第二十二話「報復の足音


放送日:84年8月30日
脚本: 辻 真先
絵コンテ:菊池一仁
演出:菊池一仁
作画監督: 安彦良和


「あ・・・ああ・・・・ゴーグ、ゴーグ!いったい何が始まったの!?・・・・ゴーグ!」

・・・GOOOORG・・・・

悠宇を自らの胸の中にいざなったゴーグは、コクピットの投影モニターで山裾を拡大して見せる。無数のラブルガーディアンが、ついに火の山から進軍を開始したのである。

「・・・・とうとう・・・はじまった・・・・!」


そのころロッドたちは、あわただしく対応をはじめていた。

「武器と兵員を集めろ!ヤツらを山から降ろすなよ!」
「わかりました!」
「・・・青いヤツ一体にもてこずったって言うのに・・・勝てるの?あんなにたくさんなのよ・・・?」
「やってみるだけさ・・・ヘリを用意しろ!俺も出る!」

ヘリのコクピットで悠宇の警告を思い出すロッド。

(マノンさんが怒ってる!世界がほろぼされちゃう!)

「・・・バカな!」


こうして始まるGAILの迎撃。

 

まず第一陣は、GAILヘリ部隊。だが、その猛攻もラブルガーディアンたちには通用しない。パルスランチャーで次々と打ち落とされるバッソー。

「ええい!無傷なのか!?くそ!・・・反転しろ!岸に戻る!」

 

第二陣は、防衛線をひきガーディアンを待ち受ける、ベームひきいる戦車隊。

「いいか!闇雲に撃っても弾を無駄にするだけだぞ!真中のヤツにねらいを定めろ!距離は3000!外すなよ、いいな!てーっ!」

だが、これもまたガーディアンには通用しない。

徹甲弾が効かんのか!?130mmが!・・・ミサイルだ!ランチャーひらけーっ!」

やはりガーディアンには通用しない。パルスランチャーでの反撃が始まり、戦車は次々と破壊されていく。

「・・・・ミサイル20発の直撃にビクともせんのか・・・!下がれ、下がれーーっ!」


「会長室だ!つないでくれ!」
「は?アポイントメントはおとりいただいておりますでしょうか?」
「・・・アポイントうるさい!つべこべ言うな!クビになりたくなかったらさっさと取り次げーっ!」

そのころ、Mrゴトーは一人戦線から外れ、GAILの通信室にいた。GAIL総帥ロイ=バルボアに直談判する腹積もりである。

・・・無作法な男だ・・・ロッドに感化されたようだな・・・?」
「ひ、人型です!」
「どうした?まだこちらにあれを送ろうとせんのか、ロッドは?」
「違います!ゴーグとは別の人型です!」
「おお、遺跡の中で出会ったというアレか・・・捕獲したのか?」
「それどころではありません!何十体、何百体もの人型が現れたのです!」
「!?・・・なんだと!今何と言った!?」

状況を説明するゴトー。

「・・・わかった。ただちに増援を送る・・・。それまで事態を沈静化するようロッドに伝えろ。」
「おわかりになっていません!援軍を待つ間に皆殺しにあってしまいます!」
「ではどうしろというのだ?」
「会長!合衆国海軍をさしむけて下さい!我々の手に負えるシロモノではございません!国防庁にはかって第七艦隊を差し向けて・・・」
「いかん!・・・何の為に今まで秘密を保ってきたのだ!今オウストラルの謎を明かすくらいなら、貴様らなど異星人にくれてやるわ!」
「そんな!会長、会長!」

一方的に通信を切るロイ。だが、その顔は焦りで醜くゆがんでいる。

「・・・むう・・・・何ということ・・・何ということだ・・・!」


ロッドたちの次に取った作戦は、タンクに貯えた大量の石油に着火し、おびきだしたラブルガーディアンを焼き尽くすというもの。

作戦は実行され、火の海になるベイ一帯。だが、この攻撃すら、ガーディアンたちにはキズひとつ負わせることができないのだった。

「ええい・・・バケモノだな、まったく」
「どうするつもりなの、ロッド?まごまごしてるウチに橋を渡って来るよ!」
「・・・火が消えるまでは大丈夫だ。ヤツらは動かん。」
「で、火が消えたら?」
「さぁて・・・それまでかな?」


