第十四話「わかれ道」


放送日:84年7月5日
脚本:辻 真先
絵コンテ:小鹿英吉
演出:小鹿英吉
作画監督: 安彦良和


火と煙に巻かれながらも、縛られているために身動きの取れない悠宇とドリス。

「もうだめ、苦し・・・」
「頑張れ、ドリス!」
「ああ!いや!助けて,助けて!あつうぅ〜い!」
「ゴーグ!早くーっ!」

そのとき、熱で倉庫の屋根がはぜ、轟音を立ててゴーグが川から姿をあらわした。
初めてゴーグの威容を見たデヴィは「ひ・・・ひぃ!」と腰を抜かしかける。

「ああ!ゴーグ!」

二人を大きな手で助け出すゴーグ。

「ありがとう、ゴーグ!」

ゴーグは安堵したようなgoooo・・・という唸り声を上げる。


ロッドの操縦するバッソーの複座で、その様子を双眼鏡で覗くゴトー。

「む!いました!あの子供です。女の子も!」
「・・・助けようとしていたのか・・・。人型め、しゃれたことを!」

オドンネル大佐によるミサイル攻撃が再開され、ゴーグは自らの胸の中に悠宇とドリスを放り込む。

「全機攻撃しろ!逃がすな!」


「ど・・・どうしたの・・・どこよ?どこなのよぉ〜!?」
「落ち着いて、ここは、ゴーグの胸の中だよ。」
「ど、どうなるの?アタシたち・・・・。」
「ぼくにもよくわからないけど、ここにいれば、一番安全らしいんだ。」
「でも・・・。」
「大丈夫、それより、縄をとかなきゃ。」

四つん這いになって後ろ手に縛られたドリスの縄に噛み付く悠宇。

「い、痛〜い!かみついた〜!」
「ご、ごめん。」


GOOO0RG!

しつこい攻撃に対してついに怒ったゴーグ。密林に生える木を引っこ抜くと、襲い来るハリアー戦闘機、バッソーを次々と撃墜していく。

「ひるむな!逃げた奴には懲罰刑にかけるぞ!」と意気込むオドンネル。
だが、ゴーグの勢いは止まらない。 チョップでハリアー戦闘機を真っ二つにする。

「うう・・・なんというざまだ・・・。」

と逃げようとするオコンネル大佐だが、先ほど分解したハリアーの翼をブーメランのようにして投げたゴーグによって、撃墜されてしまうのだった。

「う・・・ああ・・・。」
「ああ!大佐、大佐ぁ・・・。」

「下がるぞ!全機引け!」


戦い終わったグリーンマット。GAILタウンから抜け出したレイディは、火と煙につつまれた一帯に戻ってくる。

「レイディ、こりゃえらいことですぜ。」
「どういうことだい、これは?・・・チッ、まずいことになったようだね。」

生き延びたデヴィと遭遇すると、彼を何度がぶつレイディ。

「バカ!だから、あれほど言ったじゃないか!」
「もうしわけない、レイディ・・・何せ下から上から追いまくられちまって・・・。」
「言い訳するために生き残ったのかい!?」
「しかし・・・。」

その最中、森を割ってゴーグが現れる。

「う、うおお・・・。」
「ゴ、ゴーグ!」
「あれが・・・ゴーグ・・・・!デヴィ、あいつが2人を助け出していったんだね!」
「後を追おうってんですかレイディ!?そりゃ無茶だ。」
「怖けりゃ、ピラニアのエサにでもなっておしまい!」
「そんな!」
「サム、急いでヤツを追いかけるのよ!」
「了解!」
「こ、こうなりゃ地獄の底までつきあいますぜ・・・!」

威勢良く出発したはいいが、遅れて来たキャリアビーグルと正面衝突してしまうレイディの船。あわれ地上に打ち上げられてしまう。
船から逃げ行くレイディたちに気づいたアロイ。レイディを追おうとするが、船長に制止される。

「まてアロイ、おまえたちの手におえる相手じゃない!」
「でも、あいつら!」
「ここはオレにまかせろ!」
「一人で行くの?」
「相手は3人だよ!」

「心配するな、弾は6発入っている。」


ジャングル。待ち受けるレイディたち3人たちに雨のように銃弾を浴びせられる船長。陰に隠れながらレイディを挑発する。

「おいレイディ!昔なじみにずいぶんと手荒いゴアイサツじゃないか!?」
「昔なじみだって!?フン!なれなれしい事お言いじゃないよ!」

ゲリラ戦においては船長が彼らよりも一枚も二枚も上手。
弾切れのスキをつかれサムは頭部を打ち抜かれ、デヴィも一方的に殴られて戦意喪失。彼を盾にリンクスの前に対峙する船長。

