第二十五話「遠い絆 」
放送日:84年9月20日
脚本:辻 真先
絵コンテ:菊池一仁
演出:菊池一仁
作画監督: 安彦良和
「うわぁーーっ!」
せまりくるマグマから間一髪のところで悠宇を救ったのは、ゴーグであった。静かにGOOORG・・・と吠えるゴーグに、悠宇は信頼の目でこたえる。
この一幕を基地内で見つめていたマノンは、「やはりな・・・」と呟く。
「マノンさーん!どこにいるんだよーーっ!教えてよ、ぼくはここまで来たんだ!あと、どう行けばあなたのところへ行けるんだ!?」
「よく来た、悠宇」
赤くドロドロと光るマグマの海から、マノンタイプガーディアンが現れる。
「さ、ここへ来たまえ。・・・さあ、悠宇」
「・・・最初のミサイル発射まであと20時間ですぜ?」
「どうやらこれでゲームセットね・・・」
散らかったGAIL司令室に、レイディの折った紙飛行機が舞う。シーンとしている。
「・・・あの、ドリスたちは・・・・?」
「・・・くっくっくっ・・・のんきな兄さんだ。Jrを探すと言って出かけたぜ」
「何だって・・・悠宇を!?どうやって?」
「ビーグルに乗るんだって。懐かしのね。」
「ビーグル!?冗談じゃ無い・・・ぼくも行く!」
かけて行くDrウェイブ。
「無駄なことするのね?」
「無駄か・・・ふっふっ・・・そうさ、無駄だったってわけさ。何もかもが・・・ハッハッハッハッ」
乾いた笑いを立てる一行。ベームだけ、その司令室から出て行く。
「島を出るのかね?だったら私の専用機を使え」
「・・・いやなに。私ももう少し、無駄な真似をしようと思いましてね・・・?」
すでに全てをあきらめた感のあるロッドとレイディは、倉庫の船長の元へ行く。
「おそろいだな、何の用かね?」
「あんたにはもう用が無くなった。それを言いにきたのさ」
「・・・ほう。」
「しゃくにさわるけど、あいにく忙しくなったのよあたしたち。」
「そうかい、そりゃご苦労なこった」
「島を出たけりゃ、好きにしたまえ。誰もあんたの邪魔はしない。」
「フン!せいせいするわ!」
「また会おう、とは言わん。あんたとはたぶんこれっきりだ。」
「じゃあね。スイス銀行の現ナマによろしく!」
「・・・・。」
ベームは戦車隊を出し、無駄だとわかりながらも、来るべき核ミサイルを打ち落とすために布陣を引く。
また旧島ゲリラたちは、ただひたすら不安にうろたえるばかり。
そんな中、ロッドとレイディはヨットを出し、最後のバカンスを楽しんでいた。
「あははは!いいわ、最高よロッド!」
「ああ全くだ!おあつらえむきだぜ、風も波もな!」
一方船長は、社長室でその様子を見ながら、ロッドのウィスキーを勝手にグラスに注ぐ。
「・・・オウストラル島に乾杯・・・」
異星人の遺跡で、再びマノンとまみえる悠宇。
「よく来てくれたね、悠宇」
「・・・もう、会えないと思ってました」
「私もだ。うれしいよ、悠宇。・・・・今となっては、君が唯一の希望なのだ。」
「え?・・・どういうことですか?」
「来たまえ」
コールドスリープルームに通される悠宇。
「私は噴火のエネルギーを過小に見積もっていた。その結果がこれだ・・・。覚醒はもう時間の問題だったのに・・・」
「ああ・・・!」
無数のコールドスリープ装置の中に横たわるのは、死体ばかりである。
「全て、私の責任だよ。体温の微妙な調整機能が損なわれてしまえば、スリープカプセルもただの棺のようなもの・・・」
「マノンさん、一人だけが・・・・」
「同情かね?その必要は無い」
「でも」
「私は、一人ではない。それがやっとわかったのだよ。仲間たちの死にかこまれてみてはじめて・・・」
「ああ、マノンさん?」
「・・・君の体には、私たちと同じ血が通っていたのだよ。正しくは何分の、いや何千分の1かだろうが・・・」
「ぼくが!・・・どうして、どういうわけで・・・そんなこと、ありっこないよ、ウソでしょ・・・!?」
「信じられないのも無理は無い。何もかも見せてやろう」
ゴーグの左胸が開く。
「全ては君の遺伝子に記憶されているはずだ。あとはただ、君自身がその潜在意識を開放し、それと出会えさえすれば・・・」
「あそこへ・・・」
「そうだ」
だが、 悠宇がいつも乗っていた右胸と違い、あそこはかって風化したゼノンが座っていた席だ。恐怖を感じる悠宇。
「さあ」
帽子をかぶりなおす悠宇。勇気を出してゼノンの席へ座る。
「悠宇、よく見たまえ。君はそこで目覚めていながら夢を見る。3万年前の記憶をたどるんだ」
光につつまれ、銀河に浮かぶビジョンを見る悠宇。
「ここは・・・どこなの・・・・ぼくは・・・・」
『我々は宇宙を漂流しているのだ。ふるさとの死によって、あらたなる大地を求めなくてはならなかった・・・』
悠宇に謎の声が語りかけてくる。
「あなたは?マノンさん?」
『ちがう。マノンは私の兄だ』
「じゃあ、あなたは・・・・うわーーっ!」
加速され、宇宙を越え、原初の地球へと向かう悠宇。
『・・・私たちは、一つの星を見出した。私たちと同じ、ヒトの住む惑星をだ。彼らは驚くほどに我々と似ていた。そして、すでに文明の戸口にさしかかっていた。おそらく三万年後には、彼らの文明はそうとうの段階に達すると思われた。』
「・・・三万年・・・?」
