以下の文章は所謂「女性向け」ファンフィクションです。やおい、BLといった分野に興味のない方の閲覧はお止め下さい。

  

 
 
The Future That You Have Not Seen



 

セイバートロンの首都、歴代の元首しかその存在を知らない坑道を下った地下深くに、歴史に忘れ去られ、打ち捨てられた太古の遺構があった。オプティマス・プライムは半分以上壊れたワープシステムを作動させ、その不安定な次元の渦にオールスパークを投げ込んだ。

爆発のような閃光が消えると、装置の一部と共にオールスパークの姿は消えた。

簡単だった。惑星の未来に終止符を打つに等しいその恐るべき行為を行う間、誰一人として彼を止めることができた者はいなかったのだ。

「私が確たる己の意志を持って行動する事は、こんなにも簡単なことだった。」伏せられた視線が暗い陰りを帯びた。

独断でセイバートロン星に生きる全ての命の未来を閉ざすという暴挙に出たこの決心があったなら、今までに躊躇った変革に必要な覚悟など取るに足りないものだったのに。自分は為し得た筈の改革をどれだけ無責任にただ放置してきたのだろう。彼の忠告、願いをどれだけ無下にしていたのだろう。自分は良い為政者ではなかった。自分はメガトロンに、本来犯す必要のなかった罪を犯させてしまったのだ。彼ともっと誠実に向き合い、時間をかけて彼の心を理解する努力をしていれば。

しかし、全てが手遅れだった。

彼は絶望を胸に遺構を後にした。メガトロンはすぐにやってくるだろう。プライムである自分には彼と戦わなければならない責任がある。自分は彼と戦い、そして斃れるだろう。彼は一体何を思うだろうか。

オプティマス・プライムにはもうどうすることもできなかった。事態は既に彼の手を離れていたのだ。

しかし、メガトロンは現れなかった。地下に続く坑道から姿を現した彼を迎えたオートボット達は、皆酷く慌て、動揺しており、口々に状況を説明した。

「メガトロンは突然戦線を離脱し、惑星外へと飛び去った。彼を追ってディセプティコンの部隊は撤退し、戦艦も次々に惑星を離れて行った。」

まさか?そんな筈はない。オプティマス・プライムは俄かに信じがたい心地だった。オールスパークの行方など誰にもわかる筈はない。だがもしかしたら、メガトロンには解るというのだろうか?

「ディセプティコンの行方は?」

「シルバーボルトの偵察部隊が追っています。今ならまだ後を追えるかと。」

オプティマス・プライムは半ば自動的に答えた。「追跡を続けてくれ。それからすぐに、恒星系間の長距離航行が可能な船を捜してくれ。部隊の編成が終了次第、出発する。」

「貴方が行かれるのですか?」

「そうだ。」オプティマス・プライムは頷いた。「メガトロンを追う。」

そして彼らは惑星を離れ、実に数万年の間続く、長い放浪の旅が始まったのだった。





 The Future That You Have Not Seen
  (君がまだ見ぬ未来)






「グレートマシンの使用を認めるだと?」

のどかしく西日の差し込む防衛長官執務室で、大きな椅子をくるりと回してメガトロンは驚きの声を上げた。

「但し、目標恒星系の選定基準については別途協議を要する、とありますが。」

強い視線を向けられて、副官スタースクリームは困惑顔で応えた。

メガトロンの喉が不審を表し低く唸った。「一体どういう風の吹き回しだ?」

「さあ、私には解りかねます。」

メガトロンはモニターに並んだ長大なリストを睨み付けた。それだけではない。駄目で元より、と投げ続けた――そして強固に反対され続け、そろそろ見切りをつけようとしていたものまで――作戦案から行政案、些細な提案のほとんど全てが、目暗判かと疑う速度でオプティマス・プライムの同意を得て返されて来たのである。

「あいつ、一体何を考えている?」メガトロンは独り言ちた。モニターに視線を遣っているが、彼は同じ建物内の別の場所にいる国家元首の姿を見ていた。

数瞬の間考え、彼は席を立った。「少し出かけてくる。そいつらの処理は保留だ。」


***


「オプティマス、これは一体どういうつもりだ?」

やっぱり来たかと言いたげな秘書に出迎えられ、執務室に入って元首の在席を確認するなり、メガトロンは挨拶もなしに話し始めた。「あれ程強く反対していたものを、突然認可に回った理由を聞きたいものだな。お前は以前から議会の・・・」

数歩でオプティマス・プライムのデスクの前まで辿り着き、パネルの上に両手をついて彼の顔を覗き込んだメガトロンは、そこで訝しげに言葉を切った。

「どうかしたのか? オプティマス」

メガトロンを見上げたまま、オプティマス・プライムは呆然と言葉を失っていた。清らかに輝く青い双眸がメガトロンの力強い輪郭を何度もなぞった。突然の騒々しい来訪を咎める様子もなく、かと言ってメガトロンの言葉に応えるでもない。

