以下の文章は所謂「女性向け」ファンフィクションです。やおい、BLといった分野に興味のない方の閲覧はお止め下さい。



或るプライムの死



 
ケイオンの監獄はディセプティコンが誇る情報参謀サウンドウェーブが彼の冷徹なるリーダー・メガトロンより管理を任された彼の牙城である。監獄とは名ばかりの屠殺場であるそこには、日々数多くのオートボットや、ディセプティコンに害を成す者達が捕らえられ、送り込まれて来る。

その全てが最終的にリサイクル工程に回され、新たな金属材料となる運命だったが、時にはそのコースから一時外れ、自らの死を目前に更なる辛苦に曝される哀れな犠牲者が存在するのだった。

以下は深夜の警備任務に当たった、通りすがりのディセプティコン兵士から漏れ聞こえた会話である。

「で、そのゼータ・プライムはどうなったんだ?」

「もう用は済んで、サウンドウェーブが持ってったらしいぜ。」

「またあいつの悪趣味かよ。寒気がするぜ。」

「そういうこった。なあ知ってるか、あいつの拷問を受けた奴はなあ・・・」

「なんだよ。気が狂って廃人にでもなっちまうのか?」

「いや、奴に食われて骨格も残らないって話だぜ。」

「・・・そりゃどういう意味だよ。あいつは人を食うのか? 生で?」

「さあね。とにかく、二度とここから出られる見込みはないってことさ。」

「おーこわ」




薄暗い明かりの下で、ゼータ・プライムは意識を取り戻した。体は重く、あらゆる部分が鈍痛に支配され、頭の中も酷く痛む。僅かに首を動かし、視界を巡らせること以外には、指先一つ動かすこともできなかった。力なく項垂れると、ノイズ混じりの視界の中に、メガトロンの手によって抉られた自分の胸が映った。分厚い装甲に守られていたはずのそこは、今は虚ろに穴が開いて、本来そこに輝いているはずのレーザーコアは冷たくなった欠片を僅かに残すのみだった。

動力炉を失って、どうして生きているのだろう。まるで他人事のように思い、次に彼は、自分の体に無数に繋がれた大小のコネクタ、ケーブルの存在を感じ、納得した。力を失った四肢を固く拘束し、同時に彼の体を中空に支えているケーブルから流れ込む外部エネルギーによって自分は生かされているのだ。

「ゼータ・プライム。」

頭の中に声が響いたような気がした。

ゼータ・プライムは薄闇に視線を彷徨わせ、眼下に見慣れない影があるのに気付いた。しかし掛けられた声によって、彼は相手が何者であるのかがわかった。

オートボット兵の間で「悪魔」と呼んで恐れられる、ディセプティコンの情報将校サウンドウェーブ。彼こそは、戦場以外で対峙が予想し得る敵の中でも最悪の相手だった。彼は自分の楽しみの為に、虜を嬲り殺しにするという。戦争という大きな暗闇の合間に葬られる哀れな犠牲者はその数さえ定かではない。自分は恐らく、数分もしない内に、いっそあの時死んでいた方が幸せだったと後悔させられるに違いない。

しかしゼータ・プライムは、努力してそのような自分の弱気を頭の中で振り払った。自分にできることは何もないかもしれない。それでも生きている限り自分はプライムの名に恥じない振る舞いをしなければならないのだ。少なくとも、守り通して死ぬべきものがあるはずだ。

サウンドウェーブは動かない。しかし唐突に、ゼータ・プライムは頭の中に何かが侵入してきたのを感じた。背後の暗闇の中から、はっきりと形を持った見えない何かがじわりと立ち上がった。それは無数の冷たい手を伸ばし、縛り付けられた彼の脇腹を軽く掠めた。ゼータ・プライムは息を呑んだ。軽く触れるか触れないかの接触を保ちながら、それは生々しい感触を残しながら項へと這い上がる。

僅かに息を震わせ、ゼータ・プライムはぞくぞくとした寒気のような悪寒を堪えた。情けなく声が漏れそうになるのを、唇を噛んで抑える。

ゼータ・プライムは未知の相手に形容し難い恐怖を感じて身震いし、直ぐに乱暴に首を振った。

落ち着け、これはサウンドウェーブがハッキングに伴って見せている、実体のないただのイメージに過ぎない。何も恐れることはない、恐怖に負ければ自制を失ってしまう。彼は自分に言い聞かせるように心の中で繰り返した。