悠宇たち一行は、GAILシティの片隅の埠頭で、その様子をなすすべも無く見ている。この世の終わりのような光景に、しゃくりあげはじめるドリス。

「ドリス・・・泣いてるの、ドリス・・・?」
「・・・・ウッ・・・・ウッ・・・・」
「泣かないで」
「でも・・・・こんなことになっちゃって・・・・どうしたらいいの、これから・・・・」
「・・・・・」

そんな彼らのもとに、意外な訪問者が訪れる。ロッドである。

「ぼうや、ごらんの通りだ。GAILは負けたよ。」
「何しに来たの。僕に用?」
「・・・キミの助けが欲しい。・・・キミと・・・ゴーグのだ。」
「・・・ゴーグ?ゴーグに戦ってくれって言うの!?」

騒ぐ外野。ドリスとアロイとサラは口々にロッドを非難する。

「そんな!何言ってるのよ!」
「そうだ!何を今更!」
「さんざんアタイたちをいじめといて、虫が良すぎるよ!」

「やかましい!ギャアギャアさわぐな!オレはこのぼうやと話をしに来たんだ、ザコは引っ込んでな!・・・・・・手を、貸してくれるかね・・・?人間としてだ・・・。」
「あんたたちって、ひ、卑怯だ!人間としてだって?そっちの都合のいいときだけそんな・・・そんなこという資格なんて、あんた無いよ!」

ロッドにつかみかかる悠宇。

「ぼくの話を全然聞こうとしなかったじゃないか!あんなに・・・あんなにマノンさんに謝ってくれって言ったのに!ぼくをニューヨークへやっちゃおうとしたじゃないか・・・。ゴーグに!ゴーグにあんな!あんなひどいことしてさぁ!なんで!なんで・・・!何だよぉーーっ!!」
「・・・・・・・。」

ひとしきり、ロッドにつかみかかったまま泣いた悠宇は、スとロッドから離れ、ゴーグに向かって歩き始める。

「悠宇!?」
「乗ってくれるのか、ゴーグに!?」
「・・・あんたの頼みなんか誰が聞いてやるもんか・・・誰がGAILのためになんか戦うもんか・・・!ぼくが戦うのは、 ドリスやウェイブさんや、アロイやサラやトメニクさんや島の人たち、ぼくの好きなみんなのためだ!おぼえとけっ!!」

ダッと走り、ゴーグに乗り込む悠宇。

・・・GOOOORG・・・!

とうなりを上げて立ち上がると、ゴーグは橋に向かって歩き始める。

「悠宇やめて!たった一人じゃない!?かないっこ無いわ!悠宇!悠ーー宇!!」


一方、そのころ、GAIL社内。突然消えたロッドを探してレイディが一人ビルを歩き回っていた。

「ロッド!どこにいるの?・・・しょうがないねぇ、この肝心な時に・・・ハッ!?」
「フッフッフッフッ・・・・」

船長が不敵な笑いを浮かべながら、レイディの前に現れる。

「あ、あんた」
「しばらくだな、元気で何よりだ。」

逃げようとしたレイディの髪をつかんで捕まえる船長。 涼しい顔でレイディの顔面とボディを殴りつけて大人しくさせると、彼女を人質に通信室へと赴く。

「動くな!お取り込み中のところをスマンが、ちょっと電話を貸してもらえんかね?」
「き・・・きさま一体、何を・・・?」

船長が連絡した先はCIA。ついに明かされる船長の謎。そう、彼はCIAの雇われスパイだったのである。

「例のオウストラル島だがね、やはりとんでもないパンドラの箱だぜ。この島はまもなく異星人に占拠される。どうやらアンタたちの予測のうち最悪の目が出ちまったようだなぁ?画像を送ろう。その他のデータもだ。記録しといてくれよ?」
『・・・わかった。ご苦労に感謝する・・・至急統一会議にかけることにしよう。』
「これでオレの仕事は終わったってわけだ。」
『その通り。契約の用件はまっとうされた。』
「やれやれ、わりのあわねぇ仕事でしたぜ・・・?」

