以下の文章は所謂「女性向け」ファンフィクションです。やおい、BLといった分野に興味のない方の閲覧はお止め下さい。


 
 
荒野に吹く風(前編)
 
 

ある日、俺は6台の車と16人の戦士で構成された部隊に加わって任務に出かけた。半日かけて砂の中から掘り出したスクラップをワゴンに山盛り積み込んでガスタウンへ帰る途中、何者かに襲われて戦いになった。そいつらは”バザード”の連中だったと、後で兄弟に聞いた。

熱狂的な戦いの中で一人の戦士が勇ましく散り、ヴァルハラへと旅立った。その眩しい姿に勇気付けられて、俺は必死に戦って、2人の敵を仕留めた。

砦に帰ると、年上の戦士や兄弟たちにばしばし肩を叩かれて、その時から俺は”ウォーボーイ”の一員になった。それは偉大なジョーの息子である俺が一人前の戦士だと認められた証拠で、立派な大人になったという意味でもあった。これから俺は父なるジョーのため、ガスタウンの主スクロタスのため、そして大事な兄弟のために戦って、大きな手柄を立てて、いつか最高の時を経てヴァルハラに迎えられる。俺はそんな想像をして興奮した。俺の全てである望みに一歩近付いた気がして、嬉しくてたまらなかった。

でも、それから何年も経った今も、俺はまだその時を迎えていなかった。兄弟たちが羨むような大きな手柄を立てるどころか、一時は得たランサーの地位も、長引いたケガのせいで失ってしまった。俺は戦いに出られない日が続いていた。町の中で兄弟たちと一緒に働くのは楽しく、町の仕事が大事なこともわかっていたが、やっぱり戦いの中で果たす貢献とは違うと思った。俺は焦っていたが、どうしようもなかった。

そんなある日、ガスタウンはたくさんの車両部隊を迎えて大忙しだった。偉大なジョーの実の息子であり、このガスタウンを治める不死身の戦士スクロタスと、彼の広大な領地を守る6つの砦のリーダーたちとの会合が行われるのだ。

俺は兄弟たちと一緒に、次々と到着する車両と、そこから降り立つ戦士たちを眺めていた。トップドッグと呼ばれるリーダーたちは、スクロタスによって選ばれた最高の戦士だ。遠目にも目立つ立派な体格と、堂々とした態度は、そこらの兄弟たちとはまるで格が違った。俺は圧倒されてしまい、彼らから目を離すことができなかった。一体どんな戦いを経験すれば、あんな風になれるんだろう。

俺は自分の名前が呼ばれているのに気が付いた。はっとして振り向くと、歳の近い兄弟が工具や水の入ったボトルを一杯に抱えて喚いていた。

「ぼけっとするなよ。ほら、」

荷物の内のいくつかを受け取って、俺は改めて車列を見渡した。修理が必要そうな車は見当たらない。

「どれだ?」

「もうすぐ入ってくる。すごい戦闘があったらしいぜ。」

「またバザード?」

「わかんねえ。」

その時、一際大きなエンジン音を響かせて、新たな部隊が入ってきた。先頭は大型のバギーで、それは考えるまでもなくトップドッグの車両だった。あちこち穴が開いていて、腹の下からは何かの液体が漏れている。その後ろに続く車両からは白い煙が上がっていた。こっちも酷い状態だ。後部にいるはずのランサーの姿が見えない。

「大変だ。」

慌ただしく、乱暴に止められた車両から戦士たちが降りるのを邪魔にならない場所で待ってから、俺はトップドッグの車両に急いだ。後続車にも別の兄弟が向かい、ケガ人を運び出すのを手伝い始める。

ボンネットに手が触れようとした瞬間、俺はとてつもなく強い力で、がっと体を掴まれて止まった。驚いて振り向くと、ウォー・リグのような巨大で揺るぎない姿が視界を塞いでいた。ぽかんとして見上げると、特徴的なマスクが俺を見下ろしていた。両目だけが辛うじて露出した覆面はトップドッグの証で、スプレーで鮮やかにペイントされたそれは――スタンプ・グラインダーだ! 信じられない。マスクの向こうの目と目が合った途端、俺の頭は痺れたようになった。

俺が状況を理解する前に、俺の体は再び振り回されて、車と思しき物にぶつかって止まった。頭がぐらぐらする。目を開けてようやく立ち上がると、彼はもう俺に背を向けて、大股で砦の中へと歩き去っていくところだった。

「おい、大丈夫か?」

兄弟が駆け寄り、心配そうに俺の顔を見た後で、にやっと笑った。

「さすが、すげえ迫力だったな。」

「うん。」

俺は一瞬のできごとにすっかり興奮して頷いた。初めて間近で接したトップドッグの力強さにすっかり感動してしまった。数え切れないほどたくさんいるジョーの息子たちの中で、最も優れた歴戦の勇士であり、偉大なジョーに信頼され、広大な土地とそれを守るための砦を任された、たった6人のリーダーの内の一人だ。俺がどんなに頑張っても決して手の届かない遠い存在だと思うと同時に、憧れと尊敬の気持ちが一層強くなった。