「無駄な抵抗をするな。」

耳元で声が響いた。ゼータ・プライムは反射的に視覚センサーをフル作動させた。視界の端にサウンドウェーブの仮面のような顔が映り、ゼータ・プライムの失われた筈のレーザー・コアが異常な脈を打って跳ね上がった。しかし一瞬後にはその姿は初めからなかったかのように消え失せ、激しい動揺と共に見直してみれば、サウンドウェーブは最初に見た時と変わらず、手も脚もない不気味な姿で彼の眼下に鎮座していた。彼は背筋を何か冷たい物が流れ落ちるのを感じた。たった今、はっきりと彼は見たのだ。

サウンドウェーブを睨みつけても、何の反応もなかった。その間にも、無数の冷たい手が背筋を這い登り、首筋を撫で、側頭部に触れてくる。

力強い二つの手が、ぐいと腰を掴んだ。

「っ!?」

がっちりと腰を固定して緩めない、無骨な指の形までが鮮明に感じられるのに、そこに見えるのは自分の腰部、そして太腿に幾重にも巻き付いた、無機質なコードだけだった。

そして、ずるり、と何かが下肢に押し入ってきた感覚に、ゼータ・プライムは堪え切れずに声を上げた。

「う、ああっ! あ・・・」

それは苦痛を全く伴わない、ただひたすらに生々しく蠢く、細長く柔らかい何かだった。逃れようにも、押さえつけられた体はびくともしない。「やめろっ! やめ・・・」

ゼータ・プライムは我を忘れて叫んだ。彼は苦痛をもたらす拷問には慣れていた。ディセプティコンと敵対してきた長い年月の間に、囚われて自由を奪われ、見せしめに陵辱されたことも一度や二度ではなかった。物理的に体を破壊されることなど今更恐ろしくはないし、それに耐える方法は知っている。しかしこのような不可解な責め苦に遭ったことはなかった。

禁欲的な従軍人生で使い慣れていない彼の受容器は、しかし大したな抵抗もないままに、ずるずると異物を飲み込んでいった。数秒、十数秒、普通ならもうとっくに行き着く先まで辿り着き、それ以上は入り込む余地もないはずだった。にも関わらずいつまでも終わる気配のないそれに、ゼータ・プライムは不安を通り越して恐怖に背を震わせた。

それが鋭敏なセンサーの固まりである狭い器官を通り過ぎ、その柔軟な体を擦り付ける度に、悶えるような快感を残して行くことが却って恐ろしかった。それによって何かもっと重大な、一刻も早く気付かねば危険な事実が隠蔽されているように思えてならなかった。

「ひ、ぁ、ああ・・・」

ゼータ・プライムは浅く、早くなった呼吸に胸を喘がせた。そしてそれでも尚、彼は自制心を取り戻した。この感覚は幻なのだ、現実には何も起こってはいないのだ。混同してしまえば、それこそサウンドウェーブの思う壺だ。彼は何度も自分に言い聞かせて触覚を伴うイメージに耐えようとした。

そうして一瞬息を付いたのも束の間、彼は恐ろしい変化に気付いた。尚もその存在を声高に主張するそれが、侵入を続けながら少しずつその径を増している。ゆっくりと、しかし確実に、元は狭い受容器の口が押し広げられていく。これは幻だ。幻――圧迫感が酷くなってきた。息が苦しい。ぎっちりと嵌まり込み、狭過ぎる器官を押し通ろうともがくそれの動きに繊細な構造が引き攣れて痛みを訴える。侵入する動きが遂に止まった。ゼータ・プライムは自分の体が恐怖の予感に震え出すのを感じた。