メガトロンは心配の滲んだ声で、努めて穏やかに彼を呼んだ。

「オプティマス?」

「・・・メガトロン。」

オプティマス・プライムははっと気を取り直すと勢いよく立ち上がり、メガトロンの陰から身を乗り出して二人の秘書に向かって言った。「すまないが、しばらく席を外してくれ。」

「了解しました。」ジャズは驚いた様子も見せず、もう一人を連れて執務室を出て行った。

分厚いドアがスライドして閉まるが早いか、オプティマス・プライムはデスクを回り、メガトロンの体に飛び付いて彼を抱き締めた。

メガトロンはしっかりと抱擁を返しつつも、驚いて言った。

「一体どうした? どこか具合でも悪いのか。」

オプティマス・プライムは首を振った。「会いたかった、メガトロン・・・」声が震えている。

彼はメガトロンの胸に何度も顔を摺り寄せ、いくらしても足りないというように両腕で彼の背を掻き抱き、力を込めた。

メガトロンは訳が分からないまま、しがみ付くオプティマス・プライムを抱き締め、取り乱した彼を落ち着けるよう、肩や後頭部を繰り返し優しく撫でた。ようやくほんの少し体を離して見ると、彼は泣いていた。

メガトロンはぎょっとした。「昨晩一緒に過ごしたばかりだろう。一体何があった? どうして泣いている?」

鋭い爪を持った、しかし繊細に動く白銀の指で優しく涙を拭う。頼りない視線が彼を見上げると、メガトロンは求められるままに口付けた。

長く時間を掛けたそれを終えても、オプティマス・プライムはまだ涙を流していた。

「どうした? 俺に話せ、オプティマス。」メガトロンは困り果てた。せめてもの慰めをと、オプティマス・プライムを腕に抱き、一回り小さな体を撫でる。

「すまない、大丈夫だ。ただ、お前とこうすることが・・・嬉しくて」

メガトロンは驚愕に二の句が継げなかった。彼はオプティマス・プライムを心から愛しており、彼が自分に寄せる好意に疑いを持ったこともなかったが、オプティマス・プライムは酷く内気で滅多に睦言を語ることはなかったし、寝室以外で口付けを求めるなど、今まで絶対になかったことだった。

メガトロンは不審に思わずにいられなかった。この心変わりと執政方針の変化は無関係ではないはずだ。たった半日の間に、オプティマス・プライムに一体何があった?

漸く自分で涙を拭ったオプティマス・プライムは、しっかりとした声で言った。「メガトロン、話があるんだ。大事な話だ。」

「ああ、何だ?」

オプティマス・プライムはメガトロンの双眸をまともに見て言った。

「私はお前を愛している。何よりもお前が大切だと思っている。私はお前にあれこれと理想を語り、お前の考えに文句を言ってきたけれど・・・お前と二人で力を尽くしてこの星を守り、そしてお前と共に生きることだけが、私の唯一の望みなんだ。その他のことなんて、本当はどうだって構わない。」

メガトロンは絶句し、唯オプティマス・プライムの真剣な表情を凝視した。

「例えどんな理由があっても、私はお前と離れたくない。私はただ、お前と共に生きたい。私が心からそう望んでいることを、それだけが私の願いだということを、どうか信じてほしい。」

切々と語る表情は疑いようもない。

しかしメガトロンは驚かずにいられなかった。オプティマス・プライムが自分の気持ちを、望みを言葉にすることは滅多にない。彼はそうすることを頑なに避けてきた。国家元首としてのありように拘り、まるで彼には個人的な願望や好き嫌いなどないとでも言いたげな禁欲的な生き方をしていた。それを半ば強引に口説き落とし、際限のない執務の隙間に時間を作り、何とか恋仲と呼べる関係を維持しているのも一重にメガトロンの努力によるものだった。

「信じるとも。俺の願いも同じだ。俺は何よりもお前の幸福を願っている。」

そう応えたメガトロンの声には隠しきれない戸惑いが現れていた。オプティマス・プライムは気付いたが、少なくとも自分の言葉が受け入れられたことを確認して、彼は安堵の笑みを浮かべた。今はまだ全てを解ってくれなくてもいい。ただ自分はメガトロンに自分の気持ちを伝えておかなければならなかったのだ、全てが手遅れになる前に。


***


メガトロンを驚かせたオプティマス・プライムの方針転換は、政府機関や付随する地方組織、軍や司法機関、その他あらゆる下部組織、ひいては惑星全土を震撼させるに充分な破壊力を持っていた。既得権益を取り上げられた政治家は世論を煽って彼を批判し、社会のあちこちで大きな混乱を生じさせていた。

日増しに強くなる風当たりを全く意に介していないかのように、オプティマス・プライムは次々と政治改革を断行していく。彼を信じる彼の部下や支持者は彼の身を心配したが、懇願に近い彼らの忠告にもオプティマス・プライムは大丈夫だと笑うだけだった。

そもそも彼に説教できる度胸と立場のある者は限られている。その数少ない一人であるメガトロンは、士官時代からの付き合いである医者の頼みを受けて、今月に入って三度目の忠告に訪れたのだった。

