以下の文章は所謂「女性向け」ファンフィクションです。やおい、BLといった分野に興味のない方の閲覧はお止め下さい。



Pulsar



 
サイバトロン軍総司令官の任命式は、その重要性に反して、ごく僅かな人数のみで慎ましやかに、そして慌しく執り行われた。

オプティマス・プライムは突如自分の肩にかかった責任の大きさに、戸惑いと不安を覚えずにはいられなかった。

数百万年に及ぶセイバートロン星の歴史の中で、彼が生まれたのは僅かに数十年前だった。長く続いた内戦は数万年前に終わり、それから始まった新たな時代には、多数派を占めるサイバトロンによって平和で安定した社会が築かれ、順調に発展を続けていた。

酔っ払いの喧嘩以上の小競りさえも滅多に起こらない平和な時代にあって、サイバトロン軍は正式に組織こそされているものの、融通の利く便利な労働力として時々他所の組織に借り出されるだけで、この数万年の間に軍として作戦行動を起こした記録はなかった。

生まれてからずっと中央都市の資料館で歴史編纂の手伝いをしていたオプティマス・プライムは、何故自分が軍の指揮官に選ばれたのか、全く理由がわからなかった。しかしサイバトロンの最高機関である元老院に呼ばれ、自分が元々、有事の際にサイバトロン軍総司令官となるべく生み出されたのだと聞かされると、納得はせずとも彼らの意向に従う他はなかった。

戦争経験のある部下に助けられて、オプティマス・プライムはなんとか軍を掌握した。戦い方も銃の撃ち方も、知識として彼は生まれた時から知っていた。そして知ってさえいれば自分の物として自由に使いこなすことができるのが彼らセイバートロン人の強みだった。

しかし、二日前に突如発覚した非常事態は、彼にとって全く対応に苦慮する事件だった。

散発する重要施設の破壊。通報を受けて軍の部隊が現場に到着した時には、既に犯人の姿はない。目撃者の情報によれば、エネルギー輸送施設はたった一発の砲撃で跡形なく破壊されたという。そしてネットワークシステムの破壊。情報は混乱し、あらゆる通信が寸断された。僅か二日の間に被った損害は天文学的数字となり、尚も刻一刻と増え続けていた。

人々の安全で豊かな生活、そして社会どころか惑星全土を根底から脅かす恐ろしいテロ行為に対して、サイバトロン軍には為す術がなかった。何しろ敵の姿が見えず、敵の規模も種類も、その正体が全く掴めないのだ。

唯一つ明らかだったのは、敵は着々と外堀を埋めて進み、確実にサイバトロンの中枢部に近付いているということだった。




後手後手に回る彼らが敵の姿を捉えたのは、全くの偶然だった。未明に爆破された警察施設の斜向かいにあった高級商店の監視カメラが記録していた犯人のものと思える映像を、オプティマス・プライムは元老院に持ち込んだ。

助言を求められた議員らは、映像を目にして口々に驚きの言葉を呟いた。

「デストロンだ」

「まさか・・・信じられん」

「“デストロン”?」オプティマス・プライムはライブラリの膨大な資料の山の中にあったその名前を思い出した。侵略者として憎しみを持って綴られたその名前は、過去の戦争の歴史と切っても切れない関わりがあった。「彼らは既に滅んだはずでは?」

「生きていたのだ」議員の一人が忌々しげに呟いた。そして半分上の空のように続けた。「今になって再び現れるとは、一体どういうつもりなのだ・・・」

オプティマス・プライムはその言葉を聞き逃さなかった。彼が自分の知らない事情を知っているとみて、誤魔化しを許さない、丁寧だが強い口調で訊ねた。

「彼らの狙いは一体何なのですか」

「エネルギーだ。奴らはジェネレータを奪おうとしているのだ」

「“ジェネレータ”」

「そうだ。この地下深く、発電施設の中央にある」

惑星の中心にあって、全星を支える莫大なエネルギーを生み出しているジェネレータ。オプティマス・プライムもその存在を知ってはいたが、今までその重要性を改めて意識したことはなかった。

今この広い惑星上で、高度に文明が発達し、誰もが豊かで不自由なく生きていられるのは、無尽蔵とも言えるエネルギーのお陰だった。長い歴史の中で、ずっと人々はエネルギーの不足に悩まされ、またそれが原因となって幾多の戦いが起こり、多くの人々が苦しみ、死んできたのだ。