限界まで張り詰めた器官が、鈍い痛みを訴え始めた。それの膨張は止まらない。びしりと亀裂が生じ、激痛が走った。

「――っ!!」

痛覚を閉鎖することも、意識を遮断することもできない。

痛い。痛い。痛い! 衝撃に思考を奪われながらも、ゼータ・プライムは必死に悲鳴を飲み込んだ。彼の苦悶を他所に、それは尚も膨張を続けた。呼応するように、既に体に入り込んだ部分までもが内側から彼の体を破壊しようと膨張を始める。繊細な器官を形作る金属箔を押し歪め、命を持った構造体を引き裂く恐ろしい音が、聴覚を遮断しても自分の腹の中から聞こえてくる。

「痛いか」

冷たい声が掛けられた。

ゼータ・プライムは意地になって首を振った。認めてしまえば、自分は二度と彼の罠から逃れられなくなるだろう。彼は頭の中に流れ込む破壊のイメージから必死に目を逸らそうと現実に目を開き、そのために、ばきん、と耳を塞ぎたくなるような音がした方を、見てしまった。

かつて数度、セイバートロン星の地下で見たことのある、目のない気味の悪い生き物が、ぽっかりと開いた胸の空洞からその顔を除かせ、彼のレーザーコアの破片をその口に咥えたまま、にたりと彼に笑いかけた。

薄暗い室内にゼータ・プライムの絶叫が響き渡った。

恐怖と混乱に満ち、そして絶望感に彩られたその悲鳴は、サウンドウェーブの嗜虐心を充分に満足させるものだった。

自由を謳い、強く気高く、オートボットの敬愛をその一身に集めてやまない英雄が、暗い部屋で手足を繋がれ、己を失い、誇りを奪われて、小さな獣のように縮こまって頼りなく震えている。彼が一体どこまで落ちるのか、サウンドウェーブには楽しみでならなかった。

意味をなさない言葉が口を突いて出るのを、ゼータ・プライムは止められなかった。おぞましいそれを凝視したまま停止した思考が、何も見るな、考えるなと最後の警告を発する。

限界を超えて縒り伸ばされた彼の正気の糸がぷつんと切れる、その一瞬前に、暗闇から伸ばされた手がコラプト・ワームの頭を掴み止めた。

ワームはぴたりと動きを止め、同時にゼータ・プライムを苛んでいた痛みと混乱、恐怖の全てが色彩を失って凍りついた。

恐る恐る視線を辿らせ、その手の主を見る。サウンドウェーブが見下ろしていた。

「助けて欲しいか」

熱狂とは程遠い、冷たく平坦な声が訊いた。

ゼータ・プライムは答えられなかった。それでも半ば無意識に首を横に振ろうとした時、サウンドウェーブの手の中で、ぴくりとコラプト・ワームが蠢いた・・・ような気がした。自分を捕えた手から逃れ、再び動き出そうとしているのだ。全身に嫌な冷たさを伴う悪寒が走った。失われた筈のコアが異常な早鐘を打って暴れ出す。ワームの細かい無数の足が、動き――

「やめっ、やめろ・・・」ゼータ・プライムは恐怖に喘いだ。「嫌だ・・・あ、ああ・・・!」

「助けて欲しいか」

サウンドウェーブは繰り返した。

ワームの足の一本が動き、きい、と微かな音を立ててゼータ・プライムの内部構造を引っかいた。彼は可哀想なほど震え、終に、縋るようにサウンドウェーブを見上げた。

「サウンドウェーブ・・・たすけ、て」

間髪を入れず、ぐしゃり、と音を立ててサウンドウェーブの手がワームを握り潰した。

喉元まで迫っていた恐怖は再び消え去り、同時に体の中に詰め込まれた圧迫感もなくなった。ゼータ・プライムは緊張に震え、ぐったりと息を吐いた。

サウンドウェーブの手がリペア・レイの光を伴って腹を撫でた。ゼータ・プライムが呆然と見る内に、引き裂かれた体は元通りに修復され、穴の開いた胸にも新たなコアが収められ、きれいに装甲が閉じられた。

体の痛みは完全に消えた。しかし彼の思考回路は麻痺してしまったかのように、何もまともに考えることができなかった。

「ゼータ」

呼ばれて、彼はびくりと体を竦ませた。顔を上げると、その横顔にサウンドウェーブの片手が触れた。その指先が滑るように、合金製の皮膚を優しく撫で、柔らかく包む。逆らうことなど思いもせず、ゼータは身を委ねた。

