第二十三話「オウストラル消去指令


放送日:84年9月6日
脚本: 塚本裕美子
絵コンテ:小鹿英吉
演出:小鹿英吉
作画監督: 土器手司


ホワイトハウスの一室で、GAIL総裁ロイ・バルボアは大統領に呼び出されていた。

「待たせたね。Mrバルボア」
「・・・じきじきにお呼びとは何の御用でしょうか・・・」
「たいへん残念なことだが、きみとの間の約束は全て無効になった。」
「!?・・・それはどういうことで・・・」
「・・・あの島は消去する。」
「消去!?いったい何故です。プロジェクトはちゃくちゃくと進行中だというのに」
「ちゃくちゃくと・・・何が進行中だというのかね、Mrバルボア。」
「うっ・・・それは・・・」

船長によるCIAへの情報リークにより、GAILが今まで隠しとおしてきた全てが大統領に伝わっていたのである。

「どうやら、このましくない事態になってきたようだね?」
「な、なんのことですかな閣下。あの島に何か?」
「知らないと言うのならそれでもかまわんよ。とにかく、これは合衆国政府と、国際評議会の決定だ。」
「いや、しかし・・・」
「部下がかわいければ、ただちに撤収させたまえ」
「あ、あの島ではすでに貴重な価値のある・・・」
「異星人の遺跡が発見されつつあるというのだろう?」
「ご承知のはず・・・。」
「それだけならわたしも君を呼んだりはしないよ」
「と、もうしますと?」
「・・・時間の浪費はつつしもうじゃないか。 今回のような事態に対する処置がいかなるものであるべきか、あらかじめあなたも同意されていたことと思うがね。」
「ですが!まさか、こんなことがあろうとは・・・何としてでも収集をつけて・・・」
「二度と言わせんでくれ。いいかね、あそこにははじめから何も無い。何も無かったのだ」


GAILタワーにもどり、方々に手をつくしたロイだが、決定は覆らない。社長室でただ放心するロイ。心配した秘書が提案する。

「か・・・会長。オウストラル支社への撤収命令をお出しになりませんと・・・」

「撤収・・・?・・・支社は開設したばかりだろうが・・・とりあえず支社長としてゴトーを送る。・・・衛星のカモフラージュは完璧だろうな?」
「?」
「ふふ・・・そうとも、完璧だ。完璧にちがいない・・・。」
「か、会長、ただいまの支社長はロッドさまですが・・・」
「ロッド・・・あの風来坊め・・・どこをほっつき歩いておるのか・・・この大事なときに・・・」

震える手でグラスに水をあふれさせるロイ。そろそろ秘書もロイの心が壊れたことに気がつきはじめる。

「GAILが人類の飛躍の扉を開けようとしておるときに・・・バカなやつめ・・・ロッドめ・・・あたら若い体を無駄にしおって・・・・」


「なんだと、撤収!?核ミサイル!?いったい何を考えているんだ!?じいさんを出せ!いったいどういうことか説明してもらおうじゃないか!」

GAILからの通信を受けたロッドは、声を荒げる。

「・・・会長は・・・現在実務に耐えうる状態におられません」
「・・・?」
「オウストラルプロジェクトは終了です。すみやかに撤収を行ってください」
「寝言を言うな!ここはGAILの命綱じゃなかったのか!?」
「そうです、それだからこそです、支社長。引き際はこころえなければなりません。・・・核ミサイルの到着時刻はオウストラル時間で明日の夕方です。どうか、お急ぎください。支社長の行動ひとつにGAIL全社の命運がかかっているのです。」

バン!と机を叩くと、ロッドはふりむいて、司令室に集まっているGAIL兵、レイディ、そしてビーグルの一行に向かう。

「いいか!よく聞け!明日にもこの島は消去される。GAILが地図から消した以上に完璧にだ!はじめからこの島は無かったことになる、何故だと思う?・・・臭いモノにはフタだ!世界を牛耳っているヤツらの足元を危うくする面倒のタネを、おれたちが掘り出しちまったのさ!そんなものは少なくともやつらには必要ない。それなら、無かったことにしてしまえばいい。そういう考えだ!」
「か・・・核ミサイルで!?」
「そうさ!世界中からありがたくも発射してくれるそうだ」