落ち着いて周りを見ると、目の前にあったのはグラインダーの車ではなく、他の戦士が乗っていたトラックだった。酷い状態だ。

「こっちを先に直せってことだな。」と、兄弟が言った。わざわざ口に出して俺に確認したのは、戦いの後で車両を修理する時、普通は地位の高い戦士の車を優先するからだ。

俺はグラインダーのバギーをちらっと見た。「あっちから漏れてるのは?」

「冷却水みたいだ。」

「じゃあやっぱり、後回しでいいんだ。」

俺たちは急いで車両の修理に取り掛かった。



半日ぐらい経って、会合を終えたトップドッグたちがそれぞれの砦へ帰り始めた。集合の時とは違って、出発のタイミングはバラバラだ。見送るガスタウンの兄弟ものんびりしていた。

俺は歳の近い兄弟と一緒に工具やパーツの片づけをしながら、その様子を横目で見ていた。トップドッグや、彼らに実力を認められて同行を許された一流の戦士たちの姿を目にするだけで、俺は気持ちが高ぶって泣きそうになってしまう。俺にとっては眩しくて遠い、まるで空に浮かんだ太陽のような存在だ。彼らのようにはなれなくてもいい。でも、できることなら彼らに少しでも近付いて、大切な兄弟たちに必要とされ、みんなの役に立ちたかった。それができないかもしれないと考えるのはとても恐ろしかった。

出発する車列をぼーっと眺めていた俺に、年上の兄弟が近付いてきた。彼は俺の顔を見るなり、俺が手に持っていたパーツを取り上げて台の上に置いた。

「お前はスタンプ・グラインダーの砦に行くことになった。すぐ支度してこい。」

俺は飛び上がって驚いた。いつも大きな危険に曝されているトップドッグの砦に入れるのは、選ばれた少数の兄弟だけだ。ウォーパップのような子供はもちろん、経験の浅い戦士もだめだ。俺は自分の寝床に走って行き、水入れやスプーン、下着なんかの俺の持ち物を掴み取った。そして慌てて元来た通路を戻る間に、自分の脚に意識をやった。どうして俺なんだ?

ガレージに戻ると、今度はオーガニックの部屋に連れて行かれた。そこで待ち構えていたのはオーガニックと彼の助手を務める兄弟で、隅の方にある台に服を脱いで上がるように言われた俺は、驚くような処置を受けることになった。

たくさんの水を使って体を洗った後、オーガニックは俺を横向きに寝かせて、手術を受ける患者が暴れないようにするみたいに、俺の脚を台に括りつけた。不安になって何をするのか尋ねると、オーガニックは「何って、セックスの準備だよ。」と気楽そうに答えた。

「セックスって何?」

「交尾することさ。知らないのか?」

「知らない。」

オーガニックはうーんと考えた。

「本来は子孫を残すために男女が行うものだがね。今回の場合はまあ、トップドッグへの体を使った貢献ってとこかな。」

意味は全然解らなかったが、トップドッグの名前が出たことに俺は驚いた。

「俺がトップドッグの役に立てるのか? どうやって?」

「お前が彼の”専属”になることでだよ。」

「セックスの?」

「そうそう。これはその下準備って訳さ。さ、大人しくしてな。」

それからの時間は大変だった。オーガニックは俺の尻の穴に水を入れたり、ぬるぬるする液を塗って指を入れたり、それどころか変な形の器具を突っ込んだりした。俺はすぐに逃げ出したくなったけど、体は台に固定されていたから、俺は変な汗をかいたり、我慢できずに情けない悲鳴を上げたりして、なんとか我慢するしかなかった。

オーガニックは俺に、穴を広げるんだとかなんとか言った。確かに、尻の中に入れられる器具が何度か交換されて、少しずつ大きなものになっている気がした。俺は息が苦しくて、それに尻の穴が痛いようなむず痒いような変な感じがして落ち着かなかった。

それから随分長い時間が経った後、オーガニックが最後に俺の尻から抜いた器具はバギーのドライブシャフトよりも太そうな棒だった。大きな異物が突然取り除かれた違和感はとても大きくて、俺はしばらく身動きできなかった。

