以下の文章は所謂「女性向け」ファンフィクションです。やおい、BLといった分野に興味のない方の閲覧はお止め下さい。

  

 
 
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惑星ゼルからの二度目の出発を目前に控え、サイバトロンのシャトル内では慌しく準備が進められていた。

オプティマス・プライムはブリッジの中程に立ち、モニターに映し出された外の様子を眺めていた。

数箇所に点在する大規模な発電施設以外に人の手が入っていないこの星の大部分は未開発の土地で、戦いが終わった今となっては静かすぎるほど静かだった。戦闘によって破壊された施設は修理を終え、惑星は元の姿を取り戻していたが、ただひとつ足りないのは、この星で生産されたエネルギーを本星へ輸送するためのレーザー施設・ボーミンの存在だった。

オプティマス・プライムは未来からやってきたというサイバトロン:ロディマス・プライムと共に、デストロンからゼル・クォーツを守るために戦ったが、デストロンの大きな戦力の前にあえなく力尽き、クォーツは結局彼らの手に渡ってしまった。

ゼル・クォーツがその後どうなったのか彼らには知る由もなかったが、そんなことよりも彼らには緊急にしなければならないことがあった。それはゼルの住人全てを惑星外に避難させるということだった。

今までの腹いせにボーミンを破壊する、というデストロンの宣言は正気の沙汰ではなかった。惑星中のエネルギーの集約地であるそれを爆発させれば、爆発は惑星中に巡らされたエネルギーのパイプラインを逆流して連鎖的に拡大し、容易に惑星の表層を破壊し尽くすことができた。そうなればエネルギーの生産どころか、二度とゼル星系の人が住むことのできない不毛の惑星になってしまう。だが戦いに敗れた彼らに、それを止める術はなかった。

オプティマス・プライム達は打ちのめされた気分のまま、しかし迅速に惑星の住人を説得して集め、宇宙空間に退避させることに成功した。約一月前のことである。

彼らは安全な場所から惑星の様子を見守っていた。予告通りにボーミンは破壊され、遠く離れた軌道上からもはっきりとわかる大きな爆発が惑星の表面に起こったが、どういう訳か、危惧された惑星の大破壊には至らなかった。

数日経って惑星上に調査に降りた彼らは、無残に破壊されたボーミンの跡地を発見した。デストロンの姿は既になく、惑星は不気味に静まり返っていた。幸いなことに惑星の状態は安定しており、この先もそれ以上の被害が発生することはないと判断した彼らは、ゼルの住人を惑星上に呼び戻し、彼らと共に復興の作業を始めた。

ゼル・クォーツが失われたために、ボーミンの再興は不可能だった。オプティマス・プライムはホイルジャックとラチェットに命じてその代わりとなる、ボーミンとは少し異なるメカニズムによるレーザー移送施設を設計させた。ゼルの人々と共にそれを作り上げ、試運転に漕ぎ着けたのは先週のことだった。

未だ解決されていない問題はあったが、一応は状況が落ち着いたために、彼らは少数の技術者を残して一旦地球に戻ることにしたのだった。


*


ブリッジのドアがスライドし、彼の副官が姿を見せた。彼は足早にオプティマス・プライムに近付いた。

「司令官、出航準備完了しました。」

オプティマス・プライムの脇に立って指示を待つが、彼はその声に気付かないかのように無反応だった。

「司令官?」

二度目の呼びかけに、オプティマス・プライムははっとして彼を見た。

「あ、ああ。ご苦労だった、マイスター。」

「どうかなさいましたか」

「いや、なんでもない。出航しよう」彼はマイスターに席に着くよう促し、自分も艦長席に座った。

「コース・セット完了。速度75%」

「目的地への到着予定は38,475A時間後です。」

オプティマス・プライムは軽く頷き、クルーに命令した。「発進」





惑星ゼルの星系を抜け、シャトルが通常の航行に移ると、オプティマス・プライムはブリッジをアイアンハイドに任せて自室に戻った。

酷い疲れを感じて、彼はベッドに腰掛けた。そのまま横にはならず、彼は物思いに沈んだ。

彼は惑星ゼルでの出来事を思い出していた。時空の歪みという奇妙な現象に呼ばれて訪れた豊かな惑星は、思いも寄らない出会いと多くの教訓を彼にもたらした。

時間と空間という、宇宙そのものに近い現象を操る分野は、彼らサイバトロンにとってあまり馴染み深いものではなかった。彼らが把握しているのはごく小規模なワームホール、亜空間ポケットと呼ばれる別次元の空間を生み出し、利用する技術に留まっている。時空制御の知識と技術に関しては、彼らはデストロンに遠く及ばなかった。

