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[文字数字] |
【前文】 : 古代地中海世界、また西欧において、一般に使用されて
いる文字アルファベットは、古代フェニキアが起源とされるが、いま少し
古い起源が考えられている。それはとまれ、ここではヘレニク・グノー
シス主義と関係して、参照資料として古代における幾つかの文字体系で
のアルファベットの一覧と、それぞれの構成文字の対応表を提示したい。
セム語に使用された文字アルファベットを提示するのが望ましいが、
目下においては、セム語の代表として「ヘブライ語」アルファベットを、
そして、地中海印欧語族のアルファベットとして、「ギリシア語」「ラテ
ン語」のアルファベットを取り上げる。また付録として、「ロシア語」ア
ルファベット、つまり、「シリル文字」アルファベットも参考に提示する。
ギリシア語「文字数字」についても、併せて説明する。
以下に「フェニキア系アルファベット基本文字比較表」を提示する。 この表に使用している記号、略字等の説明は後に記す。 |
Tabula Alphabetorum
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【説明】 : ヘブライ文字・ギリシア文字を基準として、ラテン文字、
そしてシリル文字の対応文字を示しています。それぞれの文字について注意
すべきことは : 「共通」: 四つの文字の「発音表記」について、アンダーラインは、そ の母音(母音群)にアクセントがあることを示します。「長音」は、母音を 二重にすることで示しています(例えば、aa は「アー」で、ee は「エー」で す。また、四つの文字体系で、例えば、ヘブライ文字に「th」があり、ギリ シア文字にも「th」がありますが、これらは、まったく無縁な音と云う訳で はありませんが、一応、「別の音」です。子音や母音の「音価」は、四つの 文字それぞれで定義されています。なお、ヘブライ文字には「小文字」があり ませんが、他の三つの文字も、元々小文字はなかったのです。古代においては、 すべて「大文字」表記でした。 「ヘブライ文字」: ヘブライ文字は、すべて「子音」です。母音は含ま れていません。半子音乃至半母音と呼べるものはありますが。これは、セム語 の文字表記一般の特徴で、アラブ語、エジプト語等もすべて子音しか、基本 字母にはありません。母音は、母音点と呼ばれる小さな記号で示されますが、 現代ヘブライ語、現代アラビア語でも、普通の表記の場合は、母音点を省略し ます。母音点を付けるのは、学校の教科書などがそうです(漢字に普通は読み のルビを付けないのと似ているとも云えます)。なお、ヘブライ文字は、特殊 な文字の形を持っており、JISはカヴァーしていませんので、ラテン文字で 表現しています。「#(アレプ)」と「%(アイン)」は、わたし個人の転写文 字です。また、その他の表記しにくい子音については、大文字の二文字で表現 しています(bh, dh, th などのヘブライ文字の発音に出てくる音表記記号は、 これは、元のB(ベート)などに、「子音点」を付けることで、Bとは少し 違う音の子音となり、これを表現するのに、「bh」などの記号を使用している のです)。(ヘブライ文字の字形を具体的に提示するため、「手書き」ですが、 文字を、ラテン文字転写文字の横に置きました。ワウとザインなど、同じよう に見えますが、元々似ているのです。ダーレトとレーシュはどう違うのか、手 書きの方が分かり易いとも云えます。なお、これは標準の筆写体です。活字体 とは、少し異なりますし、現在実際に使用されている字形は、もっと簡単な省 略字体があります。……書いていると、何か忘れてしまっているようで、或い は字形が間違っているかも知れません)。 「ギリシア文字」: ヘブライ文字との対応で示しています。ほぼ対応し ていることが分かり、音価が少し変化していることが分かります。青い色で 示した三つの文字(FとQと/S/) は、古典時代前期(紀元前6世紀頃)には、 すでに使用されていなくなっています。従って、通常のギリシア文字アルファ ベットにこれらの文字は出てきません。しかし、「文字数字」として使う文字 としては、かなり後世まで使用されていました(文章を書く際の文字としては、 これらの文字は使われなかったと云うことであり、また、本来あった音価も、 古典時代以降には消えてしまっています。例えば、「aioon, アイオーン」は、 元は、「aiFoon, アイウォーン」であったのですが、「F」の音及び文字が、古 典時代にはすでに消失していました)。ギリシア文字は、七つの母音を持ちま すが、それらはフェニキア文字で、またヘブライ文字では「子音」であった 文字を転用しています。 「ラテン文字」: ラテン文字は、ここに挙げている21文字しか基本的 にはありません。これは古典時代のラテン語の表記に使った文字です(もっと 古い時代には、「Z」の文字がありましたが、一旦使用されなくなり、その後、 ギリシア語の単語を表記するため、「Y」などと共に導入されました)。また、 J,U,Wなどは、元々のラテン文字には含まれていません。 「シリル文字」: シリル文字は、ここで示したものよりも、もっと多数 の文字を備えています。しかし、比較のために提示したもので、ヘブライ文字 ・ギリシア文字と対応する文字を提示しています。また、子音として対応する が、順序的に位置が異なっているものは無視しました。 以上の表では、文字の読みが、ラテン文字表記になっていますので、これ をカタカナ表記にし、簡略化したものを以下に表として挙げます。 |
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Litterae Numerales
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【説明】 : 通常のギリシア語アルファベットは、α β γ δ ε ζ η θ ι κ | λ μ ν ξ ο π ρ σ τ υ | φ χ ψ ω の24文字となります(「|」は、十文字ごとの区切
り線です)。これで番号を
振って行くと、ι が9、κ が10になります。しかし、上の表にあるように、
「文字数字」のアルファベットは、これら24文字に加えて、文字としては使用され
なくなった三つの数字用文字を使います。つまり、「F(ディガンマ)」、「Q(コッ
パ)」、そして「/s/(サンピー)」です(サンピーは、変な形をしており、
象形文字のようで、似た記号が見つからないので、/s/ で表しています)。 これらの三つの文字数字を加えると、ギリシア語アルファベットは、27 文字となり、α β γ δ ε F ζ η θ ι | κ λ μ ν ξ ο π q ρ σ | τ υ φ χ ψ ω /s/となります。ディガンマを考慮に入れ ない時、順番から行けば、ξ(クシー)は、κを10として、50となります。 また、コッパ(q)を数字文字として勘定に入れない場合、ρ(ロー)は80, σ(シグマ)は90となります。こうして、abraxasつまり、 αβραξασ(’αβραξας) の文字数字の合計は、1+2+80+1+50+1+90となり、これは、 225で、365にはなりません。ディガンマ(F)とコッパ(q)を文字数字 に勘定している時、初めて、abraxasあるいはabrasaxの文字数 字合計は、365になるのです。 |