「評議会のメンバーを残らず首にしたそうだな。」

「ああ。彼らの任期は本当はもう千五百年も年前に切れていたんだ。彼らが占めていた地位には新しく選定された者が就くべきだ。」

「成る程、公平な判断だ。だがお前の急な決定を横暴と批判する者がいることを知っているか?」

「私には明文法に従って決定を行う権利と責任がある。誰にも文句は言わせないさ。」

メガトロンは頷いた。しかしその当然の権利は、長年正しく行使されずにいたのだ。強い発言権を持つ長老共や有力な議員による干渉や批判、また世論の主張を受けて、意思決定の最高機関であるはずのオプティマス・プライムの思惑は悉く妨げられてきた。オプティマス・プライムの治世は彼自身にとって極めて不自由なものであったのだ。その彼が今になって正しく権力を行使することに多くの者が驚き、ある者は裏切られたと感じて、不満と憤りを顕わにしている。

「悪しき慣習はいずれ絶たねばならない。お前が教えてくれたことだ。」

「そうだ。」

「保守派の連中が片付けば、惑星外の駐留部隊の待遇改善の為にももっと多くの資源を融通できるようになるはずだ。」

「それは有難い。」

「やっとお前の要求・・・のほんの一部に過ぎないが、応えることができると思う。今までずっと、お前の部下達を辛い境遇に置いていたことを、本当に申し訳なく思っている。」

「謝る必要はない。連中も喜ぶだろう。」

「・・・ありがとう、メガトロン。」

去り際にメガトロンはオプティマス・プライムを振り返って言った。「お前のやっていることは間違いではないが、お前を逆恨みする者が現れるだろう。何かあればいつでも俺を呼べ。身の危険を感じた時にはすぐにだ。忘れるな。」

「わかった。ありがとう。」

オプティマス・プライムはメガトロンに向かって微笑んだ。その微笑から彼が読み取ったのは、自分に対する揺るぎない信頼と紛れもない好意、そして強い決意と、正体の知れない秘密だった。オプティマス・プライムは何かを隠している。

メガトロンは一瞬の間自分を囚えた感傷を振り払うように踵を返し、再びオプティマス・プライムに向き直った。

「お前、何を隠している?」

「・・・何も。」オプティマス・プライムは静かに応えた。

「俺が信用できないのか?」

オプティマス・プライムは首を振った。「信じている。私は・・・お前の強さを信じている。」

「強さ? 一体何を言っている?」

オプティマス・プライムはメガトロンの問いには応えず、神妙な表情で続けた。「お前が私より遥かに強いということも、私は知っている。」

メガトロンは顔をしかめた。「さあ、それはどうか・・・」

「それに、お前の力が、何かのお陰で手に入れたものでなく、お前自身の努力と才能によって得られたものであることも。」

メガトロンはオプティマス・プライムを凝視した。彼の言葉が暗に示す存在を思い、まさか、と僅かに息を飲む。まさか、彼が知っている筈はない。

「お前は既に、古い血統を超えた力を持っている。何よりも尊いその純粋な力を、濁らせることは考えないでほしい。それはきっとお前が望むものではないし、それでお前が満足することは決してないと思う。」

俯いてそう告げたオプティマス・プライムの顔からメガトロンはいつまでも視線を逸らすことができなかった。


***


それから僅か1サイクルも経たない内に、メガトロンは星を離れ、セイバートロンの二つある月の一つにいた。

暗い遺跡の奥深くで彼に会うのはこれで何度目だろうか。太古の異形の姿を前に、メガトロンは片膝を突いて言葉を待っていた。

「オプティマス・プライムの心変わりの理由は定かではないが・・・」

暗闇と同化したような漆黒の影から、威厳と畏怖を感じさせる重苦しい声が響いた。

「奴の改革は大きな批判と混乱を招いている。穏健派との衝突は日増しに大きく、奴は孤立に向かっている。我らが手を下すまでもなく、奴は遠からず失脚するかもしれん。お前が元首として奴の地位に取って代わることは容易いだろう。」

「・・・いかにも」

邪悪な声が謳うのを聞くメガトロンの様子に興奮の色はない。

「オールスパークの輝きは近い。セイバートロンの未来の為に、プライムを葬り去り、大いなる力を手に入れるのだ、メガトロン。」

メガトロンは深く頭を垂れた。「確かにこの手に入れて見せましょう、我が師よ。」

抑揚のない声で応え、立ち上がる。その表情は冷たく、今は師と仰ぐ高次の存在にさえ、彼の中にある強い願望を悟らせることなかった。


***


メガトロンがオールスパークに接触したのはその翌日だった。異変を察知し、単独でオールスパークの安置所に駆けつけたオプティマス・プライムが見たのは、巨大なキューブに宿るオールスパークの偉大な力と、その傍らに佇み、それと静かに向き合うメガトロンの姿だった。

数秒の間、眩い光が迸って消え、確かにメガトロンとオールスパークとの間に対話があったことを示していた。しかしオールスパークは変わらずそこに存在し、その力はいかほども衰えてはいなかった。メガトロンにも変わった様子はない。