その途端、また何かが下肢から侵入してくるのを感じて、彼はそれから逃れようと反射的に身を捩った。しかし見えない手に八方から押さえ付けられ、体はぴくりとも動かない。先ほどの恐怖が思い起こされ、彼はパニックに陥った。

「嫌だ! やめろ、やめてくれ、やめ・・・」

「逆らうな」

尚も侵入を続けながら、サウンドウェーブが告げた。「痛くない。」

「い、嫌だ、頼むから・・・!」

侵入するそれの動きが一定の場所で止まり、ゼータは不安に息を詰めた。それはゆっくりと逆行を始めたかと思うと、再び彼の体の奥へと押し入った。それが大きくゆっくりとした運動の方向を変え、内壁を擦り押し付ける度に、下肢から背中を伝い、全身を甘く痺れさせるような、表現し難い感覚が湧き上がった。

「んっ、ぅ、ん・・・」

固く食い縛ろうとする口元を裏切って、甘えたような喘ぎが上がった。止められない。感じられるのはむず痒い心地良さだけで、いつまで経っても痛みは襲って来なかった。

「痛いか」

サウンドウェーブが訊いた。

ゼータはなんとか首を振った。「痛くない、」

そう口にした途端、恐怖を忘れた。

彼が強く反応する場所を探り当て、それは確実にゼータの性感を煽った。何も考えられなくなる。息を詰めた、しかし情欲に濡れた喘ぎだけが暗い部屋の空気を乱した。

「声を出せ」サウンドウェーブが命令した。「もっとよくなる。」

促されて、ゼータは声を解放した。どうして素直に従ってしまったのか、恐らくは今更反抗する気力もなかったのだろうが、それもどうでもよく思えた。

「あ、あっ・・・ん・・ぁふ、」

サウンドウェーブの言葉通り、感じ方がぐんと深く、より鮮明になった。急速に引きずり込まれるようだった。

「良い声だ。」

「んっ、ああぁっ・・・!」

自分でも耳を塞ぎたくなる、欲に塗れ制御を失った、聞くに堪えない無様な声だと思うのに、どうしてサウンドウェーブがそのように言うのかわからなかった。

ゼータは己を恥じた。ディセプティコンにいいように犯され、快感に身悶えしている自分が酷く情けなく、彼は自らを呪わずにはいられなかった。自分は無様に生き恥を晒し、オートボットの――

「ゼータ」

思考を遮って、サウンドウェーブが言った。「そんなことは、考えなくていい。」

ゼータ・プライムは呆然と彼を見た。「な、ぜ・・・あ、んんっ」

「奴らのことは放っておけ。お前は、自分のことだけ考えればいい」

彼は一体何を言っているのだろう。

「気持ちがいいか」

問われた瞬間、それまでの思考はどこかへ飛んで行ってしまった。

ゼータ・プライムは甘い喘ぎと共に切なげに喉を逸らし、身を捩った。

「あぁっ、気持ち、いい・・・」

そう口にした途端、ゼータ・プライムは、すっと気持ちが楽になったのを感じた。

「それでいい。」

もう一度、サウンドウェーブの手が横顔を優しく撫でた。

痛みは消えたのに、まだ緊張の震えが止まらない。それなのに、体は快感の波に絶えず揺られ、意識は朦朧として覚束ない。自分の声さえ遠くに聞こえて現実味がなかった。しかしどうして、この動かない体を揺すり上げ、下肢を一杯に満たして犯すこの存在が現実のものでないと言い切れるだろう。

サウンドウェーブが与えてくる快感は、恐ろしく心地が良かった。敵の手菅に翻弄される羞恥や屈辱も、途中から感じなくなった。そんなものは必要ないと、彼が囁くのだ。感情の篭らない静かな彼の声は暗示のように頭の中に響き、驚くほどすんなりと受け入れられた。

ゼータ・プライムは諦めと共に密かに思う。私の自尊心や名誉などどうでもいい。踏み躙るなら好きにすればいい。その代わり、本当に大切な物は渡さない。しかしサウンドウェーブはそんな悲壮な覚悟すら必要ないと一蹴するのだった。





