第七話「海坊主の砦」
放送日:84年5月17日
脚本:辻 真先
絵コンテ:小鹿英吉
演出:小鹿英吉
作画監督:安彦良和
ゴーグの後を追い、夜のデコボコ道を行くビーグル。
「なんとかならんのかね、この道は・・・」
「水先案内が、この道を選んでるんだ。仕方ないな・・・。トメニク、いつでも交代してやるぞ」
「いや、もう少し・・・」
「そうか。操縦の腕の方は、おまえが一番だからな・・・」
コクピットの窓からは、月明かりに照らされて進むゴーグの後姿が見えている。ふと思い立った船長は、地図とコンパスを取り出し、ゴーグの進む道を確認してみる。
「北北西か・・・やけにすなおなコースだな。」
「まっすぐに何かを目指してるってことだよ、船長。この線の行き着く先に、何かあるってことさ。」
「出し抜けるかな・・・GAILを・・・?」
銃座にすわり、一人ゴーグの姿を見つめる悠宇。
(ゴーグ・・・何なんだ、おまえは・・・)
そこに、ドリスがやってくる。
「悠宇!ダメじゃない、何してんのこんな所で。疲れてるんでしょ?寝なきゃダメよ。」
「・・・夜風、気持ちいいよ。」
「ん・・・風邪ひくから・・・。」
ドリスは悠宇の座っているイスの端に腰をおろす。
「・・・ウソみたいね。」
「何が?」
「こんなところで、こんなことしてるなんて・・・10日前までは、あたしニューヨークにいたのに。あんたのことだって、知らなかったのに・・・。」
「・・・そうだね。」
「不思議な人ね、あんたって。死んじゃったかと思ってたのに、あんなスゴイのとお友達になってるなんて。」
「・・・ぼくも、不思議だ。」
「アロイもサラも、すっかり驚いてえるわよ。あなたのこと、神様だって。」
「あの二人?」
「ウフッ・・・迷信深いのよ・・・・・・心配したわ。」
「ゴメン・・・。」
突然ビーグルは停止する。
「神の使いが・・・止まった・・・?」
「前に何かいるみたいだよ。」
月が晴れると、そこにはGAILの巨大な土木建築マシン「ダイナソー」がいる。
「あ・・・あいつだ!」
ダイナソー内部では、突然現れたゴーグに警報を出し、すでに乗員たちは戦闘配置についていた。
それを知ってか知らずか、ゴーグは月が再び隠れると同時に、前進を始めるのだった。
ダイナソーの砲撃が開始され、ゴーグは何発もの直撃を受ける。
「ゴーグ!」
しかし、ゴーグは無傷で次第に間合いを詰め、ダイナソーの巨体にタックル!砲台を握りつぶし、膝蹴りを食らわし、とどめに上手投げでダイナソーをガケに放り投げる。
その強さに開いた口がふさがらないビーグルの一行。
「わああ・・・」
「や、やった・・・」
「やった!見たか今のケタはずれの強さ!」
「やっぱり、スゴイ・・・」
だが、船長は一人、渋い顔で「そうだな、確かに腕力だけは・・・。」と一人ごちるのだった。
人型出現の報を受け、海坊主に向かうロッドとGAILの援軍。一方、悠宇はひとり、ゴーグにコンタクトを取るためキャリアビーグルを離れる。
その際、悠宇は船長から銃とトランシーバーを受け取る。
「悠宇、海坊主の方に行っちゃダメ!ゴーグに方向を変えさせて!」
だが、悠宇の説得にもゴーグは耳を貸さない。
「だめだよ、全然ぼくの声なんか聞こえないみたいだ!・・・ゴーグ、左に行くんだ!」
そのうちにゴーグは海坊主の砲台の射程距離内に入り込んでしまい、無数の砲弾の集中砲火を受ける!