オーガニックは穴の周囲を触って、笑いながら言った。

「坊主、本物はもっと太いぞ。しかしまあ、これだけ広げておけば大丈夫だろう。」

これよりもっと酷い目に遭うことを想像して、俺は恐る恐る尋ねた。「本物って何?」

「グラインダーの一物さ。」

「XXXが何だって?」

「ここに入れるんだよ。」

オーガニックは俺の尻に入れた指をぐいっと動かした。俺の尻がびくっと跳ねた。

「な、なんでグラインダーがそんなことするんだ?」

「気持ち良いからさ。トップドッグは忙しい。慰めが必要だろう?」

オーガニックが俺の脚を括りつけていたバンドを外すのをぼんやり眺めながら、俺は瞬きした。

「慰め……になるのか? 俺の、えっと……そこが?」

「そうだ。」

「全然解らねえんだけど。なあ、俺はどうすればいいんだ? もっと詳しく教えてくれよ。」

「そう慌てるな。最初は何もしないでいい。何かするような余裕もないだろうしな。グラインダーが勝手にやるだろうさ。」

「でも……」

「そんなに心配するな。トップドッグ直々のご指名だぞ。この上なく名誉なことじゃないか。」

俺は驚いてがばっと身を起こした。

「ご指名って? グラインダーが俺を選んだのか?!」

「そうだよ。今朝、ガレージで彼と会ったんだろう?」

「会ったっていうか……ウォーボーイの車を先に修理するようにって。」

「話をしたのか?」

「ううん。こう、肩を掴まれて……」

俺は身振り手振りで説明した。でも考えれば考えるほど、俺が選ばれた理由がわからない。その内にオーガニックは興味がなくなったように手を振った。

「まあ、彼には何か感じるものがあったんだろう。気に入られるといいな、坊主。」

そうだ、理由なんて俺には解らなくていい。それよりも大事なことは、俺がちゃんと自分の役割を果たして、トップドッグの役に立つってことだ。



その日の晩、俺は他の2人の兄弟と共にグラインダーの部隊の車に乗り、住み慣れたガスタウンを後にした。ロット・ラスティーを通り過ぎ、フュエルベインを越え、車列は結構な時間走り続けて、やがて見たことのない巨大な岩山の景色が広がる土地へと辿り着いた。

月明かりにぼんやりと白く浮かび上がる、首のない奇妙な像の足元に、グレートウォッチャーと呼ばれる砦はあった。地響きと共に鉄のゲートが開かれて、全ての車両が砦の中に入ると、再びゲートは閉じられて、岩山を吹き抜ける強い風が少し弱まったように感じた。

俺は帰投した戦士たちと共に、帰りを待っていた兄弟の出迎えを受けた。ほとんどが初めて見る顔だったが、年上の兄弟たちは俺たち3人の新入りを、パプスの頃からの仲間のように温かく迎え入れてくれた。

頑丈な岩山に沿うように築かれたグレートウォッチャーは外から見たよりもずっと広く、複雑に入り組んでいた。でも、ウェイストランドで最も大きな町であるガスタウンとは比べようもなくて、砦の隅から隅までも歩いてすぐだった。兄弟の寝床は数部屋に散らばっていて、砦の中央の辺りに食堂や炊事場、ガレージなんかがあり、そこから少し離れた通路の向こうには厳重に守られた武器庫や倉庫があった。何階層も重なった砦の一番上にはトップドッグの部屋や見張り台があり、常に誰かが周囲を警戒している。遠くまで見渡せる平野と違って、岩の壁や深い谷が入り組んだ複雑な地形は不意打ちを受ける危険が大きかった。ロードキルや他の野蛮な連中から度々襲撃を受け、今までに少なくない数の戦士がここからヴァルハラへと旅立ったという。

夜通し走り続けた兄弟たちは食事を終えるとそれぞれの寝床へ行ってしまった。彼らの置いて行った食器を集めて置き、食堂を出たところで、一人の兄弟が俺を待っていた。

「お前、ボスの”専属”だろ?」

俺はどきっとした。

「うん。」

「行ってこい。ボスがお待ちかねだ。」

彼に案内されて暗い通路を辿り、最上階の部屋に入ると、後ろで鉄のドアが閉められた。部屋のほとんどを占める大きな寝床は、床から一段高く作ってあり、壁に沿って置かれた物入れの上にはランプが1つ灯されて、真っ暗な部屋を照らしていた。

その小さな明かりの中に大きな影があり、俺が一歩近付いた途端、素早く延びた手が俺の腕を掴んだ。

あっと言う間に寝床に放り出された俺の上に、重い体が覆い被さってきた。煙のような独特の匂いがする。スタンプ・グラインダーに間違いないはずだが、今の彼は頭全体を覆うマスクをしていなかった。俺は初めて見るトップドッグの素顔にどぎまぎした。彼の顔には古そうな傷跡がいくつもあった。幾多の戦いを生き抜き、経験を積んだ熟練戦士の顔だ。そしてその目はガスタウンのガレージで見たものと同じだった。疑いようのない勇敢さと同時に、底が見えない深い穴を連想させる。再び、俺の頭は衝撃で痺れたようになった。

グラインダーは何も言わずに俺の服を剥ぎ取った。ブーツの片方は服と一緒に脱げて落ち、もう片方はグラインダーが俺の足から引っこ抜いてどこかに放り投げた。

服を脱がしたってことは、やっぱり尻をどうにかするんだ。俺は心臓がどくどく鳴るのを感じながら、オーガニックの言ったことを思い出そうとした。俺は何をすればよかったっけ?

「お前、経験は。」

初めて彼が口を開いた。低くて太い声は俺の頭にじんと響いた。しばらく意味を考えて、俺は慌てて首を振った。

グラインダーは俺を寝床に残して離れ、またすぐに戻ってきた。それから俺の片足を掴んで胸の方へ押し上げた。彼の大きな手でがっちりと固定された膝の裏が熱くて、それと一緒に俺の顔も熱くなった。

グラインダーが俺の顔をじっと見ている。それだけで俺は気が高ぶってしょうがなかった。強く偉大な存在に自分の生きた姿を”見届けられる”ことは大きな幸せだ。ヴァルハラへの道行を確かにしてくれる。それに、俺のような平凡なウォーボーイにとって、トップドッグは遠い憧れの存在だった。彼のような強く逞しい戦士とこんなに間近に接することができるなんて、まさに夢のようだった。