デストロンが征服を目指すのは人や惑星、エネルギーだけに留まらない。物質を越え、自然法則をも支配すべしというその途方もない情熱は、オプティマス・プライムの想像を遥かに超えてほとんど理解不能だった。とりわけメガトロンは古くから重力制御に関して驚くべき才能を持っており、何万年にも及ぶ研究の成果の一部は重力無視の飛行能力としてデストロン全体に大きな恩恵を与えていた。またオプティマス・プライムがその目で確認した訳ではないが、メガトロンは単身でもってその体内にブラックホールとホワイトホールを自在に作り出すことができると言われている。その能力によって、彼はかつて宇宙のある部分を歪めたという伝説があった。

そんな強大な力を持った者がどうして宇宙の支配などというものに拘るのか、生来征服欲に乏しいオプティマス・プライムには不思議でならなかった。それとも人知を超えて行き着くところまで行ってしまった存在の、単なる道楽なのかもしれなかった。

一体どこまでが本当の話なのか、正直言ってオプティマス・プライムには知る由もなかったが、スペースブリッジにしろタイムワープマシーンにしろ、それらがデストロンの手によって生み出されたものであることは紛れもない事実だった。

未来の世界を救うために時間を越えてやって来たという、ロディマス・プライムと名乗った男の言葉を、オプティマス・プライムは疑っていなかった。彼とロディマスの間で静かに共鳴するマトリクスが真実であることを彼に語っていた。

実のところ、これは決して部下の誰にも打ち明けることはないけれども、それが真実だろうと嘘だろうと、彼にはどちらでもよかった。例えロディマスらが、単に作り話によって自分達を利用していたのだとしても、彼らの世界を救いたいという熱意、真摯な気持ちは本物だった。彼らは手に入れた力を悪用したりはしない。そう感じ取った自分の直感をオプティマス・プライムは信用していた。

しかし、本当に彼らが未来からやって来たのだとしたら? 彼らと遭遇し、事情を聞いた時から、オプティマス・プライムはずっとその考えに取り付かれ、悩まされていた。

彼らははっきり何年先の未来からやってきたとは言わなかった。むしろ詳細な説明を避けていた節があったが、オプティマス・プライム自身も、未来を知ることには害はあっても良いことはないだろうという思いから、深く追求することは避けていた。だから具体的に何年先の未来かは見当がつかなかったし、彼らが去った今となってはそれを知る方法は皆無だった。

オプティマス・プライムは、ロディマスの言葉を信じたその時初めて、自分、そしてメガトロンの死というものをはっきりと意識したのだった。

ロディマスらと同時期にデストロンの側に現れた、メガトロンによく似た見知らぬロボットを、ロディマスは『ある戦いによって傷ついたメガトロンがパワーアップして再生した姿』だと説明した。そして狂気に取り付かれた彼はもうかつての彼ではなく、別人になってしまったのだと語った。

そして未来のオプティマス・プライム自身については、ロディマスは露骨にその話題を避けていた。その時のロディマス、そして彼と一緒にやってきた仲間の表情が一瞬で曇り、お互いに重大な秘密を守ることを誓い合うかのようにそっと視線を交わすのを見て、オプティマス・プライムは彼らの時代には自分が既に存在しない―――即ち、既に死んでいるのだということをはっきりと悟った。

勿論彼は、自分を含めたトランスフォーマーの誰もが永遠に生き続けるなどとは思っていなかった。誰もがいつかは死ぬのであり、それは肉体的な寿命を持たない彼らにとっても同じだった。それに、一口に未来と言っても、何千年、いや何万年、もしかしたら何億年も先の未来かもしれなかった。

しかし、こうして具体的に“終わり”を突き付けれられてみると、彼は悲しくて堪らない気持ちになった。不安のあまり、足元が突然消えてしまったかのような錯覚を覚える。何もかもが虚ろに見えた。

ついにどうしようもなくなった彼は、地球に到着した後、部下達に一通りの指示を与えると、一人サイバトロン基地を後にし、一番古い友人の元を訪れたのだった。


*


突然デストロン本部に現れたオプティマス・プライムを、メガトロンは少し驚いた様子で迎えた。コンソールブースでモニターに向かっていた彼は、部屋に入ってきたのが部下ではない客であることに気付くと、作業を中断して立ち上がった。

