トランスフォーマーのどーでもいい話(9)
エネルゴンキューブ考

TFで「エネルギー」と言えば真っ先に思いつくのはエネルゴンキューブでしょう。このエネルゴンキューブ、実に便利な代物で何度も劇中に登場していますが、その割に一体どんなものか不明だったりします。そこで今回は、エネルゴンキューブについて徒然と書いてみました。


エネルゴンキューブが劇中に初登場するのは#1、S.W.の台詞「奪い取ったエネルギーを凝縮、エネルゴンキューブにすれば、新しいスペースクルーザーに蓄えておける」においてです。

その後、基地に戻ったハウンドがコンボイに「奴らはこの地球のエネルギーを奪って凝縮し、セイバートロン星に持ち帰る気です」と報告しています。一見するとサイバトロンがエネルゴンキューブに馴染みがあるかのようですが、この台詞は英語版では"They're gonna put the energy in some kind of cube, then haul it back to Cybertron." となっています。この時点で彼らはエネルゴンキューブを知らないのです。知らない技術を使っている訳がありませんから、サイバトロンはこれを生産も利用もしていないことになります。エネルゴンキューブはデストロンの独自技術なのです。


そしてエネルゴンキューブが実際に登場するのは同じく#1、海底油田基地襲撃の際です。

S.W.が空のエネルゴンキューブ、つまりキューブの枠だけを創り出します。カセットロンの納まっている胸のハッチのフレーム部分から現れるようですが、原理や材質はまったく不明です。S.W.はこれらを容易に、連続して大量に生産し続けることができます。材料がなくなったとか、作るのに苦労しているといった様子はありません。また、エネルゴンキューブを作り出すことができるのはデストロンの中でもS.W.だけのようです。えー・・・何話だったかで、ジェットロンがキューブを出している様子がありましたが、あれはその場で創り出したというよりは手元にいきなり完成品が現れているところから、予めS.W.から渡されたキューブを、しまっておいた4次元ポケットから出しただけと思われます。

ところでこの枠がまた謎で、手に持ったり石油を注いでこぼれないことから、6面に透明な壁のあるガラスの容器のように見えますが、電気のプラグのようなものに突き刺すことができたり、積み重ねると他のキューブに接した面がなくなっていくつものキューブが一体化したりします。大抵の場合は石油や他の資源を何かの装置を通すことでエネルゴン(色が透過光になった時点でそうみなすことにします)に変えてからキューブに注いでいるようですが、電気や熱、他の自然エネルギーをエネルゴンに変換するアダプタのような機能を個別に備えたキューブも存在します。そして物理的な圧力を加えることでキューブが縮小し、中のエネルゴンが凝縮されるということらしいです。最初の方のエピソードでは、凝縮済みのエネルゴンキューブは土嚢のような米袋のような平たい形になっていることもありましたが、実際に貯蔵されているシーンでは立方体をしています。


キューブの中でエネルギーは液状で蓄えられています。これをTFは直接利用できます。飲み物のように口から飲んだり、兵器にパイプで接続して電源として使ったりしています。ところでエネルゴンとは何でしょうか。「エネルギーそのもの」というような定義が無難のような気がしますが、多分一番近いのは電気でしょう。TFは電気で動いているようですから・・・車にトランスフォームした時はガソリンで、ジェット機なら灯油で動いてそうですが。

エネルゴンキューブは物理的な衝撃に対しては結構強いようです。S.S.の頭に投げつけたり、落石に遭ったくらいでは爆発しません。レーザーに対しては大変弱いです。TFにはかすり傷もつかない単発のレーザー銃の一撃だけで簡単に爆発してしまいます。誘爆にも結構弱いようです。

エネルギーの貯蔵効率はどうでしょうか。上記のようにレーザーに当たって破壊する際の爆発の規模からすると、どうもそれ程高くはないようです。#3で「1回の襲撃で3000アストロリットルのエネルゴンが得られる」と見込んでいますが、しかし、数々のエピソードの中で人間の発電所などを襲撃した際に彼らが得るキューブの数はあまり多くはなく、ましてや数百個もありません。せいぜいが30個位です。単位がよくわかりませんが、単純にキューブ1個がエネルゴン100アストロリットルとしたら、それ程矛盾はないのではないでしょうか。こう考えると、1つのキューブに貯蔵されたエネルギーは相当な量だと思えますが、実のところは全然わかりません。