『誤解してはいけない。知的生命体の築く命は、宇宙の時間の中ではほんの一瞬にも満たない。一つの文明が他の文明と、つまり、一瞬が他の一瞬と、同じ地平に出会うということは、奇跡に近いことなのだ。・・・私たちは岐路に立たされた。この星の先住民族と和して文明を築きあげて行くか、それとも3万年の時を待って、成熟した彼らと新たにまみえるか・・・!だが、彼らとの同化は、我々自身の文明の放棄を意味していた。兄のマノンはそれをきびしく拒絶し、我々は南の海に浮かぶ孤島を、時を渡るカプセルに利用することにした。・・・しかし、ある者があえてマノンに反抗し、禁を破った。彼は先住民の一人の女を愛してしまったのだ。兄は、彼らを殺そうとした・・・!』
「その人は・・・あなたの・・・」
『大事な友・・・そして彼は正しかった』
マノンタイプガーディアンの前に立ちはだかるゴーグのビジョン。
『・・・当然の報いとして、私は仲間のもとを離れた。私のいる所は、永遠の命を持つガーディアンの体内しか無かった』
噴火するオウストラル島のビジョン。悠宇は興奮して叫ぶ。
「わ、わかったよゼノンさん!ゴーグには、あなたが命令してくれたんだね!あなたが護ってやった人と、その子孫を、あなたが死んだあとも護ってやれって・・・!そして、ゴーグは3万年の間、ぼくが来るのをずっとこの島で待っていてくれたんだね!!」
幻視から帰ってくる悠宇。目の前にマノンがいる。
「きみがゴーグと呼んでいるガーディアンは、ゼノンの残留思念をくんで君を助け、私のもとに導こうとしていたのだ。」
「ぼくが、その人の血をひいているから?」
「その通りだ」
「・・その人の名前は?」
「マシウス・デ・ル・マドゥ・・・」
「・・・マシウス・・・・」
「私は、安易な種のまじわりこそ、私たちの滅びの始まりだと考えた。だからマシウスの行為を許せなかった。だが、私の負けだった。時を越えても純然とした体を保とうとした我々は滅び、皮肉なことにマシウスは今も生きている・・・」
「えっ!」
「君の中だ、悠宇。」
「・・・マノンさん」
「気づくのが遅すぎたために、君にはつらい思いをさせてしまった・・・あれといっしょに君の世界へ帰りたまえ。そして生き続けてくれたまえ。もう、よみがえる事の無い、私の仲間たちの分もね。」
「・・・だめなんです!・・・もうすぐ、何百という核ミサイルが降って来て、ぼくたちはみんな死んじゃうんです!・・・そうだ、マノンさん、あなただって!ぼくたちには、もうどうにも出来ないんです!だからぼく、ここに来て・・・」
「・・・わかった、悠宇。何も言うことは無い。帰るんだ。君の仲間が心配しているだろう。」
「でも・・・」
「さあ・・!」
こうして遺跡を後にする悠宇。荒廃しきった火の山を下っていく途中、アルゴスと再会を果たした悠宇は、その後まもなくビーグルと合流する。
そのころGAIL、無人の司令室のコンピューターには、ミサイル発射30秒前の警告メッセージが現われていた。
波間に浮かぶヨットを見ながら、ウィスキーを傾ける船長は、一人ごとを漏らす。
「ふっふっふっ・・・妙な具合になっちまったぜ。ぼうや・・・おまえさんのせいだぜ。おれの定年(*)も現ナマも・・・フ・・・・だいなしにしてくれやがって・・・」
コンピュータに表示されるメッセージ。
MISSILES ON LINE
NO ONE CAN STOP THE ATTACK
(ミサイル ハ ハッシャ サレタ ソシデキナイ・・・・ソシデキナイ・・・・)
世界各国から、大陸間弾道核ミサイルが、無数に打ち上げられる・・・!
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感想
ストーリー上での全ての謎が解明され、マノンとの和解が描かれる、非常に重要な回。
謎とはつまり
(1)異星人の来歴
(2)突然の撤退の理由
そして最も重要なのが
(3)ゴーグが悠宇を護る理由
以上3点である。
(1)は、「3万年前、故郷を失った異星人が、宇宙を越えて地球にやってきた。だが、地球人類との出会いと、自らの文明をを大切にしようと判断した彼らは、人類の成熟する3万年の時を眠りについて待つことにした」ということ。
(2)は、「火山活動を甘く見ていたため、コールドスリープの装置が壊れ、マノン以外のすべての異星人が死亡した」ということ。
そして
(3)は「3万年前、マノンの方針に異を唱えて、地球人の女と脱走したマシウス。これを助けた為に行く場所を失ったマノンの兄ゼノンは、自らの死後もマシウスとその血統を護るようにゴーグに命令する。そして、悠宇はそのマシウスの遠い遠い子孫である・・・。」
ここに、悠宇とゴーグの冒険は帰結を迎えるのである。
ちなみに・・・悠宇がこういう真実に至っている一方で、レイディとロッドはひたすらいちゃつく。いちゃつかなきゃ損だといわんばかりである。
「そういえば、近頃夢を見ることってなくなってたみたいよ、ロッド・・・」
「・・・そうだな・・・・」
と腕を組んで見つめあう2人、通路を歩いて行く。そんな流れの中、イキナリ地面に脱ぎ散らかされた服が画面に映る。これには「すわ!地上波なのに!オーガス!?」と我が目をうたがいかけたが、実は2人でヨットを出して遊んでるだけと知ったときは、さらに我が目をうたがってしまった。