(以下あらすじ)

ゼータ・プライムは普通の拷問とか、自分自身に加えられる苦痛にはめちゃくちゃ強いしそういうのはもう過去に経験済み。ていうか拷問の一環として強姦されたことも何度もある。なのでそういうのも平気。だと本人は思っている。「友人達やハイコンサルには迷惑はかからない、自分が苦しむだけなら上等。好きなようにすればいい。」と開き直ってしまうのがゼータ・プライム。というか彼から情報を得るのは最初の数分でもう終わっているし、そもそも彼の持つ機密情報など大したものではない。

サウンドウェーブが彼にするのは、ゼータ・プライムの心と魂とを全て暴くこと。

プライムとしての厚い殻に覆い隠され、押さえつけられてきた彼の本性、心からの渇望、ささやかな望み、愛憎その他諸々、自分でも知らなかった素の自分自身をサウンドウェーブの手によって暴き出され、サウンドウェーブの目に晒され、肯定されることは抗いがたい快感をもたらす。だから抗いきれない。抵抗・嫌悪・苦痛・恥辱は次第に諦め・無力感・恐れに取って代わり、最後には秘密を暴かれる被虐の喜びへと変わる。

ゼータはそれを堕落と評する。自分はもうゼータ・プライムには戻れない。どこにも居場所はない。死ぬしかないと。

体と同時に精神が侵される。欲望を見せ付けろ。本性を現せ。心にある声を一つ残らず叫ぶのだ。それを聞く者は俺しかいないし、全部済んだらお前は死ぬ。だから安心して全てを曝け出せ。その全てを俺は認めてやろう。それがどんなに醜く汚いものであろうとも!

逆らう力を奪われ、打ちのめされ、力で従わされることにゼータは暗い満足と快感を覚え始める。蹂躙されることに安心する。というのは単に彼の元々の性質とか性癖とかいうのではなく、(本来相応しくない)自分がプライムとして大きすぎる力を行使してきたことへの償いの気持ちが強い。そしてその贖罪が最終的な彼の望みかと言うとそれは、サウンドウェーブ曰く「違う」。贖罪を済ませた後には、ゼータは価値を認められ愛される事を望んでいる。もう罪のなくなった彼自身を。「それでいい。ゼータ、堕ちたお前を、俺は心から愛してやろう」欺瞞の民が耳元で囁く言葉、虚構とわかっていても逆らえない。

ちなみにゼータは繋がれて色々されてるが、サウンドウェーブ本人が物理的に手を下しているのではない。実写映画宜しく種々のコードと、電気信号によるバーチャルな手がプライムの体と精神を侵している。ゼータにとっては、体に触られている感覚はあるのに、実際目に見えるサウンドウェーブは突っ立っているどころか第三の形態(アレ何だ??よくわからんけど情報戦に特化した形態なんだろう。多分)で微動だにしない。しかし冷たい視線を全身に感じる。そんな状況が最初は非常に腹立たしいが、次第に快感になってくる。全てを相手に握られている、決して逆らえない、全て見られ、支配されているという状況に安心感を覚える。

ところでお約束としての、苦痛には耐えられても快感には・・・みたいなのは、やっぱアリとする。肉体的に隙ができるなら同時に精神にも隙ができるに決まっている!快感を受け入れる時点で精神的な支配権も明け渡すのと同じ(相手がサウンドウェーブだから、ということで)。ゼータは、私の矜持など大したことじゃない、自分がどんな目に遭わされようとも、オートボットの機密を奪わせはしない、とがんばるが、そうやって自分を身代わりにしようとした時点で精神の守りを放棄してしまっており、それこそがサウンドウェーブの狙いだったことに気付いていない。気付いた時には既に遅い。

(お前は、何よりもお前自身を守るべきだった。)

サウンドウェーブの術中にはまったゼータ、しかし実はゼータの方が一枚上手でしたざんねん!と思わせておいて結局はサウンドウェーブの手の平の上で踊らされてましたみたいな展開。

