第十七話「ひきがね


放送日:84年7月26日
脚本:塚本裕美子
絵コンテ:小鹿英吉
演出:小鹿英吉
作画監督: 安彦良和


(ゴーグが、マノンさんの言う事を聞いた。ゴーグは、この人たちのものだったんだ・・・。)

マノンに連れられ、遺跡内部の通路を歩く悠宇とドリス。足に何かあたり、ふと見ると、最初に悠宇を襲ったあの貝のようなクラゲのような化け物が安置されている。

「わああ!」
『その、機械がどうかしたのか』
「あの、これ・・・」
『わたしも、よい形だとは思っていない。大丈夫、動力は切ってある・・・。』
「・・・平気かしら?」
「たぶんね・・・。」


そのころ、泉の上ではGAILによる爆破作業の準備が完了していた。

作業を見守るロッドは、(オウストラルの秘密がやっとご登場、というわけだ・・・)と興奮ぎみ。

一方、退避するトラックの中では、変装して潜り込んだ船長とDrウェイブがいる。

「うまくいったね、船長。あんたの悪知恵、たいしたもんだ・・・。」
「フ・・・」


悠宇たちは、遺跡の中のラブルガーディアンの格納庫に足を踏み入れる。

「ゴ、ゴーグ!?」
「こんなに、たくさん」
「怖いわ、悠宇・・・」
「すごい、どうしてこんなに?」
「動かないのかしら?」
「眠っているのかもしれないな・・・。」

『そうだ』

「・・・眠ってる・・・?」


こうして、マノンの部屋に招かれた悠宇とドリスは、彼と差し向かいで会話をする。

「マノンさん、どうしてゼノンは死んだの?ゴーグの中で。」
『・・・ゼノンは、戻らなかった』
「ここへ戻れば生きていたの?あなたのように。」
『・・・・』
「どうして、あなたは生きていられたの?ゼノンさんが風化してしまうほど、長い年月が経ってるのに。」
『眠っていたのだ。』
「眠って?」
『そうなのだ。あのガーディアンたちも、我々を護って、ともに眠っている・・・・。』
「我々!?それじゃ、みんな、それぞれ誰かのゴーグってこと!?マノンさんの他にも仲間がいるの!?」

静かにうなずくマノン。

『ユウ、今度は私がおまえに聞く。・・・何故、ここへ来たのだ?』
「ゴーグが、連れてきてくれたんだ。」
『それは何故』
「そんなのわかんないよ。ぼくを助けてくれたのがゴーグで、ゴーグはここへ向かって歩き続けて・・・」

悠宇が口篭もるのを見ながら、マノンは考える。
(何故、何故ガーディアンがこの地球人の子供を・・・それに、何故この子にだけ、私の思いが伝わるのだ。・・・ゼノンの引き合わせなのか・・・?この子供たちとの出会いは・・・。)

『ユウ、私は安堵している。とにかく、これで、我々の目的は達せられた。』
「目的って?」
『この惑星の知的生命体と出会い、その文明のかたちを知ることだ。・・・我々はずっと待っていたのだ。この機会を長い年月・・・。』
「待っていた!?眠って・・・。それがもしかして三万年?」
『そうなんだ。おおよそ、三万公転周期の眠り・・・。何故それを知っている?』
「ウェイウさんが、この島の研究をしてる人が、そう、言ってたから・・・!」

興奮がちな悠宇の様子を見て、マノンは机からグラスに入った飲み物を出す。

『のみなさい。君たちの口にあうかどうかわからないが。』

「・・・何コレ?」
「飲み物らしいけど。」
「悪い匂いじゃないわ。」
「毒じゃなさそうだけど・・・・。」
「おなか壊さないかしら?」

ゴクリ。

「いける!」
「おいしい。面白い味・・・。」
「ありがとう、とってもおいしかった。」
『よかった。少し落ち着いたようだ。・・・見せてあげよう、我々がこの惑星に来たときの記憶だ・・・。』

天井から壁面のモニターが、太古の地球を写し始める・・・。


だが、この時GAILによる爆破作業が遂行された!

