ギリシア語で、「支配者たち」の意味。アル
コーンの複数形主格。→〈
アルコーン〉。
アルコンテスについては、「グノーシス主義異端反駁者たち」の報告及び、
『ナグ・ハマディ写本』の複数の文書において、様々な名称と属性のものが
述べられている。大約、基本的な構成では、デーミウルゴス
である「第一のアルコーン(プロートアルコーン Prooto'arkhoon, ho)」の
下に、彼の息子、或いは彼が創造した、七体のアルコーンたちがいるとされる。
これを、「ヘプドマス(七組系)」とも呼ぶが、こう呼ぶ時、アルコーンによ
る人間の創造の神話と密接な連関を持つことになる。(ヤルダバオートの母で、
中間世界におけるアイオーン・ソピアーの似像・影像(エイコーン)であるア
カモートは、或るグノーシス主義神話(e.g. ナグ・ハマディ文書『この世の
起源について』)では、「ピスティス・ソピアー Pistis Sophiaa」
とも呼ばれ、このピスティスは、七体のアルコーンたちがヘプドマスと呼ばれ
るに対し、「オグドアス」と呼ばれる。これはプトレマイオス派におけるオグ
ドアス・プレーローマの「オグドアス」とは、また異なるが、神話構成上の意
味からすれば、同質のものだとも云える)。
第一のアルコーン=ヤルダバオートは、プレーローマの至高アイオーンた
ちと同様に、両性具有でもあったが、彼の支配下にあるアルコーンたち、特に
ヘプドマス・アルコーンたちも両性具有であったと云われる。『ヨハネのアポ
クリュフォン』(『ベルリン写本』所収の版による。『ナグ・ハマディ写本
II-1』では、アルコーンの名
称に違いがある。また360人のアルコーンは、「NH-II-1」では、365
人である)によれば、七体の権力アルコーンたちの名は、1)ヤオート
(女性的勢力名=プロノイア)、2)エローアイオス(以下同=神性)、3)
アスタファイオス(善)、4)ヤオー(火)、5)サバオート(王国)、6)
アドーニ(理解)、7)サバタイ
オス(智慧)であった。これらの七体の権力アルコーンは、古代宇宙論におけ
る、七つの「天球」に対応するとも云え、これらの天球の上に、恒星天球にお
ける支配者であるヤルダバオートが君臨している。また、黄道十二宮(獣帯)
に対応して、十二体のアルコーンがいるともされ、更に、ヤルダバオートの下
に、360人の天使=アルコーンが存在するともされる。ヤルダバオート及び
七体のアルコーンと共に、彼らは、人間の心魂や肉体を分担して創造しようと
不完全ながら試み、この時、「霊の光」が人間の内奥に、上天の秩序より挿入
されたと云う説がある(ヘレニク・グノーシス主義における、中間世界での諸
天使=アルコンテンスの展開と、地上世界での人間の魂の運命、その救済の過
程問題において、これらヘプドマス・アルコンテスは密接に関係してくる)。