第十六話「時の扉」
放送日:84年7月19日
脚本:塚本裕美子
絵コンテ:鹿島典夫
演出:浜津 守
作画監督: 安彦良和
「撃てーっ逃がすなーっ!」
GAIL兵との銃撃戦。窮地に立たされた船長とDrウェイブ。
「・・・多勢に無勢か。Dr!いったん下がるぞ!」
「ええ!そんな、ここまで来て!」
「頭を使うんだ。おまえさんは学者だろうが。」
泉のある広場から離脱した船長とDrウェイブに、ロッドはキナ臭いモノを感じ、ベームに話しかける。
「あれは一体何者なんだ。こんなところまで侵入してきて・・・。」
「ビーグルの一味でしょうが・・・。」
「かなりのスゴ腕だな、あなどるなよ。」
そう命令し、ロッド自らは泉の中に泉水する。調査済みとは言え、ゴーグがここで消えたのは事実。自らの目で泉の底を確認しなければ気がすまないのだ。
こうしてロッドは泉の底が、何か人工的な手段で塞がれているのを発見する。
(こんな事だろうと思ったぜ・・・。)
一方、紫色の巨神と出合った悠宇とドリス。
「悠宇・・・・あれもゴーグなの・・・?」
「・・・違う・・・あ、あれはゴーグじゃ無い!」
かなりの距離まで近づいた後、 紫の巨神はおもむろに左胸のハッチを開く。悠宇は、ゴーグの左胸で朽ち果てていた男を思い出す。
「だ、だめだ!ドリス、見ちゃいけない!」
「ま、まって、悠宇、誰か出てくるわ!」
「え?」
紫の巨神の手のひらに降り立ったのは、黒い長衣を来た男。静かに悠宇とドリスの前に姿をあらわす。
「ああ、誰!あの人!」
「う・・・うそだ・・・こんなことって・・・。」
その黒い服の男は、ゴーグの中で朽ち果てていた男と、同じ顔をしていたのだ。
「・・・誰!あなたは、誰ですか!?」
勇気を振り絞って聞く悠宇。しかし、男の口から発せられたのは、聞き取ることも出来ないような奇妙な発音であった。
「何て言ったの?わかんないよ!もう一度答えて、あなたは誰!?」
静かに右手の平を悠宇に向ける男。とたんに悠宇は頭痛に襲われる。
「うう!ああ!」
悠宇は夢を見る。
自らが胎児へと帰り、銀河の果てから流れ出る多くの気泡につつまれ、宇宙を旅する夢を・・・。
『マ・・ノ・・・ン・・・・』
「え、マノン?マノン・・・」
「マノンって?」
「・・・あなたはどこから来たの?どこか、よその遠い星から来たんでしょ!・・・そうなんでしょ?・・・そうなんだね!やっぱりそうなんだ!」
「急にどうしたの、悠宇!?言葉が通じるの?ね、あの人何か言ってるの?日本語か何か話してるのォ!?」
「う、宇宙人だ、本当にいたんだ!」
静かにヘルメットを脱ぐマノン。
「で、でも、あの人わたしたちと一緒じゃない。ちっともETに似てないわ。」
「でも、あの人は宇宙人なんだ・・・。」
「悠宇、しっかりしてよォ!」
「解るんだ・・・!」
一方、泉の前にはぞくぞくと大型機械が運ばれつつある。
指揮をとっているのはDrヘッケル。その様子を見ながらロッドはイヤミを言う。
「調査済みとはよく言ったもんだ。どう調べたかは知らんが、あんな大げさなしかけも目に入らんとは、まったくお粗末なモノだ。」
「しかし、これで底を開く方法が解明できるでしょう。」
「そのための専門家だ。見つけられなくてどうする?見つけるまでは調査済みとは言わせんぞ。今度ばかりはな!」
秘書の持ってきたドリンクを受け取るロッド。一口飲むと、ベームの方に目配せする。
「・・・仮に、見つけられなくても、アレを開ける方法はいくらでもある。そうだな?大尉。」
この様子をガケの影から見守る船長とDrウェイブ。
「ヘッケルだ。」
「どうした?」
「あれ、あの男。ウォルター・ヘッケル。僕と一緒にDr田神の研究室で助手をしてたんだ。畜生!絶対に許せないよ!」
「田神?ああ、あの坊主の親父さんだな。」