もし今それが奪われたとしたら、再び戦争の悲劇がこの惑星を焼き尽くすかもしれない。オプティマス・プライムは拳を握り締めた。何としてもジェネレータを守らなければ。

その時、彼の意識にノイズの多い通信が割り込んだ。「――が侵入、目標は――施設・・・――」

通信は全文を伝えないまま途切れた。

「時間がありません。」オプティマス・プライムは武器を取り出した。「ジェネレータは何としても守ります。この身に代えても。」

足早に部屋を出ようとする彼を、一人の議員が呼び止めた。

「元老院より、サイバトロン軍総司令官に命ずる。」

「はい。」

「敵の手に奪われる前に、ジェネレーターのコアを破壊するのだ。」

オプティマス・プライムは一瞬の間、驚きに固まった。「・・・わかりました。」

議会を出て、彼は教えられたルートを使ってサイバトロンの中枢施設の地下に向かった。

エレベータを降り、背後で扉が閉まると、そこは恐ろしく静かな空間だった。広い通路に人の気配はなく、物音一つしない。どうやら、無事に敵よりも先回りができたようだ。

オプティマス・プライムは足早に廊下を渡り、軍総司令官の権限を使って、行き着いた部屋の大きな扉を開けた。中に足を踏み入れる。

広く、天井の高いその部屋の壁面は、ジェネレータ本体と思しき巨大な機械と、その制御コンピュータで占められていた。ジェネレータの防壁の隙間から漏れ出す、何か危うげな力を帯びた見慣れない波長のノイズ、そして絶え間なく動作を続ける機械の低い唸りに、オプティマス・プライムは圧倒され、思わず足を止めた。

「これがジェネレータ・・・」

暫く巨大な装置を見上げた後、彼は命令を思い出した。『ジェネレータのコアを破壊する』。

確かに、この見るからに強固な装置全体を単に外からの火力で破壊することは不可能に違いない。彼は制御コンピュータの操作盤に歩み寄り、ジェネレータを覆う可動装甲壁を開放するよう操作した。

重い音を立てて、壁面の一部が浮き上がる。オプティマス・プライムの感覚をかすめるノイズが爆発的に増加した。

防護壁の中から現れた“コア”を見上げて、彼は息を飲んだ。彼は自分の体を流れるエネルギーが一瞬止まり、次いで逆流を始めたかのような錯覚を覚えた。彼は今自分の見ている物が信じられなかった。

銃を握り締めた手が震え、かたかたと音を立てているのにも気付かないまま、彼は呆然と呟いた。

「・・・これは、“人”だ・・・」

厳重に封じられた炉の中心部にあったのは、一体のロボットだった。

巨大な装置に融合したかのような、同色の白い体。細部まで丹念に刻まれた彫像のような、表情のない顔。その双眸には僅かに赤い光が揺らめいている。“彼”は生きているのだ。

そしてその体には、襲い来る侵略者と同じ印がある。

オプティマス・プライムは一瞬の内に悟った。

(彼らは“彼”を奪いに来たのではない・・・取り戻しに来たのだ。)

彼は片手で顔を覆った。「“彼“のお陰で我々は・・・私は今まで・・・」

地響きがした。敵が迫っている。オプティマス・プライムは顔を上げ、手にした銃を握り締めた。時間がない。

(だが・・・こんなことは間違っている!)

彼は銃を投げ捨てた。そして“彼”を解放するため、再び制御コンピュータにアクセスを試みる。しかし求められた個人認識コードを入力した瞬間、警告が発せられた。

『緊急事態。自爆システム起動。総員は5分以内に発電区画より退去せよ。当オペレーションルーム閉鎖まであと30秒』

「何だって」

オプティマス・プライムは命令を取り消そうと試みたが、プロセスは既にロックされ、どんな操作も受け付けなくなっていた。

自分の備えたオペレーション能力では、このような短時間に複雑なシステムに介入し、命令を解除することは不可能だ。オプティマス・プライムは悟ったが、爆破の危険が迫るその場から逃げようとはしなかった。彼はたった今逢ったばかりの、名も知らない敵のロボットと共に死を迎えようと思った。

オプティマス・プライムは“彼”を見上げ、静かに語りかけた。「すまない。あなたを自由にできればと思ったのだが、力が及ばなかった。」

そして彼の足元に位置する壁面に凭れて座り、膝を抱えた。「・・・詫びにもならないかもしれないが、私も一緒に行くから、どうか安らかに・・・」

部屋の入り口で、電子錠のロック音が鳴った。扉の中で、ガシャンと重い音が響く。あの扉が開くことはもう二度とないだろう。しかしオプティマス・プライムの心は乱されなかった。これでいい、と彼は思った。視界を閉じる。

その時、轟音を立てて部屋の扉が吹き飛んだ。

オプティマス・プライムは驚いて扉の方を見た。消えていく爆風の向こうで、巨大な口径の銃が変形して人の姿を取った。その後ろにもう一人。

真紅の目が光る。敵だ。たった二人でここまで来たのだろうか?