固唾を飲んで見守るオプティマス・プライムを置いて、メガトロンは変形し、止める間もなく飛翔した。オプティマス・プライムが伸ばした手をすり抜け、安置所の出口に向かったメガトロンは、冷静な声でこう言い残して姿を消した。

「許せ、オプティマス。」

オプティマス・プライムは驚き、呆然とした。そして彼の謝罪に滲んだ後悔に、何が起こったのかを理解した。

メガトロンはオールスパークに宿る万能の力を手にしたのではない。彼が得たのはオールスパークに宿る叡智、長大なる歴史の記録に違いなかった。そしてそこには、あの悲しむべき未来、容を失ったオールスパークとマトリクスから奇跡によって生まれ変わった新たなオールスパークの記憶が、地球で終わった悲劇の顛末の何もかもが含まれているのだ。

「まさか・・・」

メガトロンはかつて彼自身が選んだ未来を知り、そして今、彼はその選択を是としなかったのだ。

オプティマス・プライムは走った。建物を出て周囲を見渡すが、メガトロンの姿はどこにもなかった。スタースクリームが駆け寄ってくるのが見えた。

「プライム! どうしてこんな場所に・・・」

「スタースクリーム! メガトロンを知らないか?!」

「お一人で第二の月に向かわれた。着いて来るなと仰って・・・何事です?」

「できる限りの強力な部隊を連れて、彼を追ってくれ! 彼は危険な戦いに挑もうとしている・・・彼を助けるんだ! 早く・・・」

その時、誰かが叫んだ。「オプティマス・プライム、あれを!」

指差す先には昼間の空に白く浮かび上がる第二の月があり、その表面に何かが見えた。光学センサーの望遠能力を最大に高め、解像度を上げると、砂礫に覆われた地面に爆煙が上がっているのがはっきりと見えた。巨大な戦列艦がエネルギー炉の崩壊を起こして爆発したかのような、恐ろしい規模の大爆発だった。続いて数秒に渡って断続的に閃光が瞬き、再び小規模の爆煙が現れた。

『防衛副長官ショックウェーブより、非常警報。防衛体制フェイズ3。』抑揚のない冷静な声が各人の通信機を通して響いた。

多くの人が行き交う首都は騒然となった。

「プライム・・・これは一体・・・」

数機のジェットが現れ、元首の姿を認めて次々と降り立った。いずれも武装しており、最重要人物を囲むように警戒態勢を取る。しばらく遅れて重武装の車両部隊が合流した。大きな黒い人影がオプティマス・プライムの斜め脇に立ち、周囲に気を配りながら、ちらりと彼に目をやった。

「ご無事ですか、プライム。」

「ああ、何事もない。ありがとう、アイアンハイド。」

『地表に衝撃波が到達。あと十三秒。』再び、無感動な声が告げた。

身構えると、大気を揺るがす激しい振動と、爆音が周囲に轟いた。

衝撃をやり過ごすと、オプティマス・プライムは通信回線を開いて必死の思いで呼びかけた。

「メガトロン、無事なのか? メガトロン!」

応答はなかった。彼は膝から崩れ落ちそうになるのを意思の力で堪え、立ち続けた。彼を頼り、不安げに空を見上げる人々の前で弱い姿を見せることはできなかった。

オプティマス・プライムの個人回線に続報が届いた。『メガトロンの現在地は特定不能。通信回線が断絶、復旧作業中。』

『すまない、サウンドウェーブ。そのまま続けてくれ。』

通信を終えると、オプティマス・プライムの意識は内に向いた。どうして自分は彼を一人で行かせたのか。自分は彼を止めることができた筈だった。それが間に合わなかったのは、咄嗟に迷い、判断を遅らせたからだ。彼がオールスパークの力を我が物とし、それを自分に向けようとしたのではないかと疑ったのだ。

彼は自分自身を恥じ、激しく責めた。自分は再び、取り返しのつかない過ちを犯してしまった。

時間にすれば僅かな間のことだったが、彼は自分が随分長い時間呆けていたように感じて軽く頭を振った。努力して呼吸を整え、何とかしっかりとした声を出した。自分にできることは何もないが、それでもやらなければならないことがあった。

「スタースクリーム、偵察部隊を編成して調査に向かってくれ。厳重に警戒して、くれぐれも危険には近付かないように。」

「了解しました、オプティマス・プライム。」

スタースクリームが変形し、離陸する。次の瞬間、個人回線を通じて声が届いた。

『心配ない、オプティマス。』

オプティマス・プライムは弾かれるように再度空を見上げた。数秒、数十秒・・・何かが光った。真っ直ぐ近付いてくる。

「メガトロン!」誰かが指差し、叫んだ声は、オプティマス・プライムには聞こえていなかった。


***


オールスパークの記憶を通して、メガトロンは全てを知った。それはすなわち、なかったことにされた未来の出来事と、自分の犯した罪の大きさだった。そしてそれを阻止するためにオプティマス・プライムが払った犠牲の大きさを、メガトロンには俄かに認めることができなかった。

そして今また、オプティマス・プライムが、あのオプティマス・プライムが、自分との決別を避ける為、ただそれだけのために、自身の信念を投げ打ち、彼が最も愛するセイバートロンの民を敵に回そうとしている。メガトロンは憤りに似たもどかしさに身を焼かれるようだった。愚かな。なんと愚かな。純粋で強すぎる想いの余り、オプティマス・プライムは狂ってしまったのだろうか。メガトロンはかつて感じたことのない恐怖に身を震わせた。

そして彼ははっきりと悟った。自分の望みは、求めた力は、オプティマス・プライムとの永遠の決別と引き換えにしてでも手に入れるべきものか? その答えは、否!


