Inter-Space
その宇宙域は元々何もない場所だったが、ユニクロンが破壊された後には大小の金属片や岩石、そして多くの塵が高密度に存在する小惑星帯が形成されていた。 その中に漂っていたガルバトロンが目を覚まし、再び力を取り戻したのは、戦いが終わってから実に数日が経った後だった。全身に受けたダメージが非常に大きく、破損個所の修復とシステムの調整に時間がかかったためだった。 準備を整えた彼は動き始めた。迷いはない。考え事はこの数日に済ませてあった。 「誰かおらぬか!」視界の向こうにあるものを見据え、彼は呼びかけた。「ナイトスクリーム!」 * そう遠くない宇宙で、行方知れずになった主人を探して彷徨っていたナイトスクリームとメガザラックは、ほとんど同時にその声を聞いて振り返った。 「今のは・・・」 ――メガザラック! 「ガルバトロン様?!」 二度目の呼びかけに確信を得た彼らは、考えるよりも早く声の聞こえた方へと飛び出した。 * 光学センサーの視界に見慣れたジェットファイターの姿を捉え、ガルバトロンはにやりと笑った。 「来たか、ナイトスクリーム。」 「ガルバトロン様!」喜色の滲んだ声が主人の名前を呼んだ。減速しながらトランスフォームしたナイトスクリームは、ガルバトロンに激突する一歩手前でぴたりと止まった。「ずっとお探ししておりました。よくぞご無事で・・・」 「無論だ、あれしきのことでくたばるわしではないわ。」ガルバトロンはふんと笑った。「・・・ナイトスクリーム、お前一人か? 他の連中はどうした。」 「無事でいるのは私とメガザラック、そしていくらかのテラーコンのみ。残りの者は皆、サイバトロンに捕まり、セイバートロン星に連行された模様です。」 「グランドコンボイめ、小癪な真似をしおって。」 ガルバトロンは苛立たしげに言った。そして、はたと気付いたように、「メガザラックはどうした? 一緒だったのではないのか。」 「はっ、ガルバトロン様の声を聞いて、全速力でこちらに参りましたので・・・途中で振り切ってしまったようです。まもなく追いつくでしょう。」 しれっと答えるナイトスクリームに、ガルバトロンは部下達の飛行能力の差を思い出した。「・・・成る程。」 程なくして、二人のレーダーに、こちらに真っ直ぐ向かってくる機影が映った。 「来たようだな。」 「ガルバトロン様――!」 「メガザラック。無事だった――ぬわッ!?」 宇宙空間を高速移動してきたそのままの勢いで、メガザラックはガルバトロンに衝突――いや、ロボットモードに変形して飛びついた。意表を突かれてバランスを崩したガルバトロンは後方にあった小惑星に背中から激突した。 衝撃に一瞬息が止まった彼は、気を取り直して部下を睨んだ。「こら、何をするか!」 「ガルバトロン様ぁっ・・・」 主人を地面に押し倒し、彼の腹に馬乗りになった格好でメガザラックは情けない声を出した。 顔面の感情表現に乏しい彼はいつもとあまり変わらない表情をしていたが、声には不安が滲んでいた。そして今にも涙が溢れそうな真紅の目が自分を見詰めているのに気付くと、ガルバトロンは不届き者を殴り飛ばそうと固めた拳を再び下ろした。 ガルバトロンは、柄にもなく少しだけ怯んだ。メガザラックの様子がいつもとあまりに異なるのに、彼は腹心の部下に首だけを向けて助けを求めた。「ナイトスクリーム、これは一体何事だ?」 ナイトスクリームは淡々と答えた。「先の戦いの最中にガルバトロン様と離れ離れになってからというもの、メガザラックはずっとそんな調子です。」 「なんだと・・・」 自分の胸にしっかと抱きつき、本当に泣き出してしまったメガザラックを、ガルバトロンは頭の痛む気分で見遣った。とりあえず上半身を起こし、メガザラックの肩を抱いて揺する。 