モノアイの重装ロボットがオプティマス・プライムの姿を認識し、素早く彼に銃口を向けた。しかし一瞬後には彼に戦意がないことを認め、銃口を下ろした。その間に彼の脇を走り抜けたもう一人は、既にジェネレータのコントロールパネルに取り付いていた。

オプティマス・プライムが呆然と見守る内に、そのネイビーブルーのロボットは一分の迷いもなく彼自身の回路を巨大なコンピュータに繋ぎ、その制御システムに侵入した。今までに見たこともないような、恐ろしい速さで防衛プログラムが破られていく。不可逆の筈の命令が撤回され、警報が鳴り止んだ。

興奮の色のない、単調な、しかし歌うような美しい和音が言葉を紡いだ。

「自爆プロセス停止。発電停止。開放まで280秒」

オプティマス・プライムは知らず、安堵の溜息を吐いた。“彼”が助かったことを、彼は心から嬉しく思った。

と、部屋の照明が消えた。数瞬の後、僅かに弱い光が戻った。非常用電源に切り替わったのだ。

「そこをどいて貰おうか」

扉を破壊したモノアイのロボットが目の前に立っていた。オプティマス・プライムは言われるままに立ち上がり、脇に下がった。

時間が過ぎるのを待つ間に、オプティマス・プライムは堪らず彼の横顔に声を掛けた。

「君達は“彼”の仲間なんだな・・・?」

「そうだ」

「教えてくれ、“彼”は一体・・・? どうしてこんなところに」

「貴様、何も知らないのか」

オプティマス・プライムは黙って首を振った。

「この方はこの惑星内で唯一の、体内に反物質エネルギー反応炉を備えたロボットだ。」

「個人にそんな能力が・・・?」

「彼が専用システムのバックアップを得てエネルギー生産に専念した場合、生み出されるエネルギーは莫大にして無限。サイバトロンはその能力に目をつけ、我々を罠にかけたのだ。我々を助けるため、彼は取引に応じ、自らサイバトロンに御身を差し出されたのだ。6万年も前の話だ。我々が不甲斐ないばかりに・・・」口惜しげに彼は言った。モノアイの頭部に浮かぶ表情はなかったが、しかし握り締めた彼の拳がギリギリと軋んだ音を立て、雄弁に彼の内心を語っているようだった。

6万年。オプティマス・プライムはその時の長さに思いを馳せた。その頃の自分は何をしていただろうかと考えようとして、彼は比較しようとした自分が恥ずかしくなった。まだ生まれてもいない。

「そんなに、昔から・・・」

単調な声が会話を打ち切った。

「切断完了。システム正常。神経回路正常。“メガトロン”、独立起動。」

メガトロン。オプティマス・プライムはその名前をそっと心に刻み付けた。

暗く生気のなかったアイセンサーに、燃えるような深紅の光が宿った。

彼を幾重にも取り巻き、拘束していたパーツが順に解かれ、月下に花が開くように機械の腕を広げた。薄闇の中にも輝く白銀の体が徐々に露になっていく。壁面に刻まれたレリーフが生命を得て生まれ出づるが如く、それは荘厳で神秘的な眺めだった。オプティマス・プライムはその一部始終から目を離すことができなかった。

足元に残るケーブルを音を立てて踏み砕き、“彼”が一歩を踏み出した。

オプティマス・プライムはその姿をただ呆然と見ていた。

力強く、美しいボディに目を奪われる。内側から溢れ出す力、燃え立つような生命力が目に見えるようだ。引き結ばれた口元は、強く揺るぎない、意志の強さを感じさせる。彫像のようだった先程までとはまるで別の存在だった。

(・・・これが“メガトロン”。)