何だか濡れた感触と共に、グラインダーの太い指が俺の尻の穴を探った。俺の緊張をよそに、それは当たり前のように穴の中に潜り込んできた。

「う、うわっ、」

尻の中で指が動く感触に、俺は飛び上がりそうになった。力強い指が口の部分を擦ったり、中で動かされる度に、変な感じがして落ち着かない。息が苦しくて、脚に力が入らなくなってきた。

「あ、……ああっ、」

息が震えて、勝手に変な声が出る。その上、理由はわからないが、心細くてだんだん泣きたい気分になってきた。ジョーの息子として、決して見せられない無様な姿だ。こんな有様では、グラインダーの役に立つことなんてできないに決まってる。俺は急に恐ろしくなった。

グラインダーが背中から俺を抱え込み、覆い被さった。尻の辺りにぴったりと押し付けられた彼の下半身が、彼の衣服を通して熱く感じられた。首の後ろに温かくて柔らかい、小さな感触があった。くすぐったい。グラインダーの荒い息がかかる。彼は興奮してる――俺の体を抱きかかえて。彼はぐいぐいと体で俺の尻を押し上げてくる。服の下に一際熱くて固いものが隠れていて、時々俺の穴にぐっと押し付けられて、今にも入り込もうとしてる。これが、オーガニックが言ってた、グラインダーのXXX? XXXは俺にもあるはずだけど、俺のはこんなふうにはならない。これはきっと彼が偉大な戦士であるという証明だ。俺の頭はかっと熱くなった。

大きな溜息と共にグラインダーの動きが止まり、彼は少し体を離した。布の擦れる音がする。振り向いて見ると、グラインダーはすでにシャツを脱ぎ捨てていて、ズボンの前を寛げているところだった。筋肉の盛り上がった腕と、分厚いトラックのタイヤを思わせる大きな胸。いくつもの古い傷跡が彼の力強さと生命力を強調していた。美しくて、圧倒される。俺はウォー・リグを初めて目にしたパプスのように見とれてしまった。

俺が見ていることは全く気にせず、グラインダーは分厚い布の奥から彼のXXXを引っ張り出した。それは驚くほど大きく太っていて、ずっと濃い色をしている。先端はヘビの頭のような形をして、根元からぐっと上を向いて反り返っていた。俺は無意識に唾を飲み込んだ。これが俺の中に入るんだ。

グラインダーが再び俺の背中に覆い被さった。尻に彼のXXXが当たる。ぬるっと滑ったそれは二度目にはしっかりと穴に押し付けられて、あっと思う間に穴を広げて入り込んできた。

「あっ、ああっ……! あうっ、うっ」

大きな圧迫感と苦しさで、息ができなかった。ずるずると押し込まれたそれはある深さまで来ると、今度は逆に引き出されていった。全部が出そうになる前にまた押し込まれ、また出て行く。それが繰り返されて、グラインダーのXXXと俺の穴が何度も擦り合わされた。顔が熱くて、目の前がちかちかする。グラインダーのXXXは穴の口だけでなく、腹の中も同じように目一杯広げて入り込み、中の壁をぐいぐい突き上げるように動き回った。その度に情けない悲鳴が口を突いて出て、俺はどうしていいかわからなかった。これじゃまるで俺が彼のXXXを拒絶してるみたいだ。そんなことは絶対にない。俺はもっと彼の役に立ちたかった。偉大な主人に対する役割を立派に果たすことが、俺たちの使命で、誇りだ。

動きはだんだん速くなり、また少し遅くなって、最終的にはアイドリングするエンジンみたいに一定のスピードで落ち着いた。大きな寝床のサスペンションが軋んで音を立て、俺の体は大きく揺さぶられた。俺は寝床に両肘を突いてうずくまり、バカみたいに口を開けたまま動けなかった。背中が痺れて、両脚はだるくてとても動かせない。酷く苦しい一方で、腹の中に重くてもどかしいような、何とも言えない感覚が溜まってきたのを感じる。

オーガニックはこれがグラインダーの慰めになると言った。こうすると彼が気持ちいいとも。でも俺には”気持ちいい”という意味がよく解らない。気分が良いっていうのなら解るけど、多分、それとは違う気がした。

俺はなんとか振り返ってグラインダーの様子を見ようとした。彼は寝床に膝立ちになり、大きな両手でクランプのようにがっちりと俺の腰を掴んで動いていた。鋭い光を宿した目は今は伏せられて、彼もまた荒い息を吐いている。それはただ単に走り回って息が切れた時とは違って、こう、苦しい感覚を味わって楽しんでいるように見えた。彼は気持ちいいんだろうか? そうだと信じたかった。

出入りするグラインダーのXXXを感覚で追っていると、突然、俺の背中を得体の知れない感覚が駆け上がった。尻と両脚に勝手に力が入って突っ張り、どくどくと大量の血が頭に流れ込んでくる。力を抜こうとしても体が全然言うことを聞かなかった。