だが、ビクともせず海坊主に近づくゴーグ。
「ゴーグ!たのむから言うこと聞いて!このまま行くとダメなんだよ!」
その様子を見ながら、船長は悪態をつく。
「あのデクの坊め!せめて回り道するぐらいの知恵が出んのか!?」
双眼鏡でゴーグの頭部を見、悠宇の姿を発見するロッド。
(いる!やっぱりいる!一体何なんだ、あの子供は・・・何の人間だ?冗談じゃないぜ・・・)
ロッドは基地に到着すると、海坊主の司令官・ベームに子供を捕獲するように命令する。
「できるなら殺すな。生け捕りにしろ!ちょっとしたキングコングドラマが拝見できるかもしれんぞ。ふっふっふっ・・・。」
戦闘ヘリの攻撃で、ビーグルも爆撃を受ける。
「ドリース!」と身を乗り出した悠宇。そこをヘリの機銃がカスる。「うっ!」
とたん、ゴーグの瞳がひときわ強い光を放つ。
GOOOOORG!
積極的になったゴーグは無敵だ。ヘリを捕まえて投げ飛ばし、キックやパンチであっという間にヘリを撃墜する。
「な・・・なんてやつだ・・・あの人型めが!」
頭部で腕を抑えうずくまる悠宇。気が付くと、内壁が不思議な光を放っている。
「何・・・これ・・・?え・・・何、どうするの?」
光るところにおそるおそる手をあてると、とたん地面が開き、悠宇はゴーグの体内(胸の中のコクピット)にスポーンと落ちてしまう。
真っ暗な目の前が突然光り、外の光景が表示される。
「ビーグルは!?」
と悠宇が振り向くと、その方向のモニターにビーグルの様子が映し出された。
「よ・・・よかった・・・無事で・・・ありがとう、ゴーグ。ぼくを護ってくれたんだね・・・でもね、ゴーグ。このままじゃぼくの仲間の人たちが、ひどい目にあうんだ。お願いだからぼくの言うこと聞いて。・・・左に方向を変えるんだ。大急ぎで海坊主から遠のくんだ。わかるかい、ゴーグ・・・に・げ・る・ん・だ。」
ようやくゴーグは言うことを聞き、方向を転換する。トランシーバーでそのことを伝える悠宇。
「ドリス!ぼくだよ!ぼくはもう大丈夫だ、船長!ねえ船長見てよ!ゴーグが言うこと聞いてくれたんだよ、見てるかい!」
「ああ、よくやった。神のつかいがようやく折れてくれたようだな・・・(気をもませるやつだ)。」
だが、「黒い壁」と呼ばれる断崖近くまで移動した際、GAILの追撃戦車から大量のミサイルが射出された。
「船長!何か来る!」
「しまった!トメニク、崖から離れろ、急げ!」
だが、時すでに遅く、ミサイルは崖を切り崩し、キャリアビーグルはゴーグもろともがけの下に滑り落ちていく。
ゴーグの胸から出て横倒しになったビーグルに走りよる悠宇。
「ドリス!ドリース!」
「悠宇!大丈夫よ、みんな無事よ!」
サラは悠宇の腕の傷に気づき、「悠宇、ケガしてんのかい?」
「ああ、これ、カスリキズ・・・」
「さあ、腕出して!」と包帯を巻いてくれる。
「あ・・ありがと・・・」
ドリスはムッとする。
しかしそれもつかの間。砲撃が再開される。
「来たな・・・GAILめ・・・。」
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感想
全編これ、アクションシーンで見所いっぱいの回。
序盤、星空の下での悠宇とドリスのツーショットは、これから起こるノンストップのアクションをよりいっそう引き立ててくれる。
まず、対ダイナソー戦。ダイナソーは、ゴーグの2倍近くあるカニのような土木機械だが、ゴーグに手も足も出ずひっくりかえされてしまう。このシーンは、オープニングでも登場する、ゴーグの力強さを印象づける名シーンだ。
次に、初めて悠宇がゴーグのコクピットに座るところ。
ゴーグのコクピットは、でかい王座(みたいなもの)以外はレバーもモニターも照明すら無い。必要に応じて暗闇のなかにボウッと外の景色が映し出されるというもので、これが非常に雰囲気がある。頭の物見台から直通で行けるのも面白い作りである。