第二十六話「光る島


放送日:84年9月27日
脚本:辻 真先  
絵コンテ:鹿島典夫
演出:浜津 守
作画監督: 安彦良和


世界中のニュースが、「地球規模の核実験」ミサイル発射を軽く報道する。

人々の多くは無関心である。

隠された真実を知るものは、誰も居ない…。


「時間だ…ああ…っ!」
「…時間!?」
「ミサイル発射のか?!」
「ウソよ!そんなぁ…!」

ビーグルの中で蒼白になる面々。トメニクが確認の為に司令室に連絡を取ろうとするが、すでに無人の端末には、

FINAL NOTE

All of the missiles on line

for Austral Island

25:00 mt,for Attack

ESCAPE NOW

(サイゴツウコク:スベテ ノ ミサイル ハ ハッシャ サレタ・・・オウストラルマデ 25フン・・・・ダッシュツセヨ・・・ダッシュツセヨ・・・)

と表示されているのみ。

「…だめだ。誰もいない…。」

夕日が沈む中、荒野に風が吹く。

「信じない!そんなハズないわ!わたしはアメリカ人なのに、アメリカのミサイルで殺されるなんて…!…悠宇…!どうすればいいのよぉ…!」
「オロカだ…オロカすぎるよ…」

沈む面々。しかし、悠宇は顔を上げる。

「……行くんだ。」
「え?」

ビーグルを出て、ゴーグに乗り移る悠宇。

「悠宇、待って!どこへ行くのーーっ?」
「行くんだ!みんなのところへ!」

歩き始めるゴーグ。

「ゴーグ…」
「タウンに帰って何になるんだよ。手遅れだよ…ムダなこった…」

「だめよ!アタシたちも行かなくちゃ!」
「そうよ!ムダでもいいよ!」
「ついて行こうぜ、ゴーグに!」

途中のガケから滑り落ちてしまったビーグルを捨て、ゴーグの両手と頭に乗り移る、ドリス、アロイ、サラ、Drウェイブ、トメニク。


「キレイね…夕日…ねぇ、天国に行ったら、あたしたち、やりなおせるかしら…?」

ヨットの上でロッドに語りかけるレイディ。

「…ハッハッ、天国だって?おいおい、誰のセリフだ、いったい?」
「なにさ。…構いやしないわよ、地獄だって…。ねぇ、また最初から生きられたらステキね。アタシたち…」
「もう一度、リンクスファミリーに生まれて、か?」
「そうよ。そしてアナタはバルボア家の生まれで…。それでいいのよ。それだって、こんなドジはしないわ。…ステキに生きられると思うわ。今度は…。」


大砲を撃って遊ぶ、ベームとGAIL兵。そこにデヴィが乱入し、機材をひっくり返す。

「やめたやめた!こんなことしてどうなるってんだバカバカしい!」
「いい根性してるじゃねぇか、ええ?サイコロ屋さんよ!?」
「…寝ぼけるんじゃねぇぜこの兵隊ボケ!往生際が悪いったらねぇ!」
「てめぇ〜!ベトナムからこっちの俺はな、人の生き死になんぞ嫌って程見てきたんだ!往生際がどうだって?この野郎!」
「サイコロ屋なんてぬかしやがったのはてめぇだろ!カポネ真っ青のクーガコネクションを知らねぇのか!」
「女のケツにひっついていやがっただけのクセに…!」
「何だとこの雇われネズミが!」

殴り合いに発展するベームとデヴィ。

しかしスグに疲れてやめる。

「やめだやめ…くだらねぇ。」
「…確かによ…粋がってみても、ケチなヤクザさ…」
「ケチな戦争屋よ。このオレも…」

フと、ベームは船長が歩いて行くのを見る。

「ヤツ…どこへ…?」


「ホツさまどちらへ…!」
「ミサイルが降って来ます、どこかへ身を隠さねば!」
「…神の使いが帰ってくる。出迎えねばなるまい。イヤな者は良いぞ。好きに身を護るがよい…。」

旧島ゲリラもタウンから島へ伸びる橋を歩き始める。


「どこへ行くつもりかしら、こんな時に…ロッド!どうしたのよ!」
「…田神Jrが帰ってくるんだ…!」

ロッドとレイディも一団に加わる。


タウンに残った、ほぼ全ての人間が、無言で橋を歩いて行く。何ものかにせきたてられるように。

しかし、ちょうどその時、大空の彼方から数発の核ミサイルが飛来し、島は大爆発に包まれる。

無数に上がるキノコ雲。


ホワイトハウスでは、合衆国大統領がモニターを見ながら側近に話しかける。

「これでいいのだね…」
「確かに、いくつかの岩礁は残りますが、島は消滅したことになります。」
「…終わったな…。」


だが、爆炎が晴れ、光の収まった後…島は依然としてその姿を保っていた。

「………?」

「ああ……」

「は……」

地面につっぷしていた船長は、信じられないと言った顔つきで己が両手を見て、その後、爆笑。

GAIL兵士たちも、ゲリラたちも、ロッドもレイディも、ベームもデヴィも、みんなつられて笑い出す。

ワケはわからないが助かったのだ。

「い…生きてるのね、アタシたち…どうして、どうして生きてるの?」
「わからない…でも、生きてるんだ!見てごらん!島も、そのまんまだよ!」

タウンに帰ってくるゴーグと一行を、迎え入れる人々。

(きっとマノンさんだ…マノンさんが護ってくれたんだ…!)