「どの道、私は、死ぬんだろう?」

「そうだ。」

「・・・よかった。オートボットの民に、醜い私の本性を見せずに済む」

(愚かな奴等だ。)サウンドウェーブは心の中で呟く。ゼータもオートボットも。

「私はいつ死ぬんだ?」

「奴らがこの部屋に辿り着いた時。」

「助けが来た時が、私の最期か」(ある意味、味方に殺されることになるとは)

ていうかゼータは放っておいても死にますが。メガトロンにレーザーコア破壊されてるし。

「お前は死ぬ。ただそれだけだ。思い煩うことは何もない。」

「そうかな。」

「受け入れろ。」

「・・・そうする以外はないようだ。」

「俺は死ぬまでの間、時々思い出してお前の声を再生する。」

「・・・そんなに私の声が気に入ったのか?」

「そうではない。」サウンドウェーブは諭すように言った。「お前の声だから聴く。」

「・・・よくわからないな」

「お前は二度とオートボットには戻らない。」

ゼータの胸に広がったのは安堵だった。「・・・ああ。」


間もなくオートボットがやってくる。「最後に何か望みは?」

「キスしてくれ、サウンドウェーブ」

サウンドウェーブの片手がゼータの頬を撫で、優しく顎を掬い上げて促した。そっと唇が触れる。

(死の接吻だ・・・死神とはこんなにきれいな顔をしているものか)もっと邪悪な笑いに歪んだものだと想像していたのに・・・ゼータはぼんやりと思う。気持ちが良い。甘い、なんて言葉では言い表せない。優しい、魂を包み込んで柔らかく溶かすような・・・何も奪わない、与えるだけだ。死神がこんなにも慈悲深い存在だとは今まで知らなかった。

こんなにも穏やかな気持ちになったことはなかった。生まれて初めて心が解放され、自由になった気分だった。もう何も自分を苦しめることはないし、何も恐ろしくはない。こんな死に方も悪くない。

なんだ、死というものは、案外楽に受け入れられるものだな。

ゼータは視界を閉じたまま、ふっと笑った。

名残惜しげに唇が離れ、サウンドウェーブが囁いた。

「お別れだ、ゼータ」

ゼータは微かに頷いた。心で呟いた言葉は、声になる前にゼータの意識と共に消失した。

その直後、部屋に雪崩れ込んできたオートボットが発見したものは、数々のコードによって壁に縫い止められたゼータ・プライムと、その前に立ちはだかるように鎮座して微動だにしないサウンドウェーブの影だった。その直後に巻き起こった戦いの喧騒も、ゼータの魂の平安を乱すことはなかった。

終わり。









(エピローグ)


監獄から戻ったサウンドウェーブにメガトロンが訊いた。

「ゼータ・プライムはどうした。」

「敵が死体を持って行った。」

「奴の始末は間違いなく済ませたのだろうな?」

「勿論だ。」

「・・・満足したようだな。」

「久々の上物」陶然とした声に、興奮の余韻を残すバイザーアイ。

メガトロンは、こいつを敵に回すのはすっごい嫌だなと思う。

「さて、お遊びはここまでだ。次の仕事にかかるぞ!」

「了解」いつもの単調な声が応えた。





The End









きゃー痴漢!変態!殺人鬼!助けてー!

という訳でWFCサウンドウェーブの本領発揮編でした。
ていうかアレ脚開かせ過ぎだろjk・・・と思う今日この頃。

コラプト・ワーム(The Corrupted Worm)は
オートボット編のチャプター8?で出てきたドリラーみたいなアレ
けど名前違うかもしれんすいません


最後ハッピーエンドになっちゃったというかSWが
予定に反して微妙にいい人になっちゃった。

ついでにゼータは死んでなくて(体は死んだけど)魂ごとSWに取り込まれて、
ある意味で自由の魂となって生きている(でも彼はSWの奴隷だ)、
ってことにしてもいいかもしれない。

んで時が来れば、新たな体を得て復活とかもできるような。
でもそしたら結局はオートボットに戻っちゃいそうな。
うーん。でもSWに全てを曝け出し、肯定されたという悦喜を
ゼータは絶対に忘れられないことだろうよ。

でもそんな腑抜けた彼にはSWはもう興味を示さないだろうな。
いや案外、ペット的な愛着を持って可愛がってくれるかも?







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