第二十四話「火の山へふたたび


放送日:84年9月13日
脚本: 塚本裕美子
絵コンテ:浜津 守
演出:浜津 守
作画監督: 安彦良和


港から侵攻してくるガーディアンは、GAILドームの目前に次々と集結していく。
だが悠宇は、そのころGAILビルの薄暗い倉庫の一室で、幽閉された船長と対峙していた。

「・・・・・・・どうして・・・・どうして裏切ったりしたの・・・・?」
「・・・・・・・・・・。」
「みんなから聞いたよ。今までずっと一緒にやってきたのに・・・どうして!なぜ、こんな時になってさぁ!?ひどいじゃない!」
「仕事だったのさ・・・おれのな」
「・・・仕事?仕事って・・・だってさぁ!」
「確かめて、報告する・・・っていう契約だったのさ」
「ウソだ!それだけのために、僕たちを助けてくれたっていうの!?あんなにさ、危ない目にあって、苦労して!」
「それもこれも仕事のうちさ。・・・どうだ、完璧にこなしていただろ?」
「それだけじゃない!ぼくたちと一緒にここまで来てくれたのは、そんなことのためだけじゃないよ!船長!」
「仕事っていうのは、そういうモンなんだよ。・・・おかげで十分な見返りがあった。億万長者なんだぜ?今のおれは。あとは一生贅沢のし放題でも生きていけるくらいだ。もっとも、ここから生きて帰ることが、できればの話だがな・・・」
「・・・信じていたよ、ぼく・・・信じてたのに!みんな、船長のこと好きになってきてたのに・・・!」
「悪かったな・・・だが、それはそっちの勝手だ」
「じゃあ聞くけど!どうしてこの島がなくならなきゃならないの!?」
「おれの知ったことじゃない」
「ちゃんと答えてよ!宇宙人がいたからなの?ガーディアンが攻めて来たからなの!?悪いのはこっちなのに・・・!」
「災いの芽は早いうちに摘み取ってしまうのが一番だからさ」
「だって、こうなったのはGAILの・・・」
「そうだろう。そのとおりだ。確かに悪いのはGAILだ。火遊びのタネにするには、オウストラルって島は少々危険すぎたってことさ。だから消す。おえら方がそう決めたんだ」
「そんな!そんなことって・・・!」
「そういうものさ、政治ってやつは」
「でも!たくさんの人が死んじゃうんだよ!マノンさんや、みんなや・・・」
「だから早く逃げろ。こんなところにいるヒマは無いぞ」

ドドドーン、と窓の外から爆発音が聞こえる。ガーディアンの再侵攻が始まったのだ。

「・・・いやだ!ぼくは逃げない!」
「・・・・・・・」
「この島や、マノンさんたちを消しちゃうのだっていやだ!絶対にいやだ!!」
「・・・・・・・」
「まだ、間に合うでしょ?何かいい方法があるんだ。あなたはそれを知ってるんでしょ?ねえ、船長!船長!何か言ってよ!」
「・・・・・・・」
「頼むから、ぼくに教えてよ!ゴーグだって、マノンさんだって友達になれたんだよ!?ぼくにできることあるでしょ!?ねえ!どうしたらいいの!?ホントに、ホントに、どうしようもないの?ねえ!!」

「・・・・・・・強いなぁ、坊や・・・・・。あきらめの悪いやつだ。よくもそうまで・・・・」

グッと悠宇の肩をつかむ船長。

「・・・坊や。おれの言うことなんか、当てにする事は無いぜ。おまえさんなら、自分で自分がどうすればいいかを、見つけることができる。・・・きっと、な。」
「船長・・・・」