「オプティマス。お前がこうしてやってくるのは久し振りだな。」

言いながら、彼は歓迎する気持ちを表すためにオプティマス・プライムを抱き締めてマスクの上に軽く口付けた。

サイバトロンとデストロンという、お互いに敵対する集団のリーダーを勤める彼らが、こうして個人的な訪問をすることは珍しいことではなかった。ただ一応は人目―――特にサイバトロンの―――を避けるために、普段は人の少ないセイバートロン星のデストロン本部の一室で会うことが通例になっていた。

「今来るとは思わなかったぞ。」彼は少し笑った。「ゼルはもう片付いたのか?」

オプティマス・プライムは小さく頷いた。

「メガトロン・・・すまない、邪魔だったか?」

「まさか。」デストロンのリーダーはさも意外そうに応え、オプティマス・プライムの手を取った。「ただ、ここでは少し話がし難い。場所を変えよう。」





二人は、建物の中心部近くにあるメガトロンの私室へやって来た。誰にも邪魔されず、また誰かの目や耳を気にする必要のない安全な場所だった。

メガトロンに促されて、オプティマス・プライムはソファに腰掛けた。そしていつものように手渡される、小さなエネルゴンキューブを受け取って一口飲んだ。大量に口にすれば酩酊作用のあるそれは、彼の心を縛る戒めを緩める手助けをしてくれる。彼がこうして敵陣にメガトロンを訪ねるのは、何か―――サイバトロンのリーダーとしてではない、個人的に大きな問題に苛まれている時か、別の理由で切羽詰まっている時だということを、メガトロンは承知していた。

年下の友人が健全な心持ちを取り戻し、その度に一歩成長するのをほんの少し手伝ってやることは、彼にとって嬉しいことだった。

メガトロンは低いテーブルを挟んで向かい合った席に座り、俯いたオプティマス・プライムの全体、そしてその顔に浮かんだ憂いの表情を注意深く観察した。

オプティマス・プライムはまだ何も言い出さない。いつも表情の半分を隠しているマスクが消えた彼の顔は、普段よりも頼りなく、より無防備で傷つき易く見えた。

「お前とこうしていられるのも、本当はあと僅かなのかもしれない。」

長い沈黙の後で、オプティマス・プライムは突然呟いた。

「うん? どうしてそんなことを心配する?」

「彼らが・・・惑星ゼルで会った、ロディマス達・・・」

確認するような彼の言葉に、メガトロンは頷いた。

「ああ、覚えているぞ。未来から来た連中だな」

やはり、彼らが未来から来た存在だというのは本当だったのだ。メガトロンに断言されて、オプティマス・プライムは落胆を隠せなかった。

「彼らの言う未来がやってくる前に、私が・・・それにお前が消えてしまっていると・・・わかった。私にはそれが、恐ろしくて堪らない」

震える声でやっとそう口にした彼は俯き、両手で顔を覆った。

「未来の話か。」メガトロンは頷いた。

彼は片手を伸ばして悲観に暮れるオプティマス・プライムの肩にその手の平を置き、そっと慰めた。

「そのような心配はいらん、オプティマス。」妙に自信に満ちた声で、彼は優しく言った。

縋るような視線で、オプティマス・プライムはメガトロンを見上げた。その視線を彼は深紅の双眸で受け止めた。

「儂らのこの時代はずっと続くとも。お前と儂が互いに、ちゃんと足元に気をつけてさえいればな。」

「だが彼らは、未来から来たと」

「奴等が指す“未来”は、儂らの未来ではないさ。」

「・・・どういうことだ?」

「良いか、オプティマス。過去を変えることで、未来を変えることなどできないのだ。」

オプティマス・プライムは驚きに視線を瞬かせた。

「厳密に言えば、誰も過去に遡ることはできないのだ。自分自身の過去とは、文字通り既に過ぎ去ってしまったもので、どこにも存在しないものだ。我々が過去だと思って訪れるのは、歴史の進み具合が少し遅れているように見える、全く別の世界だ。」

「別の世界・・・」

「そうだ。この世界にはほんの少しずつ見かけの異なる無数の宇宙が同時に存在している。例えば・・・」

メガトロンは手元にあった空のキューブを取り上げ、それを上向きに軽く放った。二人の間で放物線を描いたそれが自分の体にぶつかる前に、オプティマス・プライムは右手でさっと受け止めた。