「おい、メガザラック。メガザラック!」 呼びかけてみるが、その声はメガザラックの耳には届いていないようだった。彼は掠れた声で何かを言った。「・・・彼らが・・・ガルバトロン様はもういないなどと・・・ううっ・・・」 「メガザラック。身動きができん。」 ガルバトロンが語気を強めて言うと、メガザラックははっとして顔を上げ、体を離した。 「も、申し訳ありません・・・」俯く拍子に、新たな雫が地面に落ちた。 項垂れたまま、主人を煩わせまいと嗚咽を殺す彼を、地面に座り直したガルバトロンは再び抱き寄せた。俯く面をそっと上げさせると、頬に伝った涙を親指で拭い、微かに震える唇にキスをした。 最初は遠慮がちに触れていた口付けは、すぐに深くなった。唇を離すとすぐに続きを求めるメガザラックに、ガルバトロンはいつになく積極的な部下の姿勢を楽しみつつ、気長に付き合ってやった。 「・・・様・・・ガルバトロン様・・・」メガザラックは繰り返し主人の名を呼んだ。 「わしが死んだと・・・お前はその言葉を信じたのか? 馬鹿なやつ。」ガルバトロンは視線で笑い、メガザラックの視覚センサーを至近距離から覗き込んだ。「わしがそう簡単に死ぬ訳がなかろう。ん?」 「・・・ガルバトロン様・・・っ」 メガザラックの頬に新たな涙が伝うのを見て、ガルバトロンは苦笑した。「やれやれ。お前がそんなに泣き虫だとは知らなかったぞ、メガザラック」 「ぅ・・・申し訳、ありませ・・・」 「まあ、よい。」ガルバトロンは微笑んだ。 それからはただ彼を腕に抱いて、宥めるように肩や背を撫でた。 そうしてしばらくの時間を過ごした後で、ガルバトロンは再びメガザラックの顔を真正面から見て言った。「そろそろ落ち着いたか?」 「は、はい・・・」メガザラックは頷いた。主人の双眸に静かに燃える深紅の光に、彼は心を奪われる心地がした。 ガルバトロンはにやりと笑った。「では出発だ。セイバートロン星に向かうぞ。」彼はメガザラックの肩を叩き、立ち上がった。 メガザラックも慌てて主人に習った。「は、はっ。」 と、向きを変えたガルバトロンから正確に三歩の距離に、ナイトスクリームが立っていた。下向き加減の視線に、神妙な顔つきをしている。 「ガルバトロン様、」彼はいつもの少し抑えた声で切り出した。 「うん? どうした、ナイトスクリーム。」 ナイトスクリームは――彼にしては珍しく、おずおずと言った。「ガルバトロン様・・・私も。」 一瞬の半分程の後、彼の言わんとすることを察して、ガルバトロンはナイトスクリームの小柄な体を抱き寄せた。身をかがめ、少しの迷いもなく唇に口付ける。ナイトスクリームは抱擁に身を任せ、うっとりとして視界を遮断した。 ややあって主人から体を離したナイトスクリームは、ほっとしたように溜め息を吐いた。 二人の部下をそれぞれに眺め、ガルバトロンは微笑んだ。「さて、行くとするか。」 終わっちゃえ。 |
だから何だと言われると大変困るのですが・・・ いやね、#29であんなに取り乱してたザラックさんが、 #30で登場した時には別人のように落ち着き払ってたんで、 これはきっと何かあったんだ!いやそうに決まっている! という感じで浮かんだ妄想をダラダラと書いてみました。 いやあ、和みますね。 ホントはもっとこう、ザラックさんが安心するまで 思う存分可愛がってもらったんだろうと思う (エロとかエロとかエロとか・・・)けど略。 物理的に色々と怪しいですが、 TFの世界に不可能はないので気にしないように。 SLでは比喩でなくロボが泣くから楽しいな〜☆ イヒヒ。 オチのネタ提供はチナリさんのチャット発言 「ハッハッハ、順番順番。」 カッコよすぎですガルバトロン様! それにしても最近のデストロン勢の「ガル様ラブv」っぷりには驚きですね。 |