「あっ、ああっ……ああっ!」

声は勝手に漏れて止まらなかった。腹の中が熱くて、頭が痺れて、何も考えられない。頭がぼうっとして、体は苦しいのに、この感覚がずっと続けばいいと思った。

グラインダーが俺に何かを言った。俺は返事をするどころか、何を言われたのかすらはっきり解らないほど呆けていた。でも、いいか、とか何とか、俺に確認するようなその低い声は笑っていたように思えた。”いい”っていうのは、”気持ちいい”ってことだろうか? これが気持ちいいってことなら、なんて強烈な感覚だろう。俺は泥にはまり込んだ車みたいに、身動き1つできなかった。

グラインダーの動きが変わったのに気が付いて、俺はのろのろと顔を上げた。俺はいつの間にか目を閉じていて、もしかしたら寝てしまっていたのかもしれない。腹の中でXXXがぐいっと動いた拍子に声が出て、また止まらなくなった。グラインダーは俺の体を揺すり上げるように、今までで一番ゆっくりとしたスピードで、一層深く俺の中を突き上げた。息が荒い。数度、それを繰り返した後、グラインダーは満足げに溜息を吐いて、動きを止めた。

グラインダーのXXXがずるりと出て行って、俺はようやく息を吐いた。頭も体も痺れたままで、腕を動かすこともできなかったけど、その感覚は時間が経つに連れて、少しずつ治まってきた。名残惜しいと同時に、ようやく解放されてほっとする気持ちもあった。

頭のすぐ近くのサスペンションがぎしっと音を立てて沈み、俺ははっとして目を開けた。太い腕が目の前にあって、次の瞬間、俺は仰向けにひっくり返された。両脚を持ち上げられて、寝床に膝を突いて座ったグラインダーの方へと軽々と引き寄せられる。まだ続くんだ、と思った途端に、俺の心臓はうるさく鳴り始めた。

どうにも変な感じがして、俺は自分の股間に目をやり、ぎょっとした。俺のXXXは膨らんで先っぽの形が変わり、真っ赤になって上を向いていた。

熱くて、どくどく脈打って、まるでそこにたくさんの虫か何かが入り込んでいるように思えた。それはグラインダーのものよりもずっと小さく、弱々しくて、形も大分違っていたが、なんとか彼の真似をしようとしているみたいだった。

俺がおろおろしている間に、またグラインダーの硬いXXXが俺の中に入ってきた。膝を大きく開いて押さえられ、穴にずずっとねじ込まれる感じがあって、下腹が大きく押し上げられる。俺は無意識に頭を仰け反らせた。

「ああっ……あっ……」

喉が震えて、上擦った声が出る。脚を押さえられていなくても、身動きなんてできなかった。

グラインダーがテンポよく動き始めると、俺の頭と体はすぐにあの感覚で一杯になった。シリンダーの内部で往復を繰り返すピストンみたいに、グラインダーのXXXは俺の中にぴったりはまって動いていた。でもこの行為が生み出すのはエンジン出力じゃない、別のものだった。

「あっ、あっ……!」

背中を通って全身を痺れさせるあの感覚は、一度通り過ぎたと思ってもまたやってきて、しかもどんどん強くなっていった。俺は何度も気を失いそうになって、その度に心配になってグラインダーを見た。俺は最初からずっと、何もしないでただ彼のXXXを受け入れているだけだ。それで自分の役割を果たしているなんて言えるだろうか?

ランプの明かりに照らし出されたグラインダーの顔は、ぞくぞくするほど格好よかった。彼は目を閉じていて、規則的で深い呼吸の間に、時々呻き声を上げている。その声がとても満足そうに聞こえて、俺はどきどきした。

グラインダーが目を開けて、俺を見た。まともに目が合い、彼がその目を細めてにやっと笑った。機嫌の良さそうな表情に、俺は心から安心して、そして自分が今、信じられないものを見たことに遅れて気がついた。グラインダーが、偉大なトップドッグが、俺を見て、笑ったんだ!

俺は目の前にヴァルハラの扉が開かれているような気持ちになった。その時、俺の中を掻き回すグラインダーのXXXがもっと大きくなって、俺の中にぎっちり詰まって、ほとんど動きを止めてしまった。突然、喜びを取り上げられた俺は悲しくて、物足りなくて泣きそうになった。もっと彼に俺の中で動いて、満足して欲しかった。

「尻の力を抜け、坊や。」

面白がるような声が頭の上から降ってきた。グラインダーは深く折り曲げていた俺の両脚を伸ばして下ろし、ちょっと揺らすように腰を動かした。俺ははあはあ息をしながら、なんとか言われたようにしようと思うのに、上手くいかない。

「深呼吸だ。」

震えて詰まってしまう呼吸を押さえて、ようやくゆっくり息を吐く。ずず、と腹の中でグラインダーのXXXが動き出した。ヘビの頭の形をした先端が、狭いシリンダーの内側を抉るように擦っていくのがはっきりわかる。

「ああっ! あっ……!」

グラインダーは再び俺の両脚を開いて押し上げ、動きを深く、速くした。俺の呼吸はすぐにまた浅く、忙しくなってしまったが、今度はグラインダーの動きが止まってしまうことはなかった。勝手に声が出て、腹の奥からあの感覚が湧き上がってくる。体が重い。繰り返し強く擦られている部分から、感電したようなぴりぴりした感じが広がってくる。もっと擦って欲しい。