突然の行動に驚いて、オプティマス・プライムは説明を求めるようにメガトロンを見た。

「今お前は右手でそれを捕ったが、お前は左手でそれを捕ることもできたはずだ。」

「そうだな」

「それに、キューブはお前の手を弾いて床に落ちていたかもしれんし、お前はそれを受け止める代わりに、儂に向かって打ち返すこともできた訳だ」

自分がそうする様子を想像して、オプティマス・プライムは笑った。「そうかもしれない」

「簡単に言えばそういうことだ。気分でも偶然でも良い、誰かの些細な選択の違いが、その後の世界を変えるのだ。そうした違いが繰り返されることで、この宇宙は無限に分岐していく。そしてそのどれもが単に可能性としてあるのではなく、実際に存在しているのだ。」

「私がキューブをお前に打ち返した世界がどこかにあるというのか?」

「ある。儂らが今その世界を見ることはできないが、確かにそれは儂らの近くに存在している。」

先程よりは明るくなったものの、いまひとつ納得のいかない表情のオプティマス・プライムに、メガトロンは微笑んだ。

「少なくとも、歴史は単純な一本の線ではないということだ。」

オプティマス・プライムは考えた。無限に、そう、無限に枝分かれした気の遠くなるような数の世界が、この世の中にあるとすれば・・・その中から自分たちの世界を見つけ出すのは容易なことではないのではないだろうか? 彼は、未来へと“帰って”行ったロディマス達が心配になった。

「彼らは、無事に元の時代に戻れたのだろうか」

彼の呟きに、メガトロンはしっかりと言葉を返した。

「戻ったとも。出かける前と何ひとつ変わらない、彼らにとっては困難な世界へとな」

「出かける前と変わらない・・・? 過去である私たちの世界に干渉したことで、未来は変わっているのではないのか」

「いいや、彼らの世界は変わらない。すでに起こってしまった出来事を取り消すことができないように、そこに既に存在する世界が突然変わってしまうことはないさ。分岐点から遡ることはできないのだから。分岐点を越えてしまえば、そこはもう別の世界だ。彼らのものではない。」

「それでは、過去を変えたとしても何の意味もない」

「その通り。時空旅行によって変えることができるのは、“過去”の世界に赴き、そこで何かを経験した自分自身だけだ。過去の世界に干渉し、その未来を変えたところで、その者が戻るべき世界は結局ひとつしかない―――初めに自分が存在し、後にしてきた世界しかな。そしてそれを変えることはできないのだ。」

「ロディマス・プライムと言ったか、未来から来たあの男がこの時代に干渉したことで、儂らの未来は変わったかもしれん。だが奴の世界は何も変わらない。それどころか、過去を変えることで未来が変わるとすれば、戻ったところで奴の居場所はどこにもないことになる。本来あったはずの世界を自ら叩き壊してしまったのだからな。」

「奴らの居場所は、奴らが本来存在していた世界にしかない。もし別の未来の世界に行けば、その世界の中で元々生きていた別の*奴ら自身*と出会うことになる。そうすれば・・・ひとつの世界を巡って、二人の自分が争うことになるな。それも、生き残るためには有効な選択ではあると思うが」

メガトロンはソファの背に深く凭れ、考えを巡らせるように数瞬の間視界を閉ざした。

「奴らは、自分の経験を増やしたことで、未来に対する選択肢を増やしただけだ。あるいは減らしたのかもしれんがな」

オプティマス・プライムにはその言葉に含まれた意味を全て理解することはできなかったが、彼の言いたいことは何となくわかるような気がした。

「過去だけを変えることはできないのだ。そもそも、元の時代に戻ったところで、過去に行ってきた自分は、過去に行く前の自分とは違う存在になってしまっているのだから同じ事だ。目に見える変化が起こってしまった世界は、もう二度と元の道に戻ることはない。奴等はこの世界―――今ここに、こうして儂らがいるこの世界にやってきた。そしてそのために、この世界の未来は既に変わってしまったのだ。放っておけば本来向かうはずだった方向から外れ、奴等が決して望まない方向へとな」

「それはどんな?」

「儂らが消え去り、奴等が繁栄する代わりに、儂らが相変わらず健在であり続ける世界へとだ。」言いながら、彼は肩をすくめた。「これから我々が迎える未来に、奴等は存在もしないだろう。皮肉なものだ。」