その夜、GAIL兵やゲリラたちの祝宴から離れた桟橋にいる、悠宇と ドリス。

「よかったわ…やっぱりいい人だったのね、マノンさんて…」
「うん。…だけど、これからどうしたらいいんだろう…」
「え?だってもう安心じゃない。放射能だってゼロだったんでしょう?」
「そうじゃなくてさ、ミサイルは防げたけど、やっぱり世界中がこの島を放ってはおかないよ…。」
「…攻めて来るって、言うの?」
「…うん…。攻撃されれば、マノンさんは戦うよ。ゴーグだって…。そうなったら、同じことのくりかえしだ。」

悩む悠宇、しかし、ドリスは突然足元に水を感じる。

「…キャッ!冷たい!」
「…?…!海が…こんなところまで…!沈んでる…?」
「え?」
「島が沈んでるんだ…でなきゃ、ここまで水は来ないよ。…船長!大変だ!」
「うむ、おれも今気づいたところだ。」

火の山の噴火が再び始まる。

(…マノンさん、オウストラル島をまた、沈めちゃうの…?)

 

『悠宇…これが最後だ…。我々がコントロールできた島のエネルギーは、これで全てだ。キミに逢えて、良かった…悠宇…。』

 

「…放っておけば、また島は争いのタネになる。それを見越して、自分から始末をつけようって言うんだろう…」
「マノンさん…」


翌朝、沈み行く島から、GAIL兵・ゲリラなど残った人々が次々と荷物を運び出して去っていく。

その様子を見守るホツ・マツア。

「神が見捨てなされた…なんということだ…わしらの島が沈むとは…」

そこに、トメニクが話しかける。

「出直せ、ということですよ。」
「…教えをたれるのか。おまえが、このわしに…。ふ、フフフ…」


タンカーに乗ったロッドとレイディ。

「帰るところあんの、アンタ?GAILはぶっこわれちまったし、アンタにはもう、屋根もベッドも無いんだよ。」
「望むところさ。せいせいしてるぜ。やりなおしが、出来るんだからな!」
「そうね…天国にも地獄にも行けなかったけど、最高よね…!」


最後まで島に残っていた悠宇。太陽を背に屹立するゴーグと対峙する。

「……ゴーグ…………。また、あえるよね。」

静かにたたずむゴーグ。カモメが巨体のそばを羽ばたいていく。

「……きっと、また来るよ……ぼく。待っててくれるよね。これまでだって長い間、待っててくれたんだもんね……!」

…GOOORG…

ゴーグに背を向け、涙を振り切り、走り去る悠宇。

それを見守るように立ちつくすゴーグ。最後の噴火が始まる。

タンカーでは、トメニクがアロイとサラに別れを告げる。

「じゃ、元気でな。うんと勉強しろよ。」
「あ、アニキもな…必ずさ、手紙書くからよ…!」
「水が変わるから、十分気をつけろー!」

島を離れていくタンカー。

噴煙を上げて沈み行くオウストラルに、消えて行くゴーグ。

甲板に立つ悠宇。

(きっとまたあえるよ、ゴーグ。今にみんな、間違ったことに気づいてくれるから…。それまで、マノンさんも死んじゃダメだ。待っててよ…!)

「うん…!」

悠宇の肩に手を置く船長。それに悠宇は、笑顔で答えるのだった。

 

THE END

OF AUSTRAL AFFAIR



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感想

大団円。

オウストラルでの大冒険活劇に、ひとまず幕がおろされる。

ゴーグと悠宇の別れは、最初に出会ったときのように静かな時の流れの中で描写される。ずっと見ていたものにとっては涙を禁じえない、屈指の名シーンだ。

噴煙の向こうに消えて行くゴーグの後姿は、さらに印象的で寂しい。だが、「ゴーグは永遠の命を持っている、たとえ島が沈もうが、どうなろうが、きっといつまでも待っていてくれるのだ。」という信頼があるので、悠宇と同様、「きっとまた逢える」という希望を、我々は抱くことができる。

その後、ゴーグやマノンさんがどうなったのかは全く描かれない。

全ては視聴者の想像に、ゆだねられているのである。

 

(彼らのその後について)

巨神ゴーグ ドラマ篇〜愛と冒険の軌跡 によれば、これから5ヵ月後の生活がチラリと述べられている。

以下、それをもとにして一部推察も交えて紹介してみよう。

・悠宇:Drウェイブの新アパート(ニューヨーク)に居候して、アメリカの学校に通っている。

・ドリス;同上。どうやら世話焼きの本領を発揮してるようだ。

・ウェイブさん:新宅で新しい生活に。たぶん、船長に金を世話してもらったんじゃないだろうか?

・アロイ:悠宇と同じ学校に留学。性格的にも、けっこうすぐニューヨークにはなじみそうだ。

・サラ:同上。

・船長:あいかわらず。・・・ということはやっぱり危険な仕事を請け負って、それで生活してるんだろうか。

・トメニク:南太平洋に残留。島は沈んでしまったので、サモアあたりで旧島の連中のリーダー的なカンジになってるのかも。

 


最後に

ここまでで、ゴーグの全ストーリーを紹介させていただいたが、たぶん本来の魅力の十分の一も伝えることができなかったと思う。

これはあくまで、「ゴーグってどんなんだったっけ?」とか「とりあえずSRCにゴーグ出したいけど、話が思い出せない」とか、「ビデオレンタルが無いんじゃゴルァ」というような人の為の紹介文に過ぎない。少しでも興味を持たれた人は、LDなり、いつか出るであろうDVDなりを購入したり、「企画」コンテンツ内の「ビデオ情報」などを頼りに、どこかでレンタルして是非鑑賞してほしい。きっとソンはしないハズだ。