そこにアロイがあわただしく入ってくる。

「悠宇!何してんだよ!?人型がいっぱい、すぐそこまで来てるんだぜ!」
「え!?」
「早く来いよ、早く!」
「あ・・・うん・・・」

船長の方を見る悠宇。目でうなずく船長。

「できると思ったらやってみろ。どんなことだっていい。・・・いいか、死ぬなよ」


「てーーっ!やつらを叩きつぶせーーーっ!」

ベームひきいる戦車隊は防衛線を敷き、ガーディアンの侵攻を食い止めようとしていた。だが、ゴーグ一体にもてこずった戦車隊が、無数のガーディアンを止めることなどできない。じりじりと押されていく戦車隊。

「危険であります!ベーム少佐!中へお入りください!!」
「おれは大尉だ!何度言ったらわかるんだ!」


GAILの司令部。ロッドとレイディによって、全世界の指導者への交渉が試みられていたが、その返事はつれないものばかり。

「くそっ!」

ことの成り行きにいらだちを隠せないロッドの横で、Drウェイブは天を仰いでいた。

「ああ・・・人類全てに貢献する異星人の遺産・・・いや、生きているんだから財産だ!それを核攻撃で消そうなんて・・・許せないよ僕は!!なんとかしてこの目で全てを見てから死にたい・・・いや、いやいや、死んでは発表できない!ああ!死にたくない!」

そんな兄の様子を見ながら、ドリスはつぶやく。

「ああ・・・悠宇、早くなんとかして・・・・っ」


「やつらは首根っこが急所だ!そこを狙え!」

戦車砲が火を噴き、ようやくガーディアンを一体撃破する。だが、それも焼け石に水。戦況は全く変わっていない。

「ベーム少佐!中へお入りください!!」
「キサマ俺をバカにしてるのか!?撃てーーーーっ!!」

ラブルガーディアンの一体が、ついにドーム外壁を破壊し中へと侵入する。だが、それは突然弾き飛ばされる。ガーデァインの空けた外壁の裂け目から ヌッと姿をあらわしたのはゴーグである。のそりとラブルガーディアンの群れの中に身を置くと、GOOOORG!と咆哮をあげ、戦い始める。圧倒的な強さで敵を撃破していくゴーグ。だが、その胸の中の悠宇は焦燥していた。

(だめだ・・・こんなことしても、時間がどんどん経っちゃって・・・)

胸の中でそう考えているスキに、ラブルガーディアンにはがいじめにされ、打撃を受けるゴーグ。アロイとサラの援護射撃で何とかそこから脱け出し、アロイを襲おうとしていたガーディアンをパンチで撃破するが・・・そのとたん、ラブルガーディアンたちが、一斉に戦いを止める。

「アロイ、ごらんよ、様子がヘンだ・・・」

「どうしたんだ急に・・・・?・・・・!・・・マノンさんだ、マノンさんがぼくを探している・・・!何故、どうして今になって・・・・でも、呼んでる・・・・聞こえるよ、マノンさん!ぼくはここだ!ここにいるんだ、マノンさん!呼んでる!呼んでるね!!」

マノンからの不明瞭なメッセージが、悠宇の耳に聞こえる。脳裏に船長のセリフが思い浮かぶ。

(できると思ったらやってみろ、どんなことだっていい・・・)

「・・・やってみるよ、ぼく!」

GOOORG・・・・と唸り声を上げるゴーグ。ガーディアンたちが道を開ける。

「悠宇!どこへ行くの、悠宇!?」
「どうした?」
「悠宇が!ゴーグが行っちゃうの!」
「Jr!田神Jr!どうしたんだ?!」
「マノンさんのところに行く!ぼくを呼んでるんだ」
「待て!ワナかもしれんぞ!?」
(・・・ワナだっていいんだ・・・マノンさんに逢わなきゃ・・・・!)
「大丈夫だ!心配しないで!」
「だめよ悠宇!行っちゃだめ!」

通信を切る悠宇。
「死ぬなよ・・・死ぬなよ・・・・」と船長の最後の言葉がリフレインする。

そして、その同時にGAIL司令部に伝達された、各国代表からの通達は「決定は変わらず」というものであった・・・。


ガーデァイン達が火の山へ帰って行った後、GAILの車両倉庫に駆け込んでいくトメニクとドリス。アロイとサラも合流し、倉庫のシャッターを開けると、かって共に死線を乗り越えてきたキャリア・ビーグルが駐車されている。悠宇を心配して、ビーグルで追うつもりなのだ。