***


オプティマス・プライムの目の前にメガトロンが降り立ち、無言のまま足元に何かを無造作に放り投げた。鈍い音がしてそれが一転し、彼らの周囲でどよめきが起こった。オプティマス・プライムは思わず息を飲んだ。

「・・・これは、」

ちぎれ、煤けて汚れたそれはフォールンの首だった。

どこかの未来に起こった筈の悲劇、僅か数千年の間にセイバートロンが滅亡への道を辿った歴史を、二人以外は誰も知らなかった。そしてその悲劇の歴史へと続く道は、今、永遠に閉ざされたのだった。


***


今を生きる者の傍らに忍び寄り、彼を操って災いを為すフォールンは、遠い過去から這い出した亡霊だった。遥か以前、セイバートロン星に降り立ち、プライムの一族を殺戮した悪鬼の記録は、辛うじてオールスパークに残されていた。それは恐ろしい目的を果たすと、荒廃したセイバートロンとプライムを失った民を残して悪夢のように掻き消え、以来何万年もの間再び現れることはなかったのだ。

歴史の狭間から舞い戻った厄災は、邪悪な野望を果たす前に、皮肉にもそれ自身が選んだ闘士によって打ち破られた。その知らせは瞬く間に広がり、歴史的な慶事に惑星全土が沸き返った。

惜しみない賞賛と絶える間のない喝采を受けながら、メガトロンは決して愉快そうではなかった。彼は先の戦いについては多くを語らず、祝典への出席を固辞し、賛辞の声にも固く口を噤んでいた。熱狂する民衆は彼のつれない態度を謙遜や戸惑いと受け止め、咎めることもしなかった。

昼夜を問わず大騒ぎを続ける首都の喧騒を眼下に納め、オプティマス・プライムは大きな窓から離れて部屋の中央に据えられたソファに戻った。

「メガトロン、少しは顔を出してやったらどうだ。皆喜ぶだろうに。」

「馬鹿馬鹿しい。」先程から根が生えたようにソファから動かないメガトロンはつまらなそうに吐き捨て、エネルゴンキューブを煽った。「わざわざ俺が賞賛されるようなことではない。」

「まさか。お前はセイバートロンを滅亡から救ったんだ。」オプティマス・プライムはメガトロンの隣に腰掛けると、無造作に放り出された彼の片手に触れ、強く握った。

メガトロンは益々渋い顔をした。「お前まで言うか、オプティマス。」

「これはお前にしかできなかったことだ。私は純粋に、お前に感謝しているし、お前の力と意思を称えたい。」

メガトロンは溜息を吐いた。「これは単なる俺自身の尻拭いだ。」

「そんな風に言わないでくれ。私は・・・お前がどんな思いであれを倒したのか、少しは想像できるつもりだ。それがどんなにありがたいと思ったか・・・」

「俺に必要なのは懺悔だけだ。そもそもあれに目を付けられたという時点で、俺の馬鹿さ加減が知れようというものだ。」

「もう充分だ、メガトロン。自虐的になるのはやめてくれ。」

オプティマス・プライムは身を乗り出してメガトロンの首に両腕を回し、強く彼を抱き締めた。

「お前は助けてくれたじゃないか。選んでくれたじゃないか・・・」

オプティマス・プライムの声が震えている。メガトロンは彼の背を宥めるように抱き、過去を回想するように静かに話した。

「俺はずっと昔から、圧倒的な力が欲しかった。お前よりも遥かに強く、他の誰にも文句を言わせない力が。そうすれば元首の地位に取って代わり、オプティマス・プライムを苦しめる重圧その他諸々の全てから彼を守ってやれると思っていた。プライムであるがゆえにお前が苦しむのなら、俺はその土台を元から壊してやりたかったのだ。」

オプティマス・プライムは静かに首を振った。「お前が力を求める必要はなかったんだ、メガトロン。お前はとっくに、私よりずっと強い存在だった。プライムの血に目覚めた私よりも・・・」

メガトロンは頷いた。「俺は誤解していた。俺に必要だったのは単に力ではない。オールスパークに宿る、全てを知る力、叡智の光だ・・・先ほどまではそう思っていた。」メガトロンの手が止まった。「だがそれも違った。」

オプティマス・プライムは体を起こし、メガトロンを見た。

「俺は一人よがりだった。お前の為と言いながら、実際は自分の信念を重んじたのだ。俺はプライムの血統であるという呪縛からお前を解放したかった。だがそれは俺自身がプライムを越える力を手に入れることで、お前がプライムであるという変えようのない現実を否定し、お前が抱いた覚悟と、過去にお前が重ねてきた身を切るような努力を否定することを意味したのだ。だが俺は漸く理解した。お前はプライムであることから決して逃れることはできないし、同時にプライムでありながらお前自身の幸福を追求することもまた可能なのだ。俺はその可能性を、お前を信じなければならなかったのだ。」