デストロンにとってのエネルゴンキューブは、「エネルギーを手軽に収集・輸送し、ついでに貯蔵する」という性質の物なのかも知れません。凝縮技術は二の次、三の次なのではないかという事です。そもそもサイバトロンのようにエネルギー収集の手段や道具が何もなければ、そこにいくらエネルギーがあってもそれを基地に持って帰ることもできないのですから、別にそんなに高度にエネルギーを凝縮する必要はないのです。効率アップのために、ないに越したことはないという程度のオプション的技術なのかも知れません。それよりむしろ、自然界に存在する雑多なエネルギーを、TFが利用可能な「エネルゴン」という形に変換する機能の方が遥かに重要でしょう。次いで、収集したエネルギーを減衰させずに保持するという機能が強く求められると思われます。


上で「手軽に」、と書きましたが、これはサウンドウェーブあってこその利点です。2010で、オクトーンは単独でエネルゴンキューブを作ろうとして、非常に大掛かりな装置を使っています。




■サイバトロンとエネルゴンキューブ

#1の最初でホイルジャックとバンブルがどこかから手に入れて来たエネルギーはエネルゴンキューブではなく、蛍光管のような形をした物体(conductorと呼ばれていた)でした。これにデストロンが関わっているシーンはないので、これがサイバトロンのエネルギー貯蔵手段なのかもしれません(というか、この蛍光管はその後、劇中で二度と登場しないんですけどね!(爆))。

この管(コンダクター)の中身がエネルゴンキューブのような液体なのかどうかは不明です。コンダクター4本分のエネルギーを指してホイルジャックは「これっぽっちのエネルギーでは、せいぜい持って3ヶ月がいいところ」だと言っています。このコンダクターのエネルギー貯蔵量は多いのか少ないのか? たった4本で3ヶ月もサイバトロン全体のエネルギーが賄えればすごいとも思えますが、後のバンブルやコンボイの台詞から、それまでサイバトロンはデストロンとほとんど戦闘をしていなかったと思われるので、3ヶ月で必要なエネルギーは、戦時中とは比べれば極端に少ないのではないでしょうか・・・他のエピソードでの描写から、TFは普通に活動するだけなら意外に少ないエネルギーで生きていけるようですから。また、コンダクターを製造しているシーンがないことから、一体どのくらいの資源を使って1本のコンダクターができるのかは見当もつきません。結局、このコンダクターとエネルゴンキューブとの、はっきりとした比較はできません。

サイバトロンがエネルゴンキューブを手にしているシーンは何度かありますが(例:”チルドレン・プレイ”)、それらはデストロンから奪取したか提供されたもので、彼らが自らエネルゴンキューブを作っているシーンは1度もありません。やはりエネルゴンキューブはデストロンの技術のようです。

しかし! ザ・ムービーにおいて、コンボイ司令官に「まだまだエネルゴンキューブが不足なんだ」という台詞があります。英語でも"We don't have enough energon cubes."と、はっきり「エネルゴンキューブ」と言っています。これは一体どう見れば良いのでしょう・・・1985年から2004年までの間に、サイバトロンも同じ技術を使うようになったのでしょうか・・・それともザ・ムービーは気にしないで良いんでしょうか(笑)



デストロンの闘いは端的に言えばすべてがこのエネルゴンキューブのため!です。エネルギー獲得にかけるデストロンの執念は凄まじいものがあり、それに因って彼らは様々な技術を開発して行きます。彼らの行動は傍迷惑ですが、欲がなくては進歩もまたありません。宇宙の反対側の惑星へ行ってまで、他人を巻き込んでトラブルを起こしまくる彼らの情熱が、時に彼ら自身をサイバトロンよりも遥かに魅力的に見せていることは皮肉でしょうか?


2003.3.24
2003.8.30改訂