「あいつめ・・・GAILなんかに取り入って、ずるいヤツだ〜!」
「要領がいいのさ、あんたよりはな。」
「冗談じゃ無い!あいつは学問の尊さを知らないんだ。よりによってGAILなんかに身を売るなんて・・・最低だよ!」
「シッ!学問の話はアトだ。あの先生が乗り込んできたって事は、泉の下でヤツら何かを見つけたらしいぞ。」
「・・・先を、先をこされてしまう!」
「あせるなよ、Dr。我々もすぐご一緒させてもらうさ。」
「ど、どうやって?」
「ふふ・・・」
一方、紫の巨神にさらに接近される悠宇とドリス。
「ああ・・・」
「僕に任せて、ドリス。」
『怖がらなくても、いい。』
「何を、するつもり・・・?」
『何もしない。』
「だったら、何故?」
『その、ガーディアンを調べたい。』
「ガーディアン?・・・え、ゴーグのこと、なの?ぼくたちはそう言ってるんだけど・・・そうか、それで!」
「悠宇・・・?」
「ゴーグ!ここに帰って来たかったんだね!それで、まっすぐに・・・。」
「悠宇・・・。」
「ゴーグは、あなたのものなの?」
『僕の、弟のものだ。』
「あ!・・・ああ・・・・。」
悠宇の頭の中に、風化した男が蘇る。
『ガーディアンの左胸の中にいるはずだ。』
「マノンさんと同じ、そっくりの人・・・」
『知っているのか?』
「見たんだ・・・ゴーグの左胸の中に・・・でも・・・。」
『・・・ありがとう・・・。』
ゴーグの左胸から、弟の遺骨(砂)をカプセルに拾い集めたマノン。
『ありがとう。ゼノンが、君を、導いてきてくれたんだ。』
「ゼノン・・・?」
至近距離まで近寄るマノン。少しおびえる悠宇とドリス。
『君の名前は』
「ぼくは、悠宇、それに、ドリス。」
手のひらをさし出すマノン。
承知した悠宇、手袋を脱いで、そっと手を差し出し、マノンの手のひらに重ねる。
「あ、あたたかいよ、ドリス。」
『来なさい、君とたくさん、話がしたい。』
ゴーグの手から降りた悠宇とドリス。
マノンが何か指示を出すと、紫色の巨神と、ゴーグは二人して別方向へ去っていく。
「マノンさん!?」
去り行くゴーグの背中を、不安げに見守る悠宇。
「ゴーグ・・・行っちゃうの・・・ゴーグーっ!」
『さあ、こっち・・・。』
一方、泉の外では、進まぬ調査に業を煮やしたロッドの指示で、プレートの爆破作業の準備が進められている。
馬の鞍の断崖で、月に向かって遠吠えをするアルゴス。
それは、異聖人と悠宇の間に行われた交流が、GAILの手によって破られることへの不安を象徴するように、夜のしじまにもの悲しく響くのであった。
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感想
30分、まるまる使って、異聖人とのファーストコンタクトを描いた回。
例によってゴーグはウンともスンとも言わずに、ひたすらボケーと立っているだけ。それでも圧倒的な存在感があるのには毎度の事ながら感心してしまう。
マノンと触れ合うまで、徐々に,徐々に距離が縮まっていく様子は、演出としても面白いと思う。
最初は、かなり遠間から対峙していただけが、いつのまにか手を触れ合うところまでになる。
ここに至るまでの過程が非常に丁寧に描かれているので、不自然さを感じない。
それゆえに、この回が、今後のマノンに対する全ての印象を決定づけるのである。
さて、裏の見所としては、悠宇だろうか。
この回ではオールヌードを披露するし、マノンが差し出した手に自分の手を重ねるところは「お手?・・・悠宇、犬みたい・・・」とツッこまずにはいられない。
あと、ドリス。ひたすらオロオロしてて、話に完全についていけていないのが可哀想でいいカンジだ。
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