■ 気ままにShort*Short

■ Short*Short Vol.13 [ 2001/06/01:匂いの記憶] ■

6月になりました。もうすぐ梅雨入りしてしまうのでしょうか。
雨は憂うつですが、農作物や自然界においては恵みの雨なので、イヤとばかりはいってられないのですけれど。

私は、太陽の光を浴びてふかふかになったお布団が大好きで、天気の良い日に1日ベランダで干したお布団に お昼寝したり、その上で遊んだりするのが、幼少のころのとても幸せな記憶の一つとして残っています。
太陽の匂いがしみこんだお布団(干したお布団の匂いって独特)。太陽のぬくもりがこもったお布団。 (干した後は、熱がこもらないようにすぐにたたんで 押し入れにしまいこまずに、しばらく平らな状態で部屋のなかで冷ましてから押し入れになおすのがよいそうです。)
母はバリバリに糊付けしたシーツをお布団カバーにするのが、子供のころはなんとなくいやだったのだけれど、 今はその気持ちはなんとなく理解できるような。 ジェル状の洗濯糊をバケツのお湯に適量入れて溶かすお手伝いが大好きだったなぁと思い出します。 洗濯糊の匂いもまた独特なのです。
干したお布団の温かい記憶も、バリバリのシーツの記憶も匂いが感覚のなかで結びついています。

五感の中でも、嗅覚と記憶っていうのも結構結びついています。
そう考えると、子供のころってやっぱり五感をフルに使っていろんなことを感じ取って生きてきたのだろうなぁと 思います。

現在の私は、五感が退化あるいは感覚が麻痺してしまっている面が多々あるような。

このごろは、1歳の息子が、そよ風になびくカーテンとたわむれて遊んでいたり、干したばかりのお布団の上で大はしゃぎしていたり、 木の実をつぶしていたり、水たまりにわざとはまってビショビショになって遊んでいたり。 そんな無邪気な姿を見ていると、私の麻痺していた感覚が少しずつ取り戻されていくような 気分になります。

私の中で、匂いの記憶に結びついているのは不思議と、どれも「優しさ」と「温かさ」で、「母親の象徴」のような記憶ばかりです。