そこに帰ってくるロッド。通信室の閉ざされたドアを乱暴に叩く。

「おい、何をしている!いるんだろミスター!ここを開けろ!」
「ロッド・・・?ロッド!気をつけて!あいつがいるのよ!」
「おおっと、用があるのなら後にしてもらおうか?」
「きさまは・・・」
「畜生、みんなバラしやがって・・・・」
「おめぇさんの女のやり口を真似たまでさ!来るんなら来てもいいぜ・・・こいつの頭が吹っ飛んでもいいのならな?」
「・・・・っ!」
「ロッド! あたしはいいからこいつをやっつけて!秘密がみんなCIAに流れちまう!」
「この、アマ!」

レイディを殴って踏みつける船長。

「どうしたどうした!来ねぇのか大将!秘密が大事か、それともこの女狐の方が大事かね!・・・来な!バルボアの御曹司さんよ!今ならまだ間に合うぜ、通信はまだ終わっていないからな・・・!この女を見捨てりゃいいだけの話さ!安いもんだろ!?」
「ロッド!来て!通信をやめさせて!」

再びレイディを殴る船長。

「ひ・・・・ひとでなし・・・この・・・」
「笑わせんじゃねぇ。お説教できるタマかよ?この!」

さらにレイディを殴る船長。

「おらおら、まだおねんねは早えや。確かに、おれはひとでなしさ。・・・ついでに紳士も願い下げだ!」

びりびりとレイディの服を引き裂き、押し倒す船長。

「何をするかわからねぇぜ!バルボアの若旦那!入って来い若造!」

だが、ロッドは入ってこない。通信が終了し、CIAは全てのデータを入手した。泣いて崩れ落ちるレイディから離れる船長。

・・・失礼したな。どうやらおれは勘違いをしていたらしい。いい女だぜ、あんた。・・・終わったぜ、ボス、約束のものを忘れんでくれ。今日にもふりこんでもらおうか。アメリカドルか金でな。小切手はごめんだ。」
『わかった。スイスの指定の銀行だな。・・・キミの無事を祈る。』

「・・・見直したぜ。おめぇさんの男もな。せいぜい大事にしな・・・。」

と言い残すと船長は素直に投降する。

「さあ、用事は済んだ。気の済むようにしてくれていいぜ?」


炎の勢いがおさまり、それと同時に進軍、橋を渡り始めるラブルガーディアンの軍団。だが、その前にゴーグは立ちはだかる。

(マノンさん・・・知ってるんだ・・・どこかで、どこかで見てるんでしょ・・・?)

GOOOOOOORG!!

先頭のラブルガーディアンにつかみかかるゴーグ。

「行け!!」

最初の一体を体当たりで海に落とすと、次の一体を殴りつけ、破壊する!

「マノンさん!どこにいるんだよ!」

倒れたガーディアンのパルスランチャーを奪い、三体目を破壊するゴーグ。

「ぼくはここだ!ゴーグといっしょだ!戦ってるんだよ・・・!あんたと!!」

引き抜いたパルスランチャーを構えるゴーグ。だが、眼前には圧倒的な数のラブルガーディアンがひしめいているのだった・・・。

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感想

怒涛の展開。

前半、GAILのウルトラ警備隊並みのガーディアン対策。だがこの作品にずっと付き合ってきた我々は知っている。地上の兵器でゴーグは決して倒せないということを・・・。絶望、まさにその言葉でしか語れない圧倒的な侵攻が、このシーンでは描かれる。

そして中盤。ロッドの敗北宣言を受け、悠宇が単身ゴーグに乗り込みラブルガーディアンに立ち向かうシーン。このシーンは、「燃える」以前に、それまでの経緯を知っている我々にとっては、非常に心がゆさぶられる。「GAILは許せない。けど、もうそんなこと言っている場合じゃない」というカンジが、ひしひしと伝わってくる。そのカンジを、悠宇は見事にセリフにしてくれる。

で、問題の終盤。船長の正体が明かされる衝撃のシーンへと続く。やりすぎの暴力描写。最初のうちはなんとなくスカッとしてしまうが、船長の圧倒的な暴力が続くにしたがって、だんだん目を背けたくなっていく。このあたりの演出はすさまじいのひとこと。途中からあらわになるレイディの乳房も、サービスシーンというにはあまりにも生々しい。本当にこれお茶の間に流れてたのか・・・。

ともかく、本当にこの回はドキドキしっぱなし。そしてこれらが、今後の展開において非常に重要な意味合いを持つようになるのである・・・。


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