本編3 「1人になりたい」 |
昼飯時になったので、この町の名物だという「へぎ蕎麦」というのを食いに蕎麦屋に入る。 中村屋、だったと思う。 いままで街を1時間以上歩いていたが、その間、ほとんど人間とすれちがわなかったくせに、この店に入るといきなり満員でびっくりした。 意外とアタリをひいたのかもしれない。 「何食うよ?へぎ蕎麦4人前、は少し多いかな?2人前のほうがいいかな?」 と聞くと、 「ンなことないって。これくらい余裕。多かったら残せよ、俺3人前は食うよ」 と清瀬は頼もしく答える。こいつ時々男らしいなぁ。 「んー、そう言うならまぁ・・・。あっちのアベックも4人前食べてるみたいだし・・・いいか。じゃ4人前と舞茸天ぷらかなぁ」
※へぎ蕎麦 どのへんが「へぎ」かと言うと、入れ物の名前が「へぎ」だそうだ。 ぶっちゃけ、ただのざるそば。
どっちも実にウマかった。特に舞茸。 でも、途中でやっぱり辛くなった。 ノルマと思われる2人前をちょうどたいらげたと思ったので、 「多かったわー。ご馳走さん」 と箸をおくと、突如清瀬が血相を変えた。 「なに?・・・まだ食えよ!もったいないだろう!オレもつらいんだ!残す気かよ!」 と叫ぶ彼。 毎度毎度のことだが、彼のこういった無責任な言動にはうんざりさせられるのである。
チェックインの2時まで少し時間があったので、駅構内にある「ぽんしゅ館」という酒のミュージアムみたいなところにいった。 ここでは、500円でコイン5枚を交換でき、これを投入することで新潟全土の100以上の地酒をティスティングできるというマシンが置かれている。 ※地酒テイスティングマシン。これは良いアイデアだと思う。
これは実に楽しくかつウマかった。 いろいろ飲んだ。 でも4杯くらい飲むともう舌がダメになるのか、何飲んでも「?」って味しかしなくなったのは残念であった。 まわりにお土産や酒を置いている店があり、清瀬が 「夜、飲むだろ?地酒とつまみ買おう」 と言う。 「いいね」 「酒は・・・醸造アルコールが入ってるのはクソだから、このにごり酒にしよう」 「ふむ・・・つまみは?乾き物とかがいいかな。箸とか無くても食べれるし」 「ん〜・・・これにしよう。」 なんか佃煮系のベトッとしたヤツばっかりチョイスしはじめる清瀬。 「エッ!? 箸とか入れ物とかいるんでは?」 と聞くと 「旅館なんだから箸・ナイフなんか部屋についてるよ!常識だろ!」 と血相を変える。 何かカンチガイしてるのかとも思ったが、あまりにキッパリ言うので否定できない。 結局水分が50%以上含まれてるようなものばかりを購入し、我々は宿へと向かった。
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