「あっ、あっ、ああっ……、」

体中が熱くて、俺は自分が汗まみれになっているのに気が付いた。さっきからずっと動いているのはグラインダーで、俺は何もしていないのに、激しい戦いの最中みたいに息が切れて、いつの間にか汗だくになっている。ぞくぞくっとした感じが首の後ろを走って、また汗が滲んだ。

「ひっ……」

硬いXXXで腹の中をほじくるようにぐいぐい突かれ、体ごと揺すられる。苦しくて、泣きそうで、たまらなく気持ちいい。グラインダーに叱られないのをいいことに、俺は衝動のまま声を上げて、意味のないことを喚いていた。頭の中は真っ白で、ただXXXが腹の中を抉る感覚だけで一杯だった。時々目を開けるものの、ランプではない別の光がちかちかしてまともに目が見えなかった。

片方の脚を抱え上げたまま、グラインダーの巨体が俺の上にぐっと圧し掛かってきた。逞しい腹が俺の貧弱なそれに重なり、押し付けられる。俺のXXXも一緒に押し潰されそうに思って一瞬怯んだが、そんなことにはならなかった。

グラインダーは俺の背中に両手を回して抱え込んだ。煙のような彼の体臭をいっぱいに吸い込んで、俺の頭はくらくらした。逞しい腕にがっちりと捕まえられて中を突かれることが叫び出したくなるほど嬉しくて、俺の動悸はこれ以上ないくらいに酷くなった。腰から膝の辺りがびくびく震えて、ヘビのようにぐねぐねとのたうった。それを抵抗と受け取られたら、と怖くなったが、幸いグラインダーは気にしていないようだった。それで俺は軸がぶれたシリンダーのあっちこっちが擦られる不規則な感覚に、余計に振り回されるだけだった。

忙しい自分の呼吸と一緒に、グラインダーの荒い呼吸が俺の耳元で聞こえている。それが何とも言えない感覚を膨らませて、俺の下腹をじんじんと熱くする。

グラインダーがじっと俺の目を見た。その目はなんだか熱っぽくて、まるで彼が俺自身に興味を持ってるみたいに思えた。それはきっと気のせいだったけど、俺は言葉にできないほど嬉しかった。俺みたいな平凡なウォーボーイが、主人であるトップドッグに伝える言葉など持っているはずがなかったが、それでも俺は彼に何か伝えたかった。

グラインダーの顔がぐっと近付いたかと思うと、彼は口で俺の顔に触れた。思ってもみない接近に、俺は息を飲んだ。彼は荒い呼吸の合間に、唇で俺の頬を触ったり、ほんの短く吸い付けたりを繰り返した。ちゅっと小さい音を立てて、彼の唇が俺のそれを挟んでまた離れる。彼の強くて大きな体がどこも硬いのとは反対に、彼の唇は驚くほど柔らかかった。

彼の唇が今度は俺の口を塞いだ。ちゅっと吸うだけでなく、唇であちこち撫でたり、舌で何度も舐めたり、俺が理解できないような複雑な動きで、俺の頭を混乱させた。一際熱くて、濡れたものが口の中に押し入ってくる。それがグラインダーの舌だと気付いて、俺はどきっとした。彼はXXXで俺の腹の中をくまなく探るのと同じように、舌で俺の口の中を自由に動き回った。歯の付け根を擦り、俺の舌を吸い付けて捕まえ、擦り合わせる。ぬるっとして柔らかいそれがあちこち触れる内に、俺は我慢できなくなって何度も声を出してしまった。するとどういうわけか、腹の中がもっと熱く、気持ちよくなった。今だって息ができないくらい気持ちいいのに、もっと押さえつけて、擦って欲しくて堪らなかった。

「ああっ、あっ、」

俺の願いが通じたかのように、グラインダーは口で俺に触れるのをやめて背を起こし、俺の左足をぐっと掴んで持ち上げた。筋肉の盛り上がった肩に踵を引っ掛けると、抜けかかっていたXXXを俺の中に突き込んだ。しばらく大きく動いた後で、それは浅い部分を小刻みに突き上げる動きに変わった。

「あ、あ、あ……!」

跳び上がるような感覚が休む間もなく襲ってきて、俺は目の前がまっ白になった。叫びたいのに、俺の口からははあはあと忙しない息が漏れるだけだ。そこが熱くて苦しいのと同時に、俺の頭もオーバーヒートしそうだった。

全身に力が入っているような、逆に少しも力が入らないような頼りない状態になってからも、俺はひたすらグラインダーのXXXを受け入れる喜びを味わった。

それからどれだけ時間が経ったのか判らない。俺の意識と体はどろどろに溶けてしまったように重く寝床に沈んでいて、それでもなおグラインダーのXXXにしがみついていた。

グラインダーは一際激しく俺の中を突き上げた後で、徐々に動きを緩めた。低く呻いて、時々思い出したようにぐいっと腰を押し付ける。数度、荒い呼吸と共に逞しい腹が引き絞られ、同時に俺の中で彼のXXXがびくびくと震えた気がした。最後に彼は満足そうに溜息を吐くと、俺の中からXXXを抜いて体を離した。

