちと、なるようになれという気持ちがない交ぜになったまま、とにかく歩き出す。ほんの少しずつガスが晴れてくる。それでも見えるものは茫漠とした世界。


下の文字をクリックすると
トドワラの風景が変わります.


| 橋と遠景 |
| 遠景 |
| 木道と湿地 |
| 緑化する湿地 |
| 花園化現象 |


アーチ型の小さな橋を渡ると木道がのびている。先にあるのは海水で立ち枯れた樹の墓場。白い骸骨のような樹の残骸が立っていたり、倒れているのはこの世のものとは思えない光景だ。あの世への入り口といわれても信じられそうだ。

近づいていくと、倒れた樹が栄養になるのか、そこここに緑が芽吹いている。小さな草木がひっそりと花をつけ、砂地が緑におおわれている。 びくびくはらはらが、だんだんどきどきわくわくになってくる。

写真をとったり双眼鏡で見たり、枯れ木の傍らに咲く小さな花をのぞき込んだりしながら木道を歩く。塩湿地をおおうこの枯れ木はトドマツなので、トドワラというのだそうだ。すこしはなれたところにあるナラワラはミズナラの樹というわけ。
Rittyanがウン十年前に来たときより、枯れ木が減っているという。景色の印象がかなり変わってしまったと感慨深げだ。塩湿地に生えるシバナや、紅紫色の小さな花をつけたウミミドリが生えて、ハマナスなども根付き出して、次第にさまがわりしているようだ。


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