淡々とした訴えに、オプティマス・プライムは声もなく涙を流していた。それは悲しみからではなく、過去に感じた苦悩や辛い記憶を浄化する救いの表れだった。

メガトロンはオプティマス・プライムの体を膝の上に引き上げ、両肩をしっかりと支えて正面から視線を合わせた。そして聞き間違いようのないはっきりとした声で言った。

「これから先、何があろうとも、俺はお前と共に歩むことを選ぶ。お前の傍を離れることもしない。」

その言葉を聞いたオプティマス・プライムの喜びは言い表しようがなかった。彼は手放しでそれを受け入れたかった。しかしそれが意味するところを察すると、とても素直に喜ぶことはできないと思えた。かつて愛し合った筈の二人はお互いの信念の相違から道を分かち、それは最後まで再び交わることなく、大きな悲劇を呼び込んで彼ら自身を不幸にした。それを避ける為に、メガトロンは自分の道を捨てると言っているのだ。

オプティマス・プライムは恐る恐る言った。「でもそのためにお前の信念を犠牲にするなんてしたくない。お前にはお前の大事な生き方があるのに。もしも何かで衝突することがあれば、私は全部お前に合わせる。お前の邪魔は決してしない。お前は思った通りに生きて欲しい。」それは偽りのない彼の本心だった。「私は、私の信念よりもお前が大事だ。お前のいない数万年でそれを思い知ったのだ!」

「オプティマス、そんなに思い詰めるものではない。」メガトロンは少し困ったように言い、俯いた彼の肩や背を宥めるように撫でた。

「私はずっとお前に我慢ばかりを強いてきた。お前がそれを受け入れてくれるのをいいことに、私は争いを避けたいが為だけに、お前ではない誰かの意見ばかりを尊重してきた。“いつか彼らも解ってくれる、それまで待ってやってくれ”と。私はずっとお前の理想とやり方を無視して、お前に忍耐を押し付けてきたのだ。だがそれは間違いだった。私は自分の責任を果たすべきだった。争いと対立を恐れず、変革を求めるべきだった。お前の言った通りに。」

「だからと言って、お前は俺のために自分を殺し、犠牲にするのか? お前の本心は決して人々との対立を望むまい。」

オプティマス・プライムは応えなかった。彼の沈黙が、苦しい胸の内を示していることをメガトロンは承知していた。

「お前は、お前の愛するセイバートロンの民に恨まれて生きていくことも是とするのか? そのようなことは、俺は嬉しくない。俺はそんなお前に惚れたのではない。」

オプティマス・プライムは板挟みに悲しみの涙を流した。己が信念を貫けばメガトロンと衝突する、信念を捨てれば彼に見放されるとなれば、彼に選ぶ道はなかった。いずれにしても自分はメガトロンを失う。そんな不条理が許されていいのだろうか?

「それでは私はどうすればいい?」絶望と共に彼は問うた。「私はお前の敵になりたくないだけなのに。」

メガトロンは止め処なく流れ落ちるオプティマス・プライムの涙を何度も拭い、彼の横顔や頭を優しく撫でた。

「悲観するな。お前と俺とは互いを変えることができるはずだ。互いに理解し、歩み寄ることが。その努力を限りなく続ける限り、お前と俺が決別することはない。」

「・・・本当、なのか?」

オプティマス・プライムは目の覚める思いでメガトロンを見た。彼は理性的な話し合いができる人間だったが、昔から決して安易な妥協をすることはなかった。まして彼自身の信念を曲げるなど、例え彼自身の死をもってしても果たすことなどできなかっただろうに。しかし今彼は笑ってそれを言うのだ。

「本当だ。だからお前だけが俺に合わせる必要はない。お前が俺と異なる意見を持つからといって、俺がお前を疎むことはない。俺はお前を諦めることもしない。」

オプティマス・プライムはメガトロンの語る言葉を心から信じられることが嬉しかった。

「俺達は変化し続ける。そして変化し続ける限り、共に歩み続けることができるのだ、永遠に。」


***


10810026.31.9021。その日付はオプティマス・プライムにとってのXデーだった。かつてその日、メガトロン率いるディセプティコンが反乱を起こし、以来数万年に渡って続いた、豊かな惑星を焦土と化した大戦争の幕が開いたのだ。

だが今回は違った。既に日付は変わろうとしており、静かに澄んだ大気の向こうに二つの月が輝いている。ディセプティコンは組織されておらず、フォールンはいない。数時間前には、オプティマス・プライムを狙った過激派のテロ行為を居合わせたメガトロンが退け、数分前には、その本拠地を彼の配下の治安部隊が制圧したとの知らせが入ったばかりだった。