俺は頭の天辺から足の先まで痺れたようになって、指一本動かすこともできなかった。開いたままの膝をグラインダーが閉じて俺を横向きに転がした。そのまま彼の寝床から放り出されると思ったが、彼は俺を寝かせたまま、俺の横に腰を降ろした。

そのまま動かないグラインダーを気にしながら、俺は興奮しきった体が少しずつ元のように落ち着いていくのを感じていた。胸の動悸が静かになって、頭の中が晴れていった。力が入らなかった手をぐっと握って、背中を丸めてみる。体中がぎしぎし軋んでいるようだった。最後までじんじんしていたのは腹の中で、穴が広げられてXXXがぴったり詰め込まれた感覚は、それから2日経っても残っていた。



結局俺はグラインダーの寝床で翌日の昼まで寝てしまい、目が覚めた時、部屋には誰もいなかった。

寝床から立ち上がった拍子によろけて壁に手を突いた。その時、尻から何かが流れ出た感触がして、俺は慌ててトイレに走った。幸い誰も使ってなかった。そっと覗いて確かめると、漏らした訳ではなく、白っぽいどろっとしたものが穴から脚を伝って流れ出ていた。傷から出る膿とも違う、初めて見るそれに最初はぎょっとしたが、俺はすぐに思い直した。これが出たのは、昨日グラインダーのXXXが腹に入ったせいに違いない。そう考えると、それは不気味でもなんでもなくて、むしろ俺が自分の役割を果たした証かもしれないと、誇らしい気分になった。

そこへ年上の兄弟がやって来て、俺がいるのを見ると、ちょっと心配そうに近付いてきた。

「大丈夫か? 顔色悪いぞ。」

「あー、うん。大丈夫、」

兄弟たちに裸や用足しを見られるのは小さい頃から慣れている。俺が突っ立っていると、兄弟はその白いどろどろを見て明るい声を上げた。

「よかった、上手くやれたみたいじゃないか。」

「俺はなんにもできなかったんだけど……なあ、やっぱりこれって昨日のことと関係あるんだよな?」

「そりゃそうさ。これはグラインダーの子種だよ。たっぷり注いでもらったな?」

「子種って何?」

「その白いやつさ。それを元に子供ができるんだよ。」

「子供、」

偉大なるジョーは5人の妻を持ち、自ら子供を成すと聞いたことがある。彼に認められた優れた戦士であるグラインダーも同じ力を備えているのかもしれない。

「グラインダーの子供が生まれるのか?」

「いやいや、子供を生むことができるのは女だけだ。」

「女? 俺にはできないのか?」

「まあ……いいだろ、今はそんなこと気にするなよ。」

兄弟ははっきり教えてくれなかったが、俺にはグラインダーの子供を生むことができないらしい。すごく残念に思ったが、俺が偉大なジョーの妻と同じであるはずかない。俺は納得して、子供のことはきっぱり諦めることにした。

「お前は急いで知識を増やさなくていい。その方がグラインダーも教える楽しみがあって嬉しいだろ。」

意味がよく解らなかったが、兄弟は強引に俺を黙らせた。

「それより、腹減っただろ。とりあえず全部出しちまって、体を拭いたら、食堂へ下りてきな。ズボンは履いて来いよ。」

「わかった。ありがと。」

兄弟は俺の肩をぽんと叩いて、歩いて行った。



それから、俺は2・3日おきにグラインダーの寝床に呼ばれるようになった。夜中の時もあったし、昼間に呼ばれることもあった。グラインダーは無口で、普段は俺に声をかけてくれることはほとんどなかったが、彼の寝床にいる間には、時々俺と話をしてくれた。大抵は二言、三言で終わってしまうようなほんの短かい会話だったけど、俺は彼の低くて頭に響く声が大好きだった。

俺は時間をかけて兄弟たちから色々なことを教わった。XXXを使って交尾する能力は誰にでもあること。でも、俺のような”専属”を手元に置いて、誰にも文句を言われずに、好きな時に時間をかけて交尾ができるのは、砦の主人であるトップドッグだけの特権であること。白い子種は満足の印。上手くいった交尾はすごく気持ちいいけど、XXXと穴の相性が問題だということ。そして、幸いなことに、俺はグラインダーに気に入られたということ。そしてもう1つ大事なことは、グラインダーを喜ばせ、奉仕することが戦士の務めを果たすことに繋がるということ。

俺は俺だけの働きをしながら、食事の準備や片付けなんかの砦の仕事を手伝って毎日過ごした。危険な奴らが砦の中にまで攻め込んでくることはほとんどなくて、見回りや襲撃に連れて行ってもらえない俺は、戦いからすっかり遠ざかってしまっていた。戦いから帰って手柄を報告し合う兄弟たちが羨ましく、俺だけが取り残されてしまうような不安を感じたこともあったが、その心配はじきになくなった。俺はグラインダーの”専属”でいられることが嬉しかった。



それから、無事に長い時間が過ぎた後で、大事件が起きた。

南の方から突然進入してきた軍団は異常に数が多く、重武装していて、南方の砦を守る各部隊との間で血みどろの戦いになった。西側に位置する砦から援軍を求める知らせが入って、グラインダーは仕方なく少数の戦士を連れて出て行った。そして道中の戦闘で車両の爆発に巻き込まれて、酷い大ケガを負った。なんとか砦に運ばれて来たその体は真っ赤な血に染まっていて、その姿を見た俺は危うく気絶しそうになった。並の戦士なら命を落としていたに違いなかったが、グラインダーは不死身の生命力で生き残った。ただし、余りに酷い傷のために、彼は性器を失ってしまったのだった。