彼は愉快そうに笑った。それから再びソファの背凭れから体を起こすと、そのまま立ち上がってテーブルを回り込み、オプティマス・プライムのすぐ横に席を移した。そして少し真面目な顔で、正面から彼を見た。

「この宇宙は無限に分岐し、そしてそのそれぞれが互いに関わり合いを持つことは永久にない。今回のような特殊な例外を除いてはな。今ここに、こうして儂らがいるのは、他のどんなにありそうな世界からも決して脅かされることのない確かな世界なのだ。どれほど奇抜で信じ難い現実でもな。」

彼はオプティマス・プライムの肩を優しく叩いた。「だからオプティマス、もしかしたら、などと心配することはない。目に見えるこの世界をそのまま信じれば良い。わかるな?」

「あ、ああ・・・」オプティマス・プライムは頷いた。

「お前は些細なことを心配し過ぎだ。」

メガトロンはオプティマス・プライムを優しい視線で見詰めた。彼の横顔に撫でるともなく手を添える。「そこが、お前の良いところでもあるがな。」

「メガトロン・・・」

「だが、ありもしない現実を恐れるのでは良くない。」

「・・・そうだな。泣き言を言って済まなかった」

メガトロンは自然な動作で彼に口付けた。そして彼の頭を胸元で抱き締めた。

「謝ることはない。誰しも一度は恐れるものだ、いつやって来るかわからない『死』というものをな」

「・・・ありがとう、メガトロン・・・」

自分をしっかりと支える腕の確かな強さが、オプティマス・プライムの気持ちを安らかにするようだった。それに対して湧き上がる心からの感謝が少しでも相手に伝わるようにと、彼はメガトロンの背を抱き返す腕に力を込めた。

「『今』だけが全てだとは言わん。だが儂らには、今ここにある自分自身を信じる他はないということを知っておくべきかもしれんな。」

「・・・ああ。」

頭のすぐ近くで響く彼の言葉を心地よく感じながら、オプティマス・プライムは視界を閉ざした。惑星ゼルからずっと彼に付きまとっていた漠然とした不安と悲しみは、セイバートロンの冴え冴えとした空気の中に溶けて消えていくようだった。


*


ベッドの端に腰掛けたオプティマス・プライムは、ふと思い出したように呟いた。

「そう言えば、メガトロン・・・」

「何だ?」メガトロンはのんびりとした声で応えた。

「惑星ゼルを破壊しないでくれて、ありがとう」

「・・・ふん、あの星のことか」

彼はヘッドボードに寄りかかった姿勢のまま、照れ隠しのようにぶっきらぼうに応えた。「いくら儂でも、そこまで大人げのないことはせん」

「ああ・・・でも誰もが一時は本気であの星を諦めていたんだ。本当に助かったよ、ゼルの住人も、私達も。本当にありがとう。」

「今回はたまたま気が向いただけだ。いつもただの脅しだと思ったら大間違いだぞ」

愛しい人がわざと渋面を作って悪人を装うのに、オプティマス・プライムは微笑んで頷いた。

「わかっているよ」

彼は再びベッドに体を乗り上げ、メガトロンに体を寄せてそっと口付けた。

「まったく、どうでも良いことに気の付くやつだ。」

彼は困ったように笑うと、大事な恋人を抱き寄せ、自分の腿の上に引き上げた。「愛しているぞ、オプティマス」

オプティマス・プライムは嬉しそうに笑って、メガトロンの唇に情熱的なキスで返事をした。





終わり








所謂タイム・パラドックスなんてもんは起きるはずがないので、
安心して過去の世界で悪事を働いて下さいね。という話でした(大嘘)

理論的に穴だらけなのであんま深く考えないで下さい(爆

メガさんの能力についての記述ですが、
いつも嘘ばっかり書いてる訳ではありません。公式設定ですよ公式設定。
ま、多少曲解&誇張してる部分はありますが(笑

それからなんか説教くさくてすんません。
まあ、いつものことですが。

しかしメガさん、EDで固めてた決意は一体ドコへ!?(爆笑

なんか淡々と終わってしまったので、最後にラブラブなシーンを
取って付けたら恥ずかしくて正視できなくなってしまいましたw

タイトルはいい感じに決まらなかったので
Nik Kershawからそれらしいものを・・・
やっぱなんか違うような気がするが他に思いつかん。

Nik Kershawいいよ〜Nik Kershaw。ただし昔の(爆



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