同一性の相対するモノ






絡まった糸が複雑に…
人の手ではもう解けない程に
それは人々の想いと言うシガラミ…









「んっ…」
目蓋の裏側から一瞬強い光と感じる…

目を覚ますとそこはベッドの上だった
見回すとそこは
乱雑に物が置かれている部屋
しかしよく見ればそれらは全て本や書類の類だった
床に平積みにされた重厚な本の数々
どこか懐かしさの漂う部屋
そこにカーテンから漏れた日が一筋伸びていた
その光の位置はエドからは遠い
先ほどの光はきっと何かに反射してたまたま見えた幻想…
それとも自分だけの幻……?




布団から頭だけ動かし見回してみたがどうやら自分の部屋ではないようだ…
確か昨日は、図書館にいたはずなのに…
「……そう…か」
少し思考をめぐらせ一人納得するエド
身体に残るこの独特な倦怠感が昨日の情事を色濃く物語っていた
ただ、横に居たはずの人物は少しの温もりを残し何処かへ行ってしまったようである
重い身体をゆっくりと起こすとエドは、ため息と共に一人吐き出すようにつぶやいた
「……ハァ…またやり逃げかよ」
ただその呟きに怒りの色は無い
本人は、気付いていないようだがそこには少しの後悔と独特の甘い響きがあった
何処か寂しげでモドカシイ様ななんとも言えない響きが…


「無断外泊……またアルにどやされるな…」
そう呟きながら粟立つような自分の感情の波に戸惑った
ソレは荒々しいものでなく晴れた日の穏やかな海のソレのようだった
暖かく優しい母の母胎にいるような安堵
自分はこのままこの思いを抱きつづけて良いのだろうか?

このままその想いに流されてしまえば今まで築いてきたものが崩れ去ってしまいそうな危うささえ伴なっているような気がした
途方も無い思いに自分が取り込まれてしまいそうだった
だからそれから逃げ出すように
無理に重い身体を動かし自分の体温と相手のそれで温まったソコから這い出す





ちょうどそこに大佐が戻ってきた
「起きたのか?」
昨日の出来事など無かったかの様に彼の服装は整えられていた
手には、何枚かの書類が握られている
どうやらオフィスに行っていたらしい
「ああ」
少し気まずそうにエドが呟く
「身体大丈夫か?昨日はムリをさせ過ぎた」
ニヤリと笑いながらそんな事を言い大佐がベッドに腰をおろす
「そんなにやわには出来てねぇよ。それより何にやついてやがんだ?このエロじじい」
後ろから大佐の頬をつねるエド
「あいたた。…いやいやお前でもそうやっていると中々に色っぽいじゃないかと思ってね」
「はぁ???」
本気で分らない様子のエド
「思わず今日の仕事は、放棄させてやりたくなるよ」
まだにやけた顔で大佐が言う
「ああそう願いたいね」
面倒臭いとばかりに大佐の軽口を綺麗に無視してエドが言う



エドは立ち上がり光の差す積み重なった本の束へゆっくりと身体を進めた
ソレを大佐が目だけで追う
全身にシーツを巻きつけたエドに向かってなんとも言いがたい視線を向ける大佐

実際昨日の名残で節々が痛むのだろう
彼が歩く姿は、どこか所在なげで守ってやりたいような感情が湧いた
解けてゆるいパーマのかかった髪と朝日の中シーツから透ける肌の色には、昨日見た艶かしいほどの色気の名残があり
抱いているときに見せるあの切ないような潤んだ瞳とどこか未発達でしなやかなボディラインを思い出す
ソレはあの時大佐の欲情をより一層駆り立てていた

そしてその姿態がここにある

もし少しでも彼に好意を持つものがこの姿を見ればきっと同じ想いを抱くのだろう…
けれどももちろんそんな事許すはずも無い
自分も気付かぬままに大佐はエドに独占欲を抱いていた
誰の目からも隠してしまいたい位の泡立つような痛い感情の渦が沸き起こる
強く抱いてしまえば壊れてしまうのではないかという恐怖と
あえてソレを自分の手で壊してしまいたいような
相対する感情
それらの思いは
一見すれば大切な宝物はしまい込んで誰の目にも触れさせたくないと思う独占欲の塊のような子供じみた感情に良く似ていた
大切すぎて自分でもどうしていいのか分からない
そんなとても一言で表すことなど不可能な不可解極まりない甘い痛み
やはり大佐もこの感情の真意を計りかねていた



自分が求めるモノの正体が何なのか…

当分その答えを見つけ出す事は叶いそうになかった








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