兄弟の誰もが、グラインダーが一命を取りとめたことを喜んだ。今回の戦いでは不覚を取ったものの、彼のように強く、偉大な戦士に成り代われる者は誰もいなかったからだ。しかし同時に、彼が性器を失ったという噂も瞬く間に広がり、砦の中だけでなく多くの兄弟たちに動揺をもたらしていた。なぜなら、偉大なスクロタスが常にその身につけた装飾品で誇示するように、攻撃的にそそり立つXXXは強い雄としての生命力や権力の象徴であり、彼を崇拝するものや恐れるものには恐れや怯えを起こさせるからだ。それがなくなったことで、もしかしたらグラインダーの強さが失われたかもしれないという疑いが生まれたのだ。

ガスタウンで特別な治療を受けていたグラインダーが砦に戻ったのは、戦いから10日以上も経ってからだった。例の噂はとっくに広がっていて、兄弟たちが息を飲んで見守る中、彼は自分の足で車両から降りた。幾分ゆっくりと、しかし危なげない足取りで進んだ彼は、兄弟たちが心配して用意した幅広の椅子にどっかと座り、差し出された器の水を飲み干して――その器を叩き割った。

俺は経験豊富な戦士が恐怖で跳び上がるのを見た。グラインダーは苛立っていた。いや、怒り狂っていたという方が正しかった。彼の砦には、彼が体の一部と一緒にその力と勇気までもを失ったなどと考える者はいなかった。それは長年彼らの上に立ってきたグラインダーが一番よく知っていたはずだ。しかし、彼が受けた大きすぎる傷は、彼の肉体だけでなく、彼の自尊心をも深く傷つけていた。

グラインダーは寛大で偉大なリーダーだったが、時々過激な言動で兄弟たちを怖がらせていた。今回兄弟たちが恐れていたのは、グラインダーが彼自身のXXXを失くした腹いせに、砦にいる全員のXXXを切り取ってしまえと命令するのではないかということだった。傍から見ればばかばかしい想像だったが、当事者である俺たちにとっては身に迫った恐怖だった。それくらい、グラインダーは殺気立ち、普通でない怒りを撒き散らしていた。

幸い、その恐ろしい想像が現実になることはなく、グラインダーは数日で冷静さを取り戻した。兄弟たちは明らかにほっとした様子で、ようやく砦に平穏が戻った。

その代わりに、グラインダーは南方からの侵入者を見つけると、彼らを捕まえてそのXXXを切り取った。彼自身の復讐のためだろう。兄弟たちは哀れな犠牲者にほんの少し同情しながら、隠れるように小さく身を竦めた自身のXXXをそっと思いやるのだった。

グラインダーがガスタウンから戻った時から、ケガで不自由な彼の身の回りの世話をするのは俺の仕事だった。なぜか兄弟たちは俺にその役目を押し付け、適当なことを言ってすばやく逃げてしまうのだ。俺は兄弟たちほどグラインダーの怒りを恐れてはいなかったし、彼の傷が本当に心配だったから、喜んでその役目を引き受けた。

数日の間、彼はほとんどの時間を寝床の上で過ごしていた。胸から太腿にかけて、引き攣れて熱を持った広範囲の傷が彼を苦しめていた。俺の日課は、水で濡らした布を塞がったばかりの傷に当て、熱を冷ます手助けをすることだった。XXXがあった辺りには無残な傷痕と、手術で向きを下に変えた小さな隙間のような穴があった。なんとか残った袋も痛々しい傷を負って、力なく横たわっている。俺はショックを顔に出さないように努力したが、グラインダーにはお見通しだったようだ。

グラインダーは俺や兄弟たちの前では決して弱いところを見せなかったが、この時だけはほんの少し、寂しそうな、諦めのような表情をしていた。

俺はいつでもグラインダーの手助けができるよう、夜中もずっと彼の寝床で一緒に過ごすことを許された。酷く傷ついた彼が痛ましいと思うと同時に、ずっと彼の近くにいられることが嬉しくて、またそんなことを思ってしまう自分が恥ずかしかった。

グラインダーの傷がだんだんよくなって、彼が心身共に元の調子を取り戻してくると、反対に俺は気持ちが落ち着かなくなってきた。体さえよくなれば、俺が傍にいたら邪魔なだけだろう。そしてXXXをなくしてしまったということは、彼はもう”専属”を必要としないはずだ。俺は役目を失った自分が彼から遠ざけられることを恐れていた。

ある日の晩、本格的に休むにはまだ早い時分に、グラインダーが俺を呼んだ。俺の心臓がどくっと跳ねた。ついにこの時が来てしまった。彼はきっと、もういいから出て行け、と俺に命令するだろう。そうなれば、俺がこの砦に来た意味、俺の生きる希望は消えてしまう。でもそれが主人の望みであれば、受け入れるしかなかった。



(後編に続く)






後編はグラインダー一人称です。