第十三話「レイディ・リンクス」
放送日:84年6月28日
脚本:塚本裕美子
絵コンテ:浜津 守
演出:浜津 守
作画監督: 安彦良和
グリーン・マットはすでに夜。川岸に設営されたテントの中で、悠宇はデヴィによって暴力的な尋問を受ける。
「黙ってねぇでなんとか言いな!聞きてぇことは山ほどある・・・返事をしろ返事を!」
「・・・ふん」
「このぉ〜」
ドリスの「やめて〜っ!」という叫びも届かず、悠宇は再びデヴィに殴り飛ばされる。
それでも沈黙を守る悠宇に、レイディはやさしく話し掛ける。
「痛い思いさせて悪かったわねぇ・・・悠宇君、って言ったわね?」
警戒を強め、レイディをにらむ悠宇。
「まあ・・・とっても気丈でしっかりしてること・・・。ねぇ、力を貸してくれないかしら?このアタシに、助け合おうじゃないの、あんたたちだって、散々ひどい目にあってるんでしょ?・・・聞かせてほしいのよ、あんたのお友達のロボットのこと・・・。」
「・・・ロボット・・・?ただのロボットなんかじゃないよ!ゴーグは・・・」
「じゃあ、何、どんなロボットかしら・・・」
「・・・ふん」
むかつくレイディは、ドリスに近づく。「あんたをさぁ・・・傷つけるつもりじゃなかったんだけどねぇ・・・・。」
ピラニアのウジャウジャいる川に突き出されたドリスは、「いや〜」と泣き叫ぶ。
「やめろーーっ!ドリスにひどいことするな!」
「話す気になったかい!」
「やめろったら!・・・女の子に乱暴するなんて、最低だぞ!」
「まぁ、フェミニストなこと・・・?」
レイディが指を鳴らすと、ドリスは引き戻される。息も絶え絶えなドリス。
「さあ、話してごらん?いったいゴーグってのは何なの?どうしてあんたの言うことを聞くのかしら?」
「・・・知るもんか、そんなこと!」
「そんなハズないだろ?あんたは何度もゴーグに乗って、その体の中だって見てきたって言うじゃないか。」
「見てきたって・・・知らないものは知らないんだい!」
結局、悠宇とドリスは狭い倉庫の中に縛られて放り込まれる。
「ちっくしょ〜あの女〜・・・よっくも、俺たちをだましやがったなぁ〜っっ!」
と、木にくくりつけられたまま放置されていたアロイとサラは、何とかいましめから抜け、キャリアビーグルへと急ぐ。
一方、ビーグルでは船長とDrウェイブが心配している。
「・・・どこに行ったんだ。悠宇とドリスは・・・・・・・知っているのか、ドクター!」
「さ、魚をとりに行く と言って・・・近くにいると思うんだがな・・・」
「魚、だと・・・馬鹿モン!」
「ひ・・・」
「何故!何故止めなかったんだ!」
「す、すまない船長・・・ただ、ぼくも魚は嫌いなほうじゃないし・・・悪かったよ。」
そこに合流するアロイ・サラ。
一部始終を話して、トメニクにこっぴどくしかられるアロイだった。
「ばかもん!」
「ゴ、ゴメンよ、アニキ・・・」
「おれに謝っても、何にもならん!立て、アロイ!勝手なことばかりしおって!人を!危ない目にあわせてんだぞ!わからんのか!」
突然、アトラスが吠え出す。ゴーグが目覚めたのだ。GOOORG・・・・と唸りを上げて、立ち上がるゴーグ。
「ああ・・・ゴーグが!」
「説教はもういい!行くぞ!」
ビーグルの中で、船長は苦虫を噛み潰したような顔になっているのだった。
(あの女・・・こんど見つかったら、タダではおらんぞ・・・・。)
一方、リンクスは悠宇の身柄をネタに、変装しGAILのオウストラル支社である「GAIL CITY」へと潜入する。
そこで彼女は、かっての恋人であるGAIL支社長・ロッド・バルボアに逢う。
「苦労したのよ、ここまでやってくるのは。」
「ふっふ・・・まさかGAILの社員になったとは言わせないぞ。そんなことなら、雇ったやつを即刻クビにしてやる!」
「えらくなったものね、昔のアナタからはとても想像できないわ。いったい、どっちが本当のあなたかしら?昔?それとも、今、こうしてふんぞりかえっているあなた?」