いきりたつアロイとサラ。

「おれたちの島だぜ!」
「消させやしない!消せるもんか!」

「あたりまえだ!いいか!おれはたった今からGAILの支社長でも何でも無い。支局を閉鎖したければ、勝手にそうするがいいさ!そのかわり、オウストラルはおれのものだ。誰の指示も受けん!言うことはそれだけだ!」

通信を切るロッド。レイディがウットリとした目で近づく。

「いいわ、ロッド、それでこそよ!」


GAILシティへつながる橋の上では、押し寄せるラブルガーディアンたちにたった一人で抗うゴーグの姿があった。

パルスランチャーの撃ち合いの中、悠宇はラブルガーディアンの弱点をいち早く見抜く。

「そうか、あそこが急所か!ゴーグ、首だ!首を狙えーっ!!」

何体目かを破壊すると、その爆風の中からタックルをしかけてくるラブルガーディアン。 それを正面から切って落とすと、GOOOORG!と吠え、ランチャーを捨てて大軍の中に単身で突進する。暴風のように次々とラブルガーディアンを破壊するゴーグ。

ベームは、その様子を戦慄の表情で見守っていた。

「大尉!援護射撃をいたしますか?」
「・・・いらん。たぶん、余計なお世話だろうよ・・・へへ、たいしたモンだぜ・・・」
「あの、ゴーグとかいう人型のことでありますか?」
「・・・あの、ぼうやがさ。」

「まだ戦うの・・・マノンさん・・・まだ!負けないぞ・・・ぼくは・・・負けないぞーーーっっ!!


「マノンさん・・・聞いてるの?そこにいるのはわかってるんだ、答えてよ!こんなのは、無駄なことなんだ。GAILも話し合いたいって言ってるんだよ、マノンさん!」

戦いの最中、終始マノンに 語りつづけた悠宇の努力が報われ、ついにマノンが通信を開く。

「?聞こえた!?マノンさん!答えてくれたんだね!」
『きみとだけは、争いたくなかった・・・残念だ。』
「ぼくだって、何も、こんなこと・・・」
『・・・進んだ、異なる文明が互いに出会う。それは、この宇宙では限りなく奇跡に近いものだ。・・・だからこそ、我々はそれを夢見、実現にかけた。3万年前、私たちはその奇跡へと近づきすぎてしまった。だから、勝てなかったのだ。奇跡の誘惑に・・・。出会いを選んでしまったのだ。その結果は、充分に予知されていたにもかかわらず・・・。予期したとおりだった・・・。君たちの文明は私たちに敵対してきた。』
「ちがう」
『悠宇、私たちは、永遠に生き延びたかったのだよ。だからこそ、時を越えてまできみたちを待ったのだ。』
「だから!ぼ、ぼくたちはこうして逢えて!」
『いや・・・きみたちの種族はそれを望まなかった。』
「違う!それは違うよ!」
『違いはしない・・・それは当然なのだ。君たち地球の種族が文明的に劣性である以上・・・。』
「GAILが、あいつらがあんなことをしたのは、あやまります。でもGAILだって、まさかあなたたちが生きてるなんて思わなかったんだよ・・・っ」
『では、生きていなければ、何をしてもかまわないというのかね?』
「そ、そんな・・・ただ・・・・」
『君たちに屈服するいわれは無い。生存は戦って勝つものにしか許されないと言うのなら、生き延びるのはたぶん・・・わたしたちだ。』
「まって!マノンさん!」
『悠宇、きみ一人だけでも、こうして話し合えたことに感謝する・・・。』
「マノンさん!」

そこに緊急連絡。大変なことが起きたのでドームに戻れという。ここを放っておけないと言う悠宇。

だが、唐突に始まった火山活動の直後、ラブルガーディアンが退却していくのを確認すると、心を決める。

「ゴーグ、戻ろう!」


GAILシティからは次々と人員が逃げ出していく。おびただしい数のヘリがオウストラルを離れていく。その機上、まっさきに飛び乗ったゴトーは、眼下に小さくなっていくオウストラルを見ながら、一人ごちていた。

「・・・ものごとのわかった人間ならば、脱出するはずだ・・・あの若様にはまったく、つきあいきれんよ・・・。」
「しかし、この大掛かりなプロジェクトが無に帰してしまうなんて・・・一体会社はどうなるのでしょう?」
「何を言うのかね君は!GAILの屋台骨がこんなことくらいで揺らいでどうするんだ!?ええい!・・・そうとも・・・・これくらいで・・・・これしきのことで・・・」


また、その様子を見守るロッドとレイディ。ベームが唐突にあらわれる。

「こいつは・・・おじゃまでしたかな?」
「どうした大尉?ヘリに乗り遅れたのかね?」
「・・・へへ、人には分というものがありますからな。私のいるべきところを見つけました・・・支社長。」
「・・・もう支社長なんて、野暮なやつはいないといったハズだぜ、大尉。ロッドと呼んでくれ。」
「わかりましたよ・・・ロッド。あんた、いい人だ!