「腕利きの手下を持って幸せだなレイディ。どうした?撃ってきなよ?」
「ち、畜生・・・。」
「こう見えても紳士なんでな。女に手を上げるマネはしたくねぇ。おとなしく手を上げて出てくるんだ!」
「・・負けたよ、アンタには。」
「ほう、物分りが良くなったな。」

両手を頭に回して投降すると見せかけたレイデイ。一瞬のスキをついて隠し持っていたデリンジャーを撃とうとする!
だが、それすら読んでいた船長は先に撃ってレイディの銃を弾き飛ばすのだった。

「ふふ・・・汚ねぇやりかただけは相変わらずってわけだ?」


レイディを捕虜にし、悠宇とドリスがゴーグの中にいると聞き出した一行は、ビーグルでゴーグの後を追う。

ちなみにレイディは炊事、デヴィは洗濯にコキ使われることになってしまう。

「なにボヤボヤしてんだい!みんなオナカすかせてんだよ!」
「はい・・・(ヤレヤレ、世も末だね・・・) 。」


GAILの司令室。ゴトーとベームが言い争っているところで、地図を前に深く考え込むロッド。

「わからないな・・・何だってこんな方向に進むんだろう、人型は・・・。自分からGAILのエリアに踏み込んでくるなんて・・・・。」
「すでに地上戦力の半分を、馬の鞍に集結させてあります!」
「ベーム。」
「は!」
人型は・・・放っておこう。ヤツがどこへ行くのか、それを突きとめるのが先決だ。」
「おまちください、ですから・・・。」
「砲撃は中止だ。」
「でも」
「私は中止だと言っているんだ!聞こえんのか大尉!?」


ゴーグとかなり離されて後を追うビーグル。

「まだゴーグには追いつかないのか船長!?」
「よほど気がせいているらしい。距離はむしろ広がっているようだな。」
「そんなぁ!いったいどーしてくれるんだ!?」

「?・・・爆音?」

ゴーグを攻撃対象から外したGAILは、今度はビーグルを狙って空爆を始めたのだ。

「来るぞ、ふせろ!」


一方、ゴーグの胸の中でビーグルが空爆されているらしいことを知ったドリスは錯乱する。

「いやああ!兄さんたちがやられちゃう!出して、ここから出してよぉぉ〜!」
「ドリス!落ち着くんだ!」
「いやよ!こんなところ、早く出して!!」
「やめろ!!」
「!?」
「ごめんよ、ドリス・・・いいかい、落ち着くんだ。キャリアビーグルは大丈夫だよ。今までだって、やられなかったじゃないか。ね?」
「でも・・・」
「ゴーグ!ゴーグ、聞こえるかい?ぼくたちビーグルが心配なんだ、助けに行ってよ!歩くのをやめて、沼地のほうに戻るんだ!ゴーグ!ビーグルは仲間じゃないか、ドリスの兄さんも、船長や、トメニクさんが乗っているんだぞ!ビーグルが・・・!あ、ああ・・・。」
「悠宇?」
「だめだ・・・ゴーグは言うことを聞いてくれないよ・・・。」
「え、そ、そんなぁ・・・。」

突然、歩みを止めるゴーグ。

「と、止まったわ・・・。」
「止まった、ね・・・。」

セントラルリバーの最上流、源流の流れ出る暗い洞窟の前で、静かに立ちつくすゴーグ。

ついに、終着点にたどり着いたのである・・・。

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感想

アクション、心情、ともに旨みが一杯つまった回である。

ポイントは、@ゴーグの翼ブーメラン A船長大暴れ B悠宇、ドリスに大声を出す の3点だろう。

@番目は、投げるまでのタメだけで3・4カット以上使っているところなど、今までたまりにたまってウップンを爆発させるような見事な演出である。名シーンであろう。

A番目は、これが名作劇場ではなく、あくまで安彦作品だと思わせる、圧倒的に生々しい戦闘の描写である。人を殺してもヘとも思わない(ようにみえる)船長に、視聴者はむしろレイディ側の視点で戦慄してしまう。

B番目、あんまりドリスがキンキン声でうるさいので、悠宇ついに切れた?と思いきや、実はドリスを落ち着かせるためにあえて大声を出した、というもの。後のセリフからもわかるように、悠宇はとても冷静だ。船長ライクなやりかただが、悠宇の急速な成長が見られるシーンだ。



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