「ええい!何をしに来たんだ!」
「若い女たちにかこまれてさ!こんな小奇麗な机におすわりあそばして!一体何のつもりよ!?」
「うるさい!何だろうがおれの勝手だ!口出しするな!さっさと国へ帰れ、ロスへでも、ラスベガスでも!」
「何よ、あたしに指図しようっていうの?こんなところでみじめったらしい雇われ犬になり下がったあんたが。」
「何ぃ・・・!雇われ犬だと!」
「そう、犬っころよ。あんたなんか!」
「なに!」
「・・・殴るの?ああ、殴るがいいわ。女を殴って、喜ぶような男よ、あんたは!」
「女?誰が女だって?ラスベガスの帝王も、クーガコネクションのボスも、いざとなれば女か?笑わせやがる、フン!」
「そんな風になったのも、あんたのおかげなのよ、ロッド。・・・私を裏切りさえしなければ・・・。」
「よしてくれ!昔を蒸し返しているヒマなど無いんだ!今のオレには!」
「結構ね。GAILは商売繁盛、オウストラス支社もお忙しくて御曹司のアンタはキリキリ舞い。プレイボーイのいいなれの果てだわ。」
「うるさい!何も知らんくせに!」
「じゃあ、あなたは何か知ってるというの?偉そうにしていても、肝心な事はなにも知らないのね、この島のことも、そしてゴーグのことも・・・。」
「・・・ゴーグ?」
「そうら御覧なさい。何にも知っちゃいないのよ、あんたは。好きに生きていくとか何とか言っても、しょせんはお坊ちゃんなのよ。へんぴな島のヘンテコな秘密か何かをオモチャにして、支社長とか言われてオダてられて、それであんたはいい気になってるだけじゃないの!」
「このオレがそんな男に見えるか!?」
「見えなかったわよ!・・・昔はね。だからだまされたの・・・・。」
回想シーン。二人で楽しくカツアゲしたり暴走したりと、ロクでもない青春の思い出が蘇る。
「変わったわね。あんた・・・。」
「変わったよ。キミこそ・・・。」
「昔みたいに、なれないの?あたしたち・・・・。」
「・・・無理・・・・だな!」
長い痴話ケンカに終始し、交渉にもならず、結局、レイディは警備につかまってしまうのだった。
こうしてロッドは「人型、グリーン・マットに出現」の報を受けてバッソーで飛び立つ。
「グリーンマットだと?・・・どうしてグリーンマットに?・・・この島は、まったく常識が通用せんところだ。まぁ、いい。」
GAILの攻撃ヘリに攻撃を受けるゴーグ。胸まで水につかっているために、ただでさえ対空攻撃を持たないゴーグは、防戦一方になる。
また、ヘリのミサイルはデヴィのいる野営にも飛び火し、テントは火事になってしまう。
必死の消火活動も及ばず、結局逃げていくデヴィたちリンクス一味。
倉庫に閉じ込められた悠宇とドリスは、身動きもとれず、煙にまかれてしまう。
「あけろ!」
「けほ、けほ・・・苦しい・・・!」
「頑張るんだ!ドリス!」
しかし、もはやどうしようもないほど火は回っている。
デヴィたちも逃げ、ゴーグはGAILに苦戦中・・・。もはや二人は絶対絶命であった。
「誰か、助けて!」
「ゴーグ!来て!ゴーーグ!!」
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感想
ロッドとリンクスの長い痴話ケンカの回。
長いわりに、飽きずに見れたのは、きっとその内容がうわっつらだけのものではなく、とても気持ちのこもったものだったからかもしれない。また、見所(というべきなのか?)は、悠宇とドリスの拷問(尋問)シーン。 特にドリスはピーピーキャーキャー大声で叫ぶので、思わずTVの音量を下げてしまった人も多いのでは無いだろうか? ともかく、実際はリアルではあったが、たいした尋問ではなかったのだが、演出の視点が悠宇やドリスなどの子供の視点なので、感情移入しているととても恐怖を感じてしまう。
一方、ゴーグは昼寝から起きた後、おぼれるだけ。この回もやきもきさせてくれる。