延長線上の幸福




切望…後悔……過ぎ去ったもの
無くしたものが
今この手にある…
もうきっと手放せはしない…
そして……そのつもりも無い










数日の混沌とも言うべき時が過ぎ久々に悪夢から目覚めた




必要に攻められるまま与えた身体が軋むようだったが
けれど今までの空虚とも言うべき心の闇はエドから拭われていた

そっと横を向くとゆっくりと呼吸を繰り返す胸板が見える
昨日の夜からずっと二人は、肌を寄せ合い眠っていたようだ

疲れていた…?
とても

何に…?
色々な事に

では、今は……?



多分…満たされているのだろう
なんとも形容しがたい想いではあるが確実に心は安らいでいた
何度も同じことを繰り返してきたのに…こんな風に感じている自分を
エドは少し不思議に思っていた
昨日も
今日も
その前だって変わらない行為のはずなのに…
どうしてだろう?
まるで見たことも無い自分を遠くから眺めているような奇妙な感覚だった

それは夢の中の現象に似ている…
体感しているはずなのにその姿をただ傍観している自分もいる
霞みがかった中にただ呆然と存在している
その二つの存在が自分の中でせめぎあっていた
人の中にはそんな相反する想いが誰にでも混在しているのでは、無いだろうか?
互いを否定しながら最良を求めたり
たとえばそれは、死の瞬間を美しいと思う心であったり
生きることに哀れみを感じたりといった事だ
どちらかを選択するにはあまりにも不確定な要素が多すぎるような気もする
だから本当にどちらが正しいからなんて
神様でもいない限り分かりはしないだろう
ただ…その時それを心地良いと感じる瞬間があるのも確かなのだ
だから今がそれなんだなぁとエドは思う
なんだかとても穏やかな自分がいた





虚ろに彷徨っていた目線を少し上げると大佐と眼が合った
「………!?」
「どうした?鋼の。驚いたような顔をして」
普通…寝ていると思っていた人物と眼が合ったのだ
少しは驚くと思う……
大佐は、いつもの意地の悪い笑みを浮かべてこちらを見ていた
「悪趣味…」
ボソリと呟く…
まったくこの大人は…
どうせどんな反応を示すかと内心でほくそえみながらじっくり考察していたに違いない
正に悪趣味といわずになんと言うのか…
「いい大人のくせにおとなげない」
「何の事かな?」
分かっているくせにすらっ惚ける大佐
「…はぁ……もういい…」
まんまと大佐に嵌められたかたちのエドは居心地悪そうにため息をついて枕に突っ伏した
まるで馬鹿にされているかのようだ…
どうせこれ以上言ったって謝罪の言葉なんて聞けないのは分っていたからエドは追求するのを諦めた
「そうか?」
そんなエドを見ながらまだ大佐はニヤニヤと笑っているらしい
ほんとに全く…この大人は……
知識や経験がある分子供より性質が悪い




「ところで鋼の…少し出かけないか?」
大佐がエドの頭に手を置いて呟く

「えっ?!」

思いがけない提案に驚いた
「なんだ?嫌なのか?」
あまりにもエドが驚いているので大佐は違う風に受け取ったらしい
「いや…そうじゃなくて…」
「じゃあなんだ?」
「だから……」
だって…
最近ではどんなにエドが言い募っても外出などさせてはくれなかったのに…
ましてやここ数日間は監禁と言ってもおかしくはない扱いを受けていたのだから
しかも大佐と二人で出かける????…だから
「…どこに?」
そんなエドの疑問は至極最もな事だった

「まぁ…行けば分かるさ…」
大佐は苦虫をつぶしたように曖昧な答えしかよこさなかった


第一
枕に頭を埋めていたのでエドにはその表情すらも分からなかったのだ

まるで自分を見られないようにとしているようにとしているかのように
頭上に置かれた大佐の手で顔を上げられなかったから



だから仕方なく
その声だけを信じて
頷くことでソレに答えた…








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