モノアイのロボットが彼に近付き、銃口になった片腕を胸に当てて恭しく礼をした。

「メガトロン、よくぞご無事で」

「レーザーウェーブ。久しいな。」言葉と共に頷きを返し、彼は次いでネイビーブルーのロボットに視線を移した。「サウンドウェーブ。よく来てくれた。」

サウンドウェーブは無言で頷きを返した。

「お前達の助けに心から感謝する。」

初めて目にしたその姿と同様に、初めて耳にしたメガトロンの声はオプティマス・プライムの感覚を震わせ、心に静かな波立ちを残した。

メガトロンは目の前に翳した自分の手の平を一時眺め、その手をぐっと握って拳を固めた。

「忌々しいサイバトロン共め。この代償は命をもって贖って貰うぞ。」

「あまり時間がありません。すぐにここから脱出を」

メガトロンは頷いた。レーザーウェーブの後に着いて一歩を踏み出した所で、くるりとオプティマス・プライムに向き直り、目を眇めた。

「お前、名は?」

「オプティマス・プライム」

「ではオプティマス。お前は儂と一緒に来るのだ」

レーザーウェーブが驚きに足を止め、振り返った。サウンドウェーブも遠巻きに様子を伺っている。

オプティマス・プライムはゆっくりと首を振った。「・・・私は・・・サイバトロン軍総司令官。サイバトロンを裏切ることはできない・・・」

「命令に反し、儂を開放しようとしたお前は既に反逆者だ。サイバトロンにはいられまい」

「しかし・・・」それはオプティマス・プライムにもわかっていた。この後、自分は友軍によって捕らえられ、おそらく裁判にかけられて有罪、廃棄処分となるだろう。だが仲間であり生みの親でもある彼らに敵対すること、それを自ら選ぶことは彼にはできなかった。

メガトロンは言った。「お前は今もサイバトロンに絶対の正義があると思うのか?」

「・・・・・・。」オプティマス・プライムはつい先程ジェネレータの制御コンピュータに再度アクセスを試みた時の事を思い出した。味方であるはずの自分のコードは、しかしジェネレータを停止させようとした途端に“敵”だと認識されたのだ。

オプティマス・プライムは何も言うことができなかった。

「お前を、サイバトロンの愚か者共にむざむざと殺させはせん。」

「・・・ありがとう。だが、その気持ちだけで私には充分――」

メガトロンがふと身構えた、と思うが早いか、オプティマス・プライムは彼の肩に抱え上げられていた。




数時間後、彼らは惑星地表を遠く離れ、軌道上から地表を見下ろしていた。

オプティマス・プライムを担いだメガトロンを含む3人は、散発的に立ち向かって来る兵士を蹴散らしながら危なげなくサイバトロンの中枢施設を脱出した。彼らを迎えに上空から現れた無人の戦艦に乗船してからは、彼らを追ってくる者はなかった。

総司令官を失ったサイバトロン軍は指揮系統が立て直されることもないまま、その機能を完全に停止していた。それどころか、今や地上からは光が消え、栄華を誇った都市国家は暗闇と沈黙の中に沈んでいる。

念入りなメンテナンスを終え、久し振りに戻った専用の居室でエネルゴンキューブを片手に寛ぎながら、メガトロンは惑星上を映したモニターを眺め、誰に言うでもなく呟いた。

「準備を終えたらすぐにでも奴らを片付けてやる。」

それは苛立ちや猛々しさを微塵も感じさせない、むしろ穏やかな声だったが、オプティマス・プライムははっとして彼に向き直った。暫く躊躇った後、彼は意を決して立ち上がった。

「・・・メガトロン、」

「どうした、オプティマス」

彼が何か重要な事を言おうとしているのに気付き、メガトロンはモニターから離れ、声をかけたきりその場に立ち尽くすオプティマス・プライムに歩み寄った。

オプティマス・プライムはメガトロンの顔を見て言った。

「頼む、サイバトロンを滅ぼすなんてことはやめてくれ・・・」

メガトロンは意外そうな顔をした。「なぜだ? あんな屑共、蔓延らせたところで害にしかならんぞ」

「・・・あなたの怒りは尤もだ。彼らが・・・いや、我々があなたにしてきたこと、今更許してくれとは言わない・・・本当に申し訳ない、本当に・・・」

頭を垂れ、言葉を詰まらせるオプティマス・プライムの顔に片手を伸ばし、メガトロンは優しく触れた。

「お前は何も知らなかったのだ。そもそもお前は生まれて間もない、責任など何一つないではないか。お前が儂に謝る必要はない。」

「でも、私も彼らと同じ・・・サイバトロンなんだ。それだけで、私は彼らと同じように責められるべきだと思う。そして・・・例え彼らがどんなに罪深い者達でも、同胞が殺されるのは見たくない・・・」オプティマス・プライムは両手で顔を覆った。