がっしりと堅い握手をくみかわす2人。


「えっ!?船長が!」

船長の裏切りの報告を受けた悠宇は、司令室で黙り込んでいる一行を詰問する。

「どうして、船長がそんなことを・・・アロイ!」
「ふん!」
「ねぇ、ウソだろ、そんな、そんなことって!」

そこに入ってくるロッドとレイディ。

「聞いての通りさJr。逃げたい奴はもうほとんどこの島を出た。君たちも、行きたければ行け。ただし、ゴーグは置いていってもらうことになるがね。」
「・・・あなたは、逃げないの」
「ふふ、ここは俺の島だ。どこへ逃げる必要がある。」
「まあ見ていてごらんよ、この人はどんなことでもヤルといったらやってみせるんだから。」
「・・・。船長は!?どこにいるの!?」

「裏切り者なら、倉庫に放り込んである。へっへっへっ・・・」

デヴィがカギを見せびらかしながら笑う。

「あいつは、誰にだって雇われる汚ねぇハイエナ野郎さ。あいつはなぁ、金のためなら何だってやるんだぜ!」
「ウソだ!船長はそんな人じゃないよ!」
「ところがそうなのよ坊や。だけど、今度ばかりはあいつの思うようにはさせないよ」

しばらく考えていた悠宇だが、思い立ったようにデヴィに向かって行く。

「かしてよ。そのカギ。」
「おおっと!そりゃないぜ坊や」
「かせったら・・・かせーーーっ!!」

デヴィに飛び掛る悠宇。余裕で二倍以上ある巨漢のデヴィを組み敷いて、つかみあい、ついにカギを奪うと、司令室を走って出て行く。

「悠宇!」


ホワイトハウスに、オウストラルの秘密を全国に放送すると恐喝をかけている最中、ロッドたちのもとに急報が入る。

「大変です!人型の群れが、また進攻して来ます!!」

海底を歩いてやってきたラブルガーディアンたちは、ドームの外壁に隣接していた・・・。


そのころ悠宇は、人っ子一人いなくなったビルを走り、船長の閉じ込められている倉庫に至っていた。

「船長!船長!ぼくだよ!」

カギを開ける悠宇。

「船長!」

その倉庫の端には、手錠をかけられ不敵に笑う船長がいた。どこかスゴみを感じさせるその様子に、悠宇は一瞬たじろぐのだった・・・。

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感想

見所は、あんまし出番の無かったロイがついにボケてしまうところと、前回の一件からか妙に仲良くなったロッドとレイディ。

とくにレイディなんざ、もうラブラブ状態だ。なにかというとロッドにくっつこうとするし。トウのたちまくってる彼女だが、かわいらしいことこの上ない。

またこの回、ゴーグのおお暴れも濃厚だ。本当にゴーグは無敵だということをこれでもかというほど見せてくれる。大挙して押し寄せるラブルガーディアンの群れを一人で押しとどめるゴーグ。双眼鏡でその様子を見て絶句していたベームの心境は、たぶん「おいおい、おれたちこんなのにいっつもケンカ売ってたのかよ・・・。よく無事だったな・・・。」というモノだったに違いない。気味がいい。

あとは悠宇の成長を視覚的に表してくれるデヴィとのケンカ。自分の体の2・3倍はあろうかという巨漢のギャングに対して、完全に呑んでいる悠宇。これは常にこの旅の途中、自分で判断し、自分で行動し、自分で危機を乗り越えてきた悠宇の成長が、レイディの尻にしかれっぱなしだったデヴィを人間的に追い抜いているということだろうと思う。

なんにせよ、終盤のもりあがりをキッチリ丁寧に見せてくれている回であろう。


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