大規模な爆発は大地を揺らし、泉のシャッターを破壊し、バリアを破り、遺跡につながる回廊を水びたしにする。

「どうしたの、何がおこったの?」

マノンはスックと立ち上がると、悠宇を軽蔑したような(?)目で見つめ、そのまま部屋を出て行く。

「マノンさん、待って、マノンさーん!」


爆破現場を視察するロッド。

「本当に計算どおりなんだろうな!?」
「は、あのシールドの強度では、これくらいないと・・・。」
(何がこれくらいだ・・・派手すぎるぜ・・・。)


マノンタイプのゴーグに乗り込み、出撃するマノンを必死で説得しようとする悠宇。

「マノンさん!まって!マノンさん、聞いてください・・・!これはきっとGAILの仕業なんだ・・・!!」

きっぱりと無視される悠宇。

「マ・・・マノンさん・・・。どうしよう、すっかり誤解してる!」


武装したGAILの潜水兵たちが、次々と回廊に侵入する。そこには船長とDrウェイブもまじっている。

「これは・・・」
「こりゃあスゴイ!」
「おおおお・・・。」

遺跡の威容に感心するGAILの一行。双眼鏡を覗いていたベームとロッドは遺跡の奥からやってくる巨大な影を認識する。

「人型です。前方、約800・・・!」
「ふふ・・・やはりここに・・・む?・・・!!違うぞ!あれはゴーグという人型では」

突然パルスランチャー射出され、ロッドをかすめ、後ろにひかえていたGAIL兵士たちを一瞬で蒸発させる。

「!!」
「ぜ、全員ちれーーっ!撃てーーっ!応戦しろーーっ!」

バズーカ、ミサイル、マシンガン、そのどれもがマノンタイプには通用せず、次々と焼き殺されていくGAIL兵たち。

(人型が・・・撃ってくる?そんなバカな・・・!一体なんだ、あの武器は・・・!?)


戦闘に巻き込まれた船長とDrウェイブ。

「どうなってるんだ・・・あれは、ゴーグじゃないのか!?」
「こりゃたまらん、一旦引くぞ!」

GAIL兵も応戦を止め撤退していく。


マノンを追ってきた悠宇は、水の流れる回廊へたどり着く。

水の流れにのって、ちぎれた人間の体や、こげた肉片が流れてくる。たまらず悠宇にしがみつくドリス。

「ひどいよ・・・マノンさん・・・。」
「やめてーっ!もうやめてーっ!もうたくさんよぉーー!」
「ドリス・・・!」

(GAILは逃げ出しているんだ・・・なのに何で殺すんだ・・・。)

「マノンさーん!もうやめてよーっ!GAILは逃げていったんだよーーっ!?」

GAILが完全に出て行くまで追撃の手を休めないマノン。悠宇の必死の呼びかけを聞きながらも一人つぶやく。

『これが、答えか・・・。』

「マノンさん!悪いのはGAILなんだ、確かにGAILが先に攻撃してきたんだ・・・でも・・・こんなやり方するなんて・・・いくらなんでもひどすぎるよーーっ!」

だが、悠宇の叫び声は完全に無視され、マノンタイプは遺跡へと帰っていくのだった。

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感想

前半のほほえましい異文化交流劇から、後半イッキに残酷な異文化間戦闘へと発展するサマは、あまりのことに度肝を抜かれてしまう。

前回と今回の前半で、視聴者は完全に悠宇と同化していて「なんとか、異星の人と上手くやっていけそうだ」などと感じるようになっているところに、GAILによる爆破→侵入。そしてマノンと交渉決裂。悠宇と同様、「マノンさん!誤解だよおお!」と叫びたくなってしまうのだ。

それゆえにマノンタイプの大暴れシーンは、シリーズ中一・二を争う残酷描写(川に肉片がいっぱい流れてくるところとか)ともあいまって、感情が高ぶってしまう。恐怖、後悔、希望、焦燥、いろんな感情が悠宇と同一化してしまっている視聴者をして身震いを起こさせるのである。非常に優れた構成力であると言えよう。

なお、この回、本当にゴーグは画面に一度も出てこない。
にもかかわらず、悠宇やマノンのセリフに何度も出てくるので、決して存在が薄いというわけじゃないのである。演出の勝利と言うべきか。


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