「すまない・・・本当にすまない、メガトロン。本当は、私があなたにこんなことを言えた義理ではないんだ、わかっている。これはただの、私の我侭なんだ。でも」

「もういい、言うな。」メガトロンは優しい口調で、しかしきっぱりとオプティマス・プライムの言葉を遮って彼を抱き寄せ、両腕の中に収めた。「心優しいオプティマス。屑共の過ちのために、そんなにもお前が心を痛め、嘆く必要はない。」

「でも・・・」

「その優しさがいつかお前の命取りにならないことを祈るぞ」言いながら、彼はオプティマス・プライムの頭を撫で、愛しげに抱き締めた。「儂がいる限り、そんなことはさせんがな。」

「・・・メガトロン」

「オプティマス。お前が望むのなら、サイバトロン共はこのまま放っておいてやろう。」

言葉と共にぱっと頭を解放され、オプティマス・プライムはメガトロンの顔を見上げた。「ほ、本当か・・・?」

メガトロンはにやりと笑った。「どの道奴等にはこの先大きな試練が待っている。果たして乗り越えることができるか、見ものではないか」

試練とは勿論、エネルギー不足だった。サイバトロンは放っておいても自ら滅ぶかもしれない。だが罪深い過ちを反省し、出発点からやり直すこともまたできるかもしれないのだ。彼らがその機会を与えられたことに、オプティマス・プライムは感謝せずにはいられなかった。

「ありがとう、メガトロン・・・」

「お前の優しさに免じてな。」

オプティマス・プライムは視線を落とした。「・・・私は優しくなどない、弱いだけだ・・・」

メガトロンは微笑んだ。「お前は誰よりも優しい同情心の持ち主だ。お前が知らないだけでな。お前のその心根、他の物には代え難い価値がある。」

オプティマス・プライムは当惑したように、曖昧な笑みを浮かべた。「そんなことを言われたのは初めてだ」

「全く、サイバトロンの愚か者共は、適材適所という言葉を知らんと見える。お前のような一番戦いに不向きな者を軍隊の指揮官に据えるとは。結果こうしてお前が苦しむことになろうことは目に見えておるのにな。」

オプティマス・プライムは言葉もなく、小さく首を振った。

「だがお陰で、儂はお前に遇えた。その点、間抜け共には感謝せねばな」

「メガトロン・・・」

そこで、メガトロンはふと体を離して姿勢を正し、改めてオプティマス・プライムに向き直った。

「返事も聞かずに強引に連れて来てしまったが。」メガトロンはオプティマス・プライムの双眸を見詰めた。「お前を大切にする。オプティマス。サイバトロンからも、他のどんな物からも、この命に代えて儂が守る。この先ずっと、儂と一緒にいてくれ」

オプティマス・プライムは自分からメガトロンに一歩近付いた。力強い両腕に迎えられると、彼の肩口に寄りかかってそっと頭を預けた。

「メガトロン、私は・・・一目見た時から、あなたに心奪われていた」

「“お前”で良い、オプティマス」

オプティマス・プライムは小さく頷いた。「メガトロン・・・ひとつだけ条件がある。」

「何だ?」

「私の為に命を捨てるなんて言わないでくれ。もし私のせいでお前が死んだとわかったら、私はきっと気が狂って死んでしまう。だから、私を庇って死んだりしないと、お前は必ず私より長生きすると、約束してくれ」

「わかった、約束しよう。お前を悲しませるような真似はせん。」

「・・・すまない、こんな約束をさせてしまって。」

「優しいオプティマス、だがこの儂に対してそのような心配は無用だ。気にする必要はない」

「・・・ありがとう、メガトロン。」

メガトロンは腕の中に納めたオプティマス・プライムの頭、肩を何度も優しく撫でた。

「儂といてくれるな、オプティマス?」

「ああ、どこへも行かない。」

オプティマス・プライムは言うと、誓いを立てるように、メガトロンの唇にそっと口付けた。





終わり









デストロン・チートシリーズ第一弾。
(インチキくさいぐらい有能なデストロンがご都合主義に活躍する話の意)

メガトロンが体の中にブラックホール/ホワイトホールを自由に作り出せて
反物質エネルギーを利用できる(公式設定)なら
エネルギー問題なんか起きる訳ないじゃないかと思って
考えた挙句できた捏造設定です。

最後に取って付けたようにメガ×O.P.でラブラブになったのは仕様です。

発電機メガさんの真の用途はまた別の話で出てくる予定。
アレだよアレアレ!



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