メガトロンはベッドに横たわり、戦闘によって消耗した体を静かに休めている。オプティマス・プライムが近付くと、メガトロンは近い方の腕を広げて穏やかに彼を呼んだ。

「・・・オプティマス、眠れないのか?」

導かれるまま腕の中に収まり、オプティマス・プライムはメガトロンの分厚い体を抱き返した。

「いいや、何でもない。」オプティマス・プライムは視界を閉じて言った。「メガトロン、今日はありがとう。」

「あれ程のこと、何でもない。」メガトロンはそっけなく言った。「お前が無事なら俺は満足だ。」

「そうか。」

それ以上の会話は続かず、オプティマス・プライムはメガトロンがそのまま寝入ってしまったのかと思ったが、しばらくして彼はいくらか眠たげな声で話を再開した。

「俺はどんな物からもお前を守る。お前の命を狙う馬鹿共や、私欲に凝り固まった政治家共、下らん評議会、そしてこの俺自身の過ちからも。お前が俺を守らせる内はな。」

「メガトロン・・・」オプティマス・プライムは視界を復活させてメガトロンを見た。優しげに彼を見詰める真紅の双眸には静かな決意の光が宿っていた。

「お前を守らせろよ、オプティマス。お前がそれを俺に許す限り、俺は何があっても、何を犠牲にしてもお前を守り通す。いかなる敵をも排除する。なるべく・・・お前の望む方法でな。」メガトロンはちょっと笑った。「まあ、偶には多少・・・強引な方法を採ることもあろうが。」

「あまり過激なことはしないでくれ・・・できることなら。」

オプティマス・プライムは困ったように言ったが、彼はメガトロンの譲歩が嬉しかった。自分が彼を拒絶し、心を閉ざさない限り、彼は自分の味方でいてくれる。そう信じられることが幸せだった。

「お前は敵に寛容すぎる。愚か者はすぐに付け上がるからな。俺はお前の優しさに付け込み、お前を苦しめる奴等には容赦しない。その代わり、お前の後ろにはいつも俺がいるとわかっていれば、お前に手出しする愚か者も少しは鳴りを潜めるだろう。」

彼の好意から生じた言葉を嬉しく思うと同時に、オプティマス・プライムは少し悲しげに視線を落とした。

「それでは、私のためにお前が憎まれ役になってしまう。」

「それで構わん。軍の長官である俺は、民衆には恐れ嫌われる位で丁度いいのだ。民に慕われ、愛されるのはお前が似合いだ。」

「・・・私はそのような人格者ではないよ。」

「この星に誰か一人適任者がいるとすれば、それはお前だけだ。」メガトロンはオプティマス・プライムの横顔を愛しげに撫でた。「俺が単なる冷血漢でないことは、お前が知っていれば、それで充分だ。」

「私は何もかも中途半端なんだ、昔お前が言ったように。」

「それはお前の慈悲深さ故だ。お前は決して誰も傷つけたくないと考える。それは時に決断の遅れと甘さを招き、お前自身をも傷つける。」

そして最後には全ての責を負い、自ら破滅を受け入れて消えようとする。メガトロンは断じてそのような事態を許すことができなかった。

「お前は人の為にだけでなく、自分の為にも戦え。それができないのならば、俺が横から手出しする事を許せ。」

「ありがとう。本当にありがとう。でも、メガトロン、そんなに心配しなくていい。私は少しくらい傷ついたって構わないんだ。本当に平気だよ、お前が一緒に戦ってくれるのなら。」

「・・・俺が構う、オプティマス。」メガトロンは声を低めた。「俺は自分がお前の為に何もできないと思った時、心の底から無力を感じるのだ。自分を憎悪し、より大きな力を求めずにはいられないのだ。」

オプティマス・プライムはメガトロンを強く抱き締めた。「そんな必要はない、メガトロン。私はお前が無力だなんて思わないし、今のままのお前で充分だ。本当に。お前が一緒にいてくれるだけで、私は何でもできる気がするし、何があっても平気だ。私はただお前に傍にいて欲しい。どうか信じて欲しい。」

それ以上の言葉はなく、二人は静かに抱き合った。メガトロンが己と向き合い考えを巡らせるのを感じながら、オプティマス・プライムはただ彼の心の平穏を祈った。

しばらく時間が過ぎ、メガトロンが呟いた。「全ては俺の心の弱さ故の過ちだった。」

オプティマス・プライムは慌てて飛び起きた。彼は悲しみに駆られて声を荒げた。「違う、そんな風に言わないでくれ。お前がそうしたのは、お前が私を大切に思ってくれていたからこそだ。」

「俺を許してくれるか、オプティマス。」

「当たり前だろう!」

静かに見上げてくるメガトロンに、オプティマス・プライムは万感を込めて答えた。

「私はお前の考えが解らなくなって、酷く苦しい時があったけど、それでもお前を憎んだことなど一度だってなかった。本当に・・・お前が好きなんだ、メガトロン。」

「俺は随分と長い間、お前を嘆かせた。償いをしたい。」

「償いなんて必要ない・・・お前は既に大きな厄災を退けたのだから。」オプティマス・プライムはメガトロンの横顔を労わるように撫でた。その手をメガトロンが取って口付けるのに気を取られながら、彼は明後日の方向に視線を逸らせた。「・・・けど、もしどうしてもと言うなら・・・」