「ねぇ、まだ!?」
「まだだ!まるっきりカラだったんだよ」
「早くして、早く!」

しばらく使っていないビーグルなので、燃料補給や砲塔の調整など、準備に手間を取られてしまう一行。


(マノンさん・・・どこにいるんだろう・・・?呼んでるけど、呼んでるってのはわかるけど・・・・どこから呼んでるんだろう・・・)

度重なる噴火によって荒れ果てた火の山を登って行くゴーグ。

「何でもいいんだ、逢うんだ!逢って、何もかも話して・・・・」

山の中腹で、マノンの姿をついに発見する悠宇。喜び勇んでゴーグの胸から飛び出す悠宇だったが、フと目を離したすきに消えている。遠くにいるのを追いかけてみると、それも目前で消える。

「・・・!ホログラフ・・・・」

さらに遠くにあらわれるマノンの像。

「・・・そっちに行けばいいんだね、よーし!」

途中で発見したポッドキャリアにまたがり、ゴーグをしたがえてマノンを追っていく悠宇。

(なんだかヘンだな・・・ここは、あのガーディアンが降りてきたコースじゃない・・・・)

「マノンさん!いったいどこにいるの?どこまで行けば本当のあなたに逢えるんだ!いい加減にしてよマノンさん!本当にぼくと逢ってくれるの!?だったらもうやめてよこんなこと!急いでるんだ!急がなくちゃならないんだ!」

騙されているのかもしれない・・・そう思った矢先、マグマの噴出が起こり、大規模な地割れが発生する。悠宇を助けようと駆け寄るゴーグ。だが、その足元も崩れ、ゴーグはマグマの海に沈んでいく。

「ゴーグ!?ゴーグ!!」

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感想

この回、涙無しには見れないという人がいる。激しく同意。船長と悠宇の対話が、その原因であることは言うまでも無い。

さて、この対話。前半で最も重要なのは(1)悠宇が、船長の今までの行動に対して感想を述べる(2)船長が、今までの自分の行動に関して理屈をつける。という2点であろう。(1)の「みんな、船長を好きになってきたのに」という一節。これは、冒頭での悠宇は船長を「うさんくさい、信頼できない人」と見ていたのに対して、非常な変化である。(2)は、「全て仕事だ」という理屈。しかし視聴者は知っている。今までの船長の行動が、完全に仕事だけのためとは思えないものだった、ということを。だからこそ、悠宇の「うそだ!それだけじゃないでしょ」というセリフに万感の感情移入を果たすことができるのである。

そして爆発をはさんで対話の後半。前半では船長はよくしゃべっていた。その趣旨は「全部仕事だ。いまのこの状況は仕方の無いことだ。だからさっさと逃げろ」ということで、これは爆発前に話として終了しているのである。だが、そこで悠宇は「それでもいやだ」と言う。ここからは船長は言葉を失う。悠宇のろれつの回らない、根拠もほとんど無いようなしゃべりをずっと黙って聞き、そして、アレだ。「強いなぁ坊や」だ。

船長は、大人だ。いろんな世の中の不条理や、しくみに対して「仕方が無い」と折り合いをつけることができる大人だ。だが、悠宇は、その「仕方が無い」の理論をまっこうから否定したのだ。船長は自分がすでに(たぶん若い頃に憎んだような)あきらめモードの大人になってしまっているということに気づいたのかもしれない。そして、あきらめない悠宇に、大きな未来を感じたのかもしれない。

だから、船長は、悠宇の肩をつかみ、「やれ」と言ったのではないだろうか?

この対話を見る度に激しく心を揺さぶられる理由。それは、この対話がそれだけで一つのドラマを完全に内包していることによるものだと、私は思う。


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