「何だ?」

「・・・へ、部屋を、その・・・」

オプティマス・プライムは部屋の隅に視線を向けたまま、言い難そうに言葉を捜している。

「ああ。」メガトロンは促し、忍耐強く待った。

「これからは一緒に住まないか? ・・・一つの部屋で、私と。ベッドは別で構わないから・・・もっとお前と一緒の時間を過ごしたいんだ、その、寝るだけじゃなく。」

しどろもどろに言い終えたオプティマス・プライムを見て、メガトロンは拍子抜けしたように息を吐いた。

「何だ、そんなことか。それなら明日にでも新しい部屋を確保しよう。」

「いいのか?」

「構わん。寧ろ歓迎する。」メガトロンは真面目な顔で言った。「俺は今まで、故意にお前との距離を置き過ぎていた。だがそれが大きな過ちを招いたのだ。心理的にも物理的にも、俺にはもっとお前と寄り添うことが必要かもしれん。」

「メガトロン・・・私も・・・私もそうだったよ。私もずっと、差し伸べられるお前の手を頑なに拒んできたんだ。愚かだった。」

「俺はもっとお前自身をよく見、お前の声を聞くよう努める。些細な行き違いで二度とお前を見失うことのないように。」

躊躇いなく告げるメガトロンの声はオプティマス・プライムの胸に深く染み入った。率直で飾らない彼の言葉のどんなに誠実で得難いことだろう。この声を失ってからの自分は、本当に唯悲観に暮れ、責任の為に動く人形のようだった。万に一つの幸運で取り戻した何よりも大切なこの光を二度と手放してはならないのだ。

「お前にそんな風に言って貰えて、私はとても嬉しい。」

「お前はもっと俺に寄りかかることを覚えろ。俺の為に。」

「・・・努力する。」

「お前にはいつも俺が付いている。それを忘れるな。」

「ありがとう、信じている。」

「俺が常にお前に言いたいことは一つだ、オプティマス。」メガトロンはオプティマス・プライムの肩を引き寄せ、彼を胸に抱き締めた。「お前を愛している。」

「私も・・・愛している、メガトロン。」

オプティマス・プライムはこの時初めて、誰かと心が通じ合ったのだと思った。もう何の心配も悲しみもなかった。心からの満足に、彼は無意識に微笑んだ。それは彼が初めて見せた、屈託のない明るい笑いだった。


***


翌朝、急遽召集されたコンストラクティコンにより居住エリアの大改造が行われ、快適な居室と広い寝室、そして機能的な浴室を備えた、二人の為の新居が完成したのであった。

騒ぎを聞きつけて飛んで来たスタースクリームは部屋と上官を見比べて驚きの声を上げた。

「一体何事ですか、これは。」

「見ての通り、新居だ。俺とオプティマスのな。」

「は? 貴方と? オプティマス・プライム?」

「そうだ。今日からここに二人で住む。周知しておけ。」

「はあ。」

気の抜けた返答をしながら、スタースクリームは上官に並んで立つ、オプティマス・プライムの姿をちらりと見遣った。

この数週間で、彼はすっかり変わった。第一に声や雰囲気が明るくなったし、人と接する態度は丁寧ながらも余所余所しさや堅苦しさが抜け、余分な力を落としたような自然さがある。以前よりもずっと落ち着いた、堂々とした態度は彼を一回り大きく見せている。そして時々メガトロンを見ては微笑み、彼が間近で何やら囁く言葉にはにかむ姿は、この上なく幸せそうに見えた。

セイバートロン百万の民の頂点に立つ元首がこんなに暢気にしていていいのだろうかと心配する一方で、こんな平和な時代がずっと続けば良いと、スタースクリームは思うのだった。





The End








以上、腐女子による実写映画ハッピーエンド完結編をお送りしました。
なんかただの反省会になってしまいましたが・・・
というか喋ってるだけですいません。
けど言葉を尽くしてお互いを理解しようとする努力は必要だと思う。

OPだけが記憶を持って過去のセイバートロンに戻り、
内戦は起きずオールスパークの放逐も行われないという、
映画一作目とは別の未来に進んだ、
という話でした。

私は実写映画の和解ENDは絶対にないと思っていまして、
その理由は双方人が死に過ぎてて既に「ごめんで済まない」状況に
なってしまっている。ということです。
(まあ真の和解とはそういう上に成り立ってこそとも思いますが)

従って和解ENDを迎える為には、私の頭では

@死んだ人(人間含む)が全員生き返る
Aそもそも誰も死んでないことにする

という案しか思いつかなかったので、今回は
誰も死んでないことにしてみました。


メガトロンが結局何をしたかったのかはよくわからなかったので捏造した。

映画の登場メンバーをなるべく出そうとは思ったんですが、
戦闘要員っぽい人(特にオートボット)はこの時代に要職についていたとは
思えず出番なし、無理やりラチェット(名前も出てないけど)と
ショックウェーブ(名前だけ)(←台詞喋ったのはSW)
を出してみたけど我ながら強引だったwww




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